ウィトラの眼

無線業界のニュースについての意見・感想を書きます

日本の情報通信産業の行方(6) コンテンツ作成事業

2008-08-12 08:36:00 | Weblog
今回から、それぞれの事業の特性について、「日本の国際競争力」という観点で考えてみる。


コンテンツ作成事業は世界的に見て日本が競争力を持ちえる分野だと思う。

コンテンツ作成事業は、本質的に文化や習慣と深く関連している。コンテンツの良しあしを決める感動や、笑いといった感性に訴える分野は生活習慣の影響を強く受けるので本質的にグローバル化が難しい分野である。この分野においては日本はかなり世界的に見てもレベルは高いと思う。
日本人の感性は「ベン・ハー」のような壮大な規模のコンテンツ作成では「落ち」をうまく作れなくて尻切れトンボになりがちであるが、「古池やかはず飛び込む水の音」的な日常のさりげない物事に関して、細かく観察して自然を感じたり美しさを感じたりする感性は非常に高いものがあり、いずれ世界にも認められえいくだろうと感じている。しかし、時間がかかるので当面は「この分野はグローバル化は難しい」と割り切って考えておいてよいように思う。

なお、日本の漫画はコンテンツとして大変優れており、世界に輸出されている。これは日本人が言葉で表現するよりも視覚的な絵で表現することを得意としており、社会的にも受け入れられやすい、という点があると思う。手塚治をはじめとする「ときわ荘」のメンバーが核となって現在の状況が作られてきたと思うが、積極的に世界に輸出することを考えても良い分野だと思う。アニメータを志す若者たちは買いたたかれてワーキングプアのような状態だと聞くが、ビジネスセンスのある人が現れてスタジオジブリのような会社をいくつかつくれば大きな産業になる可能性があると思う。

コンテンツの中でもゲームに見られるようなユーザ側の積極的関与がある分野は「使いやすさ」という別の側面が大変重要になる。この分野も日本人は得意な分野だと思う。この分野に日本人が特別高い能力を発揮するかどうかは不明であるが、漫画にしても、ゲームにしても欧米では「一生の仕事」とみなされておらず軽んじられている感があるので、今はチャンスといえるだろう。
一方「ソフトウェア」という日本人が苦手な分野も重要な要素として入っており、複雑さを差別化要因にしないように注意が必要である。その意味ではSP3が負けてWiiが勝ったのは当然の帰結といえる。
ニンテンドーはコンテンツからハードウェアまでの垂直統合ビジネスモデルを行っており、独特の世界を築いているが、プラットフォームを開放してコンテンツ業界も育成しており、このゲームコンテンツ業界も日本が世界と戦える分野であると思う。ただし、ゲームの宿命である「飽きられる」という問題を、「複雑にしすぎない」という条件付きでどう乗り越えていくか、という難しい問題を常に抱えてはいるが・・・

もうひとつの重要なコンテンツとしてニュースに代表されるジャーナリズムがある。これは「コンテンツ配信」事業と強く結び付いているのでコンテンツ配信の方で述べたいと思う。