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感染症の研究、感染をモデルにした研究

2007年03月11日 | 仕事・研究
私は以前ヒト免疫不全ウイルス、HIVの仕事をしていました。そのころ、HIVの活性を抑える薬とか、増殖を抑える薬の開発に携わっていましたが、インフルエンザとか水痘は別として、ウイルスに効く薬ってあんまりないんです。HIVについては、最近は有効な薬剤の組み合わせが見つかって、ずいぶん延命できるようになりましたが、当時はまだAZTという薬が認可されていただけでした。

HIVはヒトの免疫のかなめになるヘルパーT細胞を殺してしまいます。時間の経過とともに、感染者のヘルパーT細胞の数は減っていきます。結果として、通常は感染しない真菌や細菌に感染して、それが重篤になり、死に至ってしまいます。HIVの仕事をしたことで、私は免疫に興味を持つようになり、後になってサイトカインの研究を始めました。HIVの仕事は感染を防ぐためにP3という特別な実験室で行い、非常に注意の必要な作業ばかりなので、「もう感染症はいいから、生理的な研究がしたい」などと当時は思っていたのですが、今は、感染症の研究を通してこそ生体の免疫機構を知ることができると思っています。

私の寄生虫の仕事も、そういうわけで、「寄生虫の研究」ではなくて、「寄生虫感染をモデルにした免疫の研究」なのです。もちろん畜産領域では寄生虫自体のコントロールも大変重要で、そのことを目的からはずしているわけではありませんが、それだけを目指して研究しているわけではないんですね。
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