知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとして警告する場合の注意義務

2012-03-31 09:42:58 | 不正競争防止法
事件番号 平成22(ワ)145
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成24年03月21日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 岡本岳

(3) 原告は,被告の本件掲載行為及び本件送信行為によって営業上の利益を侵害されたとして損害賠償を求めているから,被告の故意,過失について検討する。
ア 競争関係にある者が販売する商品について,それが自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとの疑念を持つ者が,当該販売者の取引先に対し当該販売者の商品は自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとして警告する場合には,これにより当該警告を受けた取引先が警告者による差止請求,損害賠償請求等の権利行使を懸念し,当該販売者の商品の取引を差し控えるなどして当該販売者の営業上の利益を損なう事態に至るであろうことが容易に予測できるのであるから,自己の商品の形態を模倣した違法なものであるとの疑念を持つ者は,上記のような警告をするに当たっては,当該警告が不競法2条1項14号の「虚偽の事実」の告知,流布とならないよう,当該販売者の商品が自己の商品の形態を模倣した違法なものに該当するか否か,その前提として自己の商品の形態が法的に保護される形態に当たるか否かについて検討すべき注意義務を負うものと解するのが相当である。

イ 被告は,
 原告製品が発売された直後である平成21年10月5日に原告製品を購入し,同月9日にかけて,形状測定,車両側コネクターとの嵌合比較,目視比較,出力特性等の調査を行い,嵌合のための必然性のない部分も含めて原告製品の形態は被告製品の形態に完全に一致すること,出力特性,極性も同一であること,
 既に模倣品であることが判明していた台湾のGDL社製の製品と本体ユニット,車種別専用ハーネスの形態,出力特性等が完全に一致することを確認した結果,原告製品は被告製品の形態を模倣したものであると判断し,
 原告製品は被告製品を模倣した商品であり,原告の行為は不競法2条1項1号ないし3号の不正競争に当たるとして原告製品の販売の中止等を求める同月14日付けの通知書(甲1)を原告に対して送付したものの,原告から直ちに回答がなかったため,必要な調査を行い形態が完全に一致することを十分に確認した上で,対抗措置として本件掲載行為,本件送信行為を行ったものであり,被告の行為に違法性はなく,故意,過失もない旨主張
する。

 しかしながら,上記1で説示したように,被告製品の車種別専用ハーネス,本体ユニットにつき被告が原告により模倣されたと主張する形態は,商品の機能及び効用を確保するために不可欠な形態であるか,同種製品の一般的な形態であるから,原告が被告製品の「形態を模倣した」ということができないものである。それにもかかわらず,被告は,原告に模倣されたと主張する被告製品の形態について,ドライビングアシストコントローラー(スロットルコントローラー)という商品の機能及び効用を確保するために不可欠な形態に当たるか否か,また,同種製品の形態にどのようなものがあるかなど,被告製品の形態が不競法2条1項3号で保護される形態に当たるか,原告が被告製品の「形態を模倣した」といえるかを判断するに当たって当然に検討すべき事項に係る調査検討の有無,内容につき,何ら主張立証していないことからすると,被告が本件掲載行為,本件送信行為を行うに当たって上記注意義務を尽くしたものと認めることはできない。したがって,被告には過失が認められるというべきである。

 よって,被告は,本件掲載行為及び本件送信行為により原告が被った損害を賠償する責任を負う。

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