読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

「アマルフィ」映画と小説

2009年07月30日 | 読書

映画「アマルフィ」
  流山おおたかの森駅近いシネマコンプレックスで映画「アマルフィ」
 を観た。
  テレビドラマ「女王の教室」で冷徹な女教師役で人気を博しファン
 になった天海祐希が出演する。( もちろん男役の主演は織田裕二
 だが) 何よりも魅力なのはオールイタリアロケ。家人はかつて訪
 イタリアの観光地を追体験できるかもと楽しみにしていたが、残念
 ながらローマの一部(コロッセオ・サンタンジェロ城・スペイン広場・テルミニ駅)、
 カゼルタ宮殿(ナポリ)、アマルフィ海岸だけ。小説ではヴァチカン市
 国が重要な場面となるがさすがにロケは無理だろうから映画では
 外されている。
  せっかくオール・イタリアロケというからにはもうちょっとサービス
 して世界遺産のいくつかを舞台に取り込んで欲しかった。
  ちなみにアマルフィはローマから200キロほど南にある。旧くは
 ピサ・ジェノヴァ・ヴェネツィアと並ぶ海洋都市国家であった。紺碧
 の地中海に面し、切り立った崖に張り付くように立ち並ぶ、白壁、
 オレンジ色の屋根の家々・・・。1997年に世界遺産に登録。

  天海祐希も織田裕二も良かった。天海裕希もあれだけ身長がある
 とイタリア人の間に入っても負けない。織田裕二も笑顔を全く見せず
 頑張った。ただ佐野史郎はともかく、小野寺昭は完全にミスキャスト
 と言わざるを得ない。いくら外務省が別世界の役所とはいえ、あん
 な能天気な大使をイタリアに置くわけがない。ペーペーの戸田恵梨
 香はよかった。

  映画の筋と言えば、イタリアを観光に訪れた母子(天海)の娘が
 誘拐される。身代金の要求があるがどうやら単純な営利誘拐では
 なく狙いは別にあるらしい。
  一方日本大使館に訪伊する外務大臣警護のために一人の男が
 本省から派遣される(織田)。誘拐犯の電話を取って「父親」を名乗
 ってしまった行き掛かり上誘拐事件にかかりっきりになる織田。
  10万ユーロの身代金を持ってあちこち引きずり回される天海と織
 田。そこに天海の友人が現れる。二人の間にどんな会話があった
 のか、その日から天海の挙動があやしくなる。実はイタリア屈指の
 警備保障会社のセキュリティシステムに犯人が侵入し、監視カメラ
 に工作したらしい。原データから犯人の姿を探ろうと警備会社に迫
 る織田。しかし警察の捜査令状がなければセキュリティ・コントロー
 ルルームには入れないという。伊国家警察の助けを借りて何とか
 コントロールルームに入った途端、天海が拳銃を持ち出しイタリア・
 オペラ座のセキュリティシステムをシャットダウンしろと迫る。そこに
 はイタリア大統領が訪れることになっている。緊急事態である。
  実は犯人一味の主魁だった天海の友人に迫られ、人質の娘の命
 と引き換えにコントロールルーム乗っ取りを図ったのだ。

  ところがこれは囮(カムフラージュ)。本命は日本国大使館で、狙いは
 外務大臣だったのだ。しかしこの場面では世界と歌姫として有名な
 サラ・ブライトマンが歌う「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」がすばらしい。
  コントロールルームの電源が一時的にダウンした隙に犯人グル
 ープは警備モニターに偽の映像を流し、まんまと大使館のパーティ
 会場に侵入、かつて外務大臣が外交官時代紛争地域で命を落とし
 た邦人を見殺しにしたことを許せないとした主犯(天海の友人)と紛
 争地域で家族を失った犯人グループの4人が、大臣に真相告白を
 迫る。

  結局娘は助かるのだが、なぜか誘拐事件と犯人グループの真の
 敵(外務大臣)の間の論理展開が迂遠過ぎてしっくりこない。
  警備会社のセキュリティコントロールルームを乗っ取るために天海
 の娘をなぜ誘拐しなければならなかったのか。いま一つ明快でな
 い。
  それに誘拐された天海がホテルでじりじりしながらテラスでタバコ
 を吸う場面が三度ほどある。いまどきタバコを吸わせなければなら
 ない必然性が見当たらない。無神経である(ファンにとってイメージが
 悪いぜ。ひょっとして監督が喫煙者?)。

  収穫はサラ・ブライトマンのきれいな歌声と、知らなかった「世界
 一きれいな海岸アマルフィ」を見たことか。

小説「アマルフィ」
  真保裕一著 2009.4 扶桑社刊

  著者の小説後記によれば、映画のプロット作りを持ちかけられた
 のは2年半くらい前とのこと。フジテレビ50周年記念映画ということで
 大々的に海外ロケを敢行したいというのが当初からの方針。その
 方針のもとにプロットが練られて、小説の方もこのプロットを元に書
 かれているそうだ。
  
  小説と映画は少々違いがある。
 天海の職業は外資系銀行、(映画では看護師?)友人の男は勤務
 先銀行の上司(当然外人。映画では元患者)。犯人の狙いはヴァチ
 カンを訪問するロシアの外務大臣(チェチェン紛争の指導者)。映画で
 は日本の外務大臣。
  小説では書けても映像化が難しいところはあるだろう。同時並行
 的に小説も進めていくという手法は果たしてうまくいくのか。本を沢
 山読んでいて多少は目が肥えている家人は「小説の方は雑。」と
 切って捨てた。
  江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、日本推理
   作家協会賞(長編)、新田次郎文学賞(短編集)と多くの文学賞を
  貰っている方に失礼ではあるが。
  確かに一人合点で説明不足で分かりにくいところもある。
 

        
  
  

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