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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

依存症そして放射能

2011-11-29 08:11:36 | 原発事故
ずっとこのブログを訪れてくださってる人には
特にギャンブル依存症については同じ話題が何回も出てくると
思われるかもしれません。

これは私がそろそろボケてきてるというわけではなく
たまたま「ギャンブル依存症」で検索して
初めてこのブログを読んでくれる人に
今私が理解できている範囲での依存症についての知識を
少しでも知っていただけたらという思いで
内容が重複しているのを承知で書いているので
どうかご理解ください。

依存症は完治はしないというのが大前提です。
パチンコに行かないから治ったということではありません。
患者本人にとっても自分の病気自体を認識することも難しいが
死ぬまで治らないということを理解するのはもっと難しい。
ダンナは時々「もう大丈夫だと思う」というようなことを言います。
確かに任意整理をして借金の返済や生活費の工面で
追い詰められることもなくなり
生活はギリギリでも一応普通の生活の範囲で暮らしていけているので
精神的には任意整理をするまでの状況に比べれば
ずっと安定していることは事実です。
でもだからといって治ったということではないのが
ギャンブルに限らずアルコールでも薬物でも他のものでも
依存症全般の恐ろしいところなのだと思います。

福島原発の事故が起こって原子力や放射能について
少しづつ勉強をしてきて放射能の問題についても
一種似たところがあると感じました。
このブログでリンクをしている「いわき日和」の中でも
福島の人たちの空気が二分されてきていることが書かれています。
「いつまでも放射能にこだわっていたら前向きになれない。
復興ができない」
人は直接目には見えない不安とずっと向き合い続けていくのは難しい。
だからそういう考え方が主流になっていくのは仕方のないことで
現地で事故が起きてからずっとそういう不安と向き合ってきた人たちの
状況の深刻さを思えばそれを批判することは誰にもできません。
またそういう雰囲気の中では放射能の危険を主張すると
反対に非国民扱いされかねないといった
逆転の現象さえ生まれてきます。

それでも私は特に影響の大きい子どもたちや若い人たちへの
放射能の影響については現実を正確に把握して
冷静に客観的に判断をする努力を止めるべきではないと思います。
まだまだ国が、政治家が何とかしてくれるだろうという
他力本願な傾向の強い日本のような国では
少数の意見で社会の流れを変えることはできないかもしれませんが
一見前向きなようでいて結局何かに頼るという生き方は
それで失敗した時にはまたその原因を他人のせいにする
という負の無限ループでしかありません。

昨日は大阪の市長や知事選の様子がニュースをにぎわせていましたが
「橋下さんなら変えてくれる」という期待だけで投票して
思うような結果が出なかった時に次を探すということを繰り返すだけでは
永久にそれの繰り返しでそれこそ前向きな結果にはつながらない。

安全神話を旗印に原発を推進してきた自公政権を選択したのは自分たちで
あれもダメ、これもダメと総理大臣を替えたあげくに
政権を担当したことがない民主党を与党にする選択をしたのも
他ならない自分たちなのだという自己責任の考え方は絶対に必要です。
もう自分たちが選択したのだから
どれだけ悲惨な結果になろうが自分たちで負っていくしかない。

放射能の問題だけではありません。
先日生活保護を受けている若者が月に二万円近くを
携帯のゲーム代に使っているという話に
少なからずショックを受けました。
こちらはギャンブル依存症の問題とも連動する話で
目には見えない形で人間を破壊する仕掛けは
パチンコやスロットのみならずどんどん進化し
変質して増え続けています。
以前書いた「世界ゲーム革命」というドキュメントの中でも
ロシアでは人間をゲームから離れさせないための
脳の研究が進んでいるというくだりに恐怖を覚えたことを思い出しました。

もう日本だけの話ではなく世界的な規模で
お金にさえなればという拝金主義が人間の尊厳を陵駕して進みつつある今
私たちは「自分の生きる形と自分の生きていることの意味」を
本当に真剣に考えなければならないところに来ているのかもしれません。


最悪を回避する力

2011-11-08 15:24:07 | 原発事故
先日福島に住む友人が教えてくれた
「いわき日和」というブログの中に
ブログ主さんの知り合いの人が別の人に
「もう放射能はいいんじゃないの。みんな復興に向かって
進もうとしているんだから。前を向くことにブレーキをか
けてはいけない」という意味のことを言われたという話が
書いてあった。

普通の人の感覚としてそういう風に思うことは理解できる。
福島に住んでいる人でさえ、いや福島にいるからこそ
むしろそういう風に思わなければ前に進めないという
切実というかもはや悲痛な思いを抱いている人が
かなりたくさんおられるだろうと思うと胸が痛くなる。

小出先生の講演の折にも
「このまま住み続けていいのか」という質問が出る。
その際に小出先生は「分からない」と答えられている。
「偉い先生なのに」「放射能は危ないと言ってるくせに」
と失望落胆される方も多いかもしれない。
しかし小出先生は「留まれば健康に影響が出て
体が壊れる。だが逃げれば心が壊れる。だから
自分はどちらがいいと言うことはできない」と言われている。
未だに原子炉の状況も正確に分かっていないし
嘘や気休めを言ってすませられる問題でないからこそ
現時点ではそう答える他はないのだと思う。

原発から逃れてふるさとを離れ
住む場所や仕事や生活のめどが立たなかったら
放射能の不安はなくなっても生きていくことができなくなる。
こどもがいるから自主的に避難したいと思っても
政府や東電が補償をするわけでもない。
こうして残る決心をした人たちが
もう放射能のことは考えたくないと思われるのも
だから当然のことだが、しかしとても残酷なことだ。

放射能の問題だけでなく、年金とかTPPとか
今の日本は個人が考えたくらいでは
もうどうしようもないことだらけになってきた。
しかしダンナのギャンブル依存症を通じて
「知らなければ本当にとんでもないことになる」ことを
身を持って体験した私は
やはり知ることも考えることも放棄することはできない。

個人の力では事態を画期的に好転させることは不可能だが
少なくとも自分の身の回りで起こる
最悪を回避するくらいのことはできるような気がする。
それは言い換えれば最悪を想定しうる力であり
それに耐えることのできる強さなのかもしれない。


*「いわき日和」リンクに追加しました


「核の警鐘」という番組

2011-10-04 11:55:10 | 原発事故
もうご存知の方も多いのではないかと思うが
2009年7月6日にNHKのBSで「核の警鐘 ~問われる原発の安全性」と
いうドキュメンタリーが放送されていた。

その内容は次のようなものだ。

「2007年11月フランス、ノルマンディー地方のフラマンビル原発で
IRSN(フランス国立原子力安全保護研究所)の指導のもと、原子
炉へ給水する設備が故障し原子炉の冷却機能が喪失、放射性物質
が外部に放出される事態を想定した総合防災訓練が行われた。
取材班は、IRSNの許可を得て、原発の中央制御室からの想定事故の
第一報が国に伝わり専門家が現地入りするまでの流れを追う。
そして国の即応体制には一定の評価を与えるが、周辺住民への情報
公開や事故の際に住民が服用するヨウ素剤の備蓄体制に課題が残っ
ていると指摘する」

想定された事故の形態は福島原発の事故とよく似ている。この放送に
ついてかつて河野洋平氏の秘書をされていたことのある梁田貴之と
いう方がご自身のブログで次のようなコメントをされている。
すこし長いが引用する。

「フランスの場合はこうした事態があり得るものと考えられていて、
「電源が回復しない」とわかった段階で、水素爆発の危険があると
して「ベント」が行われる。そして、今回の福島の事故における
報道解説であったように、日本の原発と異なり「ベント」用のパイ
プにはフィルターがついているので、ベントの段階では放射能は外
には出ない。(日本では、ベントを行うような事態は起こらないと
言うかんがえからか、フィルターはついていない)。

 しかし、ベント後も電源は回復せず「1時間後にはフィルターを
通して放射能が漏れ出す」となり、原発職員たちも「あと3時間でメ
ルトダウンが始まる」と判断。周辺住民に避難指示が出される。

 この避難も、手順やルールがしっかり決まっていて、例えば子ど
もが学校にいる時間であれば、家にいる親は学校に行ってはならず、
生徒は学校から避難所へ、親は直接に避難しなくてはならない。訓
練でも、ほとんどの住人は1時間以内に自治体差し回しのバスで退
去を完了していた」

もちろん、問題がないわけではなく、住民は放射能の雲が出る30分
前には配布されているヨウ素剤を服用するルールになっているが
「15年前に配られたままで、どこにやったかわからない」と服用
できない人が多かったり、逃げ遅れた人の誘導が、すぐに車内に収
容するような形で行われなかったことなどが、あとで映像により厳
しく評価される」(引用ここまで)

この内容と実際に事故が起こった我が国での現実とのあまりの落差に
もはや言葉を失う。
日本の原発には、ベント用のパイプにフィルターがついていないことは
前にこのブログで書いた。シビアアクシデントを想定していない構造
だということは、専門家の人たちも指摘されている大きな問題だ。

次の問題は原発の周辺で生活している人たちへの事故に関する情報
の認知度の低さだ。「原子炉がこうなったらこうなる」ということを
私たちは今回事故が起こって初めて知った。それも冷却機能が失われて
約3時間後にはメルトダウンが始まるというようなことは、事故後
すぐに政府や保安院や東電が発表したわけでも何でもない。ネットや
本で必死に情報を集めて少しづつ状況を理解していった。ヨウ素剤の
問題は書くことが多いので次のブログで書こうと思う。

昨日「原発を再稼動しなければ冬も電力不足か?」というニュースが
流れていた。政府は「ストレステスト」を導入するというけれど
ストレステストは大きな災害を想定して、コンピューター上で行う
ただのシュミレーションなのではないか。非常用の電源を増設する
とか、ベントに対応できるフィルターをつけるとかいう、実効性は
あるけどコストのかかる対策の話が前面に出ないのはなぜ?
再稼動を目指している原発の周辺では住民に対して今度こそ
ちゃんとした原発事故の場合のリスクの説明や対応の仕方が、
フランスの場合のように周知徹底されるのか?

とてもそうは思えない。私の住んでいる場所はプルサーマル発電をする
原発から約50キロのところにある。もし原発で電源喪失、冷却不能
というような事故が起きれば、風向きによってはホットスポットにな
る可能性もあり、被爆をする圏内にあるということがやっと理解でき
るようになった。

どう考えてもこの国はこの先「国民ひとりひとりの生活を守る」
ような国に劇的に変わるとはとても思えない。
だから私たちは自力でなるべく正確で公平な情報を集め
その内容を検証し、お互いに共有していく努力を続けなければ
ならないのだと思う。


分からないことが多すぎる

2011-09-25 14:26:03 | 原発事故
先日福島産の新米から国の暫定規制値と
同じ500ベクレルの放射性セシウムが検出されたとい
うニュースがあった。

しかしその前に東京電力福島第一原子力発電所の事故で
現在原発から外部に漏れ出ている放射性物質の量に関する
発表があって、それによれば1時間当たり最大で2億ベク
レル程度と評価し、新たな放出による敷地周辺での被ばく
線量は1年間に0.4ミリシーベルトされている。

6月下旬の段階では1時間当たり10億ベクレル程度と評
価されて、その結果、敷地周辺での被ばく線量は、最大で
1年間に1.7ミリシーベルトであったのが7月8月は
5分の1に減っているということだ。

5分の1といっても1時間に2億ベクレルということは
一日で48億ベクレル、ひと月で1440億ベクレルと
いうことなのではないか。数字が大きすぎて専門的な
知識のない人間にはこれがどういうことなのかさっぱり
理解ができない。こんな大量の放射性物質が放出され
続けていて被爆線量が年間0.4ミリシーベルトという
のは本当に妥当な数字なんだろうか。

こうした放射性物質の放出について、東京電力は、格納
容器の中に残っていたり、汚染水に含まれていたりする
放射性セシウムなどが粒子状になり、水の蒸発に伴って
放出されているとしているようだが、今回の原発事故に
ついては、本当に素人には分からないことが多すぎる。
500ベクレルで出荷停止の一方で、毎時2億ベクレルが
漏れているという事実をどう解釈すればいいのかが分
からない。

今回炉心溶融について調べていたら事故発生前に
独立行政法人原子力安全基盤機構というところが、
原子力防災専門官向け資料として作成した炉心溶融の
シュミレーションの動画があった。事故によって制御棒が
挿入されて原発は停止したが冷却機能が失われたという
今回の事故と全く同じ設定。そのシュミレーションによれば、
事故の発生から30分後には炉心の溶融が起こり、一時間後
にはメルトダウンした炉心が圧力容器の下部に到達
事故発生から3時間後には圧力容器の下部を貫通するとされている。
動画のアドレスはこちら。 

http://youtu.be/wwYk62WpV_s

そして福島原発の1号機から3号機までの全ての原子炉で
このシュミレーションの通りのことが起こった。
その間政府はメルトダウンさえ起こってはいない、圧力容器は
健全だと発表し続けた。隠蔽しきれない重大な事柄は、こっそりと
そして本当に素人にはどう判断すればいいのか分からないような
形でさりげなく報道される、これが3月11日以降の原発事故
に対する政府とマスコミの報道姿勢であることは今も変わっていない。


京大の小出先生は「事故直後、本当なら福島県民全員を避難
させるのが妥当なくらいの放射能の放出があった」という趣
旨のことを言われている。
それでは現在は何がどの程度危険なのか、私たちは一体どういう
状況に置かれているのか、ひとつひとつをちゃんと教えてくれる
人はいないものなのだろうか。

自分たちの選択に責任を取る

2011-09-11 08:49:43 | 原発事故
相変わらず考えることが多すぎて
ということはあまりにも問題が多すぎるということなのだが。
新政権が発足した途端に「放射能をうつしてやる」発言で
辞任に追い込まれた大臣。
それをまたぞろ政争の具にしようとする野党。

昨日NHKでは震災から半年のスペシャル番組を放送していたので
冒頭のところをしばらく見ていた。
仮設の抽選に当たらないので未だに避難所で生活する人。
生活のメドが立たず食料の配給に頼っている人たち。
地震や津波で壊れた住居の2階で生活する人たち。
そして先の見えない放射能と向き合う原発事故で被災した人たち。

そこからはミクロな視点で捉えればほとんど前進していない
復旧復興の姿が浮かび上がってくる。
つまり個人のレベルで考えると
震災と津波と原発事故の被害はそれほど
多岐多様な様相でその個別の状態さえ把握はできていない
ということなのだ。

それを把握するためのちゃんとした命令系統も
確立されていなければ、独自に復興を進めようと
意欲的に取り組んでいる自治体の要請に答える
予算を下ろすこともできてはいない。
そんな状況の中でトップが変わりまた新しい組織ができ
それがちゃんと機能するようになるのは
一体いつのことなのだろう。

そもそも自民党政権の最後の辺り
次々に総理が替わるようになった頃から
日本転覆を企む闇の組織が暗躍してるんじゃないだろうかと
妄想を膨らませたりもしていたが
今回の経済産業大臣みたいな自爆型も散見するから
要するに今の政治家さんたちの資質が
「もはや国の体を為していない」と評されるくらい
低いということに尽きるのかもしれないが。
「福島の再生なくして日本の再生なし」
そんなキャッチコピーなんかに実効性はない。

ここまでくると政治の無能無策よりも
もっと大きな不安と疑問が湧き上がってくる。
それはそもそもこの国に復旧復興に取り組めるようなお金が
今現在あるのか、ないのかということ。
2次補正、3次補正ともっともらしいことを言っているが
法案を通したところで財源がないのなら意味はない。
増税という話も出てきたが、一応まだ法治国家だから
それも「はい、明日から税金上げますよ」なんて
無茶苦茶ができるわけではない。
法案が通って来年から増税したとしても
実際に税収があるのはまだ半年以上も先の話。
そこに持ってきて法人税の増税には円高株安などを理由に
財界から待ったがかかる。

被災して生活のメドが立たない人たちに
そんな悠長な話に付き合っていられるような時間的な猶予はない。
たとえ仮設住宅に入居できていてさえ
東北の仮設では冬を越すのは難しいという話は当初からあった。
原発事故にしてもそうだが
人間の命がかかっている問題に政治がこれほど
冷淡冷酷な対応をするのでは
もう民主主義の国家とは言えないだろう。

そしてそういう政治の荒廃は人の心を荒ませる。
何が恐いといって一番恐いのはそのことだ。
しかし責任のなすりあいやエゴや
一番弱い立場の人間に犠牲を押し付けるという流れでは
事態が悪くなることはあっても良くなることはない。

原子力発電にせよそれを推進した自公政権にせよ
民主党政権にせよつまるところそれを選択したのは
自分たちなのだという全ての問題の原点を
見据えて一人一人が自分たちの選択に責任を取る
そういう覚悟をしなければもう国が崩壊する以外にない
日本は今そういうところに来ているのではないだろうか。




ベントについて

2011-08-07 08:30:55 | 原発事故
前回のブログで書いた福島原発で高濃度の放射能検出
というニュースの時に東電の発表の中に「ベントの際に残留したのではないか」
というような発表があった。

「ベント」という言葉は原発事故の起こった時から頻繁に登場した。
首相の視察が原因でベントが遅れたことが事故を拡大させた
要因だったのではないかということが国会での論戦の議題にもなった。

事故後のマスコミの報道やなんかで私のような普通の人間は
何となくベントをしなければ格納容器が爆発して
チェルノブイリのような取り返しのつかない大事故になるから
ベントのことが問題なのだという程度に理解していた。

しかし今回またベントという言葉を耳にして
もう少しベントについて勉強しようと思った。
ネットで検索してかつて東芝で原子炉の設計に携わっておられた
後藤政志さんが技術者の視点から「1号機のベント失敗」について
詳しく解説をされているものを見つけた。
専門的な内容で詳しく述べられているので一読してほしい。

http://abc.pwkyoto.com/?eid=239

この中で後藤さんが問題とされているのが過酷事故対策への考え方だ。
私たちは今回のような大きな災害や事故の時の対策として
ベントをする機能が備わっているという風に理解していたが
実は「過酷事故というのは起こりえないという前提で
取りあえずつけておけばいいという程度の対策であった」
というのが現実だったということ。
後藤さんの主張はそもそもベントしなければならないということ
自体が根本的な誤りだということが大前提になっている。
つまり基本は何が起きても放射能を格納容器内に閉じ込めておける
それがあるべき姿ということだ。
しかし現実にはその基本が崩れる過酷事故が起きた。

その先の対策というのは「あり得ない」という前提で
AがダメならB,BがダメならCというような
単一故障基準すら適用されていなかった。
それは何故か。起こりえる全てのケースをシュミレーションして
対策を講じた原子炉などというものはおそらく
まったく採算が取れないようなものになるからだ。

更にどうしてもベントが必要になった場合に備えて
蒸気から放射性物質を除去するフィルターを設置するのは
現在では国際常識となっているらしいがこの点に関しても

「国内の沸騰水型原発ではベント配管にフィルターは付いておらず
東京電力福島第1原発事故では、放射性物質が広く拡散した。保安院は
「深刻な事故を想定していなかったからで、問題だった」と認めた。高
圧蒸気に耐えるフィルターは大掛かりでコストがかかり、技術的にも難
しいが、経済産業省原子力安全・保安院が、蒸気から放射性物質を除去
するフィルターの設置を義務付ける検討を始めたことが11日までの保
安院への取材で分かった」
これが6月の時点での話。このフィルターの設置に関しても過酷事故
を想定していなかったことやコスト最優先の体質がうかがえる。

「脱原発」にせよ「原発容認」にせよ自分の考え方をまとめていく上で
まずいろいろなことをちゃんと理解することが大切だと思う。
自分で選択したことに自分で責任を取るためにも
ムードに流されたり他人の意見をうのみにせず
自分の人生の残りの時間が許す限り
やはり少しずつ勉強を続けていきたいと思う。

福島原発で高濃度の放射能というニュース

2011-08-02 08:09:15 | 原発事故
昨日福島原発1号機と2号機の間の排気塔付近で
1時間あたり1万ミリシーベルト以上という極めて高い放射線量が
測定されたというニュースが流れた。1万ミリシーベルト
(10シーベルト/h)という値は、20分ほど浴び続けると
半数の人が死亡する放射線量で、これまで1号機の原子炉建屋
の中で測定された4000ミリシーベルトを超える、事故後最も
高い値だという。

このところ政府や東電は、原子炉や使用済み燃料プールの循環冷却が
ほぼ予定通りに進んでいて、事態は収束に向かっているという
ニュアンスの報道を続けていたところにこのニュース。
「東電は、事故直後に行われた1号機からのベントによって出た物質
が残っている可能性もあるとしながらも、詳しい原因についてはさ
らに調査が必要」と発表した。

事故後やがて五ヶ月になろうとしているのに、なぜ今また
こういう事態が報じられるのか。こと原子力に関係することは
一体どこまで事実が報道されているのか。
京大の小出先生は事故直後から次のような意見を述べられている。

(6月29日のインタビューから抜粋)

質問者:そもそも東電が国に(データなどを)示さないというのも
    あるのではないでしょうか?

小出さん:東京電力自身、今現在も事故の実態を把握できていないという、
     それほど困難な事故なんだ、ということもあると思います。
     いろんな情報そのものを知りえないということもあるし、
     知った上で東電が隠した、知った上で国が隠した、さまざまだ
     と思います。

私はこの小出先生の見解が正しいと思っている。このサイトでリンク
している福島原発の状態の様々なデータの中で、原子炉の水位と
燃料棒の露出度というのがあるが、1号機では27%前後、2号機と
3号機では35%前後燃料棒が露出しているという状況は、3月の
終わりくらいからずっと変わっていない。このデータは、1号機から
3号機の燃料棒がメルトスルーしているという事実と照合して一体
整合性があるのだろうか。
またこれも小出先生の意見によれば、安定冷却とか冷温停止とかいう
対処法は、燃料棒がある程度健全な形で残っている場合に可能で
あってメルトスルーしている状況では、そういう表現は適当でない
ということだ。

事故後からずっと感じていたことだが、事態をまだ正確に把握できて
いない東電は、更にそのことを政府に対しても正直に丁寧に説明
をせず、政府の指示に従ってうまく行っていることだけを報告し
マスコミも含めて、一般の人がちゃんと理解できないのをいいことに
適当なデータを発表し続けているのではないかという疑念は未だに
消えない。
日本のマスコミは中国の列車事故の経緯を揶揄的に報道していたが
実は自分の国でもまったく同じことが起こっているということを
どこまで自覚しているのだろうか。

長い間異端の研究者という立場にあった京大の今中先生と小出
先生はいまや時の人で反原発のシンボルのようになられ
そのために逆に反感を持つ人もいるのではないかと思うが
上のインタビューの中でこうも言われている。

「原子力発電だけは安全だというふうに、ほとんどの日本人は
多分信じてきた。それは政府と東電を含めた電力会社、大企業
が原子力は安全ですというウソを垂れ流してきたからです。
でも、騙された人にも責任があると私は思っていますので、
みなさんもよく考えてほしいと思っています」

これは原子力の問題だけに関わらず、怪しい利殖や投機の話でも
宗教でも、ギャンブルでも全てに共通する本質だと思う。
騙す人間たちはもとより悪いが、ここまで金が全ての拝金
主義が横行し、金になることなら何でもという世の中になれば
この「騙される側の責任」ということも本当だと思う。

例えば「脱原発になれば電気代が高騰し、企業は海外に移転。国内の
経済は低迷してしまう」という話一つにしても、それは本当のこと
なのか、回避する方法はないのか。それを主張しているのは
どういう人たちで目的は何なのか。そういうことを自分で勉強して
自分で考えて、原発に対する自分の考え方を決める。
特にこれから長い人生を生きていく若い人たちには、そういう
生き方が必要になるところにきているのだということを知って
ほしいと心から思う。

まともな国家ではない

2011-07-17 11:25:19 | 原発事故
連日のように福島産の牛肉の放射能汚染の
ニュースが報じられている。
6月には福島の酪農家の男性が「原発さえなければ」という
遺書を残して自殺するという痛ましい事件が起きた。
事実を報道することは大切だが
一方で「風評被害を起してはいけない」と言いながら
「今日はどこどこから出荷した肉牛から
何ベクレルのセシウムが検出された」というニュースを
毎日のように報道すれば他県の人たちは
「やっぱり福島産はこわい」と短絡的な受け止め方をするはずだ。

静岡のお茶にしてもそうだが
そもそもなぜ今になって次々にこういう話がでてくるのか。
少し古い話だが
4月21日に行われた政府の勉強会で原子力安全委員会は放射能の
放出量は「1日あたり、100兆べクレル」 と答えた。
それまでの発表では、一時間あたり1テラ(兆)ベクレル、つまり1日
24兆べクレルであったが、実際は約4倍ほど多かったということになる。

この勉強会のあとに、原子力安全委員会が伝えた正確な数値は、
ヨウ素131が、一時間あたり6990億べクレル。一日あたりでは16兆7760億べクレル。
セシウム137は、一時間あたり1430億べクレル。一日あたりは3兆4320億べクレル。
セシウムはヨウ素に換算すると40倍なので、一日あたりは137兆2700億べクレル。

合計すると、153兆7120億べクレル。これは4月5日時点での大気中への推定放出率
である。何が原因で、原発のどこがどうなっているからこんな想像を絶する
ような放射能が漏れ続けたのか。4ヶ月が過ぎた現在ではどういう状況なのか。
そういう事実は事細かには報道されない。
「レベル7」だけどチェルノブイリよりは全然軽いみたいな報道が
さらりと流されただけ。
牛肉の500ベクレル越えがこれほどの大問題なのなら
上の大気中に放出され続けた天文学的な放射能の数値は
一体どう解釈をすればいいのか。


前に書いたスピーディのデータは実は事故直後から出力されていた。
ただ公表されなかっただけだ。
これだけの大量の放射能が放出されればどの地域でどういう事態が
起こるか専門家であればシミュレーションが出来て当然だろう。
大体福島原発1号機で水素爆発が起きた12日からの1週間
原発からすくなくとも50キロ圏内できれば80キロ圏内の
住民の人たちに対しては屋内退避の指示が出て当然だったのではないか。

事故が起きた時風が主に海に向かって吹いていた。
それが破滅的な結果を生まなかった最大の理由だった。
それでも毎日24時間海に向かって吹いていたわけではないから
風の向きや雨の影響で放射能は散逸した。
ホットスポットもお茶の放射能も今回の肉牛の飼料も
それが断片的に出てきているということなのだろう。

前のブログに書いたように原子力を飯の種にして
税金で食っている天下りの団体は十や二十ではない。
ちゃんと仕事をしているというなら
なぜ起こりうる可能性を事前にシミュレーションして
ある程度は予防する体制なりができないのか。
補償金を1円でも少なく払うために
問題が出てきた時に場当たり的に対応すればいい
それが最優先だというのなら
それはもうまともな国家でも政治でもないのではないか。


九電玄海原発とプルサーマル発電について

2011-07-10 09:17:07 | 原発事故
九州電力の玄海原発の再稼動は
政治的な混乱から二転三転して当面早急な稼動はなくなった(と思う)

実は玄海の原発はプルサーマル発電と言う大きな問題を抱えている。
プルサーマルとは何か、何が問題なのかについては
とてもひと言で説明することはできない。
要約すれば「今発電中の原発でウラン・プルトニウム混合
酸化物燃料(=MOX燃料)を使って発電すること」ということだが
プルサーマルが抱える多くの問題点については
専門的に論じているサイトがたくさんあるのでぜひ参考にしてほしい。

今回調べていて驚いたのはプルサーマル発電が開始された時期だ。

「1995年の高速増殖炉「もんじゅ」でのナトリウム漏洩火災事故以来、
日本の原発でプルトニウムを使ってるところやプルトニウムを混ぜた
MOX燃料によるプルサーマル運転をしている所はなかった。 自公連立
政権下でも原発でのプルトニウム使用は推進していなかった。

ところが、2009年の政権交代直後に CO2の排出量を25%削減するという
「鳩山イニシアチブ」が示され、 各地の原発ではMOX燃料を使用した
プルサーマル運転を始めた。

  2009年8月 民主党、衆院選で歴史的大勝利
  2009年12月 玄海原発3号機のプルサーマル営業運転開始
  2010年3月 伊方原発3号機のプルサーマル営業運転開始
  2010年5月 高速増殖炉もんじゅ運転再開、その後、炉内中継装置落下事故
  2010年10月 福島第1原発3号機のプルサーマル営業運転開始
  2010年12月 高浜原発3号機のプルサーマル試験運転開始

実はプルサーマル発電の問題点の中でプルトニウムの毒性が指摘されている。
中でも1番の危険性は、プルトニウムが「吸い込むと1gで約50万人を肺
ガンにできる」猛毒物質であることなのだが、そういう危険はおそらく
重大事故は起こらないという前提のもとに無視されたのだろう。
そしてプルサーマル導入からわずか5ヶ月後に福島の事故は起きた。

たとえ政治の主流が脱原発に傾いたとしてもエネルギー政策を転換するには
最低でも20年くらいはかかるはずで、その間にまた大きな地震が起きない
という保障はどこにもない。
では一体どうしたらいいのか。私のようなただのおばちゃんでも
まずは特に危険性の高いものについては停止するのが順当なのではないか
と考えるのだ。

ネットで情報を集めただけでも専門家によって危険性が指摘され
停止を求められている原発がいくつかある。政府が停止を決めた浜岡原発
もその一つ。浜岡は立地と地震を起す断層の関係性が大きな理由だが
他には建設からかなりの年数が経っていて安全面に不安のある原発
玄海原発の1号機が36年、2号機は30年。敦賀の1号機、あるいは
美浜の1号機はもう既に建設から41年が経過している。
当初想定された安全の基準をどんどん引き伸ばながら稼動されている。
そしてプルサーマル発電。
「全部止めるか稼動するか」みたいな乱暴な論調ではなく、良識ある
専門家の意見をきちんと聞いて個別にきめ細かい施策を立てることは
できないものなのか。政権の変化に影響されず、長期的なスパンで
利権に左右されないプロジェクトチームを作ることは…
できないだろうなぁ、多分。そんなことができるような国なら
そもそもこんなことは起こっていないはず。
取りあえずこんなにある原子力関連の天下り法人は今回のことで
ほぼ何の役にも立たないことがわかったんだから
お得意の仕分けで全廃させて税金をもっと有意義に使おうよ。

(独)原子力安全基盤機構
(独)日本原子力研究開発機構(茨城) 原子力の基礎研究を行う
公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター(東京都中央区)
(財)原子力安全研究協会
(財)原子力安全技術センター
(財)原子力国際技術センター
原子力委員会(内閣府)
原子力安全委員会(内閣府)
原子力安全 保安院(経済産業省)
認可法人原子力発電環境整備機構(港区)
(社)日本原子力産業協会
(社)日本原子力学会
(財)原子力安全技術センター
(独)原子力安全基盤機構(東京)(2010年度予算200億円※) 
(社)日本原子力技術協会
(財)原子力安全研究協会
(独)日本原子力研究開発機構(2010年度予算1800億円※)(旧原研+動燃、もんじゅ推進)
(財)原子力研究バックエンド推進センター
財団法人 日本原子力文化振興財団(2010年度予算9億円 リクナビより)
(財)原子力発電技術機構
(社)火力原子力発電技術協会
(財)原子力国際協力センター
(社)原子燃料政策研究会
(財)原子力環境整備促進・資金管理センター
電源地域振興センター(東京) 原発地域の振興策などを手掛ける
日本原子力産業協会(東京) 原子力推進を掲げる
核物質管理センター(東京) 大型混合酸化物(MOX)燃料などを研究する
(財)日本立地センター
海外電力調査会(東京) 海外のエネルギー事情を研究する


長い闘いになる

2011-07-04 08:35:23 | 原発事故
前のブログで子どもたちを放射能から守ろうと書いた。
自分が比較的安全なところにいてスローガンだけ掲げるのは簡単なことだ。
それはこのブログを書いていていつも自分に問いかけることでもある。

もともとこのブログは家族がギャンブル依存症になって
数十年にわたる経済的な苦闘の末に
毎日死を考えて過ごすようになった頃
友人に債務整理のことを教えてもらい
家庭の再生に取り組んだところから始まった。

ギャンブル依存症のことを色々な角度から勉強して
その背景にある政財官の癒着を知った。
そしてギャンブル依存症は個人や家庭だけの問題ではなく
この国の上層にいる人間たちの
利権の結果としてこれほど大量に生み出されたものだと分かった。

今回の原発の事故もまったく同じような側面を持っている。
だから3・11以降は原発の問題について書き始めた。
ギャンブル依存症については国はまだ病気であることも
認めてはおらず解決の道筋はまだ入り口さえ見えてはいない。

ギャンブル依存症が自覚症状のない重篤な脳の機能障害であること
有効な治療の方法は今のところ見つかってはおらず
一生完治することはないこと。
自分の身近でギャンブルをする人に
たったこれだけのことを理解してもらうことさえ至難の技。
何故なら一にも二にも病気らしい症状が何もないからだ。
みんな自分は大丈夫だと思っているし説明されても何が何だかよくわからない。
それは放射能の問題とよく似ている。

例え被爆してもよほど急激で高濃度な放射能でない限り
すぐに何か症状が出るというものではない。
マイクロシーベルト、ミリシーベルトという
放射線の線量については今ではかなり認知されてきたが
例えばベクレルについてはどのくらいが危険なのかよく分からない。
そんな状況で情報が小出しにしかも後出しで出てくるので
みんなが段々それに慣れていっている怖さがある。
当事者でない人たちにとっては喉もと過ぎればで
問題の深刻さが少しづつ薄れていく。
脱原発の流れには節電や停電や電気料の値上げといった圧力がかかってくる。

しかし原子力行政をめぐるたくさんの利権が複雑にからんでいる
政治家やマスコミは根本的に信用ができない。
これは民主党だけでなく長年与党で原発を推進してきた
自民党も公明党もまったく同じだ。
だから政治が何かしてくれると過度な期待を持つことはできない。
それは私がギャンブル依存症の問題を通じて学んだことでもある。
業界を厳しく規制できる、あるいは法律で禁止できる
そういう可能性がどこが政権を取ってもまったくない。
逆の可能性はあっても。

依存症からの回復をめざすには
とにかくギャンブルをやらないこと。
つまりは自衛する以外に有効な手立てがない。
放射能の問題も同様で迅速に社会の仕組みを変えることができないなら
何が危険なのかを知って自衛するほかはないのだ。

しかし被爆を避けるというのは簡単だが
人は生活のある場所を簡単に捨てることはできない。
この不況のさなか避難をして生計が成り立たなければ
家族みんなが生きていくことができない。
そのあり得ないようなシビアな状況を思うと
スローガンだけを簡単に言うことができなくなる。
それでも…5年後10年後の悲劇を一つでも減らすために
言い続けていくしかないのだと思う。
長い長い闘いになる。


何はともあれ子どもたちを守ろう

2011-06-27 08:22:54 | 原発事故
チェルノブイリの事故は1986年に起こった。
この事故によって当該プラントから30km以内に居住する全ての人
間(約11万6000人)はおよそ1週間で移転。その他、当該プラン
トから半径350km以内の、放射性物質により高濃度に汚染された
ホットスポットと呼ばれる地域においても、農業の無期限での
停止措置および住民の移転を推進する措置が取られ、結果とし
て更に数十万人がホットスポット外に移転した。

事故から25年が経って、この時放射能の被害にあった人たちに
どういう健康被害が生じたかということについてはまだはっきり
したことはわかっていない。(事故直後に原発内で作業に従事した
人たちについては深刻な影響があった)
その中で唯一はっきりしているのが子どもへの影響だ。

「いくつかの研究により、ベラルーシ、ウクライナ、およびロシア
の子供での甲状腺癌の発生が増えていることが判った。

国際連合人道問題調整事務所の立ち上げた「The United Nations
and Chernobyl」によると、ウクライナでは350万人以上が事故の
影響を受けており、その内の150万人が子供であった。癌の症例数
は19.5倍に増加し、甲状腺癌で54倍、甲状腺腫は44倍、甲状腺機
能低下症は5.7倍、結節は55倍となった。

ベラルーシでは放射性降下物の70%が国土の四分の一に降り、50
万人の子供を含む220万人が放射性降下物の影響を受けた。ベラル
ーシ政府は15歳未満の子供の甲状腺癌の発生率が2001年には1990
年の2000例から8,000-10,000例に急激に上昇したと推定している。

ロシアでは270万人が事故の影響を受け、1985年から2000年に汚染
地域のカルーガで行われた検診では癌の症例が著しく増加してお
り、それぞれ、乳癌が121%、肺癌が58%、食道癌が112%、子宮
癌が88%、リンパ腺と造血組織で59%の増加を示した。ベラルー
シとウクライナの汚染地域でも乳癌の増加は報告されている」
              (引用はウィキペディアより)

旧ソ連では様々な理由で疫学的な調査が遅れていて、放射能と健康
被害の関係は子どもや若年層の甲状腺への影響以外は未だに明らか
にはなっていない。
福島の原発事故とチェルノブイリでは事故の経過や放射能物質の
放出量は異なる。しかしチェルノブイリがおそらくはかなりの数の
作業員の被爆と引き換えに7ヶ月後に石棺で封印されたのに対して
福島の原発は3ヶ月半を過ぎた今でも、原子炉の封印には着手でき
ない状態が続いている。4つの原子炉の建屋内で、迅速に作業でき
ないような高い線量も計測されている。その他に大量の汚染水もあり、
メルトスルーした炉心から地下水に漏れ出している可能性も示唆
されている。つまり今回の事故は今後の人体への影響がまったく未知な
状態で、現在も継続している。水蒸気爆発のような、瞬間的に大量の
放射能が放出される危険は一応回避されているのだろうが放射能が
漏れ続けている状況に変わりはない。
東電のふくいちライブカメラの、特に夜のライブ映像をみると、3
号機や4号機からはゆらゆらと水蒸気のようなものが立ち上っている。

だから今できることはとにかく乳幼児と子どもや若年層の人たち
それに妊娠の可能性のある人たちの被爆を極力防ぐことしかない。
取りあえずわかっていることから、できることから取り組んでいく
本当にそれしかないのだと思う。



原発をめぐる現状について

2011-06-19 10:00:49 | 原発事故
6月18日海江田経済産業大臣が
これからの原子力行政についての会見を行って
今後も原子力発電を推進していくことを表明した。

マスコミはこのところ原発事故に関しては
汚染水の処理施設の稼動に関するニュースが
メインになっている。
見ている人はこの施設が正常に稼動すれば
高濃度の汚染水があふれ出す危険は回避され
事故の収束に向けて一歩前進するような感じがするはずだ。
しかし本当にそうなのだろうか。

小出先生のブログから少し引用する。まず6/13の記事より
( )内は質問者

(原発の汚染水処理システムがまもなく稼働するがその処理
で汚染された泥が出る?)

そうだ。放射性物質そのものは消えないから移しているだけであり、
水をきれいにすれば別のところに移すことになる。その処理をどう
するかが次の問題

(処理後の泥の放射能は1立方センチあたり1億ベクレルだが、影響は?)

それに近づいたらすぐに急性症状が出るくらいのレベルだ。

(泥の量は25mプール4〜5杯分というが、それを処理施設でずっと
保管できるか?)

もちろんできない。暫定的に集中処理建屋に移動しても、そこで終わり
ではなく、その後ずっと保管は続く。

汚染水の放射能の濃度を下げたからといって放射能が消えるわけでは
ないことが分かる。高濃度の放射能が海や地下に流出することを水際
で食い止めるだけで、しかもそこから高濃度の放射性物質を含んだ汚泥
が大量に発生するということだ。

さらに6/14の記事

(福島第一原発の1号機、2号機の周辺で5月18日に採取した地下水
から基準の200倍を超えるストロンチウム90が検出されたことにつ
いて)

この濃度を見ると、核燃料棒が溶けて圧力容器だけでなく格納容器も突
き抜け、地下水にまで達していることが分かる。こうなると水をかけて
冷やすのは無理。事故処理の大転換が必要だ。

(福島から1100キロ離れた佐賀県の松の葉からセシウムが検出された。
どうみるか?)

大した距離ではなく、当たり前のことだ。米国にもヨーロッパにも届いており、
全地球に広がっている。そういう中で生きざるを得ないところに追い込まれて
いる。

先日政府は今回の事故がメルトダウンではなくメルトスルーだったと
発表したが、これは冷却機能が失われて原子炉の水がなくなり、炉心の
燃料棒が溶融して圧力容器の底を壊し格納容器に解け落ちたということ
だろうが、格納容器はそれほど頑丈なものではないので小出先生はすでに
格納容器にも穴があいて地下に達するところにまで溶け落ちているのでは
ないかと推測されているわけだ。

政府と東電の行程表では循環冷却をやって今年中には原子炉を安定的に
冷却するという図式が描かれているが、それだけでは様々な不備がある
ことが小出先生のブログをていねいに読んでいけば分かる。

今回の事故は人類が今まで一度も経験したことのない原発事故なのだ。
事故の経緯も現在の状況もまったく未経験な中で
まさに手さぐり状態での対応が続いている。

4基の原発が同時に事故を起し
現在ある程度状況が明らかになり作業も行われているのは一号機だけ。
他の3基についてはまだほとんど手付かずの状態。
しかも圧力容器だけではなく使用済み燃料プールの問題もある。
事故後の一週間政府や東電は
「直ちに健康に影響はない」と繰り返し続け
分かっている情報すら公開しようとはせず
大量の放射能の放出と国民の被爆を黙認した。

こうして専門家から現在の処理方法だけでは不適当という指摘もある。
そんな中での原子力推進の表明。
日本の事故を受けて脱原発を表明した
例えばドイツやイタリアの人たちの目には
現在進行形の事故の渦中にあって
それでも原発という日本人の姿はどんな風に映るのだろう。

政治や企業の宣伝マンになっているメディアは信用ができない。
一人一人が自分で情報を集めてそれを共有し
世論を作っていくという地道な努力が必要だ。
国民がみんな1円募金すれば1億3000万円になるのと同じだ。
一人では何もできないと悲観せずに
小さな声が大きな力になるように
今できることをがんばらなければならないと思う。

福島の友人から福島のこどもたちを被爆から守る趣旨の
署名を集めるサイトの紹介が送られてきた。

http://www.foejapan.org/infomation/news/110610.html

ブックマークにも追加しますので内容をよく読んで
趣旨に賛同していただける方は署名をお願いします。

放射能の子どもたちへの影響

2011-06-14 07:48:51 | 原発事故
このブログでずっと乳幼児、児童、妊婦さんなどは
極力被爆を避けてほしいと書き続けた。
一般的に子どもは放射線の影響を受けやすいという表現をされるが
具体的な資料として東大病院放射線科のチーム中川のブログで
「放射能(Bq:ベクレル)」から「被ばく量(Sv:シーベルト)」
への変換について」という記事があった。

この先生はあまり評判はよくないが専門家だからいくらなんでも
専門分野の資料については信憑性があると思うということで。

この中に食物の場合を例に挙げて次のように書かれている。
「食物に含まれる「放射能(Bq:ベクレル)」が、それを摂取す
る私たちにどれだけ「被ばく量(Sv:シーベルト)」を与えるか
は、放射性物質の種類、取り込み方(吸引か経口か)、私たちの
年齢などによって変わります。」

ベクレルをシーベルトに換算するために換算係数というのがあって
これが放射線の核種や年齢によって違うということ。そして
ヨウ素I-131の被ばく量を例にとって計算されている。

「放射性物質であるヨウ素I-131の「変換係数(μSv/Bq)」は、
0歳で0.140、1~6歳で0.075、7~14歳で0.038、15~19歳で0.025、
大人で0.016です。(乳児はお母さんの母乳から摂取するとします。)

ホウレンソウ中に観測されたヨウ素-131の最大値として、1kgあたり
15,020Bq(ベクレル)を用います。そのうち100gを摂取したとします。

1~6歳  :15,020×0.1×0.075 = 112.65
7~14歳 :15,020×0.1×0.038 = 57.08
15~19歳 :15,020×0.1×0.025 = 37.55
大人    :15,020×0.1×0.016 = 24.03

単位は(マイクロシーベルト)です。乳児の場合は、I-131を摂取し
た母親の授乳により乳児が受ける線量は母親の摂取量あたり0.054
μSv/Bq (参照:ICRPPub.94 Table 13.1) として、15,020×0.1
×0.054 = 81.11μSv(マイクロシーベルト)が被ばく量となります。」

更に詳しく知りたい方は次のページを参照してください。

http://tnakagawa.exblog.jp/15135702/

放射能の数値ベクレルを被爆量のシーベルトに変換した場合、ヨウ素131
で言えば乳幼児は大人の約5倍の被爆量になるということだ。
この記事には核種と年齢別の変換係数も掲載されている。

先般原発事故の初期に放出された放射能の値が修正されたが
あの数値はあくまでも総量で、その中にはセシウムとかヨウ素
とかウラン、ストロンチウムといった色々な種類の核種が含まれ
ていて、その核種ごとの放出量があって、更にそれらによる
年齢ごとの被爆量の違いがあるということになる。

とても大雑把な分類で申し訳ないがこれが特に乳幼児や妊婦さんが
極力被爆を避けなければいけない根拠と言えるだろう。

「放射能汚染地図」で報道されたホットスポット(原発からの
距離だけではなく、風や雨の影響、地形などによって放射能
の濃度が高くなっている地域)についても段々認知されてきて
福島では避難地域が拡大されるということだ。

原発事故の発生当初、政府(東電や専門機関も含めて)が
スピーディーを公開しなかったこと、原発の冷却機能が失わ
れた3月12日の時点で最悪の事態を想定して、60km~80km
圏内の住民に対してせめて屋内避難などの指示を出さなかった
ことはもうほとんど犯罪としか言いようがない。

イタリアでは国民投票の結果を待たずに首相が脱原発を表明し
投票の結果は投票者の9割以上が脱原発に賛成した。
もちろん脱原発を実施するには当然それなりのリスクはある。
一人一人が我慢をしなければならないことも努力しなければ
ならないことも当然出てくる。それでも自分たちの家族や
生活や財産や、更にはたくさんの人たちがこつこつと働いて
持続発展されてきた産業や、つまりは自分たちの国を守るために
考えなければならないこと、行動しなければいけないことが
ある、そういうところに来ているのではないかと思う。



理念なき世界の先にあるもの

2011-06-12 09:08:36 | 原発事故
私が原発や放射能について多少なりとも知識を得
考えるきっかけになったのはもう十年以上前に読んだ
高村薫さんの小説「神の火」だった。

元原子力発電所の技術者で某国のスパイになった主人公が
チェルノブイリで事故にあって余命幾ばくもない青年に出会い
原子力に絡む様々な国の謀略や青年の死を契機に
やがてかつて自らが稼動させた原子力発電所を襲撃するという物語だ。
この物語の舞台は現存する柏崎音海原子力発電所。

「侵入できるならこの施設は安全ではない」という単純な命題を
証明するために原発テロを企てるというある意味過激なストーリーを
私は「安全安心」を歌い文句にして原発を推進する体制に対する
逆説的な警告の書として読んだ。

高村さんは原子力を人間が神から盗んだ火と表現されている。
確かに人間は優れた知能を持ち高度な科学や文明を発達させて
現在の繁栄する社会を築いてきたが
同時に有限の命を有する動物でもある。
動物であるからには本来は自分たちが生息する地球の天然自然との調和を
極端に崩さないようにすることが必要不可欠なのだと思う。
それはつまり自分たちの手にあまる、制御できないような領域に
やたらに踏み込まないということだ。

表向きは非核を唱えながら実は互いに核を保有することが
戦争の抑止力になっているという
大きな矛盾を抱えたこの世界はすでに人類のみならず
すべての生物の滅亡の危機と背中合わせの日常を生きている。
原子力もまた破滅と裏表のエネルギー資源であるという事実を
(原材料が同じものだからそれは当然のことなのだが)
今回の事故によって私たちは思い知らされた。

230キロ離れた東京都の汚泥から高濃度の放射生物質が検出されたらしい。
汚染された水も土壌も瓦礫もどこに持っていくこともできず
封印するにはまだまだ長い年月を必要とする壊れた原発から
放射能の拡散は静かにそして確実に日本のみならず世界に広がり続ける。

しかし脱原発を標榜したドイツでは産業界から反発が起きているという。
地震の直後に唐突に東電が仕掛けた計画停電は明らかに
原発が無くなればこうなるんだというほとんど恫喝ともいえるパフォーマンスで
原発反対の世論を押さえ込みたい意図があったように感じられたが
日本でも脱原発の空気が高まってくれば
電気代の大幅な値上げの影響をダイレクトに受ける分野からは
当然反対の声が起きてくるだろう。
今の政治と同じで「ああでもないこうでもない」と
際限のないどうどう巡りを繰り返したその果てにあるのは一体何なのか。

今まで一生懸命働いて真面目に生きてきたたくさんの人たちが
震災と津波そして原発事故によって
想像を絶する困窮に見舞われている現実を直視しなければならない。
この世界有数の地震国の狭い国土に、北から南までまんべんなく54基もの
原発がひしめいている状況を真剣に考える必要があると思う。
今東北で起きていることは決して他人事なんかではない。
次にまた大きな地震がおきれば明日はわが身なのだ。
何の根拠もなく「起きるはずがない」「起こらないかもしれない」と考えて
なんの対策も打たないような人たちにまかせておけるはずもない。
そして非常事態が起きた時に政治がどうなるかという、ほぼ絶望的な状況をも
私たちはこの3ヶ月で目の当たりにしてきた。

「神の火」にこういう一文がある。
「人間には理想というものがある。人間は理想を持つことのできる動物」
でありそれが人間に残された唯一の希望なのだと。

このサイトでリンクしている京大の小出先生は5月23日
参議院の行政監視委員会で原子力行政に対して
高速増殖炉もんじゅの計画の見直しなどを提言された際に
ガンジーの七つの社会的罪に言及された。即ち
「理念なき政治。労働なき富。良心なき快楽。人格なき知識。
道徳なき商業。人間性なき科学。献身なき崇拝」
今回の原発の事故は、まさに政治や大企業がこういう全ての理想を
捨てて拝金主義の暴走を続けた結果引き起こしたものだ。

そして彼らは自分たちが極力痛みを負うことなく
すべてのツケを税金や電気料
長期的には社会福祉や年金の縮小
被爆による健康や生命の不安という様々な形で最後は
国民の一人一人に負わせようとしているような気がするのだ。

*このサイトでリンクしている福島原発の現状に東電の福島原発
 ふくいちライブカメラが追加されています。





知ることそして考えること

2011-06-07 08:34:58 | 原発事故
6月5日(日)は夜9時からNHKスペシャルで
「シリーズ原発危機事故はなぜ深刻化したか」が放送され
10時からは教育テレビで「続報放射能汚染地図」があり
昨夜はTVタックルで原発問題の緊急生放送があった。

これらの番組を見ていてやはり一番胸に応えたのは
TVタックルの福島の避難所とスタジオを結んだ中継での
被災者の人たちの怒りと不安に満ちた表情だった。
「とにかく一日でも早く元の生活に戻りたい」

今福島で避難をしている人は約2万4千人余り。
他県で地震と津波のために避難している人たちも合わせると
3ヶ月経つのにいまだ10万人以上の人たちが
避難生活をしているのが現状なのだ。

原発事故については驚いたのは現地に
国の対策本部が設置されていないこと。
原子力に関する事柄については
全ての決定権が国と総理大臣にあって
事業者や地方自治体にはない。
この仕組み自体が今回のような一刻を争う非常事態に
対応があり得ないくらい遅れた最大の要因だと思う。

何かを決めるのに
現場→東電→保安院→政府と報告が上がり
そこでいちいちああでもないこうでもないと会議をやって
決定事項がまたその逆ルートで下りてくるなどという
途方もなく手間のかかることをやって
こんな緊急事態に対応できるわけがなかった。
だから避難指示にしても国から指示が出るまでは自治体は動けないが
だからといって正確迅速な情報が国から下りてくるわけでもなかった。

今政界やマスコミの空気は対応が遅れたのは
すべて菅さんが悪い、菅さんが辞めれば万事うまくいくみたいな
雰囲気になって大連立とか政権交代とかいう
政局の話になっているが
もともとこういう非常時にまったく対応できないシステムを作って
重大事故が起こらないのをいいことに長年放置してきたのは
原発を推進した与党の自民党と公明党と事業者の東京電力
それに原子力行政に関わった全ての団体の専門家や官僚たち。
そこが原点なのではないか。
だから与党野党に関係なく責任は関係者全員にあって例外はないと私は思う。

前にも書いたが震災以降山積みの課題は
すでに十数人の大臣たちが仕切れるようなキャパを
はるかに越えている。

地震の被害に関する問題、津波の被害に関する問題
そして原発事故では未だ危機に直面し続ける原発だけでも
原子炉の冷却や大量の汚染水の処理、住民や作業者の被爆の問題
海水や土壌の汚染、さらに風評被害と
極めておおざっぱに分けても十や二十の項目では足りないくらい
早急に解決しなければならない問題があるのだ。
国会議員や官僚は国民の収めた税金で給料を貰っているのだから
何々党なんていう看板は二年でも三年でも棚上げにして
全員で分担して被災した各県に現地の対策本部を作り
とにかく被災をしている人たちが
一日でも早く元の生活に戻れるように全力投球するのが
あるべき政治の姿だと思うのだが政治家の人たちは
誰一人そんな風には考えていないのが恐ろしい。
この人たちはいよいよ国が破綻するまで
小学生のような椅子取りゲームを続けるつもりなのか。

そしてどうやら復興のためには国民が消費活動を活発にして
つまりじゃんじゃんお金を使って経済を活性化させるだとか
消費税や電気料を上げるだとか
結局は全てのツケがブーメランのように私たちに戻ってくるらしい。
日本人は規律正しいとか忍耐強いとかおだてられて喜んでいる場合ではない。

今までは多くの人たちが何となく
「お上のすることを信じていれば大丈夫」という空気でやってきたが
実は全然大丈夫なんかではない。
そして「誰がやっても同じでたいしてよくならない」という
あきらめムードも危険だ。よくなることはなくても悪くなることはある。
そうならないために私たちはどうすればいいのか
そこのところを本当に真剣に考える局面、正念場にきているのだと思う。
と段々論調が過激になってきたのは最初に
「まさかこんな事態で政局とかいうほどさすがにそこまで愚かでは
ないだろう」と信じてしまったことの反動だ。

 奇しくも昨日世界有数の原発推進国のフランスの世論調査で回答者の
77%が原発を即時もしくは段階的に廃止すべきだと考えていること
が明らかになった。
「電力需要の8割近くを原発が担うフランスで、これほど脱原発の
機運が高まったのは異例。脱原発団体のスポークスマンは「世論は
福島第1原発事故を受けて明らかに原発の重大なリスクを意識して
いる」と述べた。 今月1~3日に有権者1005人を対象に行われ
た調査によると、原発を即時停止すべきだとした回答は15%。
25~30年かけて段階的に廃止すべきだとの回答は62%に上った。
原発継続派は22%にとどまった」

 世論が動けば政治も動かざるを得ない。もともと日本は世界でただ
一つの被爆国で、世界有数の地震国で、そしてこれだけ大きな原発
の事故が起きた。国民の半数を超える人数が反原発あるいは脱原発
を希望すればそれはおそらく世論となりえる。ひとりひとりがそう
いうことを真面目に考えてほしいと思う。