知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

職権による周知技術の証拠調べが違法となる場合

2011-10-23 10:49:46 | 特許法29条2項
事件番号  平成23(行ケ)10010
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年09月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

(3) 以上の記載によると,本件審決では,本件特許出願当時の周知技術の認定に審決引用例を用いたものであるところ,職権により周知技術についての証拠調べをした場合,当事者の主張内容や当該技術の周知性の程度によっては,証拠調べの結果を当事者に通知せず,これらの書証について当事者に意見を申し立てる機会を与えなかったとしても,直ちに特許法150条5項の規定に違反するとまではいえないが,本件では,審決引用例に基づく周知技術の認定により原告の主張が排斥されていることや,後記第4の2(3)イ(ア)bのとおり,審決引用例からは,「・・・キャピラリチューブ」が周知の技術であるということはできないことに鑑みると,証拠調べの結果を原告に通知し,相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えるべきであったというべきである。

 しかし,審決引用例の記載からは,「・・・キャピラリチューブ」が周知の技術であるといえないものの,後記第4の2(3)イ(ア)bのとおり,このようなキャピラリチューブが存在しなくても,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に欠けるものとはならないから,審決引用例についての証拠調べの手続に違法があったとしても,結果として,これが本件審決の結論に影響を及ぼすものとはいえない

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