知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

不正競争防止法2条1項3号の保護対象-新たに開発された商品形態

2012-11-03 16:24:57 | 不正競争防止法
事件番号 平成21(ワ)15343
事件名  不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年10月23日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康,網田圭亮
不正競争防止法2条1項3号,不正競争防止法19条1項5号イ

ア 不正競争防止法2条1項3号の請求主体
 不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品形態を模倣した商品の譲渡行為等を不正競争行為としているが,その趣旨は,不正競争防止法における事業者間の公正な競争等を確保する(1条)という目的に鑑みれば,開発に時間も費用もかけず,先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造販売して,投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは公正とはいえないから,そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解される。
 そして,同法19条1項5号イは,上記不正競争行為について,救済手段を与える期間を商品が最初に販売された日から3年に限定しており,その趣旨は,商品形態の開発のために投下した資本,労力について回収を終了し,通常期待し得る利益をあげた後については,商品の形態を模倣した商品の製造販売行為であっても,それが不正競争防止法による規制をもって対処しなければならない競争上の不公正を直ちに生じさせるものではないとの考えによるものと解される。

 このような規定及び趣旨によれば,同法2条1項3号による保護を受けるためには,新たな商品形態の開発がされた場合であることが必要であり,既に市場に流通している商品の形態と全く同一ではないにせよ,需要者において,新たな形態と認識させるところのないありふれた形態に関する違いがあるにすぎない商品については,同号による保護は予定されていないというべきである。
 したがって,自身又は他人が開発し,既に市場に流通している商品の形態に何らかの変更を加えて新たな商品として販売する者が,同号による保護を受けるのは,当該変更が新たな商品形態の開発といえる場合に限られ,当該変更前の商品と変更後の商品の形態が実質的に同一であって,需要者においてこれを新たな形態の商品として認識し得ないような場合には,当該変更により新たに商品形態の開発がされたとはいえず,同号による保護は受けられないというべきである。

最新の画像もっと見る