ミニバイクほど、運搬能力としての、コストパーフォーマンスに優れた乗りモノない、という記事をナンかの雑誌で読んだことがある。
確かに、前後にカゴを付ければ、スーパーで調達した2週間程度の食材は運べるし、スキー板くらいの長尺モノだって、ステップボードに立て掛け運べます。
しかし、ミニバイクほど、粗末に扱われる乗りモノはないと思う。まだまだ動くハズなのに、公園の繁みや河川敷に、惨めに捨てられているミニバイク。
六甲山とは、稜線に近付くと車の音や匂い(つまり排気ガスの匂い)がしてくる不思議な山なのだが、裏六甲の谷を登っていて、西六甲ドライブウェイ直下に捨てられているミニバイクに出くわしたコトは、何度もある。
多分、タチの悪い若者の仕業なンだろう。
一年分の定期代程度で手に入り、ムチャクチャ乗り廻し、改造もしたりするが飽きたらポイする。
まぁ六甲山の道端には白モノ家電やTV、パソコンなども沢山捨てられていて、ここは家電量販店?、中古品ばかりだけど。
消費文化の象徴、ホントに嘆かわしい。
しかしワタクシ、30年前に定期代1年分ほどを誤魔化して手に入れたミニバイク、まだまだ捨てません。まだまだ元気に走ってくれるし、チョットしたケガ、病気は治してくれるバイク屋がいるし。
今年夏頃からウィンカーが点かなくなったり、クラクションが鳴らなくなったりして、それは断線、つまりコードの被覆材の劣化、電線の腐食が原因だと判り、「イッソ、コード類全部、交換してくれヘン?」と言ったら、「そんなン大変ですよ、その都度切れてルとこ直していったらよろしいやン、ナンぼでも付き合いますワ」、とバイク屋のオニイチャンは頼もしい。
とにかく腐食、劣化が心配だ。
カバーに隠れているハンドルを下から覗くと、激しくサビが浮いている。またスピードメーターのレンズが劣化して、ヒビがイッテいる。
「これ、部品ある内に交換しようと思うねンけど」
「そうですね、それならヘッドライトも交換した方がエエと思いますヨ、ウラ、かなりイッテるし、今度開けたら多分、バラバラになると思う」
と言う事で、これらの手配をお願いした。
しかし、2日後、「あきません、“全滅”です」、在庫はどれもなかった。モデルチェンジは20数年前のはず、なくても当然です。
「後は中古部品を探すか、です」
そう言う中古部品販売のサイトは知っていた。
1台の中古個体からパーツを外して売る商売、これはバイクの臓器売買?脳死臓器移植?、チョット違和感があったが、比較的キレイな、サビがほとんどないリアキャリアを購入したことがある。まだ交換してないけど。
早速そのサイトを見た。
ほとんどサビのないハンドルと、レンズにヒビがないヘッドライトは見つかり即手配。5日後モノは届いた。支払いは代引き、¥8,510.-。
現物を確認すると、どちらもサビ、劣化なく、中々キレイだった。
早速、バイク屋に持ち込んで交換をお願いしようと思ったが、中古部品の交換作業だけ頼ンでエエの?、ナンカ気が引けた。
仕事もせず、年中遊んでいる身分、時間は充分ある。自分で交換してみて、もしダメな時は、恥ずかしながら後始末お願いしても、あのオニイチャンはやってくれるはず。
と、いう事で17日、自分でやることにした。
ハンドルグリップも交換しないといけないことに気が付いて調達。
昔はホームセンターやオートバックスで売っていたはずだか今はなく、少し離れたバイクパーツ専門店まで買いに行くことになった。
工具、KURE556、パーツクリーナー、グリース、雑巾を揃えて昼過ぎ、作業開始。幸い駐輪場周りには誰もいない。
ハンドル上のカバーを外し、ヘッドライト、スピードメーターの“縁”を切るとハンドルが露出した。スゴイ錆び。
ヘッドライトの取付部は、バイク屋のオニイチャンが言っていた様に、バラバラになっていた。
サビで固着したプレートを外さないと完全に“縁”が切れない。KURE556を吹きかけ、何とか外せた。
さてハンドル本体はどう外すの?
取りあえず、サスに繋がっているパイプに差し込まれている部分や貫通ボルトにKURE556を思いっきり吹きかけ、貫通ボルトを左に廻す。硬い。とにかく硬い。
何度かトライして、最後にフンと力を入れると少し緩んだ。更にフン、フンと力を入れる。徐々に緩んできて、やっと抜けた。ホッ。
これで“縁”は切れたはず、後は引き抜くだけ。しかし、これも硬い。
タイヤを固定してハンドルを左右に振ってみる。
動かない。フン、フン、と力を入れると少し動いた。KURE556を更に吹きかけ、更にフン、フンと振る。大分軽く動く様になって来た。
そして、ステップポートに体重を掛けグイグイ引っ張ると、ズボッと抜けた。ここまでで1時間経過。
ここからの組み立てが大変だった。
掃除したり、サビを落としたりで時間もかかったが、何と言っても、ハンドルのシャフト周りには、狭い空間にゴチャゴチャ、ケーブルや配線が通っていて、それを上手く納めないと、全体が納まらない。ネジを締める順序を間違っても納まらない。何度も付けたり外したり、ナンヤこれッ!
3時半、やっと納まって、フゥ~ウ。
そろそろ小学生が帰ってきて、この辺りを走り廻る時間。駐輪場を“ホーム”にして遊んでいるグループもある。
「オッチャン、何しとン?」と、近付いて来るガキもいる。
「ウワッ!これナニ?」と、部品や工具を触ろうとするガキもいる。早く片付けないと。
すぐ作動チェック。
セルは廻る。エンジンもかかる。ライト、ウィンカーも点く。クラクションも鳴る。スピードメーターも反応する。インジケーターランプも点く。
しかし、ブレーキランプが点かない。
エエッ、ナンデェ???ゴチャゴチャしているケーブルや配線、グチャグチャいじり廻した時、切れかかってたのが切れたのか?
いずれにせよ、もうシンドくなった。
サビたネジ、力いっぱい緩めたり締めたりしていて、指もツッてきた。手ェが広げられない。
深爪と言うか、指と爪の間が裂けて、とにかく指先も痛い。
もうヤメましょう。
翌日も指先は痛く、終日シンドかった。取りあえず工具その他を片付けた。爪が伸びるまで指先は痛いままだと諦める。
翌週、晴れた日は自転車に乗り、用事がある日は雨が降り、使うのは傘と長靴。結局ミニバイクは動かさなかった。
しかし、不具合を放置したままは気味が悪い。日曜日、バイク屋のオニイチャンに助けてもらう事にした。
不具合、つまり断線の原因は、ハンドルとヘッドライトの交換を自分でヤッタことかも知れない、と正直に申告。
彼はワタクシの “年寄りの冷や水” には一言も触れず、「まずランプを見ます」と、作業を始めた。ランプは健全だった。
と、言う事は、やはり配線をグチャグチャいじり廻した時切れたのか。
左右どちらのレバーを握っても点かないと言う事は、接続端子の後側が疑われる。接続端子はあのハンドルシャフト周りの狭い空間にある。
彼はハンドルカバーを開け、スピードメーターとヘッドライトの“縁”を切り、その狭い空間を覗けるようにした。
「スピードメーターのワイヤーのナット、ムチャクチャ緩かったですよ」、それを締めたのは指がツリかけて来た頃だった。
彼はその狭い空間に指を突っ込みギボシを外し、メスの端子にラジオペンチを突っ込み、それを短絡した。するとブレーキランプは点いた。「後側は繋がってますねぇ」
次にオスの端子にテスターを接続し、ブレーキレバーを握った。テスターがピィ~と鳴った。
「レバーのスイッチは効いてますねぇ、と言う事は端子の接続かァ、しかし左右同時にそうなるて、こんなコト、初めてです」
メスの端子に接点復活剤を吹き付け、オスの端子の表面をやすりで削り接続。
しかし、点かない。「エエッ!なんでぇ?」
彼は、コード両端にオスとメスの端子を付けた仮の延長コードを作ってそれを接続。すると点く。
「片方をサラの端子にすると点きますね、ナニこれ?」
「30年経ってルし何があるか判らンのやろ、マエそう言うてたやン」
「まぁそうですけどね、しかし不思議やなぁ」
いずれにせよ端子接続箇所は狭い空間にあって、外したり繋いだりがとてもやり難い。
「コード延ばして、あの狭いトコから出して、端子全て交換してェ」と、お願いした。
「判りました」と、彼はハンダごてを準備した。
「圧着で繋がへンの?」
「ボク、あれ信用してません、その部分、太なるし」
いずれにせよ、彼にお任せして、夕方一週間分の買い出しに行って、その帰りに寄ると、作業は済んでいた。
「接続箇所2ヶ所のギボシ、全て交換しときました」、費用は¥4,000.-だった。
「8月から毎月、修理に来てるねぇ、来月はドコやろ」
「イヤもうしばらくはないと思いますよ」
確かに5ヶ所以上の断線を修理してもらっている。
もう切れそうな箇所はないのだろうか。それならありがたいコトなのだが。