goo blog サービス終了のお知らせ 

癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

謎の依存学推進協議会

2010-09-26 09:01:02 | 依存症
まだその仕組みがよく分かっていない
ギャンブル依存症の解明にむけて
8月にNPO法人「依存学推進協議会」が設立されたという
ニュースをネットで見かけた。

京都大学副学長の西村周三博士が同協議会の理事長を務めるというもので
これだけみれば一見ギャンブル依存症の患者や家族にとっては
朗報に思えた。このブログで再三言っているように
ギャンブル依存症は本人が病気だと自覚するのがとても難しい。
当然病気であることを患者に納得させることも至難の業だ。

これはギャンブル依存症を医学的に証明出来る
脳の変化や症状についての定説が確立していないことが大きい。
病気だという科学的な裏づけが少なすぎるのだ。
ギャンブル依存症に対する認識は
かつてアルコール依存症が「アル中」と呼ばれていた
30年くらい前と大体同じと考えられる。

依存に陥る脳の仕組みの研究が少しでも前進すればと
依存症の人間に関わっている者は素朴に切望する。
しかし、この団体にはウラがあった。
スポンサーがパチンコ機器のメーカー最大手マルハンなのだ。

「設立記念イベントでは、マルハンの韓裕代表取締役社長が登壇し
パチンコ業界では“負の部分”への取り組みが遅れていたところ
もあったとしたうえで、「パチンコ業界の一員として、研究を支
援させていただく」と挨拶したということだ。
これはどういうことか。

現在ギャンブル依存症の治療回復に関わっている医療関係者や
支援団体の認識は「回復するには一にも二にも
ギャンブルをしない」という点では一致している。

しかしこの会合での西村副学長の談話
「熱中が、活力ある豊かな社会につながる。
依存の本質を明らかにして、マイナス面の研究だけでなく
『はまる』ことのプラスの側面も広く研究していきたい」
となかなか微妙。というか明らかにうさんくさい。
現在水面下でバッシングの激しいギャンブルの
むしろプラス面を研究しようとしてるんじゃぁ。
当然そこには設立が急がれているカジノの問題も
からんでるんだろうなぁ。
駄目だ、こりゃ

それにしても
「熱中が活力ある豊かな社会を作る」って…
パチンコ・スロットに関してはあり得ないし。
依存症になって借金抱えて
仕事も人間関係も失って
ホームレスになるか、犯罪者になるか
結局食べていけなくて保護受けても
お金を貰えばまたそれをパチに捨てに行く
シロアリみたいに社会を侵食していく人生しかないのだ。

しかしなにがすごいといって莫大な資金力にものをいわせれば
真っ黒なものも純白だと
言わせることができるのがすごい。

「催眠 完全版」に思う

2010-09-05 10:53:56 | 依存症
ギャンブル依存症のことが小説に登場するというので
「催眠 完全版」松岡圭佑著を読んだ。
三歳の息子を炎天下の車内に置き去りにして
三時間パチンコに熱中し子どもが重体になった母親が
自殺を図るという話がサイドストーリーとして展開される。

主人公が臨床心理士なので
パチンコ依存症の問題が心理学的な側面で描かれる。

パチンコ屋の単調な轟音と点滅する大量の電飾
それをずっと凝視するために客は催眠状態に陥る。
意思や理性のレベルが低下しいわゆるトランス状態になる。
さらに過去の経験から脳が「大当たりすれば儲かる」という
暗示によって誘導されているので
トランス状態から抜け出すことは難しく
客はどれだけお金を使ったかというようなことを
冷静に考えることができなくなる、とまあ不完全な要約だか
そんな感じで客の心理状態が分析されている。

トランス状態になる人ならない人の違いは
本人の性格の問題ではなく
被催眠性が高いかどうか
つまり催眠にかかりやすいかどうかの差だと説明される。
ここでいう催眠とはTVのショーのような
「あなたはだんだん眠くなる」的なものではない。
心理療法のひとつとしても取り入れられているが
これもまたどうやら医学的に実証されているという
ところまではいっていないようだ。

この本を読んで感じたのは
人の心の緊張と弛緩の問題だ。
パチンコがストレスの解消になることに
こういう催眠、トランスという問題が関係しているとすれば
つまり現代社会の複雑さ多様さに対応できず
(それはこの前書いた言葉の問題とも関係していて
自分の心の有り様を分析して整理していく
能力に欠けていることも原因のひとつかと思う)
そこからの逃避としてパチンコにのめりこんでいくのではないか。
几帳面でなんでもきちんとやらなければ
気がすまないような人がパチンコ依存症になるというのも
そういう意味ではわからくはないのだ。
会社でも家庭でも気の休まるヒマがないから
パチンコやスロットに向き合って催眠状態になることで
唯一心を無にして開放された感覚が得られるということだろう。

もしそうだとすればパチンコスロットでの依存症は
その娯楽を形成する周辺の条件の違いからして
「儲かる」という暗示の要素が前面に出た
競馬競輪などとは少し性格が違うように思われるのだが
専門的にみればそのあたりはどうなのだろうか。