知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

引用発明が有するものとは異質の効果の考え方

2007-02-01 21:49:08 | 特許法29条2項
事件番号 平成18(行ケ)10222
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年01月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
裁判長裁判官 塚原朋一


『 原告は,上記①の作用効果に関し「審査及び審判の運用」の「請求項に係る発明が、有利な効果であって引用発明が有するものとは異質の効果を有する場合、あるいは同質の有利な効果であるが際だって優れた効果を有し、これらが技術水準から当業者が予測することができたものではない場合には、この事実により進歩性の存在が推認される(66頁16~20行)との記載を引用した上,投影の倍率を変更するだけで,容易に表示サイズを大きくし得ることは,投影による表示方式に特有なものであって,引用発明が有する効果とは異質の効果であるから,当業者の予測可能性は問題とはならないと主張する
 しかしながら「審査及び審判の運用」の上記記載中の「引用発明」の語が,いわゆる主引用例に係る発明に限られるものではなく副引用例に係る発明も含めて引用発明と称していることは上記記載の直前にある「複数の引用発明の組み合わせにより,一見,当業者が容易に想到できたとされる場合であっても」との記載における「引用発明」の語の用い方に照らして明らかであり,そうであれば,副引用例に係る発明と同様の機能を営む周知技術も,この記載に係る「引用発明」に含まれるというべきである
 そして,車両における外部の第三者に対する画像の表示方式としての投影による表示方式が,本件特許出願当時において,周知技術であったと認められること,及び,本件において上記周知技術が副引用例に係る発明と同様の機能を営んでいることは上記1の(1)のとおりであるから,たとえ,投影の倍率を変更するだけで,容易に表示サイズを大きくし得ることが,投影による表示方式に特有なものであったとしても,それが「審査及び審判の運用」の上記記載における「引用発明」と異質の効果であるということはできない。
 のみならず,たとえ「請求項に係る発明」が,引用発明の効果とは異質な効果を奏する場合であっても,その異質の効果が,技術水準から当業者が予測することができるものである場合には,当該異質の効果を奏するからといって,進歩性の存在が推認されるものではない。』

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