ウィトラの眼

無線業界のニュースについての意見・感想を書きます

携帯電話の加入者数 AUがさえない

2008-08-09 08:02:49 | Weblog
携帯電話の加入者数増加で、ここ数カ月AUがさえない。

加入者数増加は2004年から2006年くらいまではAUがトップ、ドコモが続いてボダホンがさえないという状態が続いていたのだが、ソフトバンクがボダホンを買収して家族間無料のホワイトプランなどを初めて2007年からはソフトバンクがトップ、AUが2位でドコモはずっと下、という状態が続いていた。しかし、今年の4月あたりからドコモとAUが入れ替わっている。

ソフトバンクは料金が安いので価値観が異なるがドコモとAUは似たような料金である。それでここへきて新規加入者が逆転したのは以下のような理由ではないかと考えている。

そもそもAUがトップに立ったのは3Gのサービスを開始するにあたってドコモは2GHz帯という高い周波数を使ったのに対してAUは800MHz帯という低い周波数を使ったことにある。周波数が高いと電波が遮蔽物の影響を受けやすく、建物の中などに電波が届きにくい。それがドコモの3Gはかかりにくいという評判になった。

それでここ数年ドコモは必死になって基地局数を増やしてきた。設備投資の額をみると
2006年 ドコモ:9300億円、AU:3300億円
2007年 ドコモ:7500億円、AU:3900億円
という状態である。
2007年にドコモが設備投資を減らしたのは、追いついてきた、という感触を持ったからではないだろうか。ドコモは2008年は更に設備投資を減らす発表をしている。

電波が届きにくいので基地局をたくさん打つ、というのはコストはかかるが出来上がってしまうと、システム容量が大きいという長所になる。逆にAUは加入者が増えて混雑している、という感じになってきたのではないだろうか。

そうだとすると、今度はAUが設備投資を増やして基地局数を増やさないといけない順番である。しかし、これは時間のかかる話で簡単には効果が出ない。KDDIが出資しているWiMAXのオペレータであるUQコミュニケーションと連携するなどして工夫しないとしばらく低迷が続くような気がする

日本の情報通信産業の行方(3) ソフトウェア事業

2008-08-09 07:02:18 | Weblog
昨日、日本のソフトウェア事業は落ち目であると書いた。

実際にソフトウェア事業に携わっている人で同意する人は少ないのではないかと思う。「仕事はどんどん増えていて、むしろこなすのが大変な状況である。開発費を絞られているので利益を出すのは大変であるが市場が大きくなっているので、工夫次第でいくらでもやりようがある」というのが普通のソフトウェア事業に関わる人の感触ではないかと思う。

確かに、国内のソフトウェア開発需要は増えている。しかし、海外に流れる開発も増えている。需要の伸びが海外への流出量を上回っているので、仕事が増えているのである。逆に海外向けのソフトを国内で開発している例はほとんどないはずである。

私は、このソフト開発の海外流出は今後どんどん増えてきて、近い将来、国内の需要の伸びを上回ると思っている。2012年あたりで、国内ソフト開発市場の頭打ち感が出てきて、2020年ころにはソフト開発しかしてこなかった40代の人の仕事が減少し社会問題化するのではないかと思っている。

ソフトウェアを製品としてみると、かかるコストのほとんどは開発費と販売費で製造コストはほぼゼロである。つまり一度開発したソフトをたくさん売ることが利器を出すかなめであり、これを最もうまくやっているのがマイクロソフトである。

顧客の特別な要求に合わせるカスタマイズが仕事としており、これはソフト事業というよりサービス事業に近い。利益を出すためにはこのカスタマイズのコストをできるだけ下げて、ちょっと変えればカスタマイズできるような高機能のプラットフォームを作ることが重要である。

日本の企業はこのプラットフォームでは勝てずに、カスタマイズに逃げ込むしかない。そして徐々に追い込まれて逃げ場を失い、儲からない分野での過当競争になると思われるのである。