働いた。日が暮れる寸前まで働いた。といってもそれでお金になるというのでもない。孫二人といっしょに畑の里芋を掘り上げた。その後、泥を払って、外の洗い場で一個一個丁寧に水洗いした。たくさんだったのでこれでお昼間でかかってしまった。お昼からは春咲きの花の球根をあちらこちらの花壇に植え付けた。夕食はシャブシャブ料理だというのでいろいろな畑の野菜を抜いてこれを食べられるように丁寧に水洗いした。ここで終わってもよかったのだが、捨ててしまうのにはいささか忍びないので、里芋の親芋を地中に埋める作業に取り掛かった。これが終わる頃にはもうすっかり日暮れになってしまった。しかし、まあ、よくも引き続いて外に出てこそこそかさこそ働いたもんだと我ながら感心した。働いたと言えるようなものではないかもしれない。老いの児戯をしていただけなのだから。
空港ロビーの出迎え口からお正月をこちらで過ごす親子連れが次々に溢れ出てくる。これを老いた爺さまと婆さまが出迎えている。そこへまだ足取りが危うい幼児が走り出て来る。抱き取ってもらった幼児からきゃっきゃっきゃの笑い声が洩れている。
昨日午後3時に空港に出迎えた。帰省客のラッシュだ。飛行機は満席だったらしい。遠くに3人の孫の姿を見つけた。見違えるように大きくなっている。栄養状態が満点のよう。その上に着ぶくれをしている。1才5ヶ月の末っ子はおいでをしてもあっちを向いて応じてくれない。
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ごめんごめん。さぶろうはふっと、この世をおさらばした自分がこうやってあの世の父や母から出迎えてもらっている映像を想起した。この世の空港を離陸してあの世の空港へ降り立ち、出迎えロビーへ出てみると、案の定「やあ、遅いぞ。ずっと待ってたぞ」父と母がにこにこ走り寄って来て、やさしい声をかけた。
おはようさん。寒い。霜が屋根瓦にびっしり張り付いているよ、寒いはずだよ。雀たちはどうやら平気らしい。霜の上を歩いて跳んで、お喋りを交わしながらちょんちょん足跡をつけて行く。朝の日の光が射して来た。さぶろうの手の指先はかじかんでいる。早くあったかくな~れ。