知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

アンケート調査による商品表示の類似の裏付け

2012-10-14 18:46:59 | 不正競争防止法
事件番号 平成23(ワ)12566
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判年月日 平成24年09月20日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 不正競争
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康、西田昌吾
不正競争防止法2条1項1号又は2号

 原告は,昭和29年10月30日,「正露丸」の商標登録をしたが,同商標登録に係る商標登録無効審判についての審決取消訴訟において,同商標登録は無効とされた。
 その理由は,遅くとも原告が上記商標登録をした当時,「正露丸」は,本件医薬品の一般的な名称として国民の間に広く認識されていたこと,ごく普通の書体で「正露丸」の文字に「セイロガン」の文字を振り仮名のように付記したにすぎない上記商標は,商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示したにすぎない標章であるということによる。
以上の事実によると,「正露丸」は,本件医薬品の名称として,遅くとも昭和29年ころまでに,普通名称となっていたということができる。

(2)「正露丸」の名称で本件医薬品を製造販売する他社の存在
平成18年当時,「正露丸」又は「SEIROGAN」の名称で本件医薬品の製造販売を行っていた業者は原告及び被告の他に少なくとも10社以上存在し,それらの商品の包装箱は,いずれも直方体であり,包装箱全体の地色が橙色である点で共通していた。
・・・
 原告は,原告各表示と被告各表示が類似することなどを裏付ける証拠として,インターネットを用いたアンケート結果に係る書証(甲59ないし62)を提出している。

 これらの書証によれば,原告が実施したアンケート結果の概要は,要するに,○1 回答者らに対し,被告商品(被告表示2の正面)を示して認識の有無等について質問した後,○2 認識していると回答した約8割の回答者らに対し,原告商品を含むその他の本件医薬品の包装を見せて確認したところ,そのうちの約9割の者が原告商品と誤認していたというものである。

 そこで検討すると,上記アンケートの回答者らが,前記1の各事実,すなわち「正露丸」が単なる一般名称にすぎないこと及び原告以外にも本件医薬品を製造販売する業者が多数存在することなどを認識していたかについては全く明らかでない。そうすると,上記アンケートは,前記1の各事実を知らない回答者らが,被告表示2を見て本件医薬品に係る包装であると認識し,そこから本件医薬品に係る市場において大きな市場占有率を有する原告ないし原告商品を想起したにすぎないとみることも十分に可能である。
 したがって,上記アンケート結果が被告各表示について原告各表示と類似することなどを裏付けるものであるとはいえない


被告表示 原告表示

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