読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

凍った夏・連続殺人鬼との闘いと夫婦愛と

2010年06月05日 | 読書

◇「凍った夏」(原題:Summer of Fear) 著者:T.Jefferson Parker
                                                                    訳者:渋谷比佐子  
                                     講談社文庫 2000.8刊

  本書の大きな流れは、4件11人に及ぶ連続殺人鬼ミッドナイト・アイと、元警官で
 売れないクライム・ライターの主人公ラッセル・モンローの巧妙な駆け引きと息詰まる対決
 であるが、それよりも気がかりなのは進行する脳腫瘍を抱えた主人公の最愛
 の妻イザベルへの愛情と元愛人アンバーへの妄執。アンバーとの間にもうけた娘グレ
 ースとの愛憎。ポリスアカデミーで同期だったマーティ警部との間の深刻な確執。巧妙
 に立ちまわる保安官事務所の嘱託犯罪学教授エリク・ウォールド。
    立て続けに起こる酸鼻を極める連続殺人事件。手口が似て非なるアンバー殺
  害未遂事件、身代わりになったアンバーの姉アリスの非業の姿。果たして殺したの
  は誰か?
  疑わしい人物を巡る微妙かつ複雑な状況と物証の数々。実に読み応えがある
  作品である。

  これまで数多の外国物を読んできた。比較的肩の凝らないハードボイルドやリーガ
 ルサスペンスものが多かったが、主としてロサンゼルスやニューヨークなど大都市が舞台。
 今回の「凍った夏」は私の見知った町が舞台になっていることに気づき驚いた。
 
  カリフォルニア州オレンジカウンティ。作者T.J.パーカーはLAの生まれであるが、オレンジカ
 ウンティにあるUCLAアーバイン校で英米文学を専攻した。本書は彼の第四作目であ
 るが、過去11作の全てがLAもしくはその周辺が舞台であるという。

  本作品の舞台はアーバイン市の南にあるサン・ファン・カピストラーノという小さな町。町の
 規模は大きくはないが、かつてスペインがキリスト教宣布のためにミッションを送りこん
 だ基地のひとつであり、当時の教会・修道院の跡(伝道所)が歴史的建造物とし
 て観光客を呼んでいる。
  本作品の主人公ラッセルとイザベルはこの教会で結婚式を挙げたことになっている。
 実は私の次女はこの町の青年と結婚し、現在もここにい住んでいて、従って我々
 夫婦もここを訪れ、この教会も見学した。何度も出てくるラグナ・ビーチ、ラグナ・キャニオ
 ン、デイナ・ポイントも娘婿らに案内をして貰っている。しかも近くのアーバインはかつて出
 張で訪れたところ。そこの空港は俳優のジョン・ウェインが良く利用するのでジョンウェイン
 空港と名を変えたと聞いたのは平成元年(1989年)のことである。読んでいても
 情景が生々しく想像でき、臨場感があって大いに親近感(?)を持って読んだ。

  結末は「あっと驚くタメゴロー」。だから触れない。

 ・ミステリ仕立てのラブストーリー(オサンゼルス・ブックレビュー)
 ・苦悩に満ちた心の旅路(フィラデルフィア・インクワァイアリー) 
 ・息詰まるような緊張感・読者の予想をことごとく裏切り続ける魅力的プロット
                                  (パブリッシャーズ・ウィークリー)

     


 (以上この項終わり)

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