once in a blue moon

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HOPE 読まれていない本と読まれていない人生(호프)

2019-04-23 | ミュージカル・演劇・コンサート
 
実際にあったカフカの遺作返還訴訟をモチーフにした韓国創作ミュージカルを観に行きました。
 
 
 
今年1月に2週間のみ短期公演したあと劇場をドゥサンアートセンターへうつし
3月末から5月末まで公演予定です。
 
わたしが観に行ったのは主演チャ・ジヨンさんの千秋楽でした。
たまたまHOPEのセールが出たので予約をしたら
10分後にジヨンさんの甲状腺がんが発表され来月から出演予定であったアンナ・カレーニナの降板を知りました。
HOPEもどうなるのかな、と思っていたら1週間だけ出演されたのち降板が発表されました。
 
こちらの作品は韓国芸術総合学校の卒業制作として2017年に生まれた作品だそうです。
脚本家カン・ナムさん、作曲家キム・ヒョウンさんの新人作品との事ですが凄い完成度です。
 
脚本家の方が作品の焦点にあてた部分はなぜ30年間も主人公エヴァ・ホープが原稿を手放さなかったのか
彼女と原稿をめぐる70年の物語をジリジリと丁寧に描いているのです。
過度な台詞どころか明確な表現すらなく曖昧な部分に様々な含みがあり
観ている側が好きに解釈できる、独特の物語の運びかたでした。
 
凄い作品が生まれました。
絶対に観なきゃならない凄い作品だと思います。
 
確かにまだ作品完成度としては粗削りの部分もあり手放しに完璧な作品と褒めちぎることは出来ませんが
とてつもなく良質で秀作が生まれたな、と感じる作品自体にパワーのあるミュージカルに出会いました。
 
 
 韓国創作ミュージカル初演作品なので簡単にあらすじを訳します。
 
現代文学の巨匠ヨゼフの未発表原稿をめぐるイスラエル図書館とホープの訴訟
 
ベストセラー作家だったベルトは何にも属されない絶望の奥底を書くヨゼフの才能に憧れる。ベルトは原稿を焼くように言い残し死亡したヨゼフの才能を守るためにヨゼフの原稿を大切に保管する。ある日第二次世界大戦が勃発しドイツがチェコを占領、ベルトは愛人マリーに再び会える日を約束し原稿を託し去る。マリーは避難の真っただ中でもベルトとの約束を守る為に原稿に執着し生きるようになり、マリーの娘ホープは原稿だけを見つめる母の横で銃声が飛び交う現実から抜け出そうと努める。新しい人生を探し出すホープが出会った一筋の光のような存在カデル。長く彷徨ったのち中年となったホープの前に再び残された原稿
 
ホープにとって原稿とは一体なんであったのか
 
非常に題材が興味深くさらに作品も良くできていました。
このお話は実話がベースで主人公エヴァ・ホープは実在の人物で名前はEva Hoffeさん去年亡くなった方だそうです。
興味ある方はこちらに記事もあります。
 
 
そのホープを演じたのがチャ・ジヨンさん。
マディソン郡の橋で主人公フランチェスカを演じられその熱演に魅せられすっかりファンになりました。
 
このホープ役はほぼ舞台に出ずっぱり。
過去のシーンでもじっと眺めているのですがその存在感たるや。
ライトすら当たってないのにジヨンさんがホープが常に「いる」んです。
 
ハッとさせられ目が離せないオーラを放ってます。
 
ホープのタイトル曲HOPEは壮絶でした。
 
 
原稿を擬人化したK役はチャン・ジフさん。
 
これまた舞台に出ずっぱりな上に不運なことに一度も読まれたことのない原稿という
非常に難しい役と難しいナンバーを演じ歌いこなす凄い方でした。
 
こちらの作品、演出家の方が「あえて演出は華やかにせず役者さんの力量にかけた」と仰っていたとおり
全キャストさんの表現力が全てでK役以外の方々は本当に強烈でまさに舞台の上で「生きている人たち」なんですが
ジフさんだけは何だか存在してないような薄く曖昧な雰囲気で「人じゃない」感があり
それにはほんと〜〜にびっくりしました。
 
ジフさん、何を演じてたのか
「紙」だったんですよね……
 
脚本家の方がホープを見守る存在として原稿のKをうみだし擬人化する段階で「若い男性」までは考えたけど
まさかイケメンが演じるとは…なんて仰ってましたが
ベルトはじめ、マリー、ホープが魅せられたり執着するのにイケメン俳優さん起用は十分な説得力だったかと思います。
K役お3方まったくタイプじゃありませんが(笑)
そこは残念←
 
 
ホープの母、マリー役にはユ・リアさん。
 
リアさんもマディソン郡の橋以来でしたが大好きな女優さんです。
リアさんは涙の粒すら計算されているかのような絶妙な泣き方なんです。
 
「家に帰る道さえ忘れなきゃいいのよ」
 
の台詞のうまさ。
各キャラクターに見せ場的な重要な台詞がありマリーはこの台詞だと思うのですが
声のトーン、話すスピードが完璧で涙腺を直撃させられました。
本当に凄かった…。
 
ホープの過去役には、ジヨンさんの実の妹チャ・エリヤさん。
 
がっしりした骨格や視線の送り方はやはりジヨンさんに似ていて
何より声がジヨンさんよりややハスキーだけどそっくり。
二人が交互に歌うシーンはどちらが歌っているのか分からなくなりました。
 
ベルト役はソン・ヨンジンさん。
 
原稿に魅せられホープ親子の人生を狂わす張本人のベルト役と裁判官役ですが
なんでしょう。
全く別人を演じているかと思うとグワッと近づくように見えたりして引き込まれました。
 
声が個性的でこれから「ゴッホとひまわり少年」に「ロッキーホラーショー」と出演作が続くので
いずれかでまた観たいなぁと思っています。
 
 
以下、ネタバレを書きます。
未見の方ご注意ください。
 
 
 
 
ホープが原稿をプレゼントと主張し執着した理由は
母マリーがホープの8歳の誕生日にベルトから預かった原稿に生涯取り憑かれたから。
それまで母から愛された居場所がこの日を境に原稿に奪われ、母マリーの愛のある場所が原稿であったから
愛されたかったホープが78歳まで母の愛だった原稿から離れられなかった、というトラウマが原因です。
 
そして原稿Kは生み出された時から「お前のせい」と言われ誰にも読んでもらえない悲しみを抱えつつ
誰よりホープの幸せを願い見守り続けます。
まるで母のように。
 
ホープと原稿が向かい合うクライマックスは会場全体が鼻水を拭うくらい泣きます。
 
原稿Kが「おつかれさん」という台詞は観客がすくわれたような気持ちになり会場中がフッと肩の力が抜けたような感覚になります。
またホープの最後の笑顔で人生をやり直せる希望HOPEを感じることが出来ました。
 
壮絶なミュージカルです。
観ていて精魂尽き果ててしまうくらいです。
 
でも、泣いて泣いて泣いてそして癒されます。
身近にあるもの家族、友人を大切にしようと改めて思える作品です。
 
実際のEva Hoffeさんがどうして原稿を抱えていたのかは知る由もありません。
ただ、一つの事柄をもとに創作されたミュージカルとしては秀逸でした。
 
副題、読まれていない本と読まれていない人生
原稿Kとホープの物語でした。
 
ジヨンさん、素晴らしかったです。
どうか完治してまた舞台に戻ってきてもらいたいです。
アンナもやりたかったんでしょうね。
ギリギリまでキャスト発表されなかった理由を思うと切なくなります。
 
また観たい作品だし、たくさんの方に観て頂きたい作品です。
 
ハイライト
 
 
 
 
 
 
 
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