おおい、おおい。自信喪失症のさぶろうやあい。お湯の中に長くつけて浸透圧で水分が流失してしまったようなシワシワの皺の指。その指のようにシワシワしてカサカサしてすっかりゆるびているさぶろう。おおい、おおい。おおい。ホウレン草を食べたら元気になるのはオリーブの彼氏。アトムを吸入したら舞い上がることのできる手塚治虫氏の息子さん。さぶろうはどうだろう。たちまち元気を取り戻すことができるには、何を摂取したらいいんだい。何を見たらいいんだい。誰に会ったらいいんだい。
手の先が悴(かじか)むので、炬燵の中へ引っ込めたりパソコンを弄るためにふたたび炬燵から出してきたり、じっとしていられません。出したり入れたりを交互に繰り返しています。毛糸の手袋もしています。でも、冷たい。セーターを着込んで更にその上にジャンパーを重ねています。鼻水がたらたら出て困ります。窓の向こうにヒヨドリが来ています。畑のブロッコリーの緑の葉っぱが大好きのようです。大きな葉っぱなのにいつのまにやら食い散らしてぼろぼろにしてしまいます。お腹がすくんでしょう。ヒヨドリは逞しい尖った嘴を持っています。このところこうやってじっとしている暮らしが続いています。退屈です。旅に出ようと企ててはいるのですが、この寒さで決心が鈍ります。旅に出ると行っても温泉地にしばらく逗留して温かく過ごすだけの話ですけどね。それに宿泊代も高いのでばかにはなりません。ひとりで旅に出ると食事の時がさみしいです。食堂の椅子に座っているお客を見回すとたいがいみなさんカップルです。ウイークデイの泊まり客はしかし仕事をしていない人、つまり老人が多いようです。たまに親子連れというのもあります。老いたお父さんやお母さんを大事そうに扱って親孝行をなさっています。こちらは一人席、無口でいるしかありません。食事もすぐにすんでしまいます。楽しそうに会話が弾むのをそばで片耳を立てて聞いていると余計に孤独を味わいます。