・・・新聞にエントロピー増大の法則についてのエッセイが書かれていた。
私は大学で熱力学と云う講義を受けた、とても退屈な講義でした。
機械工学は現実的な学問ですが、熱力学と云うのは、その中で最も抽象的な講義で私にとって、理解しがたい学問であった。 その中で、エントロピーと云う言葉は特に、その言葉の意味を理解するのが難しかった。
そんな経験を頭に描いて、学者のエントロピーのエッセイを読み始めた、しかし、その話は、私の想像とは違って、エントロピーを「乱雑」と書いて振り仮名をエントロピーとしていた。こんな説明は私の半世紀前の大学の熱力学の講義では聞いたこともなかった。
つまりこの新聞のエッセイでは、大宇宙のエントロピーの法則に従って、万物は壮大なピラミッドのような大建築物も年月とともに砂粒になっていくこと、整理した机の上も、たちまち散らかっていくこと、入れたてのコーヒーも、タチマチぬるくなっていく、熱烈な恋愛も時の経過とともに、その関係は冷める。これがエントロピー増大の法則であると書いていた。
我々が学生時代、熱力学で習った、難解な言葉と公式も何だったんだろうと思った。
学問はこの世の中の現象を整理し、系統的に組み立てた体系であると考えるなら、熱力学で習ったエントロピー不滅の法則の公式も、先ほど例に上がっていた「机上の整理が乱雑になっていくこと」などの私達の身近な現象を系統的に、整理した結果、導き出される原理と同じ結果なのだろう。