昨日、お墓へ行こうと思って、近所のホームセンターで花をゲットしたものの、忘れものに気が付いて、もう時間も遅かったし、ヤメた。 相変わらずイッパツで出かけられないワタクシ。
で、今日、出直して、お墓の周りの雑草、引いて、水掛けて、花飾って、ナムアミダブツ。午前中だったが暑かった。
御影の山の中腹にあるウチのお墓、オヤジは次男だったので、今入っているご先祖さんは二人だけ。
オヤジが死んだあと、オフクロが建てたが、そのイキサツは覚えていない。
仕事も、(一応)子育ても忙しい頃で、お墓のコトなどにはかまってられない。
オフクロがテキトーに選んで建てて、しかしその後、オフクロがまだ生きていた時も、年に何回も通っていたのはワタクシだった。
阪神大震災でガタガタの時も、倒れた軸石、元に戻したのはワタクシだった。
そして、3年前からそこへオフクロも一緒に入っている。
「オニイサンとオネエサン、いつもケンカしてはりますねぇ」、父方の一番年少の義妹から、昔、法事か何かで親族が集まった時、オフクロはそう言われたそうだ。
オヤジの末弟と恋愛の末、結婚した叔母サンにとっては、偶に兄弟が集まる楽しい時にでさえ、夫婦ゲンカをしている兄夫婦が奇妙に見えたのだろう。
確かに、この夫婦(我が両親ですが)、よくケンカしていた。
ケンカするほど仲がイイ、と言うさっぱりしたケンカではなかった。 オフクロは何かにつけ、オヤジが癪にさわる様な事柄をネチこく言い続け、やがてオヤジがキレる。
オヤジがオフクロに手を上げる事は無かったが、家の中はしょっちゅうグチャグチャ、バラバラ、ボロボロになった。 割れた食器や壊れた家具類を片付けるのが大変だった。
家の前の道は、石垣の下と言っても布引谷のハイキングコース。 日曜の朝などはハイカーが大勢歩いている。 そこに毎週の様に夫婦ケンカが聞こえる。 子供ながら恥ずかしかった。
一人っ子なので「ホンマ、困った二人やなぁ」と、なぐさめ合う兄弟はいない。
中学生の頃(多分)から、この夫婦は一体何なんだろうと、よく考えていた。 なんで結婚したのか。 つまり、ワタクシはなんで生まれたのか。
オヤジは京都の商業学校を出て、色々売り買いの様なコト、をしていたらしい。戦後はヤミの商いでケイサツのご厄介になった事もあったらしい。
オフクロは姫路の女学校を出て、西宮の飛行艇の製造工場で工務の事務をしていたらしい。 当時の軍需産業、当然高学歴が集まる。 彼らに囲まれて戦争中とは言え、それなりに楽しいOL時代を過ごしたらしい。
それなら何故、かれら高学歴と結婚しなかったのか。
このことを詳しく問いただしたことは無い。訊いても多分応えてはくれなかっただろう。
何となくその理由は判る。 それは、彼女が私生児で、母親がハンセン病患者だったからだ。
しかし、見合いとはいえ、オヤジとは夫婦になった。 見方を替えれば、それらを承知でヨメに貰ってくれたオヤジには感謝しないといけない。
見合いの後、次に会ったのは結婚式の日だったらしい。
その前に一度デートの機会があったらしいが、待ち合わせ場所に近付いて来るオヤジがあまりにも貧素に見え、スッポかしたそうだ。 で、オヤジは相手にその気なし、と判断して断って来たらしいが、イエイエそんなコトないですよ、と逆にアプローチして、結婚。
「なんや、ケッタイなオンナ」、さぞかしオヤジはそう思っただろう。
結婚後、直ぐにこの夫婦は北海道へ行く。
オヤジは北海道に知り合いがいて、一緒に商売をしてヒトハタ挙げようとしたらしい。 ワタクシが宿ったのは北の大地だったかも知れず、オフクロがそのまま冬を越せれれば、ワタクシは道産子になった。
しかし、オフクロはその地に来た冬の寒さで、まず声が出なくなり、本州のことを「ナイチ」と言う周りの人たちの会話に寂しさは増すばかり、無理矢理オヤジの腕を引っ張って帰って来たらしい。
盛大な壮行会を頂いて出発したにもかかわらず、逃げ帰って来たオヤジは大恥をかいた。
そして、高槻・富田の本照寺で5年過ごした後、神戸の山中・布引谷に一軒家を見つけ、そこへ移り住んだ。
「アンタは、ワタシら夫婦の悪いトコばっかり受け継いでル」、何かにつけ、そうオフクロは言っていた。
ブサイクな所はオヤジ、背の低い所はオフクロ、頭の悪い所は両方。 別に、受け継ぎたくて受け継いだンじゃないですけど。
ホントにこの夫婦は何なんだろう。 どうしてワタクシは両親の悪い所ばかり受け継いでいるンだろう。
「ワタシなんか、生まれて来なかったら良かったのよぅ、キィーッ!」、青春ドラマのヒロインのセリフを叫ぶ気はないけど、 何年後かに死んでも、この変な夫婦が入っている墓だけには入りたくない。
とは言いながらも、年に何回かこの墓へ来ている。 チャンと花、生けて、雑草引いて。
まぁヒマやしね。
夜、帰って来て、呑みながら、ビリィ・ホリディを聴いた。
I’m a fool to want you、・ ・ ・ ・ ・ 、I can’t get along without you、
ここで歌われる「you」というのは、恋する相手の事ではなく、人生とその関わりの事かも知れない。 ふと、そう感じた。