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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

明日ジャパンマック福岡開設4周年セミナーがあります

2017-10-14 15:06:20 | ギャンブル依存症
お知らせがぎりぎりになってしまいましたが

明日「ジャパンマック福岡開設4周年セミナー」があります。

 日時 10月15日(日) 11時~16時 開場 10時半
 会場 あいれふ 10階 講堂 福岡市中央区舞鶴2丁目5番1号 
        地下鉄「赤坂」駅から徒歩4分

 内容  依存症からの回復体験講演会と
     
     NPO法人ジャパンマック岡崎直人氏
     福岡市精神保健福祉センター 所長 本田洋子氏の講演

 事前の申し込みは不要で、依存症に関心、興味のある方なら
 誰でも参加できます。参加費は無料
 12時から13時は昼食の休憩時間で、昼食は各自で用意。

昨年は午後の部ですが参加できたので、もう一年も経つのかと
ちょっとしみじみしてしまいました。
今年は…。さすがに、遠出をしたり、長時間出かけることが
だんだん難しくなってきています。日によって、体調に波があり
当日にならないと、行けるかどうかわからないという感じです。

ジャパンマック福岡では、12ステップを活用したマックプログラムによって
アルコール、薬物、ギャンブルをはじめ、買い物や借金や性
携帯(スマホやゲーム)など、様々なものへの依存からの回復をめざす
取り組みが行われています。

私も今まで参加したセミナーなどで、様々な依存症からの回復の過程にある
人たちの体験談を聞きました。ほとんどの人が、最初は半信半疑で
あるいは、ミーティングに参加するのが嫌だったというところからスタートして
挫折もあり迷いもある中で、プログラムを続け、自助グループに参加して
現在も、依存の対象となるものを止め続けることができているという話でした。
またジャパンマック福岡では、本人だけでなく、家族の回復、支援のために
継続的にクラフト勉強会や家族のための勉強会も開催されています。

日々報道される事件のニュースを聞いていると
問題を家族の中だけで抱え込み、なんとか自分たちで解決しようと無理をして
悲劇的な結末を招いてしまったという例が、あとを絶ちません。
依存なりなんなりの問題を抱える本人を変えることは簡単ではありませんが
家族が外の世界に目を向ければ、相談できる場所は必ずあります。

ダンナが介護の仕事をしているので、先日も
「昔は、親を施設に入れることにすごく抵抗があったよね。
家族が世話をしないのは薄情だとか、人の目を気にしたりね。
でも、今は地方でも、親を施設に入れたり、デイサービスに通わせたり
介護のプロに頼むことがずいぶん普通になったのは、すごくいいことだよね。
子育ての悩みとか依存症のこととかも、相談できるところに相談して
助けてもらうのが当たり前という感じになればいいのに」という話をしました。

依存症の自助グループというと、すごく特殊なものと思われる方もあるでしょうが
例えば、体や心の様々な病気であれば患者会というのがあって
自分の思いを話したり、病気の情報を交換したりされています。
依存症の自助グループの場合は、12ステッププログラムに基づいて
仲間同士が支えあうことで、止め続けることができたという長い実績が
あるので、それが踏襲されています。

体験発表を聴いても、プログラムへの取り組み方、向き合い方
理解の仕方は人それぞれという感じで
いつまでに、第〇ステップまで終わらせるとか
何が何でも12ステップまで終わらせなければいけないというような
性質のものでもないようなので、あくまで各々が、理解可能、実行可能な
範囲で取り組まれているように感じました。

そういう色々な方の体験談を聞く中で、改めて
本人の回復に絶対に必要なのは「○○を止めたいという願い」なのだと
思いました。「ギャンブルのない、それまでとは全然別の人生を生きたい」
という痛切な願いがあれば、12ステッププログラムと
自助グループでの仲間の支えによって回復ができる可能性があるし
ほかの、例えば認知行動療法などでも
それが自分に合いさえすれば、回復していくことができるように思います。

奇しくもダンナがギャンブル依存症になったせいで
好むと好まざるとにかかわらず、こうしてギャンブル依存症について
あれやこれやと勉強したり、書いたりする人生になりましたが
もしもジャパンマック福岡と関りを持たず、セミナーや勉強会にも行かず
ただ借金の問題を解決しただけで終わっていたら
私は、昔と同じように、今でも心の中でダンナを恨み続けていたかもしれません。
ギャンブル依存症や依存症全般について
色んな方のお話を聞いたことで、世界は格段に広がりました。

このブログで何回も書いていますが
どんな依存の問題があるにせよ、同じ問題を抱えた人たち
あるいは依存症者の家族の方々や援助者の人たちとの出会いで
得るものがたくさんあります。
こういう機会を利用して、同じ問題を共有する
外の世界の人たちとつながり
少しでも、問題を解決する糸口を見つけていただけるように
願ってやみません。

 

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依存症と末期がん

2017-06-08 10:43:24 | ギャンブル依存症
ギャンブル依存症対策については
国の方針がこうと決まるまでは
何を言っても、推測の域を出ないのではありますが。

ただこれまで、ギャンブル依存症者や家族の回復は
長い間、ジャパンマックやGAやギヤマノンといった
12ステッププログラムに沿った回復施設や自助グループ
あるいはアルコール依存症の治療の実績がある
数少ない医療機関が担ってきました。


精神福祉センターや保健所に相談しても、そうした医療機関を紹介されるか
本人だったら「GAに行ってください」家族であれば「ギヤマノンへ」と
ほぼ丸投げされていたのが現実でした。
そして自助グループでは「ギャンブルをやめる」ことが大前提です。

国のギャンブル依存症対策の指針がどのようなものになるにせよ
これまで自助グループで回復に取り組んでこられた、本人や家族の人たち
セミナーなどでギャンブル依存症の回復について学んでこられた
援助職の人たちにとって、「ギャンブル依存症は自然治癒もある病気です。
必ずしもギャンブルを止めなくてもいいですよ」という
晴天の霹靂みたいな話が出てくると
とても困惑されるだろうし、混乱もされるのではないかと
いやホント、余計なおせっかいだということは百も承知で
「ギャンブル依存症について、こういう最新の学説
治療法が登場しています」という
情報を発信してみたわけです。

十年前の私が、このニュースを聞いたら
「こんなの絶対業者と医療界と厚労省の癒着だ!」と
頭から火を噴いていたかもしれません。
それが、今では「この話の根拠はなんなのか」を冷静に、客観的に
調べたり考えたりできるようになったので
ずいぶん大人にもなったし、丸くもなったと自画自賛しています。(嘘です)

この変化の根底には、自分ががんという病気になったことも大きく影響しています。
依存症もがんも、科学的なメカニズムは
まだ完全には解明されていません。
だから、がんであれば、新しい学説がでてきたら
新しい治療法やお薬が開発されて、実用化されますが
ステージ4の末期がんが治るというような治療は、まだほとんどありません。

ですから、あとは自分自身の選択になります。
エビデンスに基づいた標準治療
お金に糸目をつけなければ、最新の治療や新薬やオンコロジー
少量の抗がん剤治療や休眠療法
緩和ケアでの疼痛コントロールや放置療法に至るまで
どの治療が可能か、どういう治療を受けたいかを自分で決めるわけです。

依存症も同じで、特にギャンブル依存症の場合は
医学的な対処法(投薬、注射、化学療法など)がないことは
前出の河本先生も明言されているところで
心理学的アプローチでのいくつかの選択肢がある中から
自分はこの方法で回復しようと決めて回復に取り組むことが最善です。
ですから、たとえ最新の学説であっても
それも選択肢の一つととらえるほうが良いのではないかと思います。

ギャンブル依存症の勉強を始めた頃には
回復するためには、自助グループのミーティングに参加して
12ステッププログラムを実践することで
ギャンブルを止め続け、ギャンブルに依存しない生き方を見出す
それが唯一の正解だと思っていましたから
このブログでも、以前の記事ではそんなふうに書いています。

その後認知行動療法などの精神医療的なアプローチもあり
早期であれば、動機づけ面接なども有効
横浜のワンデーポートのような、独自のカリキュラムに基づく回復施設など
必ずしも12ステッププログラムによらない回復があることも知りました。
ですから、最近は、自分が心の底から回復したいと望むなら
どのやり方でも回復の可能性はあるのではないかと考えています。

けれど私にとって、依存症やその治療について学んだことや
12ステッププログラムとの出会い

例えば、ハンドブックの表紙に書かれた「ニーバーの祈り」の

「神さま、私にお与えください
自分に変えられないものを
受け入れる落ち着きを!」という言葉や
「今日一日」という考え方は
生きていく上でも、がんと向き合う時にも
とても大きな意味を持ちました。

ですから、こうした従来からの考え方とは180度違う考え方が
「新しい学説」として出てきたとしても
そのために、これまでの考え方ややり方が否定されるべきではないし
どの方法でも回復の可能性はあるという
ゆるやかな認識が広がってくれたらいいなというふうに思っています。


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ギャンブル依存症対策の行方(2)

2017-06-02 15:28:07 | ギャンブル依存症
政治の動きとしては
現在「ギャンブル等依存症対策基本法案」が国会に提出されていて
今期の国会での成立を目指しているようです。

法案の内容はネットでも読むことができましたが
今の段階では国と地方公共団体、医療機関、精神保健福祉センター、保健所
その他の関係機関で連携して
ギャンブル依存症などの対策に取り組みましょうという
あくまでも総論的な内容で、対策の具体的な中身は
法案が決まってからということなのでしょう。

具体策としては、都道府県や市の精神福祉センターや保健所に
専門の相談窓口が設けられるとか
対応してくれる医療機関が増えるとかになると思われます。
その場合の、治療やアドバイスの指針になるのが
ギャンブル依存症が発生した初期から治療にあたられた田辺等先生や
久里浜医療センターでギャンブル依存症治療外来を開設された
河本泰信先生のような専門家の方の見解ではないかと考えられるので
そこを少し勉強してみたかったのです。

その河本先生が、「明日を拓く」という日遊協(パチンコパチスロ関連企業の業界団体)
のインタビューに答えられている中で
もう少し専門的な内容をお話しされていました。
冒頭には「相談者の9割はパチンコやめろとは言いません。
症状の見極めが重要です」というコメントが書かれています。

DSM-5の診断基準では9つの項目があり
重症度の分類は、4~5つ該当すれば軽度、6~7つは中等度 8~9つで重症
経緯分類では 慢性進行型と単発型に分けられています。

治療に関しては、医療モデルを医学モデルと心理的モデルに分けてあります。
医学モデルは、依存症のメカニズムと考えられている
脳内報酬系における神経伝達物質の変化、つまりドーパミンの異常については
結局薬物投与などの、確立された治療法はないということ。

それで依存症の分析と治療には「認知モデルⅠ・Ⅱ」と「力動モデル」という
心理的モデルが用いられますが、河本先生が実践されているのが
「認知モデルⅡ」に基づいた治療、即ち金銭欲から離れ
他の目的に転化するというもので、ほとんどの患者がギャンブルを止めるか
小遣い範囲のギャンブルに戻っているということです。

まあ家族のギャンブルの問題に何十年も振り回されてきた家族からすれば
そんなに簡単な話かなあと、眉に唾をつけたくもなる訳ですが
これがアメリカの精神医学会の最新の知見に基づく治療ですと言われたら
そうですかという他はありません。

ただ河本先生のように、立派な治療実績のある専門家の先生が
日本中に何千人もおられて、ギャンブル依存症の人がみんな
最新の治療を受けられるというような現状ではありません。

泥縄式のギャンブル依存症対策で
精神保健センターや保健所などの公的な機関や、業界の人なんかで
何回かギャンブル依存症の研修を受けた人たちが
相談窓口の相談員として、この最新の学説の一部だけを理解して
「ほとんどの人は自然に治ります。
必ずしもギャンブルを止める必要はありません」というようなアドバイスをしたり
専門家ではないのに「この人は精神的な疾患だろう。
この人は発達障害があるだろう」と仕分けをしたり
というような展開になったりはしないだろうなと
こういう問題に関しては、何しろ今までが今までですし
ついつい、あれやこれやと予期不安の塊になるわけで
これが全て、超マイナー思考の病人の妄想、杞憂であることを願っています。

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「ギャンブル依存症」と「ギャンブル(ギャンブリング)障害」

2017-05-27 16:29:17 | ギャンブル依存症
前のブログで書いた「ギャンブル依存症」と「ギャンブリング障害」という病名。
書いていて、なんだかあいまいな気がしたので
ネットで調べられる範囲で調べてみました。

DSMという、アメリカの精神医学会が発行している診断マニュアル書があります。
このDSMの2013年版DSM-5において
いわゆるギャンブル依存症が正式に精神疾患として採用され
診断名が「ギャンブル障害」になったということです。
ちなみにDSM-5においては
アルコール依存症はアルコール使用障害、大麻であれば大麻使用障害が病名になります。

このブログでリンクさせていただいているHP「心の家路」のブログに
「DSM-5ドラフトでは用語「依存」使用せず、その意図を読み解く」という詳細な考察がありました。
これがまたややこしい話なのですが、ざっくり言えば
DSM-5では「依存」と「乱用」という概念を失くし「障害」に一本化した、ということのようです。

これを「最新の学説ではギャンブル依存症という病気はなくなった」というように解釈し
「だから、ギャンブル依存症という言葉を使っている人たちは
古い、間違った考え方を主張している」という風に
拡大解釈をされると、とても困ったことになります。
有名人の事件や、カジノ法案を契機に「ギャンブル依存症」という言葉は
以前よりは、一般の人たちに認知されるようになり
公的な機関の発表やマスメディアでも「ギャンブル依存症」という表現を見かけることが増えました。
そしてカジノ法案がらみで、国も「ギャンブル依存症対策」をやるという段階に来ています。

当然河本先生のような、ギャンブル依存治療の専門家の人たちも関わられるはずですから
「ギャンブル(ギャンブリング)障害」という
正式な診断名が出てくることも多くなるのではないかと思います。
アルコールや薬物の場合でも同じで
「〇〇依存症」という表現は、現在では通称(いわゆる〇〇依存症というふうに言われる)とされ
つまり表現の違いというだけで、内容は同じということなのです。
さらに、精神医療の分類にはICD WHOの国際室病分類による診断基準というのもあって
そちらではギャンブル依存症は「病的賭博」と表現されています。(ややこしい 怒)

このDSM-5において、旧マニュアルにあった
ギャンブル障害が「進行性かつ不可逆な病である」という部分が削除され
自然治癒もある(進行性とも限らず、可逆な部分もある)と定義づけられたことが
いわゆる「最新の学説」として、今後精神医療のスタンダードになる可能性は大きく
河本先生の主張も、これに沿ったものであるということが分かりました。
そして、このことは、これからの「ギャンブル依存症対策」についても
当然大きな影響力を持つのではないかと思います。

いやあ、読んでいて「この人、なんて面倒くさい人なんだ」
と思われる方も多いんじゃないかと思います。
子どもたちからも「お母さんは、怨念系だから」と言われますし
この執念深い面倒な性格のせいで、いつも頭の中がごちゃごちゃしていますから
がんなんていう病気になったのも、むべなるかなです。

でも、10年くらい前の、ダンナがパチンコ依存MAXだった時の私がこれを読んだら
「ああ、もう、依存症がどうとか、分類がどうとか、そんな理屈はどうでもいいから
とにかくダンナにパチンコやめさせる方法を教えてよ」とブチ切れていただろうなと
我ながらちょっと可笑しくもなりました。

けれども、今回のように
これまでとは180度違うような新しい考え方が出てくるというのは
さすがに想定外ではありました。
先の分からない病気持ちの私に、今から何ができるというわけでもないのですが
この前からハマっている相場英雄さんという小説家さん。
相場さんは、以前は時事通信の記者をされていた方で「フィクションの世界だったら
もう何でも書ける」と作家に転向された経歴の持ち主です。

その相場さんが「現代は自分で防衛をしていかないと、本当に誰も守ってくれない」
と語られた言葉にものすごく感動し、共感しました。
自分で防衛するというのは、何が本当かを知ることなのだろうと思います。
ダンナのギャンブル依存症が原因で、私の半生は大きく変わりました。
けれど、それはダンナのせいだけではなく、自分が無知だったせいでもあります。
ですから、たとえ怨念系と言われようが、粘着と思われようが
納得がいかないことは、ある程度理解できるまで調べて
自分なりの考えをまとめながら、共感してくださる方とシェアしていく作業は
可能な限り続けていきたいと思っています。


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ギャンブル依存症対策の行方(1)

2017-05-19 15:22:43 | ギャンブル依存症
このところの体調不良で、考えをきちんとまとめる自信がなく
保留にしていた、ギャンブル依存症対策の問題。
以前「ギャンブル依存症に新説?」というブログにも書いたのですが
どうしても腑に落ちないというか、納得がいかないことが
いくつかあるので、少しづつ書いていこうと思います。

「ギャンブル依存症に新説?」の記事は
ウィキペディアの「ギャンブル依存症」の項目について書いたものでしたが
ギャンブル依存問題で、新しい見解を打ち出されている
久里浜医療センターの河本泰信先生は、昨年実施された
「ギャンブル依存症研修プログラム」でも中心的な存在のようです。

で、この河本先生の主張のポイントは、次のようなものです。

① 以前厚労省が発表した「ギャンブル依存症536万人という数字は
  米国での調査をベースに測定したもので
  パチンコ店が繁華街に多数あり、気軽に入れる日本の現状には合わず
  実際に病的賭博、つまりギャンブル依存症という病気に該当するのは、その1割程度

② ギャンブル依存は、一生治らないというのは誤りで、多くは一時的なのめり込み。
  海外の研究では、大半の人が自然にやめるか、問題のないギャンブル習慣に戻るという
  結果が出ている

③ これまでギャンブル依存症とされてきた人の90%は
  病的なものではないので、必ずしもギャンブルをやめる必要はなく
  治療は、当事者がギャンブルで満たそうとしている様々な欲求を理解、整理し
  別の手段や、適度なギャンブルで満たせるように導くことで
  やみくもなギャンブルの禁止は、依存を悪化させることもある

上の項目は、平成25年7月に神奈川で行われた「アルコール関連予防研究会」での
河本先生の「病的ギャンブリング(ギャンブル依存)の治療と当センターでの試み」という
講演記録を参考にまとめたものです。
専門的な内容ですが、関心のある方はそちらを参照してください。

ギャンブル依存症の問題は、1990年代から急増しましたが
それから30年近く、公的な機関や医療機関で、相談や治療に対応してくれるところは
ほとんどなく、ギャンブラーの自助グループGAと、家族の自助グループギヤマノンが
数少ない受け皿になって、ギャンブラーとその家族を支えてきました。

現在ギャンブル依存症の治療に取り組んでおられる医療機関の一部も
自助グループのGAや各地のジャパンマックの施設も
依存症についての考え方や、12ステッププログラムやミーティングの方法は
先行したアルコール依存症の自助グループAAのやり方をお手本にしています。

ですから、ギャンブルが止められない、借金や犯罪などの問題を起こしたなどで
本人や家族が、そういう施設に相談に訪れた場合は
「ギャンブル依存症は病気」「ギャンブル依存症は治らない」
「自助グループに通って、ギャンブルを止め続けることが回復の基本」
というお話をされます。

河本先生の説でも、自助グループを否定されているわけではありません。
ただ、今ギャンブルの問題を抱えている多くの人の中でも
病気としての「ギャンブル依存症」と言えるのは限定的で
その中にも精神科の合併症がある人、あるいは発達障害がある人は
その合併する病気、障害の治療を優先すべきで
自助グループでの回復が有効とされているのは「非自閉型」と
分類される一部の人たちということのようです。

河本先生は、日本のアルコール依存症治療の先駆けで
依存症治療に関しての歴史も実績もある久里浜医療センターの先生で
現在ギャンブル依存症治療を担当され
「ギャンブルを禁じないギャンブル依存症治療」を実施されています。
「ギャンブル依存症研修プログラム」でも、多くの項目の講師をされています。
河本先生の提唱されている説が
国のギャンブル依存症対策の指針になる可能性は大きいような気がします。

もしもそういう流れになれば、ギャンブル依存症対策云々以前に
現在ギャンブル依存症に関わっているすべての人たち
本人、家族、援助者や相談機関、医療機関などに、大きな混乱が生じます。
河本先生は「疾病性」(病気であるかどうか)の判断についても
合併症や発達障害、ギャンブル依存症のタイプの分類についても
細かい指針を提案されていますが
その正確な診断は、いったいどこで誰が下すのでしょう。

考えすぎと言われるかもしれませんが、「ギャンブル依存症研修プログラム」も
個別の項目の名称は「ギャンブリング障害」という表現がされています。
「ギャンブル依存症」という病気の患者は50万人程度で
それ以外で、ギャンブルの問題があっても、その多くは治るもので
必ずしもギャンブルを止めなければならないわけではないということになれば
ギャンブル依存症を、依存症という大きな枠の中で考えることが難しくなります。

それでなくても依存症対策超後進国の日本で
ギャンブル依存症の問題が、他の依存症とも分断され
混乱し、迷走して、今よりももっと当事者は行き場を失うという
最悪の結果にならなければよいのですが。


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ギャンブル依存症に新説?

2017-03-17 16:00:09 | ギャンブル依存症
先日久しぶりにWikipediaの「ギャンブル依存症」の項目を読んで
ちょっとびっくりしました。
以前にはなかった内容が、あちこちに付け加えられていたからです。

実はカジノ法案が成立した時に
ちょっと気になる話が出ていました。
それは「これからギャンブル依存症の実態調査をする」というのと
今使われている「ギャンブル依存症の診断基準は正確さに欠ける」という話です。
その時に「それは厚労省が2014年に発表した536万人という調査結果を
一旦白紙にするってことかな」と疑問に感じたのです。

そこでWikipediaの記事ですが
「ギャンブル障害にはタイプⅠ(単純嗜好型)タイプⅡ(他の精神障害先行型)
タイプⅢ(パーソナリティ等の問題型)の3つのタイプに分けた対応が
提案されており、他の精神障害の併存が相当にあると推測される」とあり
こういう併存型のタイプは、精神科での治療が優先され
「有効な治療薬はなく、認知行動療法が最も有力と考えられる」
とされています。

つまり、ギャンブル依存症の人には、
他の精神障害が先行していたり、パーソナリティ障害などを併発しているケースが
かなりあるので、その場合は、精神科で治療を受けて
認知行動療法をすることが有効ということになります。

もう一つは「2000年以降の研究では、自然回復が多数あり
進行的、不可逆的な障害という認識が改められつつある」という点です。

長年ギャンブル依存症の臨床や研究を続けられてきた田辺先生や帚木先生の
「ギャンブル依存症は進行性の病気で、治癒はない」という説は
以前のもので、最近の研究結果では
ギャンブル依存症は治るということになってるということでしょうか。
さらに「ギャンブルを断つことを最優先すべき群は
ギャンブル障害の10%から60%と見積もられ
必ずしも脱ギャンブリングが治療上必須とはいえない」という
これまで、ギャンブル依存症から回復するための
絶対条件とされた部分が大きく修正されています。

この説を主張されているのは
久里浜医療センターの河本先生で、先生の主張については
私も2015.3.4のブログ「依存症は治るのか治らないのか」で書きました。
河本先生は「薬なしで8割治る欲望充足メソッド」というのを提唱されている先生です。

2015年の時点では、臨床をされているギャンブル依存症の患者さんの中に
治った人がいるので、ギャンブル依存症は治ることがあるというニュアンスでしたが
Wikipediaの記事では「ギャンブル依存症は治る病気であり
治療にあたって、必ずしも脱ギャンブルは絶対的な条件ではない」というように読めます。

河本先生は、国内の依存症治療の最前線ともいえる久里浜医療センターで
ギャンブル依存問題にも積極的に取り組んでおられる先生ですから
その先生の研究や学説が国の「ギャンブル依存症対策」に
反映される可能性は十分にあるように思えます。

「依存症は治るのか治らないのか」でも書いたように
現在ギャンブル依存症者の回復に取り組んでいる施設やGA、ギヤマノンでは
「ギャンブルを止め続けることが回復で、ギャンブル依存症には治癒はない」
という考え方が基本になっています。

そこにこういう新説が出てきて
もしもそれが国の「ギャンブル依存症対策」の指針となるようなことがあるなら
現在ギャンブル依存症の回復に関わっておられる
全ての関係者とも、十分に討議を重ね、これらの説の明確な根拠を示し
お互いに共通の認識を作り上げていかないと
回復施設や、GAや、ギヤマノンの人たちが
嘘を言っている、誤ったことを言っているということにもなりかねません。

もちろんWikipediaの記事の信ぴょう性ということもあるのですが
「ギャンブル依存症対策」をめぐっては
このように何かと「ん?」と思うことが多いもので
気がついた点があれば、その都度書いていこうと思います。


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ギャンブル依存症治療の進展を(3)

2016-12-27 16:50:16 | ギャンブル依存症
11月に参加した、ジャパンマック福岡の3周年記念セミナーで
ギャンブル依存症の人の家族の体験談として
現在息子さんがジャパンマック福岡で回復に取り組んでいるという
お父さんがお話をされました。

「色々なことがあって、息子をジャパンマック福岡にお願いすることを決めて
息子と二人博多駅に着いたのが、ちょうど一年前のクリスマスの時期でした。
これからどうなるか全然分からず、不安でいっぱいで
駅前のイルミネーションの青白い光が、なんともいえずもの悲しく見えたのを覚えています」

このお話には本当に胸が詰まりました。
真面目に一生懸命働いて、子どもさんをを育ててこられた人たちが
どうしてこんな思いをされなければならないのでしょうか。

このお父さんとは、クラフトの勉強会でもご一緒しました。
私はセミナーの日は、朝から行かなかったので聞けなかったのですが
午前中の依存症本人の体験発表で、息子さんも発表をされたようです。
ジャパンマックにつながって、回復のためのプログラムに取り組まれている
息子さんを見守るこのお父さんの目に
今年のイルミネーションがささやかな希望の光と映ることを願わずにはいられません。

今回のIR法案を契機に、社会が上から変わる、上にいる人たちが
「これは大変なことだ。何とかしなければ」と真摯に考えてくれるなら
これほどよいことはないのですが、そこはどうなるのか、まったく予測がつきません。

先日「エアー2.0」という、全然有名ではないけど
かなり面白い小説を読んでいて、こんな部分がありました。

「現実には金がこの世の中を規定してるんだよな。世界のすみずみまで
科学が説明し、気持ちよさげなものをどんどん作って、それに大量の金がつぎ込まれている」

そして主人公は次のように語ります。
「俺たちの生が金と科学でガチガチに決定づけられるってのはどうなんだろうか。
俺はいやだな。金と科学の上になにかもっと大きなものが必要なんじゃないかって
思うわけだ」

社会派の小説かと思ったら、これまた壮大な与太話というかおとぎ話のような小説でしたが
そんな中にも、部分的に共鳴できるところはたくさんありました。
「12ステッププログラム」もこの「なにかもっと大きなもの」のひとつなんだと思います。
上から変えることの難しい社会だったら、他にどんな方法があるのか
私たち一人一人がほんの少し変わることによって
少しづつ社会が変わる可能性はあるんじゃないか
「ひとり1円の寄付が1億3千万円になる」
それを私は愚直に信じて、このブログを書き続けています。

前のブログで書いた水俣病の被害者の方の遺族の言葉
「くやしいのは「魚は絶対に食べたらいかん」と教えてもらえなかったことです」
こんなことが際限なく繰り返されないために
「ギャンブルにもネットにも、人生を、人間を破壊してしまう大きなリスクが
あるんですよ」という言葉を発信しつづけていくつもりです。
もちろん依存症のリスクは、ギャンブルとネットだけでなく
薬物にも、アルコールにも、他の多くのものにも潜んでいます。

大切なのはまずリスクがあること、それがどういうものかを知ること
そしてもし既に依存の問題があるなら
数は少ないですが、相談ができる場所はいくつかはあるということ。
相談をするのは、手の施しようがなくなってからではなく
早い時期のほうがより効果が期待できるということ。
私自身も、いろいろな場所に足を運び
ジャパンマックのスタッフさんや、回復されている人たちやその家族
医療者やケースワーカーさんなど、援助者の人たちのお話を聞いて
たくさんの気づきがあり、分かったこともたくさんあります。

「知る」ことで、出口のないトンネルから抜け出す道はあり
そこで出会う人たちから、たくさんのヒントをもらうことができます。
しょぼいですが、私がこうして発信している情報に目を止めてくださる方があり
その方が、一歩を踏み出してくださるなら
そしてご自身の経験を語り継いで、それをまた他の方につないでいただけたら
1円の貯金が100円になり1000円になり
それが3人に増えれば3000円になるわけです。
気の遠くなるような話ではありますが
上の人たちが変えてくれるのを待つだけではなく
私たちの側が、知ることによって少しでも変わっていく
それはある意味確実な方法なんじゃないかと思っています。
年末なので、私にしては相当がんばって、前向きなことを書くのにチャレンジしました。
タイトルと今いち合っていませんが、今の思いをなるべく素直に書いてみました。


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ギャンブル依存症治療の進展を(2)

2016-12-20 15:17:06 | ギャンブル依存症
この前から度々引用させていただいている
田辺等先生の「ギャンブル依存症の現状」の中に
「ギャンブル問題と治療的対応」という資料があります。

これは「回復困難性による重症度」を3段階に分けたもので

 A. 病的ギャンブル → 治療対応、当事者活動

 B. 問題ギャンブル → 早期、短期治療介入

 C. 娯楽ギャンブル → 治療の必要なし

右側は、どういう治療が必要か、治療のニーズを示してあります。
厚労省が発表した536万人という数字がAの病的ギャンブルだけなのか
Bの問題ギャンブルを加えたものなのか定かではありませんが
おそらくAとBを合わせたものではないかと思われます。

私はこれまでもずっと、依存症の段階、ガンで言うならステージのようなものを
もっと具体的に設定できないものかと思ってきました。
ギャンブル依存症のことを勉強し始めてしばらくしてから
私が理解したのは「ギャンブル依存症は、ギャンブルで得た刺激によって
脳内の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)の
分泌の仕方に変化が起こり、この変化はもとには戻らないので
ギャンブル依存症は一生治ることはなく、治療をしなければ進行し
悪化して、最後は犯罪者になって刑務所に入るか、精神病院で終わる病気」ということでした。
確かにこれは事実なのですが、こういう風に総括してしまうと
「あなたはガンですから死にます」と言われるようなもので、あまりにも救いがありません。

田辺先生の資料では「早期、短期治療介入」が可能な領域が設定されています。
これはギャンブル依存症だけではなく、特にネット依存スマホ依存などにも
早急に応用していただきたい考え方なのです。
医療の分野では、アルコール依存症などは
早期の治療には動機づけ面接などが
一部ではありますが、すでに導入されています。

ギャンブル依存症は、日本では相当に有病率が高い、ポピュラーな病気でありながら
あまりにも情報がなかったために、ほとんど放置されていたといってもよく
私も含めて、本人も家族も、本当に何もかもがどうにもならなくなってから
初めて助けを求めて事実を知る、つまり病気と分かった時には
すでに何らかの治療は必要だけれども、治癒はないという末期ガンのような状態だったわけです。

けれど、早期短期治療介入の可能性があるならば
現在重症化している依存症者の問題とは別に
早期に治療ができる体制を確立させて
相談や治療ができる分かりやすい指針を出し
その情報を一日も早く、一般の人たちに知ってもらい
今後の病気の広がりに少しでも歯止めをかけていただきたいと思います。

ガン治療では、誰か有名な人がガンになるたびに
まるでお題目のように繰り返される「早期発見、早期治療の重要性」
依存症もまったく同じなのだと、たくさんの人に知ってもらいたいです。
日進月歩で研究が進み、次々に高額な治療薬や治療法が開発されているガン治療の世界。
それとは正反対で、既存の医療機関でさえ、治療に取り組んでおられるのは全体の1割ちょっと。
治療や支援に携わる人も少なく、人材の育成も進まず、研究者の数もごくわずかという
まさに、ないないづくしの、依存症治療の現状。いったいこの差は何なんだろうと思えます。

また重症の依存症者に対する対応でも
依存症治療の最前線で尽力されている先生方は
当事者グループの重要性を理解され
医療による治療と当事者グループは、治療の両輪と位置付けられますが
この認識が行政にも医療者にも、患者や家族にも共有されていません。
(当事者グループは、各依存症の自助グループ、患者会、家族会のこと)

そして県や市の精神保健福祉センターや保健所に相談しても
「ギャンブル依存や、ネット依存は対応できません」と言われたり
「それでは自助グループに行ってください」と、
なんの説明もなく、ただ右から左にたらいまわしにするだけでは
まったく何も分からいない本人や家族にとっては
「わらにもすがる」のわらにさえもなり得ないのです。

クリスマスだというのに、お正月が来るというのに
書けば書くほど、ネガティブなほうへ行ってしまいそうですが
それでも今回のIR問題は、これまでまったく光が当たらなかったギャンブル依存症問題に
一瞬だけでしたがスポットが当たった瞬間でした。
ただそれも「ギャンブル依存症は、こんなに悲惨だ。恐ろしい病気だ」という
情緒的な話に終始して「それでは、何をどうすればいいのか」という議論に進展していません。
「カジノができるまでに考えればいいや」あるいは「カジノができてから様子を見て考えよう」
というような、あいまいな空気が支配しているようなのが気がかりです。

そしてギャンブル依存症の対策に関して
政治や企業へのアプローチは多少ありますが、医療へのアプローチがありません。
精神医療には期待しない、何も期待できないのが当たり前になっていては困ります。
どこの精神科、心療内科を受診しても
各種の依存症に的確に対応できる医療の体制ができることが理想です。

そのためには、やはり厚労省が、経済界への配慮云々という
政治的な思惑とは明確に一線を画して
現在先行しているニコチン依存症の予防、治療、啓発と同様に
国民の健康という原理原則に徹して、あらゆる依存症治療についての
実効性のある指針を提示していただきたいものだと思います。

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ギャンブル依存症治療の進展を(1)

2016-12-17 11:33:03 | ギャンブル依存症
10月の下旬に、水俣病の犠牲者の慰霊式が行われ
患者や遺族を代表して、ご主人を水俣病で亡くした方が、祈りの言葉を奉げられました
「くやしいのは「魚は絶対に食べたらいかん」と教えてもらえなかったことです」
この言葉が、私の胸にしみました。

つい最近も、ジャパンマックでお会いした方の中で
家族がギャンブルでつくった借金を
かなりの金額を立て替えたというお話を何回も聞きました。
「どうしてそんなになるまで」と、今だからこそ思いますが
私も10年前は、その人たちとまったく同じだったのです。
何度も何度も同じことを繰り返し、なぜそうなってしまうのか
いったい何をどうすればいいのか、全然分かっていませんでした。

あれからずいぶん時間が過ぎたのに
未だにまったく同じ状況が繰り返されている、それが悔しいです。
私のように、ほんとにただのおばちゃんが、何を偉そうに
理想論だけなら誰でも言えると思われるかもしれません。
けれど、あの頃、ギャンブルは危険なものだと教えてもらえなかった。
依存症という恐ろしい病気なのだと教えてもらえなかった。
その、血の涙を流すような、辛く苦しい思いがあるから
私は今でもこうしてつたないブログを書き続けているのだと思います。

IR法案、カジノ建設との関係で
この数日はメディアでも度々「ギャンブル依存症」という言葉が登場しました。
(プーチン大統領来日のニュースで、あっという間に消えましたが)
あれで「カジノができたら、日本でもラスベガスとか韓国のように
ギャンブル依存症の患者が増えるかもしれない」と思った人はおられるでしょうが
それでは今、日本のギャンブル依存症問題がどうなっているのか
もしも家族がギャンブル依存症になったらどうすればよいのか分かったという人が
果たして何人いるだろうかと疑問を感じたので、前回の記事を書きました。

536万人という数字の是非はともかくとして
すでに20年以上前から、日本でも一定数発生し、その後増加の一途を続けながら
未だに治療や回復の手段が認知されておらず、確立されてもいないこの病気への対応が
カジノ法案を契機に、たとえ1ミリでもいいから前進しないものだろうかと思うのです。

依存症は「薬物療法で解決が期待できない」「医療になじみにくい」病気で
そのために精神医療の現場では、治療に取り組む医療機関が少なく
いまだギャンブル依存症を病気だと認めていない医療関係者の方もおられます。
けれど厚労省の依存症対策には、現在はギャンブル依存症も含まれています。

また前のブログで書いた「ギャンブル依存症の現状」によれば
「回復するためには(アルコール・薬物などの)物質使用の依存症同様に
心理療法(認知行動療法、内観療法、集団療法、心理教育)が効果があり
当事者グループ所属で安定する」との報告があります。
12ステッププログラムを用いた自助グループGAは、この当事者グループ
の一種なのですが、これに関しても否定的な医療者の方がおられます。
依存症の治療や回復に携わるすべての人たちが
依存症に対する共通する正しい認識、知識を持つことが必要なのです。

厚労省、医療機関、自助グループ、それぞれが点として存在し
うまく連携や協力がなされてないように思います。
けれど、前のブログにも書いたように、厚労省が536万人という数字を公表したことは
驚きでもあり、一筋の希望でもありました。
今はまだ点であるものがつながって、治療に関する認識が共有されることを願います。

十数年動かなかったものが、一気に動くというほど楽天的に考えてはいませんが
何度も書いているように、IT機器の普及によって
依存の問題は、すでに次の段階に入っています。
ギャンブル同様にのんびり構えていたら、あと十年もしたら
とんでもないことになるような気がします。
ギャンブルと同様に、PC,スマホといったIT機器にも多くのリスクがあることを
今度こそは、使う側の私たちが、認識した上で使えるようになること
それが十年後に「誰も教えてくれなかった」という悲劇を防ぐことになるように思えます。


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人間なんてやめてしまえ

2015-05-28 14:51:28 | ギャンブル依存症
ギャンブル依存症の問題で
現在超人的な活動をされている「ギャンブル依存症を考える会」代表の
田中紀子さんのブログ「in a family way」は、勉強のためにも
毎回読ませていただいています。

その田中さんのブログの昨日の記事「報道の在り方」では
認知症予防の福祉用のパチンコ台の問題
特にその報道の仕方が、厳しい論調で取り上げられていました。

そのニュースは、私もネットで見ていて
本当にまああの手この手というか、何というか
言葉も出てこないというのが正直な気持ちでした。

ただ私は、震災と原発事故があって
政治とか経済とか、そのあたりには完全に
見切りをつけました。
今日もFIFAの委員たちの巨額の収賄が
ニュースになっていますが
世界という単位でも、日本の中の話でも
どうすることもできないことが山のようにあります。

たとえばパチンコのCMでは、パチンコ台の映像を映すのは
規制されているのかも知れませんが
パチンコのCM自体がほとんど流れなかったケーブルTVに
最近パチンコ専用みたいなチャンネルが増えましたし
これも最近できたVシネマらしきチャンネルでも
パチスロを無理くりドラマにしたみたいな
得体の知れないドラマを流しています。
もちろんパチスロの台の映像も音もばんばん出ます。
CM1本撮るのにも結構お金がかかることを考えたら
チャンネル丸ごとなんて、どれだけのお金が投入されているのか
想像もつきませんが、要はそれに見合うだけの
見返りはあるということなのでしょう。

他にもネットを開けば、パチスロの広告
ネットで買える公営ギャンブル、さらにはオンラインカジノと
目立たないところで、うぞうぞと増殖しているのは
私の胸に巣食ったがん細胞と同じで、手のつけようがありません。
前にも書きましたが、私は過去のトラウマがあるので
ドラマなどで、ギャンブル依存症の話が出ても
間違いなくパチンコ屋のシーンや台の映像があるので、絶対に観ません。
ダンナのフラッシュバックを恐れる気持ちも、ものすごく強いです。

現実に、ギャンブル依存症本人の人の話では
映像とかチラシとか見て「行きたくなる」という人も多いですし
何より依存症から回復するためには
酒であれ、ギャンブルであれ、薬物であれ
依存する対象と完全に縁を切ることが大前提なわけです。

けれど、ギャンブルとかお酒に関しては
喫煙ほどにも問題視されていません。
ニコチン依存症を啓発するCMはしばしば見かけますが
お酒や、ましてギャンブルの依存症はスルーされているのは何故?
そこへ持ってきて「パチンコで認知症予防」なんていう
あり得ない話が公然と出てきたりします。
ダンナは介護の仕事をしているのですが
例えば職場に「認知症を予防できる」なんていう名目で
パチンコやスロットの台が設置される状況を想像するだけでも
もうこれ以上ないくらい絶望的な気分になります。

田中さんも書かれていましたが、判断力の鈍っている
高齢者のギャンブル依存症の問題は
家族や、回復を援助する支援者にとって深刻な問題になっています。
とにかく一人でも、二人でも、ギャンブル依存症者を回復につなげるための
最前線で、大変な苦労をされている方たちの努力も
これではまるで、ざるで水を汲むようなものです。
私は、超マイナー思考ですから、本当にもうどうしようもないなと思います。
これらの背景にあるのは、庶民の想像をはるかに超える
根深くそして恐ろしい世界らしく、戦うことなんて絶対にできません。
映画の「アウトレイジ」なんて、現実と比べれば童話みたいなものです。

善良な庶民にできることはただ一つ、自衛だけです。
危ないものには絶対に近づかない、関わらない
たとえ貧しくても地道に真面目に毎日を生きれば
いくらかは危険を回避することができます。

ただ何回も書いていますが、IT機器(PCやスマホやタブレット)は
これからの時代、縁を切るというわけにいかないのです。
ですからネット依存の問題は、これまでとは違う対処をしていかなければなりません。
そういう意味で、新しい、そして難しい局面に入ってきています。

話は全然違いますが、去年「猿の惑星」とともにはまった
エビエイリアンの出てくる「第九地区」の監督さん
ニール・ブロムガンプの新作「チャッピー」を観てきました。
詳しくはまた改めて書きますが
人類初のAI(人工知能)を搭載したロボットチャッピーのお話。

配給元は、集客を増やすために、本来R-18指定されたのを
勝手に、ゴア(残虐)描写をカットして
無理やりR-12指定にし、論議をかもした曰くつきの作品です。
最初は5歳児程度の知能だったチャッピーが
様々な困難を経験してどんどん成長していく映画ですが
それほど無理をして青少年に見せる映画ではありません。

ただ「子どもの成長」という問題について
極めて逆説的で、極端で、過激ではありますが
はっきりした主張を持った映画ではありますから
子育てに悩んでいる親御さんは、観ておかれるのもいいかもしれません。
ただし観られたあとに、どういう感想を持たれるかは保証しません。

「かわいそうなチャッピーはお星さまになりました」というんでも
「色んなことがあったけど、パパとママと幸せに暮らしました」
というんでもありません。
一言で言えば「人間なんてやめてしまえ」
と、そういう映画です。これは「第九地区」もまさにそうでしたし
だからこそ、どんぴしゃで私のツボだったわけです。
上映前の予告編は、スヌーピーやら何やら
「これはお子様向けのいい映画ですよ~」的な空気を
作り出そう感が満載で、すごく気持ちが悪かったですけど。
「そんなんは、アナ雪でやっとけ」って感じです。



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初めてギャマノンに参加しました

2014-10-19 08:41:02 | ギャンブル依存症
このところ秋晴れのよいお天気が続いています。
昨日は、今年の2月に「ギャンブル依存症問題を考える会」を発足された
代表の田中紀子さんが来福されて、田中さんと語る会が開かれるというので
がんばって行ってきました。

田中さんのブログは、よく読ませていただいていますが
先日も東京で大きなシンポジウムを開催されたり
「ギャンブル依存症」についての知識を広めるという
啓発活動をすごく積極的に展開されていて
その行動力とパワーには本当に頭が下がります。

この三十年ほど、生活するためにはとにかく働かなければならないので
死に物狂いで動き回っていましたが
(傍目にはそうは見えないようで、しょっちゅうトロいと怒られてました)
とにかく、自分的には、仕事の時は三倍速くらいのスピードで
動いているつもりでしたし、テンションも本来の倍以上にアップさせている
(これもそうは見えないらしく暗い!と怒られてましたが)
ような生活をしていましたが、実は引きこもり大好きなので
病気のおかげでニートになってからは、これ幸いと
数百メートル先のスーパーに行くのも一大決心して出かけるというような
まさにナマケモノになり下がっていました。
さすがにこれではマズいと、一念発起して出かけました。

昨日のお話は実は「考える会」のメンバーさんの懇話会という趣旨だったようで
その辺りがよく分かってなくて、飛び入りでお邪魔をしてしまいました。
そしてこの会が開かれた同じ会場で
田中さんの会が終わった後にギャマノン(ギャンブル依存者の家族の人たちの
自助グループ)のミーティングがあり、それにも出席してみたかったのです。

以前GA(ギャンブラーズ・アノニマス、依存者本人の自助グループ)に
参加したことはあったのですが、ギャマノンは今回が初めてでした。
普段は参加者が4,5名ということだったのですが
昨日は田中さんの「語る会」と連動していたこともあって
県外から来られたという参加者もおられ、20名前後の大盛会でした。

しかも昨日はこのギャマノンが設立1周年記念のバースディミーティングでもあったらしく
メンバーさん手作りのお菓子あり、飲み物ありという
お祝いの場でもあったのに、それも知らず飛び込んでしまって
これまた何か申し訳ないような思いでした。
私ともう一人ビギナー(初参加の人)があったので
メンバーさん全員が、それぞれ匿名で自己紹介をされました。

ギャンブル依存症(ほぼ全ての依存症がそうなのですが)からの回復には
まずは、依存の問題で悩み苦しみ傷ついてきた家族の
メンタル的な回復が不可欠なのです。
依存者本人が、自分が依存症という病気であることを理解するには
とても時間がかかることが多いので
まずは家族が依存者の問題から「手を離す」
つまり自分で何とかしようという負のスパイラルから抜け出す。
自助グループでのミーティングに参加して
同じ悩みを持つ仲間に、自分の思いを聞いてもらい
仲間の話を聞いて、思いを「分かち合う」ことでそれができるようになっていきます。
まずは自分が抱えている重荷を
仲間に聞いてもらうことで降ろすこと、それが回復の第一歩になります。

ですから依存症からの本人の回復、あるいは巻き込まれた家族が抱える
共依存と呼ばれる心の病からの回復には
この自助グループのミーティングに参加することが
今の時点では、もっとも回復の可能性が高い方法だと思います。
このブログでもトップにリンクしていますが
現在全国で135のギャマノンがあり
地域によっては2つ、あるいは3つのギャマノンが
活動されているところもあります。

こうした家族の自助グループは
アルコール依存症にも薬物依存症にもあります。
私としては「依存症」というものは本質的には共通なので
それぞれが個別のものとしてではなく
どの依存症でもオールマイティに受け入れることができるようになれば
もっと選択の幅が広がるし「依存症」全般への理解に
つなげることができるような気がしています。

などとまたしても偉そうなことを書き並べていると
「ならお前も真面目に行けよ」というお叱りの声が聞こえてきそうですが
こうして書くことはそれこそ原稿用紙100枚でも
たいして苦にならない性分なのですが
人前で話す、特に自分のことを話すのが死ぬほど苦手です。

昨日の自己紹介でも必死で話しましたが
自分でもだんだん何を言ってるのか分からなくなりました。
書いたものはあとから見直して直すことができますが
一度口から出した言葉は修正がきかないので
なかなか上手に、かつ正直に話すということができません。
昨日お聞きした田中さんのお話は
ご自身でもマシンガントークとおっしゃっていましたが
その流暢なこと、説得力があること、もう天性の才能だと思います。
どうかギャンブル依存症も含めて
依存症というものへの社会の認知度が少しでも高まるように
お体にはくれぐれも気をつけて、がんばっていただけたらと思います。





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癌とカジノと

2014-06-12 09:55:20 | ギャンブル依存症
取りあえず新居探しが最優先課題になったので
ちょうど募集のあった市営住宅に申し込み、一発当選しました。
市営は何回も申し込まないと当たらないものだと思い込んでいたので
「ん、これで人生の運を全部使い果たしたか」とも思いましたが
気を取り直して、引っ越しまでがんばります。

引っ越し準備と並行して歯医者さんを受診。
長年の不摂生な生活で、癌だけではなくあちこちがボロボロ。
かなりのヘビースモーカーで、癌で受診した時の問診表にも
当然喫煙の項目はあり、さすがに一日一箱吸うと正直には書けず
「10本」と虚偽申告しましたが、診察では喫煙には
触れられず、胸をなでおろしました。
自慢ではありませんが、これまで体にいいことは何一つして
こなかったので、癌にせよ、虫歯にせよやっぱり自業自得です。

以前柳美里さん原作の「命」を映画化した作品で
トヨエツ演じる、劇作家で演出家の東由多加の「俺は癌で死ぬんだ。
煙草で死ぬんじゃない」というセリフにしびれました。
そんなこんなで、実は肺ガンだったらありかなと内心思って
いたのですが、まさかの乳がん。人生は分らないものです。

らちもない与太話を書いていますが
ニュースを見ていると毎日「う~ん」と考え込むことばかり。
一昨日NHKではカジノ解禁に向けて企業の動きが活発になっている
と報じていました。少し前に今国会でのカジノ法案の成立は
見送られるというニュースで少し安心したばかりだったので
水面下で解禁に向けた準備が着々と進んでいる様子に
結構衝撃を受けました。

長年ギャンブルの問題では想像を絶するほどひどい目に会ったので
ほんのわずかでもギャンブルが絡むことには敏感です。
見るからにうさんくさいパチンコのCMもそうですし
ドラマや映画でもパチンコのシーンが出てくると
心臓がきゅっと縮むような感じがして気分が悪くなります。
ドラマの「ストロベリー・ナイト」も
パチンコのシーンが出たので、1,2回見てやめました。

回復をめざしている依存症本人さんのブログでも
パチンコのシーンを見ると、記憶がフラッシュバックして
衝動が起きると書いてありました。
なので「ギャンブル依存症」を社会問題として取り上げる
報道にパチンコのシーンをはさむなんてのは無神経の極みです。

全世界の実に70%のとばく場があって
600万人近いギャンブル依存症者がいて
しかも公的な治療の体制が何もないこの国に
この上さらにカジノを作ろうとは、この国を動かしている
人たちは正気かと思ってしまいます。

最近は抗がん剤や、特にその使い方について
懐疑的な考え方をする人たちも増え
ネットで様々な意見を知る機会が増えました。
それで疑問に思ったのは、標準治療を勧める医師たちは
自分たちの治療に疑問を感じることはないのだろうかと
いうことでしたが「人類の悲願であるがんの撲滅」という
崇高かつ壮大な理想や理念が、目の前の患者さんの
苦しみや死に目をつぶらせることができるということを
知ってなるほどねと思いました。

カジノ構想で総理は「我が国の更なる成長戦略に不可欠」と
力説していました。ここでも「更なる成長戦略」という
魅力的で壮大なスローガンが掲げられています。

近年私が傾倒している某作家さんの小説の中に
こういう一文がありました。
「「国家」や「民族」という抽象を現実としてイメージできる
人たちがいる。(中略)国家を生々しくイメージできる人たち
が、ぼくのかわりに世界のことを考えてくれる」
けれどそういう人たちは、おそらく心や体や家族を持つ
名もなきひとりひとりの生きた人間の、苦しみや悲しみを
イメージするのは苦手なのでしょう。

余談ですがその作家さんは、2009年に癌のため34才という
若さで亡くなられました。ほんとに私のようななんの取り柄もない
ただのおばちゃんの命でよければ、3年分でも5年分でもその方に
振り替えて、新しい作品を世に出してほしかった。
本当に人生はままならないものです。




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共通する依存症の性質

2014-01-02 13:57:30 | ギャンブル依存症
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

昨年の年初にブログのタイトルを変更してこれからはギャンブル依存症の問題に特化して書いていくつもりと書きました。それはこのブログでリンクしている「パチンコ依存症~家族のための情報サイト」の「依存症家族のための掲示板」に日々寄せられる、ギャンブル依存症の人と関わっている人たちの悲痛な叫びを目にするたびに、それがかつての自分自身の姿にだぶって心がキリキリと痛み、せめて何か一つでも自分にできることはないかと考えた結果でした。

しかし日々目にし耳にする出来事の中で、ギャンブル依存症とは直接関係がないにしても、「依存症」という本質的な部分で共通するものがあればそれはやはり言及してもよいのではないかと改めて思うようになりました。

最近アメリカのドラマを見る機会が増えて、アメリカではドラッグや薬物依存がごく身近なものとして平然と語られていることに、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。しかもドラッグは高額なものであるために、富裕層にも結構な数の常用者がいるらしい現実にも驚いています。けれど、それでは日本はアメリカと違って、健全で安全安心かというと決してそういうことではないと思います。

確かにドラッグに関しては、日本はアメリカほどの広がりはないかもしれません。けれどその代わりに、すでに患者数が600万人を越えていると言われるギャンブル依存症の問題を抱えています。そして何よりも日本とアメリカの大きな違いは、薬物とギャンブルの違いはあるにせよ、依存症というものへの認識の広がりの差です。昨今、飲酒運転の問題が大きくクローズアップされて、「アルコール依存症」という言葉は、メディアでもしばしば取り上げられるようにはなりました。実は私の身近でも、深刻なアルコール依存症の問題を抱えている人がいるのですが、そのことを彼のごく身近にいる人に理解してもらいたいと思っても、これが容易ではありません。「依存症は脳が依存対象に対するコントロールを永久に失うコントロール障害」だということを理解してもらうことが、ものすごく困難なのです。これは、日本では、一般の人たちに、依存症というものに対する知識や情報が決定的に不足していることが最大の要因だと思います。

前述のアメリカのドラマの中では、さほど知的なレベルが高くない人たちでも、ドラッグで検挙されると、カウンセリングとか、更正施設とか、自助グループ参加とか、薬物依存からの回復に向けたシステムに参加できる仕組みがあることが分かります。それに比べて我が国では、アルコール依存やギャンブル依存は、もはや日常的なものになりつつあるのに、それらからの回復に必要な依存症についての知識や理解やシステムはまったく普及していないし、構築されてもいない。ここに最大の問題があるのだと思います。なぜそうなのかという点になるとこれは大きく政治や経済の問題に関わることになり、論点がずれていくので、また改めて書こうと思いますが、こと依存症という病気に対する認識の低さは、アメリカに比べるとあまりにも遅れていて、むしろそのことに日常的に大きな危惧を覚えずにはいられません。

「薬物」「アルコール」「ギャンブル」に代表される依存症には、多くの共通する性質があります。それは、脳が一度失ったコントロールを取り戻すことはできないから、完全に治癒することはない病気であること、何もせずに放置しておけば病状は進行して、本人や家族の生活を崩壊させ、さらには大きな社会的な問題をも引き起こす病気であること、本人や周囲の人間が、この病気についての正確な知識を理解し、治癒することはないが、依存対象と完全に縁を切るという形で、平穏な普通の生活を取り戻す回復の可能性はあること、ただし真の意味で回復をめざすことができるのは、当事者である依存症の人、つまり本人だけであることなどです。

年頭なので、これまでにも何度も繰り返してきたことをまた書きました。言葉にするととてもシンプルですが、依存者が依存対象と絶縁することは、想像を絶するほど大変なことです。ただそれでも本人が、何とかして人間らしい、少しでも生きる価値のある人生を取り戻したいと心から願うならば、道はあります。回復に至る過程も、薬物もアルコールもギャンブルも、本質のところでは同じだと私は思います。だからこれらの依存について、治療に取り組まれているサイトの解説は、どれも参考になると思います。

そして先日から言及している「ネット依存症」ですが、こちらは上に書いてきた依存症とは若干異なる部分があります。私自身も、現在ネット依存については勉強をしている段階なので、この問題についてはいずれまた改めて書きたいと考えています。

どんな人が依存症になるのか

2013-11-17 09:50:57 | ギャンブル依存症
ふたつ前のブログで田辺等先生の「ギャンブル依存症」
という本を紹介した。

この本はギャンブル依存症という病気を理解する上で大切なことが
色々な実例をあげて、とても丁寧に、しかも分かりやすく書かれている。
そしてこの本に書いてあることは、ギャンブル依存症だけでなく
依存症というものの本質を知るためにもとても有用だと思う。
だからできることならギャンブル以外でも
依存症の問題で悩んでいる人には一度読んでもらえたらと思う。

そしてこの本をまだ読まれたことがない人のために
少し内容を要約して紹介しようと思う。
「どんな人が依存症になるのか」というのは第5章のタイトル。

この章ではギャンブル依存症患者の性格の傾向として
物静かで口数が少ない、おとなしく対人関係が苦手
自己評価は低いが自分への要求水準は高い、自尊心は強く
頑固で負けず嫌いといった特徴が挙げられているが
社会生活に著しく適応できないパーソナルティ障害の例は極めて少ない
と述べられている。

つまり依存症になるまでは特に大きな問題もなく
学校、家庭、職場などの社会環境に適応しているように見えたが
内面では葛藤があり、他者に対して不平や不満を抱いている人ということであり
更に言えば、自分の思っていることを素直に表現することができず
優越感と劣等感の間で気持ちが揺れていていつも生き辛さを感じており
そのフラストレーションのはけ口を「何か」に求めてしまうということだろうか。

特に自尊心が強く頑固で負けず嫌いという性格は
裏を返せば「弱音を吐くことができない」「勝ちにこだわり負けを認めることが
苦手」ということであり、その結果一層フラストレーションがつのるという
「卵が先か、鶏が先か」のような悪循環を招くことになる。

その結果、依存症の中でもギャンブルやゲームといった勝負事に依存する人は
バーチャルな世界の中で、圧倒的な勝利や大金を手にした強烈な快感で
脳内物質の分泌の仕方にまで変化が起こり
完治することのできない依存症にかかってしまうということなのだろう。

それでギャンブル依存症に限らず、様々な依存症において
グループカウンセリングが有効であると言われるのはなぜかということを
私なりに考えてみた。
それはグループカウンセリングをやったから依存症が治るということではなく
依存症の人が長い間自分の心の奥底に封じ込めてきた葛藤を
同じ思いを共有する人たちと話すことで外に出す
自分の心を解放することがまずは回復への第一歩になるからなのだと思う。

だからAA(アルコールアノニマス)やGA(ギャンブラーズアノニマス)
といったグループカウンセリングを行う依存症の自助グループは
完全な匿名性で自分のプライバシーを明かす必要はなく
ありのままの自分をさらけだしてもいいように
そこでの発言は言いっぱなしの聞きっぱなしで
誰からも否定も非難されることがないという約束に基づいている。

「ありのままの自分を肯定する」
これは依存者が回復に向かうためにはとても大事なことで
依存症の患者を抱える家族にもまた要求されることなのだと思う。
けれど精神医学の専門家でもない普通の人間
しかもそれまでさんざんひどい目に合わされて
できることなら殺してやりたいと思っているような家族が
依存者に対して、いっさい批判も非難も無視もせずに
根気強く向き合うことは、現実にはありえないほど難しく
それができたらもう神や仏の領域だと私なぞは内心思っている。

まあ依存症というものはかくも厄介で面倒くさい代物なのだ。
この前「メンタリスト」というドラマを見ていたら
脳医学で道徳エンジンというものを脳に設置できるという話をやっていて
それは電波かなにかで人間を良い人や悪い人にできるというのだが
現実には脳を破壊するほうのシステムはどんどん多様化し進化しているのに
回復させたり良くする手段はものすごくアナログで
解明も治療方法も全く前進しないというのは
何かとても理不尽な感じがするのだが。




人はなぜ依存症になるのか

2013-10-30 13:24:30 | ギャンブル依存症
前回ネット依存が若者の間に広がっていることについて
少し書いたが、昨日ニュースで三鷹市で起きたストーカー殺人に関連して
加害者側(ストーカーになった、あるいはその可能性がある人たち)を
支援する取り組みが始まったことが報じられていた。

そしてインタビューに応じた男性が「恋人に依存していた」と話した
のが強く印象に残った。ほぼすべての依存症に共通するのは、対象に
なるものをやりだしたら止めることができないというコントロールの
喪失と、やりたくなるとどうにもこうにもならず、抑えきれない気持ち
つまり渇望だ。
だから、最初は普通の恋愛であったものが、ストーカー行為にまで
至るというのはこれもまた依存症の一つの形態と考えてよいのだと思う。
そこで加害者への支援というのは、カウンセリングなどを通じて、ストー
カー行為をしたことがある人たちの心のあり方を変えていく取り組みとい
うことであるようだ。

そこで「人はなぜ依存症になるのか」という大変大きな命題を
前回あげた田辺等先生の著書「ギャンブル依存症」をもとに
考えてみたいと思う。
この本の第三章「私はなぜハマったか」の中で「ギャンブルに没頭した
理由は決して単純かつ単一ではない」と前置きしながらも「多数の事例
をていねいに解析してみると、複数の事例で、よく似た状況、同じ
ような心理的背景があって、ギャンブルに没頭していたケースもある」
とし「挫折したスポーツマン」「平凡な中堅社員」などといった具体
的な事例があげられている。

そして最後に彼らがギャンブルにはまった状況、心理的な背景
が次のようにまとめられている。

1.日常生活での充足感、充実感に欠けていた
2.自分への肯定感が持てない、他者と比較してダメな感覚があった
3.仕事(学業)に取り組んでいる自分が本当の自分ではない気がする
4.何を目標として生きるべきかを見失っていた
5.空虚、空白、憂鬱な気分が続いた

これらの心理的な背景は実は密接に関係している。けれど現代の
過度に情報化が進み、社会の仕組みも人間関係も多様化している状況では
こういう心理状態の人はたくさんいるのではないだろうか。
つまり誰もが何らかの依存症に陥る可能性を保有しているというわけだ。
帚木蓬生先生は「お釈迦さまでもギャンブル依存症になる」と
極言されていたが、あながち誇張とも言えない。

その中で、ギャンブル依存者はなぜギャンブルを楽しむだけではすまず
依存症にまでなってしまうのか。この点について「ギャンブル依存症」
では上のような「はまりやすい心の準備性(個人要因)があり、そして
出会ったギャンブルには、初心者でも大勝ち(ビギナーズラック)が楽
しめる、つまり高い賭博性(種目要因)があり、さらに簡単かつ安易に
借金ができるという促進的な社会環境がある。これらの三要素の複合産物
として、ギャンブル依存症は成立した」と総括されている。

私は以前このブログで「共依存」の問題については棚上げすると
宣言した。確かに依存症を考える場合、家族の心理が原因の一つ
として取り上げられることが間違っているとは思えない。もちろん
そういう要因もあるだろう。しかし、依存症を考える上では
社会的な要因というものも大きなウエイトを占めていると思う。
だからギャンブルにしろネットにしろ原因や解決を
当事者や家族という狭い枠の中だけで考えることには反対だ。

例えばギャンブル依存症の場合は、すでに患者数が600万人に
近づきつつある現状を把握していながら何のアクションも起そうとしない
政治や社会のあり方をも理解しながら向き合うことが大事だと思う。

ネットの場合にしても、精神的に成熟していない青少年を
それこそ何でもありのネット環境に無防備に放り込むような現状は
社会のあり方としては何か本質的に間違っていると思うが、
歯止めをかけることができる知識やノウハウが上の人間にはないのか
それともギャンブルの時と同じでもっと不純な動機で
はなから規制をするような気もないのか
そのあたりはまさに闇の中ではあるのだが。