熊本の能楽関係者の悲願は公立の能楽堂建設だと聞く。おそらく福岡市の大濠公園能楽堂のような施設を想定されているのだと思う。神事能が盛んな歴史を有する熊本の常設能舞台はすべて神社の所有。しかも客席は野天。2018年の水前寺成趣園能楽殿での出水神社薪能では途中から豪雨に見舞われ、僕も散々な目に遭った。たしかに屋根付きの能楽堂があれば天候の心配もないしとも思う。
能を観るようになって12年が過ぎた。これまで屋外、屋内問わず多くの能舞台を見てきた。昨年3月、水前寺成趣園能楽殿で行われた「翁プロジェクト」公演を見た。吹き渡る早春の風に木々の葉がそよぎ山桜の花びらが散る。遠くに鳥のさえずりも聞こえる中、朗々と謡い上げる声と小気味よい四拍子の響き。それらが混然一体となって初めて能という芸能は成立するのではないかと、能の原点ともいわれる「翁」を見ながらそう思った。たまには雨に見舞われることもあるかもしれないが、それも含めて能なのではないかという気がする。
水前寺成趣園能楽殿
かつて水前寺成趣園に存在した土壇の能舞台
土壇の能舞台で行われていた薪能
能を観るようになって12年が過ぎた。これまで屋外、屋内問わず多くの能舞台を見てきた。昨年3月、水前寺成趣園能楽殿で行われた「翁プロジェクト」公演を見た。吹き渡る早春の風に木々の葉がそよぎ山桜の花びらが散る。遠くに鳥のさえずりも聞こえる中、朗々と謡い上げる声と小気味よい四拍子の響き。それらが混然一体となって初めて能という芸能は成立するのではないかと、能の原点ともいわれる「翁」を見ながらそう思った。たまには雨に見舞われることもあるかもしれないが、それも含めて能なのではないかという気がする。
水前寺成趣園能楽殿
かつて水前寺成趣園に存在した土壇の能舞台
土壇の能舞台で行われていた薪能
舞台でも、向かって左の橋掛かりと本舞台の空間があれば、野外だろうが何処だろうが演ずる事ができます。
まぁ、きちんとした能舞台ならば、床下の瓶で音響を膨らますことも出来て、ベターなのでしょうが、私は野外の薪能が好きです。
酒田市にも能舞台があり、施設の中に組み込まれていますが、観客を入れる場所が狭くて、本格的に上演することになると、客は野外に弾き飛ばされます。
日本海側の雪国にあり、1年の1/3は雨か雪だというのに、田舎はこんなものです。
田舎ならではの特典もあります。能も神楽も古い時代の物が民俗芸能として残っていて、今でも楽しく観ることができます。本格的な中央の垢抜けした能には劣りますが、それぞれに楽しいですよね。
仮設の能舞台ではありますが、あれこそホンモノの能舞台ではないかと最近思うようになりました。立派な影向の松の存在感が凄いですね。今日、能舞台には鏡板の松がお決まりとなっていますが、あれは言っても紛い物に過ぎません。
立派なホールで行われる舞台芸術としての能も決して否定はしませんが、本来、能には神との交信という意味がありますので、素朴で垢抜けしていない能も見ていきたいと思っています。