蒼ざめた馬の “一人ブラブラ、儚く、はてしなく”

山とスキー、車と旅、そして一人の生活

壊した石油ポンプ、壊れていなかった電気ポット、壊れかけていたタヌキ

2018-12-23 23:05:40 | 信州安曇野での出来事
28歳まで暮らしていた神戸・布引谷には、都市ガスなど来ておらず、煮炊きと冬の暖房は石油だった。プロパンガスと言うテもあったが、ブロバンの爆発事故がニュースになる時代でもあり、オフクロは石油を使い続けた。
小学校高学年になると、石油の補給と芯のメンテは、ワタクシの仕事になった。
一斗缶の金属の蓋を、フン!と押して開け、石油ポンプを差し込みショコショコしてタンクに入れるが、石油缶は台所の外の、オヤジが増設したブリキ壁の小屋にあり、冬はムッチャ、メッチャ寒かった。毎回手に石油が付き、都度洗い落さないといけないが、湯沸かし器などはなく、近くの谷から引かれて来た冷たい水では、石鹸の泡が立たず、ワタクシはいつも石油臭かった。28歳まで、石油のニオイは、冬の寒さ、冷たさと共にあった。
 
所帯を持ち、都市ガスの街に住み始めると、石油とは縁が切れ、あの石油臭い日々とも縁が切れた。お湯もツマミを廻すと直ぐに出るし、排せつ物もコックを押すと流れ去る。これがアタリマエの文化的な暮らし、しかしそれは、そんなに嬉しいことでもなかったが。
 
 それから35年程経って、安曇野住民となり、また石油との生活が始まった。
 
安曇野の暖房は薪ストーブ!、という“オッシャレ~”なテがあるそうだが、それは中々メンテも大変とかで、薪代もそこそこ高コつくらしく、何と言っても、朝、薪の火を消して山スキーに出かけ、夕方帰って来てまた薪に火を点ける、という使い方は出来ない(?)とか。
薪ストーブはとにかく、チョロチョロ燃やし続ける、というモノらしい。
またエアコン暖房は、ガスより省エネで快適なことも判っているが、夏はつい冷房に使ってしまいそうで、なんで信州でエアコンやねン、というフザケた拘りが捨てきれず、結局安曇野の暖房は石油にした。
“オッシャレ~”と言う意味では、石油ストーブだって、イギリスブランドの人気製品があるし、点けた時と消した時の、あの石油臭さが35年経ってナニか懐かしく、これは冬のゼイタクな雰囲気ではないか、とも思った。
 
昨年2月、ここでの寝泊まりが始まることになり、まず最初にポリタンクと石油とポンプをゲットし、35年振りに石油ストーブに点火。
石油ポンプの形状は昔と変わらなかったが、ショコショコしていた部分には電池が入り、先端の電動ポンプで石油を吸出し、ストーブのタンクが満たされると、センサーで自動停止されるようになっていた。
樹脂パイプの材質なども進化したのか、キレも良くなり、タレた石油で手を汚すことも無くなった。
神戸・布引谷の時代から35年経ち、“石油生活”は快適になった。
 
12/17、そのポンプがおかしくなった。給油していて、吐出側ホースの付け根辺りから漏れている。
最初、目の錯覚かと思ったが、ポリタンクのトレーの底に漏れた石油が溜まっていた。
そして単三2本が入っているケースがパチッと嵌っていなかった。
しかしモーターはフツーに動くし、センサーでチャンと停まる。
ストーブのタンクを満たした後、ポンプを明るい屋外に持ち出し観察。しかしホースの付け根部には緩みは無し、カシメられている、というか緩まない。
次に電池のケース、確かに1か所外れている。その辺りをフンッと指で押してみるが、嵌らない。何かがズレて収まらないのか。ケースを開けて見ると、基板と電池と接触するバネ板がバラバラに出て来た。これをうまく収めれば、パチッと嵌るハズ。しかしそれが収まらない。
何度かやっていてフト気が付くと、基板に半田付けされているリード線を切ってしまっていた。
要は、おかしくなったポンプを直そうとして、逆に壊してしまった訳だ。
モーターで動いてセンサーで停まるわけだから、一応電化製品(?)。しかし価格は千円程、という事は消費財(?)。「直してぇ~」と購入元に持って行っても、まず相手にされない。廃棄し、買い替え、それしかない。
 
12/19、今度は電気ケトルが使えなくなった。セットしてスイッチを入れてもパイロットランプが点かず、湯も沸かない。
このケトルは8年前壊れて、基板配線不良(と言うか、配線設計の不備?)で無償交換されたもの。今度はなんの不備なのか。
いずれにせよ、今回は有償修理しかないハズ。メーカーのサイトを見ると、品番も変わっている。そもそも修理できるのか。
メーカーに問い合わせると、修理は可能、費用は最大8千円程、納期は3週間との事。
ところがその後、炊飯器を使おうとしたら、それもランプが点かない。炊飯器とケトルは同じ延長コードに繋がっていて、辿って行くとプラグがコンセントから外れかけていた。
何というマヌケな顛末。壊れたと信じ込んで騒いだモウロクオヤジが安曇野にいる、ホント恥ずかしい。
 
12/20、色々買い出し後、国道を走っていて、タヌキを轢きかけた。
横断しようとする歩行者を見つけたら一旦停止、これを行うドライバーがダントツに多いのが長野県とか。
確かにワタクシも、先を譲られたことが何度もあり、信州人はエエ人ばかり。「オンドレ、なにしとンじゃ」、口汚く罵り、歩行者の前を暴走する関西人とは大違い。
信州人となり、自分もそうあるべく、人にも車にも、とにかく先を譲ることにしている。まぁ教習所で最初に教えられる、アタリマエの事だけど。
とは言え、安曇野では歩行者は少なく、前後に車も少なく、しかも道は真っ直ぐ。
当然の如く、このモウロクオヤジはイリーガルな速度まで加速してしまう。これは、20万キロ以上走った、水平対向6気筒のAWDが、まだ健全であることを確認する意味もある。
その日も信号が青になり、周りに他の車がいないことを確認し猛加速、イリーガルな速度になった時、民家の陰からトコトコと出てくる小犬あり、チワワ?ポメラニアン?、イヤ、タヌキ!、刹那パニックブレーキ、ABSがガガガッと働き、タヌキは車の陰に消えた。幸い衝撃はなく、再度タヌキは姿を現し、寄る辺なさげに、向いの民家の庭へ歩いて行った。ヤツは驚きもせず、慌てもせず、トコトコと現れ、トコトコと去って行った。
ヨカッタぁ。この長野で、タヌキであっても、横断しようとする者を轢くわけにはいかない。ホッとした。
しかしあのタヌキ、毛並み汚く、左後ろ足の付け根辺りが筋状に赤く、最初は赤いリボンでも付けてられているのか、と思ったほど。明らかにケガをしてヨボヨボ。死にかけている、と言えばヤツに失礼か、しかし壊れかけていたのは確か。
 
とは言え、ヤツは野生動物、壊れかけていてもニンゲンが治すわけにはいかない。というか、自然と治る。「野生動物は強いずら」、杣人・Mさんはいつもそう言っている。
 
 
 
 
 

 


12月も切り株を叩き潰し燃やす

2018-12-18 00:35:40 | 信州安曇野での出来事

 12月になって、周りはスッカリ冬枯れとなった。

 12/10、稜線にはそこそこの積雪。

 周りが枯れてしまって、残りの3個の株が目立つ。Mさんの言うように、確かに見っともない。やはりさっさと片付けましょう。

 取りあえず、こいつからやることにする。松なのでそこそこ朽ちている。しかしデカイ。前回のクヌギの倍はある。

 太目の枝根を叩き切り、本体の分割を始める。

 2時間半で切り外した分、この日はここまで。

 12/11、見た目、前日と変化なし。

 とにかくこれを分割する。

 1時間叩き続けて分割。

 小さい方を引き出す。松はクヌギより軽く、フツーに運べる。

 軽いと言っても、大きい方はフツーには運べない。アチコチ叩き剥いで、転がせる重さにする。

 転がし出して、この日は終了。あとは潰して燃やすのみ。

 夜、雪になった。

 しかし深夜に雨になり、12/12起きるとかなり融けていた。

 大きい方から潰し始める。

 2時間で2/3程になって、この日はオシマイ。

 12/13、このデカイ方の斧は薪割用で、刃が1.5キロ。重いが繊維に沿って潰す際の威力はスゴイ。ボルトが折れてしばらく使えなかったが、この日から復活。

 2時間半でかなり小さくなった。

 12/14、潰した松を燃やしながら潰すことにする。

 繊維に沿ってそこそこ大きく、縦割き出来るようになってきた。しかし薪割の様にカパッとはいかない。

 それも放り込むと、豪快に燃え始める。

Mさんの奥さんが愛犬“フクチャン”を連れてやって来て、「寒いですね」と火に当たった。

奥さんは、近所の“井戸端会議”ネタを話し始める。
あの空き家と倉庫が2千ン百万で売れたとか、そこの空き地はある会社が買い取って、保養所と美術館を建てるとか。
西隣の一人住まいの女性が枯葉を燃やしていて、それが南隣の敷地に燃え移りモンクを言われ、こないだMさんが燃やして煙くなったら、それを南隣のシワザと勘違いして、逆モンクを言いそうになったとか。
近所の薪ストーブが煙いとかのモンクはそこそこ多いらしい。
昔、松本駅近くにあったスパゲッティの店が近くに出来て、奥さんも学生の頃よく通ったそうで、「ボクも山から下りてきて、何度も寄りましたよ」と返すと、当時の店主はもう引退して、安曇野に出来た店はそのお弟子さんがやっているとか。メニュウは全く同じらしい。
当時の店はとにかく量が多く、安く、学生には大人気で、最近の何かイベントで、主催者(当時のお客さん?)が店主を探し出し、呼んだらしい。松本界隈ではそこそこ有名人だったそうだ。

そんな話を聞いていたら、Mさんが山から帰って来て、奥さんは愛犬“フクチャン”の散歩のことを思い出し、暮れかけた森に消えて行った。

「ホウ、よく燃えてルねぇ」、軽トラからMさんも降りてきて火に当たった。
この日は倒した木の搬出作業を一人でやっていて、気が付くと十数匹のサルに囲まれていたとか。「サルもボスになるとデカイし、怖いよゥ」
この近くにもそんなデカイのがいる。立ち上がり腕を伸ばすと大人の背丈ぐらい、そして出くわしても道を譲らない。Mさんと奥さんは、しばらくニラメッコしていたとか。

 深夜まで、松株は9時間以上も燃えていた。

 12/15、残りを潰す。

 最後は薪を割るように気持ちよくカパッと割れた。

 12/16、雪を被った稜線はイイ感じになって来た。

 これを燃やして松株の処理はオワリ。

 「へえ、最後はキレイに割れたズラ」、Mさんがチョコっと覗きに来て、直ぐ山の仕事に出かけた。

 この日も9時間以上燃えていた。

 12/17、深夜(未明?)雨でも降ったのか、小さなブロックが残っていた。

 残りは2個、ますます目立ってみっともない。


森で聞こえる音、真夜中に騒ぐ不良ネコたち

2018-12-07 13:28:56 | 信州安曇野での出来事

ワタクシが28歳まで棲息していた神戸・布引谷は、六甲山中にあって、家へ帰るとなると、ハイキングコースを30分以上歩くことになるのだが、新神戸駅から10分も登れば、周りにもう民家はなく、通称“展望台”に着く。学生の頃は午後、社会人になると夜、毎日そこで休憩した。

そこは標高約100m、ハイカー以外の会話は聞こえず、交通音もほとんどなかったが、いつも足元からグォオオ~ッと、街の唸り音が聞こえた。
穏やかな午後も、100万ドルの夜景が広がる夜も、それは聞こえた。三ノ宮で夜通し呑んだ、朝帰りの大晦日の早朝も、それは聞こえた。

その後所帯を持って、移り住んだ垂水の“低所得者救済”マンションでも、海沿いのエリアから同じ唸り音は聞こえた。
マンションの標高も、“展望台”と同程度だったから、グォオオ~ッ音は足元から聞こえ、時にそれは不気味だった。

時代は高度成長期、バブル、失われた20年と変わっていったが、季節、昼夜を問わず街はグォオオ~ッと唸っていた。

それはニンゲンの産業音、より早く、大きく、強くなるために、開発し、開拓し、改善していたニンゲンの唸り音。ワタクシもその発生源だった。

 安曇野の森では、そんな足元からの唸り音は聞こえない。

 しかし時々グォオオ~ッと唸っている。それは北方向の少し上方。足元からではない。

北方向には中房川が流れている。するとそれは燕岳の稜線から中房川に沿って吹き降りてきた、風の音か。
厳しい、寂しい音だが、神戸で聞いた不気味さはない。

 昨年の5月から安曇野での本格的な生活が始まったが、小屋裏で寝ていると、時々コン、ゴンと音がする。その音は中々大きくて、それで目が覚める時もある。
これは超常現象?、何か魔物でも棲んでいるのか。
音が出た翌日、寝る前に目を凝らして外を観察するが、長い髪の白い服を着た女はいない。

小屋の柱と梁は集成材、内外面はカラマツとシナノ合板、床はスギ、内外材の間に断熱材、要するにほとんど木ィなので、それらの膨張・収縮によるズレが発生するモノなのか。

秋になると周りのクヌギの実が落ちてくる。それはヒュ~ンと飛んで、屋根にコ~ンと当たる。頭に当ることもあって、中々痛いらしい。
よく見ると、実以外に小枝も落ちている。つまりあの音はこれらが落ちて当たったものなのか。
「ウン、ウチもしょっちゅう、音してルよ」、Мさんは何事もない様に言っていた。
音源は、魔物でも、長い髪の白い服を着た女でもなかった様だ。少し寂しい気もする。 

 小屋の周りをウロウロしていると、カサカサ音がした。見ると茶トラの野ネコだった。お腹が大きかった。

この茶トラは夏、小屋の東側の日陰で何度か涼んでいた。ゴミを捨てて帰ってくると、浄化槽の端で悠々と朝日を浴びていたこともあった。
庭で落ちた小枝を燃やそうと集めていたら、コイツが飛んで来て、クヌギの幹を駆け上がった。追いかけて来たのは、フサフサのクロブチだった。ワタクシの側に駆けてきたことに気付き、急いで駆け去った。
ゴミの燃えカスの周りをウロウロしていた白トラは、室内から眺めているワタクシと目が合って、しばらく睨んでいたが、フンッと言った感じで、歩き去った。
隣の別荘周りを縄張りにしているクロがいる。いつもカサカサ徘徊している。

Mさんの奥さんのハナシでは、野ネコのコミュニティらしきモノがあるらしく、コイツ等はあまり人を恐れず、中には触られるカワイイのもいるらしい。

11月中頃の深夜、カサカサ、ゴソゴソ、庭でナニかが騒いでいる。
前に見たサルなのか、ライトを当てると、クロの野ネコが切り株の裏に走り去って、その右隣りにはトラではないクロ茶、左隣に別のクロ、ジッとこちらを睨んでいる。
野ネコの“恋”の季節?、「オマエらもうエエカゲンにして寝ぇよ、何時やとおもてンねン」と言ったら無視された。夜遅くまでダラダラ呑んでいるジジイに、言われたくないッてかァ。

その週の夕方、切り株を叩き潰していて、その日はオシマイにしようと片付けていたら、カサカサとこちらに近づく足音。
ン?誰?、ソイツは近付てい来る。ワタクシに恐れず近付く野ネコはまずいない。眼が見えないのか。
「キミ、どこへ行きたいの?」、ワタクシ、優しく尋ねると気が付いたのか、東側の茂みへ歩いて行った。
ソイツは両耳と頭だけが黒いクロ茶で、まるで黒い帽子を被っているような感じ、ガリガリに痩せていた。そして左後脚がなく、ビッコをひいていた。茂みに入ってからは常緑の灌木の側で、無心にゴソゴソしている。何か喰うものでもあるのだろうか。近付いて「キミ、何しとン?」、と訊いたら、無視された。

不良ネコたちが出す、森の音、まぁ賑やかでええズラ。