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あんにょんはせよ

ロンドンで出会ったオトメン韓国人旦那と2014年12月生まれの娘と
ソウル西部でのんびり暮らしています。

小さな幸せを大切に、というのが家族のモットー。


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HOPE 読まれていない本と読まれていない人生(호프:잃히지 않응 책과 읽히지 않은 인생)

2020-12-23 | ミュージカル・演劇・コンサート

ずいぶん前に書いた記事ですがアップするのをすっかり忘れてました^^;

待ちに待ったHOPE再演を観に行きました。

初演ですごいミュージカルを観たと感動しリピートしたい気持ちを必死でおさえ(理由はいろいろ 笑)
再演まで心待ちにしていました。

改めて、再演を観て感じたこと。

本当にこの作品は脚本がすごい。
110分間インターミッション挟まず集中力が削がれない巧みなストーリー展開です。

ミュージカルが始まった瞬間から終わるまで会場にいる観客みんなが主人公ホープの人生を固唾をのみながら見守ります。
ホープの人生の痛みに共に苦しみ、途方にくれ涙を流します。

舞台関係者と観客がその日の公演を一緒に作り上げるような芸術作品です。

初演で身体中の細胞が覚醒しすごい作品を観た、と震えました。

韓国創作ミュージカルではシーズンのたびに演出を改良していくパターンが多いようですが
私が観た限り初演そのまんまという印象でした。



はげしい血ケッティングを戦い抜き初演キャストで
今年の韓国ミュージカルアワーズで受賞をした
ホープ役キムソニョンさんと
K役チョヒョンギュンさん(ヒョンギュンさんはシラノで主演男優賞を受賞)の
受賞ペアを観に行きました♡

たしかヒョンギュンさんは制作から関わっていらしたはずで
作品への理解、解釈もより制作者側の方だろうなという期待もあり
このお二人の回を予約しました(ほんっとに大変だった...)

まず、原稿の擬人化K役ヒョンギュンさんから

初演で拝見したK役ジフさんは劇中で唯一、存在感がないという独特の存在感(この凄さ)が印象的でした。

ヒョンギュンさんは愛のあるKでした

ホープにとっての母で、友人で、恋人で愛情そのものでした。

ホープがなぜ手離さなかったのか
手離したくない理由がヒョンギュンさんの台詞回しや視線の配りかた、仕草全てから感じられ
ホープと同じようにぎゅうっと抱きしめて「自分のものだ!」と主張したくなるような原稿Kでした。

登場した瞬間から、世界に属さず孤独に存在する原稿感をみせてくれます
ホープをはじめ様々な人々を魅了し、人生を狂わせる「輝き」を静かにみせてくれます
うわぁ~...と感嘆でした。

ホープが人生を振り返る過程で傷ついたり、怯えるたびかけよってぎゅうと抱きしめたり
耳を塞ぎ怖い音を聞かせないよう守ろうとするんです
お母さんのように。

Kのこの動きはホープが生涯お母さんの愛情がある家を求めていたからだと思います。

ヒョンギュンさんは母でした。

そしてソニョンさんのホープは
ジヨンさんよりもっと縺れて世界をすてた老婆感があり一方でまだ少女のような無垢さもありました。
ソニョンさん特有のべらんめえ口調がホープ役ぴったりです。

分かっていたのに不運が重なってしまい
やさぐれボロボロでトラウマすら剥き出しだった印象のジヨンさんと違い
ソニョンさんはもっと純粋で悲しい運命に抗う術も知らない子供のままという印象
トラウマの傷を自力で治そうとしたけどやり方がわからず諦めて立ち尽くしている幼い子供のようでした。

過去の自分に「行っちゃダメ」という表情ひとつも子供のようで
あんなに痛そうな表情をされたらKのようにぎゅうっと抱きしめて安心させてあげたくなります

必死で生きてきたホープ

ただただお母さんに愛されたくて、おうちに帰りたかっただけ
自分の居場所、存在価値を見いだしたかっただけ

原稿さえなければ
原稿さえあれば

この対極の感情がホープの人生を乱してきました
ソニョンさんはこのふたつの感情を常に同じバランスで見せてきてくれて
その感情はいつの間にか観劇している私も共有していて
原稿を手離したくない気持ちが痛いほどわかるんです。

これ程キャラクターに感情移入をさせられてしまうとツラいんです...(笑)
でもソニョンさんが上手いから引っ張られてしまうんです。

クライマックスは自分がホープの感情で泣いているのか
Kの感情で泣いているのか全くわからなくなります。

どちらの感情も110分間のあいだに自分の感情にもなってしまうからです。

絶望だらけの人生だったホープ
でも、ホープは78才で希望をもち人生をやり直します

初演で拝見したジヨンさんは私が観た日が事実上の千秋楽で
最後の「わたしはエヴァ・ホープ!」をガッツポーズで言われていたのが非常に印象深く
その瞬間、凄まじい癒しと頑張ろうという勇気をもらったのが忘れられませんでした。

今回のソニョンさんは「わたしはエヴァ・ホープ!」といいKにむかっておどけた表情をし
いたずらっこっぽい笑顔がはじけたのがまた強烈でした。

またこんな素敵な希望もあったのかと。

何歳でもやり直しはできる
あなたは輝いている

全幕ほとんど鬱を極めた陰気なミュージカルなんですが
そんな絶望から希望に変わるクライマックスの演出は見事です。

ミュージカル序盤、ホープは舞台上の一番高い場所から「미친녀(キ◯ガイ婆さん)」として
舞台の一番下に降りていきます。

そしてクライマックスはまた舞台の一番高い場所にあがっていきます。

過度な演出も衣装もなくシンプルな舞台セットだけで
たくさんのストーリー性を含ませて魅せてくれる素晴らしい作品です。



スクリプトも買いました^^
時間できたらゆっくり読んでこの巧みな脚本の奥深さを堪能したいです。

また観に行きます。

...が、ただいま休演中。
どうか無事に再開できますように...!

今年の韓国ミュージカルアワード(賞総なめ)の祝賀パフォーマンスです。



判決(真実)のひとつひとつは現実で酷だけど
Kがホープに伝えるひとつひとつは温かくて優しい。
祝賀パフォーマンスだけでも泣けます!

ふたつの意味をもつ「アンニョン」がまたいい...。










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