前のブログでは、ドーパミンとノルアドレナリンという
二つの神経系について書きましたが
もう一つ、人間の脳が正常に働くためにとても大切な働きをするのが
セロトニン神経系です。
セロトニン神経系は、脳の広い範囲に神経突起が伸びていて
姿勢の維持や四肢の動き、呼吸、睡眠、食欲、自律神経の働き
性ホルモン、そして認知や記憶などの様々な機能をつかさどり
さらに前頭葉へつながって、精神的な安定をもたらすかなめの役割をします。
セロトニン神経系がうまく作られて、きちんと働いている脳では
古い脳で、不安や恐怖などの情動が起きても
そうした様々な刺激による情報が新しい脳につながります。
新しい脳では、前頭葉が、それらの情報を統合して
論理的な解釈を、言語を使って作ることができ
不安を安心に変えて、いろんなストレスを解消することが可能になります。
もちろんこのメカニズムが出来上がるためには
乳幼児期、学齢期、思春期と、幾つかの段階があります。
そこで、まずは乳幼児期。
ここがセロトニン神経系が作られる最初の段階です。
どうすれば、このセロトニン神経系がうまく働く脳になるのか。
成田先生の説によれば、それは意外と
拍子抜けするくらい簡単なことらしいのです。
「朝は明るく、夜は暗く」
つまり赤ちゃんや幼児の脳では
セロトニン神経系を含む脳内神経系は
生まれる前にはまだ作られておらず、生後五年ほどの間に
毎日規則正しく入ってくる刺激によって作られていくのです。
なので、朝は明るく、夜は暗くという刺激を
規則正しく脳に与え続けることで
脳は活発にシナプスを作り
脳全体に広がるネットワークを作るのだそうです。
そしてもう一つは
「子どもに向き合う時は、いつも楽しく笑う」
これは、大人が子どもの前でいつも笑って楽しい気分でいると
子どもの脳は不安を感じることがないので
不安のない脳ではセロトニンが大量に作られる。
そうすれば子どもはいつも楽しい気分でいられるというわけです。
そうはいっても、大人には大人の事情というものがありますから
なかなか理想通りにはいかないのですが
要するに、あまり細かいことを思い悩まず
子どもの前では「取りあえず笑っとけ」ということなのだと思います。
そんな適当なと思われるかもしれませんが
セロトニン神経系の作られ方という、科学的な根拠に基づいた話ですから
決していいかげんな話ではないわけです。
このように、人間の脳の仕組みや働きを、科学的に理解することは
今乳幼児を育てている親御さんはもちろんのこと
学齢期、思春期の子どもさんと向き合っている
たくさんの親御さんにとっても、とても大切なことだと思います。
大人の都合で、昼夜逆転、夜遅くに幼児を連れ回すような親御さんもいます、
虐待とまではいかなくても
子どもに向き合う時は、何かを指示したり命令したりという人も。
そしていつも不安や恐怖を感じ続けると
子どもの脳はセロトニンが不足して、セロトニン神経系が働かなくなり
古い脳で起きる情動から、極めて短絡的で攻撃的になる
いわゆる「キレる」ということになるのです。
私が以前のブログで、青少年が起こす残虐な事件の背景には
多くの場合、幼児期の虐待が関係していると書いたのには
こういう根拠があります。
この、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンという神経伝達物質と
その神経系の働き方は、人間のあらゆる行動に大きな影響を及ぼすものです。
生育環境などの影響で、セロトニンが不足しているから
ストレスに弱い脳になったのか
それとも各種の神経系は正常に発達しているのに
許容の範囲を超える過剰なストレスにさらされたために
ストレスに弱い脳になったのか
これはまさにケースバイケースで
ひとりひとり違っているのではないかと思います。
さらにそこには、学齢期以降に形作られていく
前頭葉の機能が、これまたひとりひとり違っていることも
大きく影響していくものと思われます。
こうしたことが理解できたからどうというわけではないかもしれませんが
乳幼児に限らず、親は子どもにどう向き合うかの
指針の一つにはなるのではないでしょうか。
前回のブログと今回のブログは
成田奈緒子先生の「脳と心の発達メカニズム」を参考にし
それを要約する形で書いています。
専門的な部分も含めて、正確な全文を読まれたい方は
ネットで検索することができますので読んでみてください。
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