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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

「屍者の帝国」来週公開されます

2015-09-28 15:18:26 | 伊藤計劃
昨年アニメ化決定が報じられていた
伊藤計劃さんの小説「虐殺器官」と「ハーモニー」
今年前半は進展がなくてやきもきしていましたが
まずは伊藤さんと円城塔さんの共著である「屍者の帝国」のアニメ映画が完成し
いよいよ来週から公開されます。

「屍者の帝国」は、伊藤さんが残された30枚ほどの遺稿を
円城塔さんが書き継いで完成された作品です。

十九世紀末のロンドン。
死人に疑似霊素というものをインストールして屍者を作る技術が普及し
各国で、労働用や軍事用として
動く死体としての屍者が普及している世界。

ロンドン大学の医学生ワトソンは
大英帝国諜報機関の命を受けて
人間と同様の知能を持ち、言語を喋ることができたと言われる
人類最初の屍者「ザ・ワン」の謎を解明するべく
インド、ロシア、日本、そしてアメリカ大陸を駆ける。

フランケンシュタイン、カラマーゾフ兄弟、ヴァン・ヘルシンクetc
歴史や文学に出てくる有名人たちが大活躍します。
九割がた円城さんの筆による小説なので
「伊藤さんの作品とは違う」と言われる方もありますが
史実とか、あらゆる整合性をぶっとばして疾走する
壮大な与太話という大枠では、伊藤さんがめざした世界観と
それほどかけ離れてはいないように思えます。

そして何よりも、この「屍者の帝国」は
志半ばにして旅立たれた伊藤計劃さんに捧げられた円城さんの
オマージュであり、レクイエムなのだと思います。
「屍者の帝国」の終り近くにこんな一節があります。

「ほんの三年に満たない旅にすぎなかったが、かけがえのない
得がたい日々をあなたと過ごした。(中略)あなたの物語を
つなぐ手伝いを上手くできたか甚だ心許ないが、収支はまだ
先のこととしてもらえればありがたい。
せめてただほんの一言をあなたに聞いてもらいたい。
「ありがとう」」

これを最初に読んだ時は、泣きました。
ストーリーの中に織り込まれてはいますが
円城さん本人の、伊藤さんに対する思いがあふれています。

伊藤さんは「物語」というものに
強いこだわりを持っておられました。
「これがわたし
これがわたしというフィクション
わたしはあなたの体に宿りたい。
あなたの口によって更に他者に語り継がれたい」

こちらは伊藤さん自身の言葉です。
SF初心者、なんちゃってSFファンの私が言うなと怒られそうですが
伊藤さんの小説を含めて、SFの世界は
一般に捉えられているほど、難解で、理解不能なものではありませんでした。

小説の世界全体が、現実社会に対する壮大なメタファーの形を取っていますから
読み手の側で、どのように解釈するのも自由です。
現実社会に対する、相当に辛辣な風刺も批判もあるし
人間の未来についての予見もあります。

最近頭がすっかりSF脳になっていて
先日の安保問題の時も「ああ、今度アメリカとか中国とかが絡んで
戦争始まったら、もう地球滅亡、人類破滅のレベルだから
どっちにしても大して変わらないよ」と言って
家族の冷たい視線を浴びました。

「屍者の帝国」もちろん観に行きます。
「屍者の帝国」も「虐殺器官」も「ハーモニー」も
あれほど密度の濃いストーリーを
二時間という枠の中で全て表現できるとは思っていません。
けれど、どういう形にせよ
伊藤計劃という魅力的なSF作家の名前と
伊藤さんが語った物語は、映画を観た人によって
語り継がれていきます。
そしてそれが、伊藤さんが心から望んでおられたことなのではないかと思います。




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男性と女性の性に対する認識の違い

2015-09-23 15:56:05 | 社会・生活
今日はネット上で「産後クライシス」という言葉を見かけました。
2~3年前から使われるようになった
「女性が出産したあとに訪れる夫婦の危機」を意味しています。

産経新聞の記事によれば「女性は出産を経て母性のスイッチが入り
目の前の赤ちゃんに集中する。24時間ずっと緊張状態が続く生活
に疲れ、夫にまで気を配れなくなる。また、女性の母乳の出をよく
するホルモン、プロラクチンは排卵を抑制し、授乳を続けている間
は次の子供ができない仕組みとなっている。このホルモンが分泌さ
れている間、性欲がなくなるのが一般的だ」ということだそうです。

前に「性の問題は、人類のブラックボックス」だと書きましたが
私は、実は、性の問題もまた依存症と深く関わっていると考えています。
セックスで得られる快感の正体は
脳の中で放出されるβエンドルフィンやドーパミンといった神経伝達物質で
人間に「楽しい」とか「気持ちがいい」とかの快の情動を感じさせます。

私は男ではないから分かりませんが
セックスによって得られる快感は、男性の場合は、女性に比べて
瞬間的ではあるけれども、すごく直接的で強烈なのだろうと思います。
多くの男性は思春期以降、この性的な快感への渇望と衝動を抱えています。

結婚は、本来はそれを充足できるはずなのですが
母親になる女性にとって、性は「あっは~ん」とか「うっふ~ん」とか
言っておけばそれでいいというものではなく
妊娠、出産、育児という、生物としての大きなサイクルの入り口なわけです。
一方、本当かどうか知りませんが
男性の多くは「セックスできるお母さんが欲しいのだ」という説があります。

この男性と女性の、性や結婚、出産や育児に対する認識の差が
「産後クライシス」という話に現れていると思います。
「出産を機に妻が豹変した」「夫が家事や育児に協力してくれない」
こうなると、それぞれの主張は平行線で、歩み寄ることは難しいです。

男性は、仕事のストレスを、充実した夫婦生活で癒したいのに
妻は子どものことばかりで、自分をかまってくれない。
それならと浮気に走ったり
手近で似たような快感を手に入れられるお酒やギャンブルに
ストレス発散の場を求め、そのあげく依存症になってしまったり
というような例は、若い夫婦だけでなく、30代、40代、50代と、
実はものすごく多いような気がします。

うちも二十数年にわたって、クライシス(危機)どころか
夫婦関係については完全に崩壊状態でした。
そして、ターニングポイントは、やはり出産だったと思います。
産後間もない頃に起きた小さな出来事で
私は、父親としての自覚が感じられないダンナに早々と見切りをつけました。

その後ギャンブルにハマって借金を作り、女性問題を起こし
度々家族を危機にさらしたダンナに
どんな人間的な尊敬も愛情も感じることはできない私と
仕事のストレスや、家族からの疎外感といった鬱々とした思いを
うまく表現することができなかったダンナの
気持ちを理解することはできても
お互いの間にある溝を埋めることは結局できませんでした。
みんながそうというわけではないのでしょうが
少なくとも私にとっては、セックスは愛情の表現ではなかったのです。

最近ではネットの中には、エロ動画が山ほどあります。
アヤしい業界の人たちが作った、シャブ漬けのお姉さんたちの
そのものずばりの映像が氾濫しています。
思春期の子供たち(特に男の子ですが)が、最初に出会う性の世界が
ああいう異常なものであり
性=快楽というゆがんだ認識に捉えられてしまうと
その後の人生や女性との関わり方に色々な問題が生じるように思えます。

私はけして性が汚ない、恥ずかしいものだとは思っていません。
15年以上前に、岡崎京子さんの「リバーズ・エッジ」という漫画を読んで

その中にあった主人公ハルナの、セックスに対する感想
①想像していたのよりたいしたことない
②想像していたのよりへんなことだ
(あのへんなかっこう へんなうごき)
③相手に対して特殊な感情をもちやすい
④生殖を目的としないセックスというものは
 色々むじゅんとナゾがある
というのに「ああ、わかるわかる」と思いました。

岡崎京子さんが描いたような、等身大の、クールな女の子たちの感覚と比べると
我慢強くて、優しくて、まるでマリア様みたいなスポコン漫画のヒロインと
エロ本、エロ漫画、エロ動画の女性の情報を組み合わせて出来上がっているような
男子、あるいは男性たちの、理想の女性像は大丈夫なのかと思います。

情報が少なくて、世の中がそれまで伝承されてきたならわしによって
動いていた時代には、結婚も子育ても
いろいろ不都合がありつつも、親の世代のやり方で何とか動いていました。
けれど、これだけ情報が豊富になって
ひとりひとりの価値観が違ってくると
恋愛も、性も、結婚も、出産も、育児も
それぞれが描いているイメージが大きく違ってきているように思えます。
「産後クライシス」という現象は
男性と女性の、この実は大きく隔たっている認識の
一つの現れなのではないかと思えるのです。

お互いに、相手に対して求めるばかりだと
どこまでいっても、理想の形は実現しません。
けれど、相手に何も求めないのだったら
そもそも結婚する意味がありません。
前に後藤先生が「動機づけ」のお話で
「人間関係はお互い様が理想なのです」と言われていました。
本当にそうだと思います。とても難しいですけど。







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在宅看護のお話を聞きにいきました

2015-09-19 15:19:58 | 癌のこと
前回の通院日に
今診ていただいている病院で、月に一度開催されている
がんの患者さん向けの、ミニ講習会の案内をもらったので行ってきました。

今回のテーマは「なるほど!訪問看護」
近年増え続ける医療費抑制の対策という観点から
在宅医療、在宅看護や介護が推奨されるようになりました。
特に高齢者の場合は規則があるようで、つい最近も
知り合いの人から「母が2ヶ月しか入院させてもらえず
転院しても、そこも2ヶ月なのでとても困っている」という話を聞きました。

そのあたりが、がんの場合はどうなのかとか
費用はどのくらいかかるのかとか
どんな手続きが必要なのかとかについて
訪問看護の看護師さんのお話を聞いてきました。

やはり病院側としては、ベッド数には限りがあるので
在宅看護の良いところをPRされていましたし
家族をフォローする体制も充実していることをアピールされていました。
けれど、もしも病状が悪化して入院になった場合でも
「2ヶ月経ったから、3ヶ月経ったから
退院してください」というようなことはないと言われました。

実は前回の受診の時に、主治医の先生から
「一度病棟の見学をしておかれませんか」というお勧めもあったので
来月の受診日は、この前のCTの結果も出るし
久しぶりに家族と一緒に、診察や病棟の見学をするつもりです。

これからいつごろどうなるのかは、私自身にも
おそらく先生にも正確なところは分からないようなのですが
最終的にどうなるかということは決まっているわけですから
そのあたりを、家族にも一緒に考えてもらわなければなりません。
心の中では「えっ、あの人がんじゃなかったっけ」と言われるように
ある日突然コロッと死ぬのが理想ですが
さすがにそればかりは、病気が病気なだけに無理なような気がします。

などと言いつつ、実は本を全部読んでしまって
その補充のためにブックオフに行くことが
もう一つの目的でした。
去年は、本にせよ何にせよ「あとどれだけ必要かも分からないのに
新しいものを買うのはもったいない」と
かなりストイックになっていましたが
ここにきて、本と映画だけは、完全に開き直りました。
ただしいずれ処分してもいいように
一生懸命100円均一で掘り出し物を探しています。

という訳で「現役の国会議員が中国のスパイ?」という
曽根圭介さんのハードボイルド「沈底魚」
骨髄移植のドナーをめぐる連続殺人事件を描いた
高野和明さんの「グレイヴディッガー」

高野さんのは「13階段」は映画を観て今いちだったんですが
「ジェノサイド」がすごく面白かったので。

それと伊坂幸太郎さんの、まだ未読の「グラスホッパー」
そして、一冊くらい新しい人のも読んでみようと
真梨幸子さん「殺人鬼フジコの衝動」

さらさら読めるものを買うと、あっというまに終わってしまうので
なるべく重量感のある、読んでへとへとになるようなものを選びました。
この4冊で、何とか2週間くらいはもたせなくてはと思っています。





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依存症と脳の話(3) 古い脳と新しい脳

2015-09-15 15:03:41 | 依存症
本当は一番最初にこれを書くべきだったかと
今へこんでいます。前にも書きましたが、インプットした情報を
あまり興味のない方にも、分かりやすく読んでもらうには
どうすればいいのかという、情報を整理する能力に欠けています。
と愚痴を言っても始まらないので…

脳はとても大きく分けて二つに分かれています。
「古い脳」と「新しい脳」と呼ばれることが多いようです。

古い脳と呼ばれるのは、人間以外の動物にもある脳幹や大脳辺縁系で
生物の生存に関わる、食欲、排泄欲、睡眠欲、性欲
それと、快不快、不安や恐怖、なわばり、仲間づくり、攻撃、危険回避
などの本能や情動に関する機能をつかさどる部分です。

「新しい脳」と呼ばれるのは高等哺乳類で発達している
大脳新皮質(前頭葉、後頭葉、側頭葉、前頂葉)です。
ここは視覚や言語や記憶、意欲や興味
脳の他の部分に対する抑制などのコントロールといった
高い学習能力や判断をつかさどっています。

この大脳新皮質の、特に前頭葉の前頭前野という部分を
中心にしたコントロールは
本来は古い脳全体に働くようになっています。
しかし当然のことながら
赤ちゃんの脳にはそういう高度な能力はないのですから
新しい脳である大脳新皮質の働きは、色々なことを学習することによって
成長とともに獲得し、発達していくものと思われます。

人間が人間らしく行動できるためには
本能や情動に基づく欲求を
大脳皮質の働きによってコントロールできることが理想です。
けれど古い脳から発せられる欲求は
ものすごく強力なものなので
大脳新皮質によるコントロールがきかなくなり
古い脳が新しい脳を支配してしまう
これが、脳の構造という面から見た依存症の形なのだろうと思います。

他には古い脳で情動が発生する時間と
新しい脳での情報処理の速度の違いです。
食欲とか性欲、快不快、不安や恐怖によって起こる情動は
ほんのわずかなステップで起きるので
新しい脳による、たくさんのステップを必要とする
つまり時間がかかる高度な判断が追いついていかない。
その結果古い脳が新しい脳を支配してしまうという事態が起こります。
この脳の構造を理解すると
依存症の衝動を、理性や意志の力で止めることができないと
言われている理由も少し理解できます。

そしてそこには、前に書いた神経伝達物質も
大きく関わっているのですが
神経伝達物質については、かなり難しいので
まだまだ勉強中です。

なぜこんな愚にもつかないことを延々と書いていくかと言えば
ギャンブル依存症者のご家族はもちろんですが
子どものスマホやネットの依存に悩んでいる親御さんに
依存症というものを、色々な角度から理解してほしいと思っているからです。

理由については、あくまで私の憶測に過ぎないのでここには書けませんが
あと3年とか5年とかしたら
薬物依存の問題が激増してくるのではないかと深く危惧しています。
前にも書きましたが、最近の薬物は、昔のように
注射などというような、おどろおどろしいものではありません。
まったく薬物などとは思わせないような形で
本当に得体が知れないものが、私たちの身近に出現し
しかも小学生にまでスマホが浸透してきましたから
予想もしないところから、予想もしない形で
薬物が日常に進入してくる可能性は大きいと思います。

少し調べてみたら、2010年のアメリカの調査で
12才以上のアメリカ人の、約2260万人が
調査の日からさかのぼって1ヶ月以内に、何らかの違法薬物を使用した
という結果が出ています。これは12才以上の人口のおよそ8.9%
12才以上といったら、小学6年から中学1年
日本もけして対岸の火事、ひとごとではないと思います。

薬物も、ギャンブルも、アルコールも、スマホやネットも
スーパーコンピューターの何十倍もの性能を持つといわれる
精密な人間の脳を破壊する可能性があるという点では同じです。
依存症とは何なのか、どうすれば病気になることを回避できるのか
もしも病気の領域に入ってしまったら
回復するためにはどういう方法があるのか
まずは関心のある方からだけでも、有意義な情報は共有し
有効に活用していただけたらと願っています。



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ささやかな生きがい

2015-09-07 15:17:22 | 社会・生活
ここへきてまた「本読みたい病」と「映画観たい病」が
重症化しています。

その理由の一つは、やはり頭の片隅に
何となく自分の残り時間という意識があるからだろうと思います。
もう一つはやはり伊藤計劃さんの影響です。
伊藤さんのおかげで、ずいぶん本や映画の趣味が変わりました。
黒沢清監督の「回路」とか、リドリー・スコット監督の
「ブレードランナー」とか、伊藤さんが高評価な映画で
私も大好きというものがあって、すごく嬉しかったです。

そして、もう一つは、家族が貸してくれた「ほんとねこ」
という漫画。作者はスズシロさんという書店員さんで
優しいダンナさんと2匹の猫ちゃんとの生活を
ブログの漫画に描いておられたのが、書籍化されたものです。
私の家族や知人はみんな、とにかく猫に関するものを
身近に置けば、私の免疫力がアップするだろうと
思っているふしがあって、猫グッズを送ってくれたり
猫の写真や、猫が出てくる本やらを持ってきてくれます。
本当にありがたいことです。

その書店員のスズシロさんが大の本好きで、映画好きで
ゲームも好きという方なんですけど
一度に何冊もの本を同時に読めるというつわものです。
こういう方は、本屋さんで働く適性があると思います。
私のように、本も映画も好き嫌いが激しく
もの凄く好みが偏っている人間は、本は好きでも本屋には向きません。
実は20代の頃に、一度本屋に就職しましたが、3ヶ月で辞めました。

そのスズシロさんの漫画「ほんとねこ」を読んでいて
心の底から「ああ、やっぱり本っていいよなぁ」と
改めて思ってしまったわけです。

家にテレビがなかった見返りに
物心ついた時から、映画と本はすぐ身近にありました。
そして映画や本の中には、自分と同じ感じ方、考え方をする人が
たくさんいました。実生活では、話しても理解してもらえないか
言ってもドン引きされそうな話も、本の中には幾らでもあります。
伊藤さんのブログの中に「文庫本だけが友だちの高校生なんて
そんなもの」という自嘲的な一節がありましたが
私もまさにその口だった一人です。

近年若者のコミュ障(コミュニケーション障害)とか
友だちがいない、自分の気持ちを正直に話せる人がいないというのは
よく聞く話ですが、実は本や映画の中には同類がいっぱいいます。
私にしても、自分の身近にいる人で、自分と趣味が一緒という人には
60年生きてきて、いまだかつて一人も出会ったことがないのですが
本や映画の中だったら結構見つかります。

最近映画のブロガーさんの記事を読むことが増えました。
アクション映画が大好きな方、特撮映画のマニアらしき方
中には私と同じ、ごくごく普通の主婦で
ホラー映画とゴア(残虐)描写のある映画が大好きという
すごくシンパシーを感じてしまうブロガーさんもおられます。
自分と趣味が同じでなくとも、読んでいるだけで楽しいです。

何よりも、あくまでも人に迷惑をかけない範囲で
自分の生きがいと思えるものを持つこと
心から楽しいと思える瞬間があること
それが長い目で見たら
生きていく上での理想であり幸せのように思えます。

やはり伊藤さんのブログに
「金曜日に胸開いて火曜日に退院。びっくりです。
痛くて横になることもできないのに。左腕で何かを
支えると悲鳴をあげたくなるのに。
というわけで家の布団に座り込んで、ひたすら「24」を
見ることにしました」
まさに鬼です。自分にこの真似ができるかなと思います。
まあそんなことをするのは馬鹿だと思う方も多いでしょうが
でも憧れます。

今後病状が変化して、治療やお薬の変更ということになるにしても
せめてぎりぎりまで本が読めるということが、唯一の願いです。
実は前の病院で最後に提示された注射のホルモン剤は
治療費が高額だったこともありますが
副作用に白内障があったのでスタコラ逃げました。
残り時間が限られているなら、せめて自分の好きなものたちと
幸せな時間を過ごしていきたいです。

というわけで注文していた「死神の浮力」が
アマゾンから到着しました。
秋の夜長はやっぱり読書が最高です。

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通院日&ブックオフ

2015-09-02 16:37:44 | 癌のこと
昨日は通院日でした。
夜勤明けで生ける屍状態のダンナには
少し早めにお昼ご飯を食べて、寝ていてもらうことにして
涼しくもなったことだし、チャリで行きました。

ダンナと一緒だと、ブックオフでゆっくり本を探し辛いので
1時間くらい早めに行って、本を物色しようとウキウキでした。
第一希望の、伊坂幸太郎さんの「死神の浮力」は残念ながらなくて
それじゃあと探していたら、前に買った「最悪」の
奥田英朗さんの「邪魔」(上・下)が100円コーナーにありました。
それと吉田修一さんの「パレード」をゲット。

予想通り「邪魔」は、ごくごく平凡な主婦や会社員や警察官が
日常のささいな出来事の積み重ねでどんどん壊れていくという
その何とも言えないおぞましさと救いのなさは
こういう話に免疫がない人が読んだら
一発で人間不信になりそうな強烈な代物でした。
奥田さんの初期の作品は
ものすごくリアルに、人間や社会を描いています。
ここまで書けることが凄いです。
「パレード」は、まだ読んでいませんが
「邪魔」よりは、ほんの少しソフトなのではないかと思います。

長年こうして裏側から人間や社会を描いたものに触れていると
たいていのことがあっても絶望しにくくなります。
わりとどんなことでも「ああ、ありだよな」と免疫ができます。
それを容認できるかはともかく想定内のキャパが広がります。

というわけで、最近無性に「本読みたい病」と「映画観たい病」です。
まあ今に始まったことではないのですが。
映画は「ザ・リング」「ミスト」「her/世界でひとつの彼女」
あと、ハリケーンに巻き込まれて空に舞い上がった大量のサメが
落下してきて人間を襲う、というやつ。題名忘れました。
これは前に観た「ピラニア」といい勝負のおバカ映画でした。

いつもの通り、患部の診察でしたが
前回のCTから10ヶ月経つので、CTも撮ってもらいました。
それと「一度、できればご家族も一緒に
緩和ケアの病棟を見学にこられませんか」というお勧めがありました。

相変わらず鎮痛剤が必要になるような痛みはなく
患部からの出血や滲出液の量も、増えもせず減りもせずといった感じですが
体力が少しづつ落ちてきているというのは、体の感覚としてあります。
この時期ですから、夏の暑さのダメージとかもあるのでしょうが。
先生に言うと「まあ、私なんかも年々衰えを感じますから」と
暗に「年のせいもあるかも」的コメントで、つい笑ってしまいます。

緩和ケアでの治療というのは
「治らない」「今以上によくなることはない」というのが大前提で
患者である私も、先生も、そこには暗黙の了解があります。
その上で、私はどうしたいのか
どんなふうに一日一日を生きていきたいのかを
考えてくださる治療だと思います。
もしも私が希望するならば、患部の放射線治療を受けることも可能だし
薬も大体希望通りのものを処方してもらえます。
先生曰く「まあ、気休めですけど」
先生、それを言っちゃあおしめぇよと心の中で突っ込んでいますが。

冗談はともかく、体力が落ちてきている原因として考えられるのが
やはり転移をしている肝臓の患部の変化なので
今回「CTを撮ってみましょうか」ということになりました。
これも先生曰く「肝臓は80%くらいガン細胞が広がっても
何とか働いてくれたりしますから」と、まったく
おどかしているんだか、なぐさめてくれているんだか(笑)

でもこの超越っぷりが、私とは相性抜群で
こちらの望んでいることが、くどくど言わなくても
すっと通じますから、本当にドクター運には恵まれています。

もともと、旅行に行きたいとか○○食べたいとかいう願望は薄いのですが
やっぱり本は読みたい、無性に読みたい。
「あんだけ断舎利したのに、また買うか」という心の葛藤はありましたが
そこは「読みたい」という心の声に従うことにしました。
というわけで「死神の浮力」はアマゾンで入手することにしました。



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