昨年アニメ化決定が報じられていた
伊藤計劃さんの小説「虐殺器官」と「ハーモニー」
今年前半は進展がなくてやきもきしていましたが
まずは伊藤さんと円城塔さんの共著である「屍者の帝国」のアニメ映画が完成し
いよいよ来週から公開されます。
「屍者の帝国」は、伊藤さんが残された30枚ほどの遺稿を
円城塔さんが書き継いで完成された作品です。
十九世紀末のロンドン。
死人に疑似霊素というものをインストールして屍者を作る技術が普及し
各国で、労働用や軍事用として
動く死体としての屍者が普及している世界。
ロンドン大学の医学生ワトソンは
大英帝国諜報機関の命を受けて
人間と同様の知能を持ち、言語を喋ることができたと言われる
人類最初の屍者「ザ・ワン」の謎を解明するべく
インド、ロシア、日本、そしてアメリカ大陸を駆ける。
フランケンシュタイン、カラマーゾフ兄弟、ヴァン・ヘルシンクetc
歴史や文学に出てくる有名人たちが大活躍します。
九割がた円城さんの筆による小説なので
「伊藤さんの作品とは違う」と言われる方もありますが
史実とか、あらゆる整合性をぶっとばして疾走する
壮大な与太話という大枠では、伊藤さんがめざした世界観と
それほどかけ離れてはいないように思えます。
そして何よりも、この「屍者の帝国」は
志半ばにして旅立たれた伊藤計劃さんに捧げられた円城さんの
オマージュであり、レクイエムなのだと思います。
「屍者の帝国」の終り近くにこんな一節があります。
「ほんの三年に満たない旅にすぎなかったが、かけがえのない
得がたい日々をあなたと過ごした。(中略)あなたの物語を
つなぐ手伝いを上手くできたか甚だ心許ないが、収支はまだ
先のこととしてもらえればありがたい。
せめてただほんの一言をあなたに聞いてもらいたい。
「ありがとう」」
これを最初に読んだ時は、泣きました。
ストーリーの中に織り込まれてはいますが
円城さん本人の、伊藤さんに対する思いがあふれています。
伊藤さんは「物語」というものに
強いこだわりを持っておられました。
「これがわたし
これがわたしというフィクション
わたしはあなたの体に宿りたい。
あなたの口によって更に他者に語り継がれたい」
こちらは伊藤さん自身の言葉です。
SF初心者、なんちゃってSFファンの私が言うなと怒られそうですが
伊藤さんの小説を含めて、SFの世界は
一般に捉えられているほど、難解で、理解不能なものではありませんでした。
小説の世界全体が、現実社会に対する壮大なメタファーの形を取っていますから
読み手の側で、どのように解釈するのも自由です。
現実社会に対する、相当に辛辣な風刺も批判もあるし
人間の未来についての予見もあります。
最近頭がすっかりSF脳になっていて
先日の安保問題の時も「ああ、今度アメリカとか中国とかが絡んで
戦争始まったら、もう地球滅亡、人類破滅のレベルだから
どっちにしても大して変わらないよ」と言って
家族の冷たい視線を浴びました。
「屍者の帝国」もちろん観に行きます。
「屍者の帝国」も「虐殺器官」も「ハーモニー」も
あれほど密度の濃いストーリーを
二時間という枠の中で全て表現できるとは思っていません。
けれど、どういう形にせよ
伊藤計劃という魅力的なSF作家の名前と
伊藤さんが語った物語は、映画を観た人によって
語り継がれていきます。
そしてそれが、伊藤さんが心から望んでおられたことなのではないかと思います。
伊藤計劃さんの小説「虐殺器官」と「ハーモニー」
今年前半は進展がなくてやきもきしていましたが
まずは伊藤さんと円城塔さんの共著である「屍者の帝国」のアニメ映画が完成し
いよいよ来週から公開されます。
「屍者の帝国」は、伊藤さんが残された30枚ほどの遺稿を
円城塔さんが書き継いで完成された作品です。
十九世紀末のロンドン。
死人に疑似霊素というものをインストールして屍者を作る技術が普及し
各国で、労働用や軍事用として
動く死体としての屍者が普及している世界。
ロンドン大学の医学生ワトソンは
大英帝国諜報機関の命を受けて
人間と同様の知能を持ち、言語を喋ることができたと言われる
人類最初の屍者「ザ・ワン」の謎を解明するべく
インド、ロシア、日本、そしてアメリカ大陸を駆ける。
フランケンシュタイン、カラマーゾフ兄弟、ヴァン・ヘルシンクetc
歴史や文学に出てくる有名人たちが大活躍します。
九割がた円城さんの筆による小説なので
「伊藤さんの作品とは違う」と言われる方もありますが
史実とか、あらゆる整合性をぶっとばして疾走する
壮大な与太話という大枠では、伊藤さんがめざした世界観と
それほどかけ離れてはいないように思えます。
そして何よりも、この「屍者の帝国」は
志半ばにして旅立たれた伊藤計劃さんに捧げられた円城さんの
オマージュであり、レクイエムなのだと思います。
「屍者の帝国」の終り近くにこんな一節があります。
「ほんの三年に満たない旅にすぎなかったが、かけがえのない
得がたい日々をあなたと過ごした。(中略)あなたの物語を
つなぐ手伝いを上手くできたか甚だ心許ないが、収支はまだ
先のこととしてもらえればありがたい。
せめてただほんの一言をあなたに聞いてもらいたい。
「ありがとう」」
これを最初に読んだ時は、泣きました。
ストーリーの中に織り込まれてはいますが
円城さん本人の、伊藤さんに対する思いがあふれています。
伊藤さんは「物語」というものに
強いこだわりを持っておられました。
「これがわたし
これがわたしというフィクション
わたしはあなたの体に宿りたい。
あなたの口によって更に他者に語り継がれたい」
こちらは伊藤さん自身の言葉です。
SF初心者、なんちゃってSFファンの私が言うなと怒られそうですが
伊藤さんの小説を含めて、SFの世界は
一般に捉えられているほど、難解で、理解不能なものではありませんでした。
小説の世界全体が、現実社会に対する壮大なメタファーの形を取っていますから
読み手の側で、どのように解釈するのも自由です。
現実社会に対する、相当に辛辣な風刺も批判もあるし
人間の未来についての予見もあります。
最近頭がすっかりSF脳になっていて
先日の安保問題の時も「ああ、今度アメリカとか中国とかが絡んで
戦争始まったら、もう地球滅亡、人類破滅のレベルだから
どっちにしても大して変わらないよ」と言って
家族の冷たい視線を浴びました。
「屍者の帝国」もちろん観に行きます。
「屍者の帝国」も「虐殺器官」も「ハーモニー」も
あれほど密度の濃いストーリーを
二時間という枠の中で全て表現できるとは思っていません。
けれど、どういう形にせよ
伊藤計劃という魅力的なSF作家の名前と
伊藤さんが語った物語は、映画を観た人によって
語り継がれていきます。
そしてそれが、伊藤さんが心から望んでおられたことなのではないかと思います。
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