知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

新規事項の追加を指摘した最後の拒絶理由、法17条の2第4項4号の規定の趣旨

2012-02-05 22:55:50 | 特許法17条の2
事件番号 平成23(行ケ)10133
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年01月17日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

 しかし,法17条の2第4項2号の文言によれば,最後の拒絶理由通知に対する手続補正により特許請求の範囲が補正された場合に,上記手続補正が法17条の2第4項2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するか否かは,上記手続補正による補正前の請求項に係る発明と上記手続補正による補正後の請求項の記載とを対比して判断されることは明らかであるし,最後の拒絶理由通知に対する手続補正の直前にされた手続補正(以下「直前の手続補正」という。)が法17条の2第3項の規定に違反し,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内にない事項が記載されている場合に,この直前の手続補正により補正された請求項に係る発明を,最後の拒絶理由通知に対する手続補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするか否かの判断の基礎にしてはならないとの規定は存在しない
 ・・・
 ・・・そして,法49条1号の規定により,最初の拒絶理由通知に対してされた特許請求の範囲の補正が法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないときは,出願の拒絶理由となる。 そうすると,甲6補正のように,最初の拒絶理由通知に対してされた特許請求の範囲の補正が法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないときは,法159条1項で準用する法53条1項に規定する「決定をもつてその補正を却下しなければならない」場合には該当せず,法159条2項で準用する法50条に規定する「拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならない」場合に該当することになる。
 以上によれば,甲6補正は却下されないから,甲6補正により補正された請求項1に係る発明を補正前の請求項1に係る発明とし,これを基礎(基準)として,本件補正による補正後の請求項1に係る発明を対比して本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするか否かを判断した審決の判断手法に誤りはなく,原告の上記主張は採用することができない。

ウ 原告は,本件補正は法17条の2第4項4号に規定する「明りようでない記載の釈明」とは異なるが,最後の拒絶理由で指摘された「拒絶理由で示す事項についてする」補正でもあるので,これを認めることとしなければ出願人は拒絶理由に対応することが困難であり,かつ,これを認めないとすると発明の保護の観点からも適切でないから,例え「最後の拒絶理由に基づく補正」であっても,上記「明りようでない記載の釈明」と同様に,その補正が認められるべきである旨主張する。

 しかし,法17条の2第4項4号の規定は,最後の拒絶理由通知に対する手続補正で,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正を認めることとしたものであるが,これを無制限に認めると迅速な審査の妨げとなることから,「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項」についてするものに制限しており,この規定における「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項」とは,軽微な補正により是正できる程度の明細書又は特許請求の範囲の記載不備と解される
 これに対し,本件の場合,平成22年11月25日付けの最後の拒絶理由通知(甲8)に係る拒絶の理由に示す事項は,甲6補正が法17条の2第3項の規定する新規事項の追加の禁止に違反するというものであるから,本件補正が明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当するものと認められないことは当然であり,法17条の2第3項の規定に違反するという重大な瑕疵に当たる場合に,法17条の2第4項4号の規定と同様に運用しなければならない必要性も認められない

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