こぶとりばばぁの鬼退治日記

ぶっそうな題名でスミマセン。

『紐育マサオ』

2006-03-05 00:20:16 | ひとり言
『紐育マサオ』うつみ宮土理著を読んだ。
このタイトルのモデルになった人物の若い頃を知っている、という人から奨められて…。
世界に通用する一流のメイクアップ・アーティストに上りつめたけれど、エイズで亡く「以前は彼女とどうの…って話を聞いてたんだけどなぁ」と彼の若い頃を知っていると言なってしまった人の話。
う人が言う。私も知っています。ニューヨークに来たときはストレートだったけど、いつしかゲイになった人。ニューヨークではストレートより、ゲイであるほうが何かとチャンスが掴みやすい業界もある。

しかし、一流を目指すとは本当に並々ならぬことだ。うつみ宮土理か?とおぼしき「私」とは対照的に描かれている。


かほるちゃん、覚えている?ニューヨークに行くときの送別会の夜、皆が帰った明け方だった。
かほるちゃんが何故ニューヨークに行くのって尋ねたから、僕はニューヨークは男と男がキスできる街よ、といいました。そしたらかほるちゃんは驚いたように、男と男がキスできるから行くの、って聞きました。僕は慌てて、馬鹿ね、そういう自由がある所なのよって答えたわ。
でも違ったの。ニューヨークも偏見だらけの街だった。やはり白人じゃないと駄目なの。結局、僕は珍しがられただけ。かほるちゃん、本当の自由なんて、どこにもないのよ。


ニューヨークは一見、すべてを受け入れるような寛大な態度を見せているけれど、実は人種間の偏見は奥深い。やっぱりコネとかも気にする。そしてこれはニューヨークに関わらず、成功すればするほど、孤独の度合いも深まる。

さらっと読めたけど、成功した人と成功を掴み損ねた人の、それぞれの悲哀が胸に衝いた。