ウィトラの眼

無線業界のニュースについての意見・感想を書きます

日本の情報通信の将来 xICTビジョン

2008-08-27 06:23:05 | Weblog
7月3日、総務省が主催するICT懇談会が「xICTビジョン」なるものを発表した。これは日本がICTで国際競争力を高めるためにどうすべきかを約半年間かけて議論した者の集大成である。 しかし、一読したところ「分かってないな」という印象である。
まず報告書の内容を簡単に説明しよう、

問題の発端は世界の一人当たりのGDPとその国のICT競争力には強い相関があり、近年日本のICT競争力が下がってきて、国際競争力も下がってきている、という問題提起である。これは正しい認識だと思う。

これに対して報告書ではICTの重要性をいろいろな角度から説明し、国家としてのICTの育成戦略が重要と述べている。 ところが結論でどうすべきかというと、そこらにあるアイデアの寄せ集めという感じになってしまう。基本的には以下の4点を挙げている。
①ICT産業の国際競争力強化
②ICTのつながり力による産業変革
③新たなデジタル市場の創出
④官民をあげたデジタル適応力の向上
となっている。一見もっともらしいが中身をみると
①は標準化や、特許で世界に勝つこと。そのために必要なのは知財、標準化センターの設立。人材育成のためのナショナルセンターの設立、となっている。実質的効果があるとは思えず、むしろ余計なオーバーヘッドを作るように思う。
②はICTの産業展開である。うまくやれば大きな効果があるが、おおるジャパンの大型プロジェクト、自動車などの強い産業との連携などを押しており、下手をするとICTに強い産業が足元をすくわれる危険性もある。
③は地デジ、地域WiMAX推進などとなっており、一部業者の利権強化を盛り込んだように思える。
④は電子政府関連である。私は電子政府はあまりうまくいっていないと思っているが、これを推進することになっている。

なぜ、問題提起は良いが、結論は腰砕けになってしまうのだろうか?ひとつには、議論した委員のほとんどがICTの評論家であり、実際にICT産業のど真ん中にはいない人たちである、ということが言えるだろう。従って、問題提起はできるが、解決策を練る段階になると「なぜうまくいっていないのか」の分析ができないので腰砕けになるのだろう。もう一つは政府(この場合は総務省)のすでに計画立案した活動との整合という暗黙の圧力があると思う。

問題を本質から見直し、その原因を正すことができるのか、深いところから議論すべきだと思う。

私の意見はすでに何度にもわたってブログに書いたが、ソフトウェアの弱さが日本の本質なので10年程度では回復できない、という認識から出発する。従って、当面は先進ICTユーザー(海外の技術を利用する)を目指し、教育システムから見直して、日本の英語力を高め20年以上後の時代に託すことが日本のあるべき戦略だと思っている。