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探・新型コロナ:院内感染「甘かった」 解熱剤服用され把握困難に、専門外兼務で苦情増 職員3割待機、富山の病院

2020年06月30日 03時50分26秒 | ウイルス

探・新型コロナ:院内感染「甘かった」 解熱剤服用され把握困難に、専門外兼務で苦情増 職員3割待機、富山の病院

地域 2020年6月29日 (月)配信毎日新聞社
 

 「家に帰らず、車中泊をしている職員もおります」

 4月14日、富山市民病院の記者会見。涙ながらに語る姿が、テレビのニュースで繰り返し流された。新型コロナウイルスの院内感染で患者や医療従事者計39人が陽性となり、最大約3割の職員が自宅待機で不在に。会見で危機的状況を訴えた同市病院事業管理者で前院長の石田陽一医師(65)が6月中旬、毎日新聞のインタビューに応じた。「なんとか(待機期間が終わる)2週間頑張ろう」と励まし合ったことを明かし、「普段の考え方が甘かった。教訓にして、自治体病院として全力で第2波に備えたい」と話した。

 最初に感染者が判明したのは4月9日。その直前には石田医師に「肺炎の症状のある看護師がいる」との情報が入っていた。それまで疑い例のほとんどが陰性だったので希望的観測を持っていたが、結果は陽性。すぐに患者や同僚の感染を危惧したが、遅かった。11日には同じ西棟6階の整形外科病棟に勤める看護師3人と入院患者1人の感染が判明。その後も同病棟を中心に増え続けた。

 濃厚接触の疑いがあるとして、14日には正規職員約750人の29%にあたる約220人が自宅待機となった。一方、濃厚接触者の洗い出しや入院患者のケア、院内のゾーニングなど急務は山積。自宅待機には部長級の医師なども含まれたため、院内の指揮系統も機能しなくなった。さらに、整形外科特有の困難にも直面。患者のほとんどが解熱鎮痛剤を服用していたため、熱が38度以上出にくく、感染の全容把握を困難にした。

 石田医師は当時「2週間頑張ろう。できることを全力でやろう」と呼びかけたが、「職員の反応をうかがう余裕のないほど院内はぐちゃぐちゃになっていた」。特につらかったのは、納得のいく仕事ができなかったこと。残った職員は専門性が異なる仕事を兼務し、普段担当していない患者をみなければならなかった。病状や院内状況の説明が滞り、患者からのクレームも続発。自責の念が気力を奪った。「新型コロナが怖いとかではなく、してあげたいケアができないのが一番のストレスだった」と語る。

 そこに、風評被害が追い打ちをかけた。職員の子どもが保育所に通うのを断られたり、家族が勤務先から出勤を渋られたりした。家族に迷惑を掛けまいと、病院の駐車場の車中で寝泊まりする職員も出てきた。4月14日の会見で声を詰まらせたのは「これだけ職員は頑張っているんだ、だから責めたり足をひっぱったりしないでほしい、との思いからだった」。その姿が報じられると、病院には激励の手紙などが多く届くようになった。「励ましの声が何より支えになった」とかみしめる。

 院内感染の発生から約4週間後の5月3日を最後に新規感染は止まり、6月3日にはほぼ通常体制に戻った。感染の速さ、無症状者からの2次感染の脅威など第1波から学んだことは多い。8月にはプレハブの発熱外来を設置する予定で、新しく人工呼吸器5台の購入も決めた。「いけなかった点は全部改善しようと取り組んでいる。診療体制を整え、第2波、第3波の時に、市民病院として市民の役に立つようにすることが報いる道と考えている」と決意を語った。【松本光樹、青山郁子】

 ◇教訓の共有を 識者

 富山市民病院のような地域の核となる公立病院で院内感染が発生した場合、院内サービスの質の低下にとどまらず、地域医療の崩壊に直結する危険をはらむ。馬場園明・九州大大学院教授(医療政策学)は「新型コロナウイルスの性質なども分かってきており、各病院の対策で院内感染のリスクは下がっている」とし、各地の教訓を広く共有する必要性を説く。さらに院内感染や医療崩壊の防止には「国民一人一人が手洗いやマスク、接触を避けるなどの基本を徹底し、感染者数全体を少なくして医療機関を支えることが重要だ」と話し、住民側の協力が不可欠と提言する。【松本光樹】

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