徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

能舞台のはなし。

2022-02-07 21:45:41 | 伝統芸能
 熊本の能楽関係者の悲願は公立の能楽堂建設だと聞く。おそらく福岡市の大濠公園能楽堂のような施設を想定されているのだと思う。神事能が盛んな歴史を有する熊本の常設能舞台はすべて神社の所有。しかも客席は野天。2018年の水前寺成趣園能楽殿での出水神社薪能では途中から豪雨に見舞われ、僕も散々な目に遭った。たしかに屋根付きの能楽堂があれば天候の心配もないしとも思う。
 能を観るようになって12年が過ぎた。これまで屋外、屋内問わず多くの能舞台を見てきた。昨年3月、水前寺成趣園能楽殿で行われた「翁プロジェクト」公演を見た。吹き渡る早春の風に木々の葉がそよぎ山桜の花びらが散る。遠くに鳥のさえずりも聞こえる中、朗々と謡い上げる声と小気味よい四拍子の響き。それらが混然一体となって初めて能という芸能は成立するのではないかと、能の原点ともいわれる「翁」を見ながらそう思った。たまには雨に見舞われることもあるかもしれないが、それも含めて能なのではないかという気がする。


水前寺成趣園能楽殿


かつて水前寺成趣園に存在した土壇の能舞台


土壇の能舞台で行われていた薪能