ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

気になる言葉3

2019-08-30 18:35:51 | 日記
甲斐バンドのアルバム「破れたハートを売り物に」は
「全編暴力賛美」と評されたそうですが(苦笑)
難産の末に生まれたアルバムを、上っ面だけでそう判断された当時はともかく
そのタイトルチューン【破れたハート…】をきっかけに海を渡られ、得心の行く作品が完成した後は
この評価を「スゴイだろ!(笑)」とネタになさってましたよね?(笑)

元々「評価は他人が決めるもの」という覚悟を持って作品を発表されているんでしょうし
「『褒める』のって難しいんだよ」とよく口になさっているように
ご自身も手放しで誉めそやされることが苦手でいらっしゃるみたいだし…(笑)

ただ、日本画家の堀文子さんが
「群れたり、慣れたり、頼ったりすると、迎合しなくてはなりません
力を抜いて心を空っぽにすることが出来なくなります
だから、褒められそうになると逃げるんです」
…とおっしゃっているのは「誰かと一緒にいて感じる寂しさ」や
「感性の違う人と過ごす辛さ」は「独りよりもキツイ」からだそうだけど
この言葉を聴いて、奥さんは「1人じゃ寂し過ぎ、2人じゃ辛過ぎた」と口ずさんだらしい(苦笑)

そういえば…「類は友を呼ぶ」という諺は
「気の合う者は、自然と集まり、仲間となる
異質なところがあまりなくて、思いや好みの通じる人たちが寄り集まる
…といった意味で使われますが、友人であるというのは
本来「もう1人の自分」を持つことではなく
「自分のことを自分とは違う目で見てくれる人」がいることを指すみたいで
つきあいが長くなると、逆に相手との違いがより微細に見えて来るものなんだとか…

それはさておき、作詞家の松本隆さんは自著「微熱少年」の中で…
あるバンドのオーディションを受ける仲間に付き添った高校生に
「誰だって人間に点数をつけようとすると、あんなつまらない顔になる」…と呟かせ

「人は人生で何度も『品定め』される
一見、選ぶ側が優位にありそうだが、その彼もいつ落ちこぼれるやも知れない
人を選ぶという行為は、ある条件を満たさないと受け容れられない
そんな寂しい社会を肯定することだから」とおっしゃっていて
ある条件だけで人を判断する愚かさへの憤りを感じますし

また、喜劇役者の古川緑波さんが、戦後の浅草で、お盆興行「お化け道中」を打たれた際に
批評家から「客に媚びた手抜きの芝居」と酷評され
「夏の最中にやる芝居を、まともに評されても困っちまう
暑さというものを、勘定に入れて下さい」と返されたのは(笑)
戦時中に愛国者ぶって「お笑い」を貶し続けていた批評家などと
同じレベルで話したくないね…という矜持でしょう

ただ、選ばれる側、評される側の方々の言葉は
わりと我が身に置き換えやすいんだけど
「あんなつまらない顔になる」機会はあまりないので(笑)
…って、まあ、サッカーや野球など親しみのあるスポーツを観戦する時には
気分だけは監督だったり(笑)ベテラン解説者だったりして(笑)
「今のプレーは如何なものか?」と言ってみたり(笑)
ドラマや映画を鑑賞して、辛口のコメントを吐いたりすることがありますが(笑)

それは、あくまでも個人の見解、個人の感想で
例えば、外食したお店の感想をグルメサイトなどに投稿すれば
もしかしたら、どなたかが参考になさるやも知れませんけど
家庭内で話しているだけのたわごとなので…(笑)

ともあれ…半分、批評家の立場(かな?)の方々の言葉もご紹介しましょう
画家の赤瀬川原平さんは…「やろうとした訳でもないけどやってしまった
…ということの方が、表現としての価値を大きく占める
そのやってしまった『表現』の価値は
それを見る人…つまりは、生身の受容体の中を横断して初めて現れる
だから『失敗や挫折が体に染み込んでいない』
『体とか人生がある程度発酵していない』内は
日本美術の世界はまだ『無理』だ」…と記され

また、法政思想史家の山室信一さんは…
「一つの見方に固執していると、それが否定された時、立ち戻る場所がなくなる
己の失敗や過ちを思い知ることが、自分の認識を相対化し、自分の思考の幅を広げる
私自身、成功した人よりも失敗した人や誤っ政策選択の方に強く興味を惹かれます」…と話されていて

「表現」なさる側でありつつ、その表現が提示された後に
失敗なり過ちなりを客観的に捉えようとなさっている部分では
「批評家」でいらっしゃるんじゃないかと…?
甲斐さんが「観客の前で演奏してみて初めて曲が完成する」とか
「良いライブは忘れて、悪かったライブは覚えておくようにしている」
…と、おっしゃっているのと同じ感覚なんでしょうね?

一方「選者」の立場からは…美学者の山崎正和さんが、ある選考会の終了後に
「公正であれば、公平でなくて良い
フェアであることと不偏であることとは同じではない
賞の選考にあたって、私は、平坦でない作業にこもる熱い思いに心を動かされた作品に
つい、肩入れし、強く推す
受けた衝撃が深ければ、その仕事の意味もきっと重いはず
選考会では、委員がそれぞれに受けた衝撃の意味をフェアに聴き合い、探り合う」
…と話されていて、選考基準の幅が広い感じがするし

また、文学賞を射止めて作家デビューを果たしたにも関わらず
長引く出版不況のために、出版社が作家を育成する体力を失い
「新人を一から育てるより、人気作家への発注の順番を待つ方が効率が良い」といった状態にあり

更に、デビュー作品の初版部数は減少しているかたわらで
ライトノベルなどの出版点数は急増し
年間の書籍の推定販売額は約3割減った代わりに、新刊点数は約1割増え
結果、書店の本を入れ替えるサイクルが早くなって
出版から2~3年で入手できなくなり、そのまま埋もれてしまい
筆を折る作家が後を絶たないことを問題視した講談社は
一度デビューした作家に再出発を促す「リデビュー小説賞」を設置し
「何度でもデビューして下さい!」と呼びかけているそうです

「売れるものばかりに目が行きがちで
本来、これまでに誰かが見出だしていなければおかしい実力の持ち主が
面白いものを書いているのに、読者に届けられていない現状を変えたい」
…という某編集者の方の言葉には、切り捨てる選び方ではなく
すくい上げようとする心意気が感じられますよね?
コメント
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