往復2600キロを旅して、会いに来てくれた。私のためだけ
じゃないから、と言ってはくれたが、私の病気が大きなきっか
けだったことは疑いようがなく、うれしいやら、申し訳ないやら
で胸がいっぱいになった。
彼女とはすでに30年来のつきあい。お互い子育てをしている時期は
年賀状のやり取りくらいになっていたが
三年前の地震と原発事故の起きた時、2日ほど連絡が取れず
私は生きた心地がしなかった。そしてみんなが無事だと分かって
体中から力が抜けた。
そこから「言いっぱなしで聞きっぱなし」のメール交換が始まって
早3年。今でも福島の人たちには、当事者でなければ分からない
苦しみや怒り、悲しみ、そして不安や恐怖を抱えながら生活している。
久しぶりに会えて、飲んで笑って、思う存分おしゃべりしたけど
その言葉の端々にも、やはり放射能やこれからの生活への大きな
不安がのぞく。
原発事故が起きた時は、私もブログに記事を書いたりもしたが
部外者の意見や感想はあまり意味がない。
それで、いわきで「日々の新聞」という週間の新聞の発行に
携わっておられる安竜昌弘さんの「いわき日和」というブログ
にリンクをしている。風化していく震災や原発事故の記憶。
その時現地では何が起こり、どういう状況だったか。そして
その後、さらに現在、いわきの人たちは何を考え、どんな風に
暮しているのかの一端が、当事者の言葉で語られている大切な
記録だと思うからだ。
私は、依存症の問題や、震災、原発事故を経験して、この国を
動かしている上層部の人たちをまったく信用しなくなった。
ブログを始めた頃は、なかば腹いせや八つ当たりもあって
政治批判も書いた。しかし、最近はだいぶん人間が丸くなって
(嘘です)というより「彼らには何を言っても無駄だ」という
気持ちのほうが強くなって、あまり批判的なことは言わなくな
っていた。
けれども癌を告知されて、初診の病院で医療不信に陥り
さらにこの病気のことを調べていくうちに
「国や厚労省、医療界と製薬会社が推進する癌治療なんか
信用できるものか」という反抗心がムラムラと起こったことも
ものの勢いで無治療を選択した理由の一つだった。
しかし、少々落ち着いて、家族の抱える不安や、本当に
親身になって心配してくれる熊本や福島の友人の気持ち
を考えると、やはりそんな高校生のヤンキーみたいな
反発の仕方はさすがにあまりにも大人気ないかと反省もし
改めてホルモン剤治療を受けることにした。薬はアリミ
デックス錠。乳癌細胞の増殖を促すエストロゲンの合成
を抑える働きがあるのだという。
実は最初に治療の説明を受けた時に家族が「ホルモン
剤の治療はどうですか?」と先生に聞いたが、効ガン
剤をやらずに、ホルモン剤や放射線治療という選択は
ないという答えだった。それが電話で「抗がん剤は
やりません」と返事をしたら「それではホルモン剤を」
と言われて「あれ、この前それはできないって言わなか
ったっけ」と私の頭の中では??マークが点灯した。
その後再び考えを整理して、周りの人の不安を軽減でき
当面ガン難民にもならないための手段として、ホルモン
剤治療を選択したというわけだ。
先生は今回も「やはり一番効果があるのは効ガン剤」と
勧められたが「私がホルモン剤治療を受けようと思う
一番の動機は、病気がどうということではなく、家族の
不安を少しでも軽くしたいのと、後々周囲の人たちに
後悔の思いを残したくないためです」と説明したら
了解してもらえた。しかもホルモン剤治療に関しては
私の嫌いな同意書のサインもいらなかった。
というわけで、私の癌治療は「これは嫌です。
これをやります」という完全なオーダーメイド。
まだ飲み始めたばかりなので、副作用などは未知数。
ここに至るまでに、思考の混乱や論理の錯綜がたくさんあった
ことは自分でも自覚しているが、そこはまあ状況が状況なので
止むを得ないと大目に見ていただければと思います。
ただし私は自分のこととなると恐ろしくヘタレなので
たぶん何か出てきたら早々にギブアップしそうではあるが。
最低限こうしてモノ書きができる間は、治療もがんばろうかなと
柄にもなく殊勝なことを考えている今日この頃です。
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