知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

失効した特許の表示を付す行為が品質等誤認惹起行為に該当するとした事例

2012-11-18 20:54:31 | 不正競争防止法
事件番号 平成23(ワ)12270
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成24年11月08日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康,西田昌吾
不正競争防止法2条1項13号

4 争点3(被告によるウェブサイト上の記載が不正競争防止法2条1項13号[品質等誤認惹起行為]に該当するか)について
(1) 特許の表示
ア 前記1のとおり,被告は,少なくとも平成23年4月28日以前の一定期間,自社のウェブサイトにおいて,被告製品につき,「国際的な特許で保護されている」「特許を取得している専用のワイヤーである」との記載を付していた。この点,被告製品は,巻き爪矯正具につき,ドイツのP1 の発明の実施品であり,その発明は,かつてドイツ及び米国で特許を受けていたものであるが,本件米国特許は2004年(平成16年)1月15日に,本件ドイツ特許は2006年(平成18年)6月7日にそれぞれ失効した。

 一般に商品に付された特許の表示は,需要者との関係において,当該商品が特許発明の実施品であると受け取られるため,当該商品が独占的に製造,販売されているものであることや,商品の技術水準に関する情報を提供するものとして,「品質」(不正競争防止法2条1項13号)の表示といえる
 しかし,上記のとおり,被告は,被告製品につき,実際には特許発明の実施品ではなくなったにもかかわらず,国際的な特許で保護されている,特許を取得している専用のワイヤーであるといった表示を付し,少なくともいずれかの国・地域の特許発明の独占的実施品であるかのような情報を需要者に提供したものであるところ,かかる行為は,「品質」を誤認させるような表示をした不正競争行為(不正競争防止法2条1項13号)に該当するというべきである。

イ この点,被告は,「国際的な特許で保護」などの記載につき,被告製品が簡単には模倣できない高度な技術によることを示し,模倣品を用いて引き起こされる事故の防止を企図したものと読み取るのが通常である旨主張するが,上記表示をそのような限定した意味で受け取る理由はない。需要者にとって「品質」としての意味を持つ特許の表示に誤りがあった以上,不正競争防止法2条1項13号(品質等誤認惹起行為)の該当性は否定できず,その主張は採用できないというべきである。

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