Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

パラサイト 半地下の家族

2020年03月24日 | 2010年代 韓国
パラサイト 半地下の家族(原題:기생충)

2019年 韓国
監督:ポン・ジュノ
製作:クァク・シネ、ムン・ヤングォン、ポン・ジュノ、チャン・ヨンファン
脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チェ・ウシク、チョ・ヨジョン、パク・ソダム、チャン・ヘジン、チョン・ジソ、チョン・ヒョンジュン
撮影:ホン・ギョンピョ
編集:ヤン・ジンモ
音楽:チョン・ジェイル
美術:イ・ハジュン


やばいやばいやばいわ、これ。
ゾクゾクが止まらなかった。
あれよあれよと転がっていく展開に頭がフル回転で付いていって、でもサあの可能性は?あれはどーなった?この場合はサ、と想像力が掻き立てられて、先読みして笑っちゃったり、予想外のことに仰け反ったり、脳内も含め幾つもの場面を同時に見せられているかのようだった。
すっっっごいおもしろかった!

が、軽妙なだけではない。半地下の家族たちの抱える葛藤が悩ましく、全編を通して心に染み込んでいく。
題材は、現実からかけ離れたものではなく、むしろ2つの家族のど日常。

風通しが悪く生活臭の蔓延した薄暗い部屋で暮らすキム一家は、全員が失業中で貧しい。
そこへ息子の友人が、家庭教師として仕事先を紹介してくれたのが大邸宅に住むパク一家。
この邸宅が舞台装置として完璧だと思った。
リビングから庭園を見渡せる全面ガラス張りの造りはセレブリティそのもの。
半地下に住んでいる家族の窓越しの惨めな風景との比較も象徴的に感じさせる。

両家族のキャラクター設定も絶妙で、アーわかる!っていう頷きで、顎が痛いくらい。
完璧を演じているかのようなパク社長と何かと影響過多な奥さんの馴れ初めは想像に易いし、そういったバッググラウンドを描かせるくらい、家族たちが脳内に入り込んでくる。今、誰が何て考えているのか、わかる。わからせてくれる、のが凄いなぁって思った。
それって、本当に面白いってことだ。

夢のチョコレート工場

2019年03月23日 | 1970年代 米
夢のチョコレート工場(原題:Willy Wonka & the Chocolate Factory)

1971年 アメリカ

監督:メル・スチュアート
製作:デビッド・L・ウォルパー、スタン・マーガリーズ
脚本:ロアルド・ダール(原作)、デビッド・セルツァー
出演:ジーン・ワイルダー、ジャック・アルバートソン、ピーター・オストラム
撮影:アーサー・イベットソン
音楽:ウォルター・シャーフ、アンソニー・ニューリー、レスリー・ブリッカス
美術:ハーパー・ゴフ

「チョコレート工場の秘密」は、こどもの頃から大好きなお話。何度でも読み返した大事な本。
ティム・バートン監督による映画化作品が有名だけど、たしか以前にも映画化されてるよね〜と
思って調べたら、約40年前の作品で、ありました。しかも原作者ロアルド・ダールの脚本で!

かなり製作側に書き換えられたとのことだけど、それは、摩訶不思議なチョコレート工場内に
入ってからの話で、工場への招待チケット5枚を巡って世界中が大混乱に陥る模様をほぼ映画の
半分を使って丁寧に丁寧に描いてくれているのはロアルド・ダールの意図によるんじゃないかなあ。

だってだって、チャーリーがチケットを握る、あの特別な感じは、チョコート工場のお話の肝!
食べるものにも困る極貧の勤労少年が、憧れてやまないチョコレート工場のゴールデン
チケットを奇跡的に手に入れた時の感激は、世界が光に包まれる瞬間で、胸がつまります。

そうして、いざチョコレート工場に潜入の日。
現れたウィリー・ワンカは名優ジーン・ワイルダーの怪演による、何とも怪しげなおじさん。
入場前には、何が起こっても訴えないという誓約書にサインされ、我がままな子供達は皆ひどい目に・・・。
なんだか悪意がある、な、、、

そこへ割り込んでくる小人族のウンパルンパたちによる、歌とダンスが超シュールで耳にこびりつく。
あああああ、やっぱり怖い世界だった。
踏み入れちゃいけないところだった。

チョコレート工場の夢と狂気を同時に堪能できる作品。

パンク侍、斬られて候

2018年07月06日 | ロック映画、映像
パンク侍、斬られて候

2018 日本
監督:石井岳龍
製作:若泉久央
製作総指揮:西澤力、笹岡敦
脚本:宮藤官九郎
出演:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、
若葉竜也、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司
撮影:松本ヨシユキ
編集;武田峻彦
音楽:森俊之
美術:林田裕至


パンク好きなら外せない映画。
それ以外の人は、遠巻きに指をくわえていてほしい。
この興奮、わかってたまるか、と思ってしまう。

どのシーンもキャスト全員が振り切ってて、ずっと心臓がバクバクいってた。
どこまで行くのか、どこへ行くのか。
うんうん、宇宙が砕けたね! そうこなくっちゃ。

もっと終焉に向けてぐっちゃんこに壊すかと思ったけれど
想定よりは十分に言葉や映像を尽くして、また役者陣の怪演を通じて
それぞれのキャラの背景を描いている。
がんじがらめの縦社会で行きていかなければならない侍たちはもちろん
念動力を操るバカのオサムも、偽教祖となる茶山も悲しかった。
それぞれの深い悲しみを弾き飛ばしてくれて、これぞパンクだった。

Rock'n Roll(ロックンロール)

2018年02月18日 | フランス映画祭

明日までwebにて開催中のマイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル2018(MyFFF)
https://www.myfrenchfilmfestival.com/ja/
毎年とっても楽しみにしていて、1ヶ月たっぷりとフレンチフィルムに浸かるのに
今年は期限ギリギリでやっと1本鑑賞できました。
(夜泣育児に会社決算、骨折&手術・・・彼是)

これだけは、とチョイスしたのは長編「Rock'n Roll(ロックンロール)」。
ギヨーム・カネとマリオン・コティヤ ール夫妻がそれぞれ本人の役を演じ、
中年の危機を脱しようと奮闘するだなんて何事!? と思ったけど
見事なまでに「ギヨーム・カネ」を監督兼主演兼本人がいじり倒してる!!

自分のこと、ここまで酷く描ける、なんて・・・。
ほんとにギヨーム・カネのイメージが変わった。
最後のオチがサイコーだった。ムセるほどに笑いこけた。

そして、自然体(っぽくみえる)マリオンがすごく綺麗だった。
もー変なこと考えてないで、この人をちゃんと幸せにしてあげてよーって、思った。
余計なお世話だよね。
なんだかんだいって、信頼関係がなければ、できない映画。
サイコーだった。サイコーだった!


パリ、テキサス

2018年01月13日 | 1980年代 欧州

パリ、テキサス(原題:Paris,Texas)

1984年 フランス=西ドイツ
監督:ヴィム・ヴェンダース
製作:クリス・ジーヴァニッヒ、ドン・ゲスト
製作総指揮:アナトール・ドーマン
脚本:L・M・キット・カーソン、サム・シェパード
出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー、ハンター・カーソン、
ディーン・ストックウェル 、オーロール・クレマン
撮影:ロビー・ミューラー
編集:ペーター・プルツィゴッダ
音楽:ライ・クーダー


覗き部屋で客と女給として、かつて愛し合った男と女が壁を隔て、電話で話をする。
壁には大きなマジックミラーが設えてあり、男から女の姿は見えるが、女からは男の姿は見えない。
一方通行の視線、一方通行の会話が、なんとも切ない。

男は4年前に女と息子を残して失踪していた。
行方を知った弟が砂漠まで訪ねてきても、記憶も言葉も失ってしまっている。
すったもんだの末にロサンゼルスまで帰ってきて、弟夫婦に育てられていた息子と再会し、
閉ざしていた心を取り戻していく。

この息子のハンター(8歳)の戸惑いや恥ずかしさや甘えや思いやりが、逐一手に取るようにみえて
かわいくて仕方ない。
おい、こんな子をよく放っておけたな。もーーー!!
ぜったいぜったい離しちゃだめだよ、って思うのに。
出てくる人たちは、みんな愛し合っているというのに。
うまくいかないの。想いが強すぎるがゆえに。

愛さえあれば、なんていうけれど、幸福に生活していくのに必要なのは「至上の愛」ではなく、
バランス感覚なのかな、と思わされてしまう。