ワシントンDCへ留学していたとき、何の知識もないまま、暇つぶしに近所のスミソニアン美術館群に通っていて、名画の数々を、無料でしょっちゅう堪能していました(カフェに入るとお金がかかるので、手っ取り早くクーラーのきいている場所は美術館だった……)。良いものに日々触れていれば、やっぱり好きになってくるもので、日本に戻った後、銀座の三越特設会場で行われていた、どこか外国の美術館展に足を運んでみたのです。そうしたら、入場料は学生にとっては大変お高かった上に、めちゃ混みでチビッコの私は殆ど絵を見られない。人疲れしただけで、グッタリと帰りの小田急線に乗り、「もうこりごりだ。」と、それ以来、美術から遠ざかってしまいました。
でも最近、上野に行く機会が増え、なんとなく美術館にも足が向くようになりました。
先日は、東京都美術館で開催中の「エル・グレコ展」へ行ってきました。前回のマウリッツハイス美術館展の混雑を教訓に、と開場と同時に入ったのですが、なんとガラガラ。壮大な宗教画の数々を、薄暗い会場で独り占め。あまりにも古い作品たちなので、私がよく美術品(や歴史巡り)に求める、そこから滲み出てくる息吹みたいなものはあまり感じなかったのですが、理屈は抜きに、「美しいなぁ。」と見惚れて歩きました。
音楽同様、絵画もほんのちょっと足を踏み出して手を伸ばせば、割と簡単に素晴らしいものに出会うことが出来る。そういったことをする様々な余裕が与えられている今に感謝しながら、少し貪欲に触れていきたいな、と思うようになりました。