知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

法2条1項1号の商品表示と法2条1項3号により保護されるべき商品の形態

2011-10-23 21:55:26 | 不正競争防止法
事件番号  平成22(ワ)9684
事件名  不正競争行為差止等
裁判年月日 平成23年10月03日
裁判所名 大阪地方裁判所  
裁判長裁判官 山田陽三

(1) 法2条1項1号の趣旨は,他人の周知の営業表示と同一又は類似の営業表示が無断で使用されることにより周知の営業表示を使用する他人の利益が不当に害されることを防止することにあり,商品本体が本来有している形態,構成や,それによって達成される実質的機能を,他者の模倣から保護することにあるわけではない。

 仮に,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態を商品表示と認めると,商品表示に化体された他人の営業上の信用を保護するというにとどまらず,当該商品本体が本来有している形態,構成やそれによって達成される実質的機能,効用を,他者が商品として利用することを許さず,差止請求権者に独占利用させることとなり,同一商品についての業者間の競争それ自体を制約することとなってしまう。
 これは差止請求権者に同号が本来予定した保護を上回る保護を与える反面,相手方に予定された以上の制約を加え,市場の競争形態に与える影響も本来予定したものと全く異なる結果を生ずることとなる。
 これらのことからすると,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態は,同号の商品等表示には該当しないものと解するのが相当である。
 ・・・
 そこで検討すると,原告商品は,ざるとしての機能に加え,柔軟性があり,変形させることができるという機能もあり,これにより従来のざるにはない用途に用いることができるというものである。
 そうすると,柔軟性があり,変形させることができるという形態的特徴は,原告商品の機能そのもの又は機能を達成するための構成に由来する形態であり,上記(1)のとおり,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態として,法2条1項1号の商品等表示には当たらないというべきである。
 具体的にみると,基本的形態として原告が主張する構成は,いずれも,柔軟性を持たせるための構成若しくは柔軟性があるという機能それ自体又はざるとしての機能を発揮させるための構成であり,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態であるというほかない。また,使用時形態も,柔軟性があり,変形させることができるという機能の結果生じる形態であり,これも商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態,結果である。
 ・・・

 法2条4項によれば,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。被告は,原告商品の使用時形態は需要者が通常の用法に従った使用に際して認識することができる形状には当たらないとして,その他のざるとしての形態的特徴は,いずれも乙2ないし8に記載された原告商品に先行するざる又は水切りざるが備えている構成であるか又は周知の形態若しくはざる一般にみられるありふれた形態であると主張する。

 しかしながら,原告商品の使用時形態それ自体が,法2条4項により保護される商品の形態(形状)であるかはおいても,使用時形態のように変形自在であるという原告商品の特性は,少なくとも需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる質感等に反映されることは明らかであり,法2条1項3号により保護されるべき商品の形態として十分に考慮されるべきものである。


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