WIND AND SOUND

日々雑感 季節の風と音… by TAKAMI

祈り

2011-11-26 | 実父






11/25 祈り


私は、
JINさんに洗礼を受けてクリスチャンになることを薦めた。
神さまはそのために私のところへJINさんを連れてきたのだと、私は最初に彼にお会いしたときから強く感じていた。
クリスチャンでもない私のところに…

営業が超苦手で、それ以上に宗教の勧誘なんか、絶対にできない私、、、
キリスト教は基本的に「勧誘」はしない。
私も教会に通い始めて4年目になるけれど、「洗礼を受けませんか」と言われたことは一度もなかった。
キリスト教の「伝道」とは、神さまのことばを伝えることで、勧誘とは違う。


でも、彼には4年もの時間はもうない。
いつ、どんなタイミングで話したらいいか、よい時を与えてくださいと、神様にお祈りするしかなかった。
(JINさんが「私の死生観とは違う」といって拒んだら、もうそれで終わりだから)
昨日がその時だった。いろんな話の流れの中で、
「JINさん、私が言うのもヘンかもしれないけど、洗礼を受けてクリスチャンになったらどうかな?」
彼は、一瞬びっくりしたような、でも、確かにその言葉を「待っていた」顔だった。
あまりにもあっけなく「それは私も考えていた」と言った。
彼は、聖書も以前に通読されたこともあるというし、近所の教会の英会話教室や、集会にも何度か出かけたことがあると以前から聞いていた。
でも、そこから1歩先に入っていく機会がなかったのだ。

私は、嬉しくて涙が出そうで胸がつまって、なんともいえない感慨に締めつけられるようだった。

ああ、これで、JINさんは、これからの人生を豊かに平安に過ごして、心安らかに「死」を超えていける…

昨日から父と同じ病院に入院したけれど、父のあたたかで、いつもお花が飾られている南向きの個室とは違う。
北向きの相部屋で、他の患者さんたちも、長く患っているようで、なんだか放置されているような印象を受ける。
カーテンも汚れているし、床もきれいとは言えない…
でも、JINさんは、「大好きな女木島と男木島が見えて、明るくてよかった」という。

T病院から、今のところに転院する前に、私は、別の病院のホスピス病棟に問い合わせをしてみたらどうかと薦めたのだけれど、もしも私がJINさんの立場なら、そこで人生の最後の時間を過ごしたい…と思ったのだけれど、
本当の本当に大切なことは、医療や、部屋の清潔さ、きれいさではなくて、心の平安なのだ。
「死」を、神さまの懐に掬い取られる、優しくあたたかなものと思えることだ。

JINさんのことに関しては、早速牧師先生にお伝えして、いろいろと準備を進めていただくことになった。



一方…

父は、3日前から熱が出ては解熱の注射を打つことが続いている。
熱がだんだん上がっていくときには、悪寒がして、ガタガタと身体と唇を震わせ、寒い寒いといって、見ているだけで辛くなるけれど、私ができることは何もない。

どんなに身体を温めても、エアコンで室温を上げても、悪寒はどうしようもない。

昨日は私が付き添いの担当だったけれど、熱が続いているので、ヒロコさんも気が気ではなく、無理して来て、父に食事を食べさせてくれた。
彼女の介助は本当に愛情にあふれて、少しでも楽に…という思いが一瞬にして伝わってきた。
1日でも、1秒でも長く生きていてほしい、そしてその間は、少しでも楽に、、、

父は彼女のすべての介助を受け入れて、甘えきっていた。

今日も私が行ったら、父はまた悪寒がしていて、ガタガタと震えていたけれど、なすすべもなく、父の傍らで祈るしかなかった。

暫くして、父は少しだけ楽になったようなので、「熱いお茶飲む? 身体があたたまって楽になるかもしれないよ」というと、僅かに頷くので、ベッドを少し起こして、ポットのお湯を再沸騰させて、熱くて濃いお茶を入れてあげた。
父は湯のみが持てなかったので、飲ませてあげたら、少しずつ、何十回にも分けて飲んだ。
「お父さん、美味しい?」と聞くと、また僅かに頷く。
食事は、美味しいと感じず、仕方なく生きるために少しでも箸をつけるような状態なのだけれど、
熱くて濃いお茶は、美味しいと感じられるのだ。
1杯では足りなくて、湯飲み2杯、少しずつすっかり飲み干した。

もうレッスンで、帰る時間が近づいてきたので、少し落ち着いたところで、
「お父さん、もう私、行かないと…」というと、
眼を大きく見開いて、「どこに?」と…
「レッスンや。生徒さんが来るからね、ごめんね、もうすぐヒロコさんが来てくれるよ。」

もっと一緒にいたい。

「お父さん、苦しくなったり、寒くなったら、神さまにお祈りしてみて。
神さまは、ずっとここにお父さんと一緒におるよ。」
初めて「神さま」のことを口にした。

父は、また目を大きく見開いた。
いきなり「神さま」が出てきて、びっくりしたのか??

「私、お父さんが熱が出て寒くてもなんにもできんから、お祈りしたんや。
神さま、お父さんの熱を下げてください、悪寒を取り除いてください、
足の痛みや、身体の痒みや、辛いことを全部取り除いてください。
お父さんが、少しでも食欲が出て、美味しくご飯がたべられますように。
神さまは、お父さんがお祈りせんでも、いつも一緒にいてくれてるよ。
でも私がお祈りするより、本人からお願いするほうがいいと思うから、
苦しくなったら、神さまにお願いしてみてね。神さまは絶対にきいてくれよるよ。
それでもどうしても辛かったら、ナースコールやで。」

「わかりました。」
と、ゆっくり父は言った。


理屈なんかどーでもいいのだ。
私は、父に「神さま」を思い出してほしい。







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