忘恩

導師は通夜の席の最後に「忘恩」という言葉を口にされました。お世話になっていながら、存在自身があまりにも当たり前のことで、改めて何かを想うことすらなかった方の遺影を前に、その存在を亡くしても尚静かに見守ってくださっていることに改めて気付く…そのような話だったかと思います。

充分感謝をしていたつもりでも、改めて思い返してみると、私も「忘恩」であったかも知れません。今から思えば、もっと…もっと…。ゲーテは「忘恩はつねに一種の弱さである」といったことを言ったとか、言わなかったとか。「有能な人たちが恩知らずであった例を知らない」とも。

何故、そんな黒い写真枠の中に納まっているのですか？　何故、斎場に黒々と名が掲げられているのですか？　何故、もう声をかけてはくれないのですか？　何故、答えてはくれないのですか？

通夜の席に、これほど多くの方が集まられることはあまりありません。無念であろうご遺族が、なぜか皆、穏やかな表情をされていました。これも、それも、どう生きたか？の結論なのでしょうね。

大丈夫です。教わったことは、既に私自身の根幹です。目指されたもののほんの一端にしか過ぎないかも知れませんが、もう一度問い直し、改めてその想いを繋ぎ続けることを誓います。



「エクセルで描いた図形が青い」
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