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癌と生きる 依存症と生きる

命がある限り希望を持つということ

事件の背景にある問題

2016-07-28 11:10:19 | 薬物依存症
また本当に痛ましい事件が起こりました。
犠牲になられた方々や親族の皆さまには
心からお悔やみを申し上げます。

戦後最大の被害者を出した
言葉にするのもはばかられるような
残虐な事件を引き起こした犯人の経歴や言動
あるいは背景や対策などについて
色々な報道がなされています。

けれど私は、今回の事件で「大麻」あるいは「薬物」という
言葉が出たことが気になって
その部分を中心にニュースを見ていました。
断片的な報道ではありますが、犯人は
大学時代の後半から大麻や危険ドラッグをやっていたという情報があります。
薬物の常習者、薬物依存症であったことは、ほぼ間違いないと思います。

もしも多くの人たちが
大麻(マリファナ)や覚せい剤、危険ドラッグなどの薬物や薬物依存症
についての正確な知識や情報を持っていたら
もしも自分の身近な人間が、違法な薬物を使っているかもという時に
相談をすることができる信頼のおけるシステム
(公的、私的な相談機関や精神科医などの専門家)が
たくさん身近な場所にあったら
依存症については、法的な処罰だけではなく
治療による回復が必要だということが社会の常識になって
治療に取り組める場所と援助者、治療者などの人的資源がたくさんあったら
もしかしたらではありますが、今回の事件は防げたかもしれない
と思わずにはいられないのです。

残念ながら、今の日本には上の3つの要素が一つもありません。
もし自分の身近な人間が薬物をやっていると分かっても
何をどうすればよいのか、ほとんどの人は知りません。
相談や治療ができるのは、市や県の精神福祉センターやジャパンマック
薬物依存症に対応してくれる病院やダルク、自助グループなどですが
その数はとても少なく、しかもほとんど知られていません。

そして治療については、薬物ですら法的な強制力はなく、任意ですから
ある程度の年齢になると、親兄弟でも
首に縄をつけても連れていって治療させるというわけにはいかず
治療に取り組む人も、回復を続ける人もごくわずかです。

今回の事件では、友人たちは、犯人の変化に気づいていたようです。
そして2月に衆議院議長に意見書みたいなものを渡した時は
警察から病院にも連絡があり、入院もしていました。
その時点で大麻の使用も分かっていました。

今回ひとつだけ「大麻による中毒性精神障害なのでは」という記事がありました。
驚いたのは、こういう事案で、病院は
本人の自己申告だけで簡単に退院させるのか
慢性的な薬物使用による精神障害を診断したり、対応を規定できる
ガイドラインはないのかということでした。
薬物使用の事実があり、「人を殺す」などの危険な言動があるケースでは
「何を」「いつから」「どれくらい」使っていたのかを
本人だけでなく家族など身近な人から聞き取りをするなどの措置はとれないのでしょうか。
治ることはないというのが常識であるはずの薬物依存症で
中毒症状がなくなったという判断は、一体どこから出たのでしょう。
覚せい剤ではなく大麻だから、大きな危険性はないという判断でしょうか。

措置入院で、自他に危害を加える可能性がある人物を
一定期間隔離し、その期間をどれだけ延長したところで
原因の一つが薬物依存症である場合には
依存症の治療がなされなければ、ほとんど意味はないと思えます。

去年の7月に、危険ドラッグを使用した男が
隣人を襲ってナイフで傷つけるという事件がありました。
犯人が逮捕時に「シェシェシェのシェー」と叫んだ事件です。
犯人は、長期にわたって大麻や危険ドラッグを使用
犯行時は「孫悟飯になって一旗あげる」というようなことを言ったようです。
この犯人は、過去に薬物使用で服役もしています。
最近は薬物に関する犯罪は、服役中に回復プログラムが実施されますが
社会に出て、それが継続できなければ、簡単にもとに戻ります。

事件の重大さ、残虐さから
「薬物のせいにするな」「病気のせいにするな」というご意見が
たいへん多いだろうということは分かっています。
これだけたくさんの方の命を奪った犯人が
薬物による精神障害を理由に、罪に問われないなどということは
ほとんどの方は納得できないだろうし、私もそうです。

けれど今回の事件のように、大きな要因のひとつが薬物であることが
事前にはっきり分かっている場合には
それに対応できる、ある程度は法的な拘束力のある
しっかりしたシステムを作って対応していけば
これから起こる悲惨な事件の何パーセントかは防げるのではないかと思うのです。

欧米では、もう半世紀も前から、薬物については「処罰よりも治療を」という
考え方が広がって、ある程度のシステムもできています。
それでも薬物の広がりを食い止めることはできません。
日本のように、ほとんどの人が知識がなく
まったくといっていいほど無防備な国で
様々な種類の薬物が今以上に広がり始めたら、今回のような事件は
たびたび起こるようになるのではないかと深く危惧しています。


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この世界で生き残るために

2016-07-03 15:09:54 | 薬物依存症
また芸能人の人が覚せい剤使用で逮捕され
そのことについてのコメントも、たくさん目にします。
私は、家族の薬物の問題を抱えているわけではありませんが
これまで、有名人が逮捕されて、ニュースになった時に
依存症という視点から、幾つか記事を書きました。

今回また芸能人が逮捕されたというニュースを耳にして
少し前の、元プロ野球選手逮捕もまだ記憶に新しいので
とても気になることがあります。
それは、テレビや新聞を見ている一般の人が
「やはり、覚せい剤とかドラッグなんて
芸能人とかスポーツ選手とか、特別な世界の人がやってるんだな」と
思いこんでしまうことです。

プロ野球選手の時に書きましたが
取り締まる側は「有名な人間を逮捕して、大々的に報道させることで
抑止力にしよう」つまり、見せしめにしようという思惑が
あるのかもしれませんが、それが一般の人たちの認識を
誤らせてしまう可能性があるのではないかということです。

なぜこんなことを書くかというと
以前川崎で中学生の事件があった時に
地元のTV局が、深夜徘徊する青少年の特集をやったことがあって
そのインタビューに答えていた子供が
「クスリ買わない?って言われたことがある」と答えていたからです。
何回か書いていますが、子どもだけではなく、大人も
知り合いになった、ごくごく普通に見える人から
「疲れが取れる、痩せる、元気が出る」などの
とても魅力的な誘い文句で、覚せい剤や危険ドラッグを勧められる可能性は
いまや誰にでも、どこに住んでいても起こりうるのです。

依存症についての治療が、日本よりも半世紀は進んでると思われる
アメリカですが、2010年の調査によると

「違法薬物の使用で最も多かったのは大麻であり、1,740 万人であった。これ
は過去1 ヶ月内の違法薬物の使用者薬2,260 万人の76.8%を占め、大麻のみの
使用割合は60.1%(1360 万人)であった。よって、12 歳以上の900 万人
(違法薬物使用者の39.9%)が大麻以外の違法薬物を過去1 ヶ月内に使用し
ていた」となっています。

この流入先の多くはメキシコとコロンビアの麻薬カルテルで、トランプさんの
「メキシコとの間に壁を造る」発言は、どれほど対策をしても
取り締まりを強化しても、薬物の流入と蔓延を食い止めることができない
アメリカの苛立ちの表れでもあろうかと思いますが
けれどこれもまた、別の世界の、他の星の話ではありません。
今現実に、世界のあらゆる場所(特に先進国と言われる国々)で
日常的に起きている現実で、日本もまったく例外ではないということです。
ついにアメリカでは、マリファナを、闇組織の資金源にしないために
合法化するという州まで登場しています。

確かに覚せい剤やコカインなどはそれなりに高価ですから
狙われるのは、一定の経済力がある人たちかもしれません。
けれど、危険ドラッグが出現して、薬物の形態は
(その成分もですが)驚くほど多様化しています。
薬物といえば注射で、使わないと禁断症状が出て
よだれをたらしてのたうちまわるもの
というような、それこそ半世紀前のイメージでは
とても現実に対応することはできません。

それに加えて、パソコン、携帯、スマホなどのIT機器の
子どもたちへの爆発的な普及です。
例えば、小学生でも出会い系サイトにアクセスできるという現実は
薬物との距離も、数年前とは比べ物にならないくらい
近くなっているということでもあります。
ニュースを見て、覚せい剤を使用した芸能人夫婦のスキャンダルで
盛り上がっているような場合ではありません。
報道を見ていると、むしろ故意に、問題の本質を
そらそうとしているような気さえします。(ワタシ割と陰謀論者ですから)

私が初めて薬物というものを知ったのは
小学校の時に、父親と観に行った、黒澤明監督の「天国と地獄」だったと思います。
誘拐事件の犯人の男が、そういう場所に出向くシーンがあって
廃人のようになった男女がうぞうぞとたむろしている場面は恐ろしく
あとで父から、戦後に蔓延したヒロポン中毒や、アヘン戦争についての
講釈をされたような記憶があります。麻薬は、人間を人間でなくしてしまう
とんでもなく怖いものということを、小学校時代にすりこまれました。

戦争と、戦後の想像を絶するような混乱の時期を経験した人だったので
「こういうものは、子どもに見せてはいけない」というような
区切り方をする人ではありませんでした。
「特に女性は、堕ちてしまうとどこまでも堕ちていく」というような話は
戦後生きていくために体を売ったパンパンと呼ばれた女性たちを
現実に見聞きした人間ならではの説得力がありました。
「どれほど助けてと叫んでも、戻ってこれない場所がある。
そこまで行ってしまってはいけない」ということを
私は父親に教わりました。

高校時代は、自分の生育環境や、親に反発して
親の望む子ども像を、一回リセットしてやろうと
ずいぶん無茶なこともしましたが
成績とか生活態度とか、細かいことで何か言われたことはありません。
本質的なところで「人間はどうあるべきか、どう生きるべきか」を語り続けた
まさに明治の理想主義の塊のような人だったと
今でも懐かしく思い出します。

「寝た子を起こさない」「くさいものにはふた」で
無難に安全に生きていける時代ではなくなっています。
特に日本の社会は、経済がすべて、お金がすべての価値観で回っていますから
少しでも経済活動にマイナス(要はお金を使わなくなるような)な話は
ほとんど表には出てきませんし、規制もされません。
しかし、先日の、コンビニATMを使った巨額の詐欺事件でもわかるように
犯罪もグローバル化して、誰がやっているのかもわからず
誰が標的になるのかも、これまた分からない
ということは、常に自分が標的になる可能性もあるということです。
社会はとんでもなく複雑になっていますが
人間はひどく無防備になっています。
どうせハイテクを極めるなら、悪意あるものはすべて排除できるという
ところまで進化できるなら良いですが、いかにも中途半端なのです。

しつこく書いていますが、薬物の問題ひとつ取っても
これまで知っていた知識では役に立たないことが多く
一人一人が様々な情報を集めて
それを整理して、役に立つ情報は、家族や他の人たちと共有する
極端な言い方をすれば、そうやって地道に地道に
自衛できた人間だけが生き残れるという
超サバイバルな社会になっているのではないかと思えます。


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青少年の薬物問題に強い危機感を

2015-10-08 14:19:26 | 薬物依存症
昨日夕方のニュースで
福岡の警固公園というところで
青少年の深夜徘徊の実態を取材した特集が放送されていました。

取材班が声をかけた子どもたちの年齢は13才から16才くらい。
同じ学校というわけではなく、多くがLineなどで
知り合ってグループになったと話します。
「土曜日はたいてい朝帰り」
「知らない人とSNSで話して、何人も会ったことがある」
取材している人が「恐くないの?」と聞くと
「ああ、ちょっと恐いけど、まあ大丈夫かな」と、そんな感じでした。

先日あれだけ大きな事件があり、連日放送されたにも関わらず
当人たちにも、おそらくは保護者にも
そういう危機感はないようで、それが自分たちの身にも
起きるかもしれないと想像する能力が完全に欠如しています。

ボランティアで彼らに声かけをされている方は
「怒ったりはしません。家庭に居場所がないといった
理由をかかえている子どももいるから」と話されていました。

現代のように、どんな危ない事件に巻き込まれないとも限らない
物騒な時代に、こうして夜間俳諧をする中学生や高校生
そして彼らの家庭環境に大きな問題があるのは事実です。
けれど私が「やっぱり」と思ったのは
インタビューに答えた子の一人が
「クスリ買ってくれんと言われたことがある」と答えたことでした。

薬物の問題は、脱法ドラッグが絡んだ事件が起きるたびに
報道されていますが、まだまだそれが自分たちのすぐ身近にある
とんでもない危険だと感じておられる方はとても少ないように思います。
なにしろ自分たちの生活圏に、山ほどとばく場があって
それによってギャンブル依存症という、とても難しい病気の患者が
すでに600万人にもなっているという現実さえ
みんなに理解されているとはとても言えない状況なのですから。

そうこうしている内に、若年層のネット依存、スマホ依存の問題が
急速に広がり、現在子どもさんのスマホ依存に悩んでおられる
保護者の方も、かなりの数になっています。
薬物の問題も、まったく同じです。
「自分たちのことではない」と思っている内に
あっという間に身近な問題になります。

何度も書いていますが、最近の薬物は
ちょっと見には、危険な薬物とは思えないようなものがたくさんあります。
女性であれば「簡単にやせることができる」
あるいは「疲れが取れる」「頭がすっきりして能率が上がる」
そういう誘い文句で、あたかもサプリかなにかでもあるようなものが
しかも、それほど高額でもなく
青少年でも手にいれられなくはない状態で流通していく可能性があります。

私は、こうした薬物のルートで一番可能性が大きいのは
現在子どもにも普及している携帯やスマホだと思っていましたが
昨日の放送を見ていて、友人からというのも出てくると感じました。
親や先生が把握できない子ども同士の世界。
おとといも高校生が大麻所持の容疑で逮捕されましたが
この数か月薬物に高校生が絡む事件はすでにぽつぽつと報道されています。

日本人は「寝た子を起こさない」的な考え方が主流で
「変なことを言って、反対に興味を持たれたら困る」と考えられる
親御さんが多いかもしれませんが
薬物は、数ある依存症の中でも、最も回復が困難です。

たった一回の使用で依存症になり
回復するには、家族とも離れて回復施設に入り
薬物を使用せずに生きていく日々を続けていくことになります。
とにかく興味本位や面白半分といった軽い気持ちで
得体がしれないもの、正体が分からないものに
手を出さないことを、大人は子どもたちに伝えていく使命があると思います。

少し前のブログで
12才以上のアメリカ人の、約2260万人が違法薬物を使用した
ことがあるという調査結果を書きましたが
一番多いのは大麻で、最近の国内の事件もほとんどが大麻です。
厄介なことに大麻は依存性がない、煙草と一緒といった認識が一般的で
ネットでも「危険ではない」という意見が多いです、
医療用として使われている大麻もあって
現在のところ大麻自体を危険とする科学的な根拠はありません。

ですから大麻の危険は、そのもの自体よりも
それを売っている人間たちと関わりを持つこと
彼らにそういうものに興味があると知られることのほうだと思います。
ネットとか友人が仲介すれば売人が誰なのかも分かりません。
テクノロジーの進化が、あらゆる危険を
とてもあいまいで実態の分からないものにしていることは
あの手この手で被害者を増やし続ける各種の詐欺事件を
思い浮かべていただければ理解できるのではないかと思います。
犯人は容易なことでは分かりません。

最初は大麻でも、それはじきに違法薬物に変わっていきます。
こういうものを売っている人間たちにしたら
依存症にしてなんぼの世界です。
ギャンブルと同じで、生涯貢がせるカモにもできるし
クスリや報酬を餌に、さらに薬物の販売網を広げることもできます。

この人本を読み過ぎて妄想癖が、と思われる方もおられるかもしれませんが
これが私たちを取り巻く現実です。
今の時代「自分たちには関係ない」は絶対にありません。
私は家族がギャンブル依存症になったことで
まさに身を持ってそれを実感しています。

薬物の危険性をなるべく早い時期に
子どもたちに伝え、それとともにネットやスマホのことで
すでに他人事ではなくなってきている依存症の恐ろしさについても
可能な限り子どもたちに伝える努力をしていただけたらと
願って止みません。








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社会、あるいは世界を知ること

2015-02-25 07:11:31 | 薬物依存症
最近観た映画の中で
一番インパクトがあったのが「悪の法則」でした。
キャメロン・ディアスとかブラピとか出てるから
エンターテイメントなアクション映画かなと思いきや
「ホラー映画」の枠に入れてもおかしくないくらい怖い映画でした。

「カウンセラー」と呼ばれている若い弁護士は
心から愛するローラと幸せな結婚生活を送るために
「一度だけ」と自らに言い聞かせ、メキシコマフィアが絡んだ
麻薬の取引で大金を手に入れようとするのですが、アクシデントが起きて
関わった人間は次々に殺され、絶体絶命の状態に…。

あらすじを書くと、アクション映画と思えなくもないのですが
実はこの映画は、普通の世界で生きている人間が
道徳も理屈も情も何も通用しない世界に、一歩でも足を踏み込んだら終わり
という状況を、かなり極端な手法で描いています。

そしてそういう世界は、決してフィクションの中だけにあるのではなく
私たちが生きる現実と隣り合わせに、確実に存在しています。
例えば、先日の「イスラム国」による日本人の殺害もそうですし
今、ニュースになっている中学生が殺された事件もそうだと思います。

「気分が良くなる」「疲れが取れる」「痩せる」といった
魅力的な言葉で誘う薬物や
楽をして、楽しい思いをして、お金が手に入ると錯覚させるギャンブルや
相手がどこの誰かも分からないネット上の人間関係など
「その一歩」を踏み出したために、簡単に破滅させられるようなものが
それこそ普通に、自分たちの周囲にあふれている世界。

さらに自らアクセスしなくても
携帯やスマホには、煽情的なメールや儲け話への誘いが送りつけられ
あるいは振り込め詐欺やオレオレ詐欺のように
もう一つの世界が、こちらの世界に否応なく進入してくる
そういう時代なのだということをちゃんと理解する必要があります。

「悪の法則」という映画は
主人公が悪人に追われて、派手な銃撃戦があって
カーチェイスがあってという映画ではありません。
何とか助かろうとする主人公は
助けを求めた人間たちの言葉によって
自分が何をしたのかを
そして自分がおかれた状況を思い知らされていきます。

主人公が最後に助けを求めたメキシコの有力者は言います。

「自分が置かれた状況の真実を知るべきだ。犯した過ちを取り消そう
とする世界は、過ちを犯した世界とはもはや違う。
選択はずっと前に行なわれたのだ」と。

主人公にはもはや助かる道はどこにもないわけですが
実は、それは最初から分かっていたことなのだと
選んだのは他ならぬ自分自身なのだと
映画の登場人物たちは、繰り返し語るのです。

その中で、主人公だけが、最後まで「まだ何とかなるのではないか。
何か道があるのではないか」とすがる姿が哀れです。
この映画自体は「こういうことをしたらだめですよ」というような
道徳的、教化的な映画ではありません。
こうしたらこうなるという現実だけを、否応なく突きつけてきます。
その凄まじさは、とても健全な青少年に見せられるような代物ではありません。
なにせ、あのブラピが首ちょんぎられますから。
整合性のないところや、明らかに説明が不十分で
意味がよくわからないところもありますが
そんなことを気にしなければ、すごく面白い映画でした。

たくさんの人は「決められたことをちゃんと守って真面目に暮らしていれば
幸せになるはずだ」と信じて、普通は毎日一生懸命に生きています。
けれども、そんな日常でも、「ほんのちょっとした出来心」で
踏み出してしまった一歩が、本人や、時には家族までを地獄の底に落とす。
そういう不条理な現実は、回りに幾らでもあるということです。

ダンナのギャンブル依存症の問題で
精神的に極限まで追い詰められた私が、それでも何とか持ちこたえた
理由の一つは、ギャンブル依存症を生んだ社会の仕組みというものを
ある程度理解できたことが大きかったと思います。
本当なら、裏の世界のものであるはずだった賭博場が
いまや全国津々浦々に存在します。
それによってたくさんの人間が悩み、苦しみ、破滅していきます。

スマホや携帯に送りつけられる怪しいメールや動画は
相手が青少年であろうがなかろうがおかまいなしで
しかも始末が悪いことに、送り手が誰であるのかすらわかりません。
とんでもなく理不尽な話ですが、でもそれが現実です。
ひとりの人間に、それをどうにかすることなんかできません。
身もふたもない話ですが、すべてどうしようもないことなのです。

若者が、薬物やギャンブルに手を出すこと、お酒やネットに惑溺することに
歯止めをかけなければいけないのは
それが「いい高校へいけない、いい大学にいけない、ちゃんとした大人になれない」
というレベルの話ではなく、誰にもどう助けてあげることもできない
戻ることができない世界への片道切符になるからです。
そうならないためには、とにもかくにも最初の一歩を踏み出さないことです。

「何も楽しいことがない」「家でも職場でもストレスばかりで
気分転換にスカっとしたい」「ちょっとくらい遊んだっていいだろう」
そんな、それこそ軽い気持ちで足を踏み入れた場所は
初めは、楽しいパラダイスのように見えていても
実は浮かび上がることができない底なし沼で
あんなにイヤだと思っていた元の世界にいたほうが
何百倍、何千倍ましだったと気づいた時には、すべてが手遅れ。
私たちはそういうものに囲まれて、日々生きています。

川崎の事件では、被害に会った子供さんも親御さんも
この世界には自分たちの想像も及ばないような人間がいるということを
そういう人間が自分たちのすぐ身近で生きて動いているということを
おそらく想像もされていなかったのだと思います。
けれどそれが私たちが生きている社会の現実なのです。

「悪の法則」の後に観た「アメリカン・ハッスル」という映画では
(いったいどれだけ観てるんという話ですが)
ある都市の発展と雇用促進のために、市にカジノを建設する話を持ちかける
怪しいコンサルタント(実はFBI)が、その市の市長と大物議員との
収賄を取り持ち、さらにそこに大物のマフィアも絡むお話でした。
「問題があれば私たちが何でも解決しますよ」という
マフィアの顧問弁護士(怖い、怖すぎる 笑)
けれども、世界はこんな風にできているのだということは
何からでも学ぶことはできます。

そして、たとえフィクションの世界とはいえ(これは実話物でしたけど)
それをこうして表の世界に出せるところに
私はまだしもアメリカの健全さとか良心を感じるのです。
まあアメリカの場合は、マフィアや麻薬カルテルよりももっと巨大な裏の勢力があって
それに関することには誰も触れないという話なのかもしれませんが。



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BSプレミアム「ドラッグってなんだ」(2)

2014-12-23 14:52:25 | 薬物依存症
「ドラッグってなんだ」の後半は、薬物依存からの回復
についての話だった。

まず薬物依存症の回復施設であるダルクのスタッフの方のお話。

「ダルクで回復に取り組んでも99%は再発している。
回復に取り組もうとした依存症者の、6割はこのダルクを去り
その後は、刑務所に入った人や行方不明になったり
亡くなった人も250人くらいはいる」

薬物依存からの回復がどれほど困難かを
象徴するような話だと思う。

そして現在ダルクで回復に取り組んでいる人の話もあった。
ダルクでも午前、午後とミーティングが行われる。
その日のテーマは「仲間」だったが
出席したメンバーは、まず自分の呼び名
(本名ではなくたとえばケンとかハナなど自分の好きな仮名)と
「自分は薬物依存症です」と言ってから
自分の話をし、他のメンバーの話を聞く。

大切なのは、過去の自分と今の自分を
比べながら話すことなのだという。
インタビューに答えた男性は
「仲間の話を聞いて共感する部分がたくさんある」と話していた。

そもそもどの依存症でも、何かに依存する理由として
生きづらさや孤独感が根底にあって、何かに依存し
依存することでさらに社会や家族から孤立していくのだが
依存症の仲間の話を聞くと「自分と同じだ」と思うことができるのだ。

それまで「自分はひとりぼっちだ」「誰も分かってくれない」と
心を閉ざしていたのが、同じ体験をした人の話を聞くことで
「自分だけじゃない」「ひとりじゃなかったんだ」という
安心と共感が生まれてくる。

さらに回復施設のスタッフさんは、ほとんどが
かつてはアルコールやギャンブルや薬物の依存者で
でも回復を続けて、毎日他の人の回復の手助けをしているという
事実をまのあたりに体験することで
「絶対に止められるはずがない」と信じ込んでいた気持ちが
「自分も回復できるかもしれない」という希望に変わっていく。
これが依存症者が回復に向かう理想的な経過だが
現実はとても厳しい。

しかしこの放送の中には、たいへん興味深い話があった。
あらゆる依存症からの回復に有効とさている
自助グループや回復施設でのミーティングの有効性の
科学的な根拠である。
私のような、理屈っぽくて面倒くさい人間は
まさに「これだよ、これ。これが知りたかった」というツボだった。

岡山大学の松井教授の説明によると
ミーティングで仲間の話に共感することで
脳内にオキシトシンという物質が分泌される。
このオキシトシンの効果は
マウスによる実験でも確認されるのだという。
オキシトシンは、依存症ではないが
一部治療にも使われ始めているようだ。
できればこのような研究がいずれ
依存症の治療薬の開発に結びついてくれればと心から願う。

明日はクリスマス・イブだというのに
あいも変わらずちまちまと依存症ブログを書いている私。
介護の仕事をしているダンナは
先日部署が変わって、元日は朝7時から午後4時までの早番の後
夕食を食べてちょっと仮眠して
夜中の12時から翌朝9時までの夜勤というシフト。

それでも健康で働ける仕事があることが幸せだと
心から思うことができるなら、ダンナも回復しているはずなのだ。
私にはわからないけれど



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BSプレミアム「ドラッグってなんだ」(1)

2014-12-21 16:29:50 | 薬物依存症
昨日の昼、何気なくケーブルを見ていたら
NHKのBSの「関口宏のそもそも」という番組の再放送で「ドラッグってなんだ」という
テーマの話があっていた。別にチェックしていた番組でもなかったし
番組タイトルのイメージがわりと軽いノリということもあって
最初はただ何となく見ていた。

けれど実はものすごく内容が濃いことがわかって
途中からはメモと筆記用具を手に、大切なところをメモったが
それでも全体をカバーすることができず、できることなら
もう一回ていねいに見たいと思ったくらいだ。

番組で紹介されていたのは
 1 ドラッグの歴史
 2 アメリカでなぜドラッグがこれほど広がったか
 3 薬物依存症のメカニズム
 4 現在のアメリカなどの薬物の対策
 5 薬物依存症の治療とそのメカニズム
 6 ダルクの活動の紹介 など

まずドラッグの歴史はとても古く、古代エジプトにまでさかのぼり
そもそもは生薬の成分を病気の治療に用いるという目的のために
研究され、作りだされたものであるというところからして驚きだった。

つまりドラッグはもともとは科学者たちが、鎮痛や結核の治療薬として
阿片やコカなどの植物の成分を変化させて作りだしたもので
初期には万能薬として推奨されたものが
後にヘロインでは900万人、コカインでは1700万人の
依存症患者を生み出すことになった。

次にアメリカで急激にドラッグが広まったのは
ベトナム戦争が契機で、戦地へ派遣された若者たちが
日々死の恐怖に向かい合う極限状況の中で
その恐怖を忘れ気持ちを高揚させるために
日常的にマリファナや大麻などを用いた
それが戦争が終わった後も、大量の薬物依存症者を生み出す結果になった。

さらに現在アメリカで「最も危険なドラッグ」と言われる覚せい剤は
日本が発祥で、太平洋戦争以前から「ヒロポン」などの商品名で
一瞬で疲労が取れ、気分が高揚する手軽な強壮剤として
広く一般で用いられ普及していたという話には愕然とした。

これらのドラッグの中で、あるものは
人間の脳で分泌される脳内物質と化学構造がよく似ている。
動物としての人間の自然のメカニズムを無視して
人工的にそれを人体に注入することで
脳は取り返しのつかないダメージを受ける。
人間の脳の構造や機能は、まだ分かっていないことのほうが
圧倒的に多い。いや、もしかしたら永久に分らないかも知れない。
だから壊れても治療できる有効な方法がない。

このようにドラッグは、一度でも使用したら間違いなく依存症になるという意味で
もっとも危険で深刻なものなのだが
アルコールもギャンブルも、ネットでも、他の依存症でも最後には
脳はほぼ同じような状態になるから、その危険性は同じなのだと思う。

この番組も、一度で書ききれるような内容ではないので
続きは次に書きたいと思う。
しかし、どれだけ即効性があるとはいえ
取り返しのつかない多大な副作用が出現してから
その薬が実は危険なものだとわかるという経緯も
医療では用いられなくなった後も、大きな利益をもたらすものとして
水面下で違法に流通し、犠牲者、被害者を増やしていく現状も
すべての人間がそうだというつもりはないが
人間はやはりとても残酷で愚かな生き物だと思う。


番組の中で語られた「毒性のない万能薬はない」という言葉が
自分がガンという不治の病に向き合っている身としては
また少し違った意味合いで胸に落ちたのでもあった。






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自衛できることは自衛する(薬物)

2014-09-28 07:57:09 | 薬物依存症
昨日厚労省の調査をもとにした「危険ドラッグ若者に急拡大」のニュースが出ました。

それによると、薬物を一度でも使ったことがあると答えた人は
▽シンナー1.9%
▽大麻1.1%
▽覚醒剤0.5%
▽危険ドラッグ0.4%で

これを基に全国の15~64歳の使用者を推計すると
▽シンナー約183万人
▽大麻約107万人
▽覚醒剤約52万人
▽危険ドラッグ約40万人--となる。

使用者の平均年齢は
▽シンナー43.8歳
▽大麻40.7歳
▽覚醒剤40.1歳--に対し、
危険ドラッグは33.8歳と最も若かった。。
調査対象者の約4割は、危険ドラッグを一度使っただけで呼吸困難に陥ったり
意識を失ったりする恐れがあることを知らず、他の薬物より危険性の認識が低かった 
となっています。とにかく推定にせよ覚せい剤と危険ドラッグの使用経験者が
すでに100万人にせまる数字というのは、かなり深刻な状況です。

アメリカの犯罪ドラマを見ていると、登場人物の8割くらいが
ドラッグ経験者であったり、中毒者であったりして
社会へのドラッグの浸透ぶりに背筋が寒くなりますが
決して他人事ではありません。
先日ニューハンプシャー州では二日間で30人を超す中毒者が出て
非常事態宣言が出される事態にまでなっています。

「パーソンオブインタレスト」というドラマでは
ロシアの秘密組織が、輸入した工業用の化学薬品をドラッグにして売る話があって
それに手を貸すのがニューヨーク市警の悪徳警官の組織HRというあたりまで
描いているのは、さすがアメリカだと変なところで感心してしまいました。

自分がガンになって少し詳しくなりましたが、普通薬を作る場合には
動物実験をして、慎重に臨床試験をし、十分に安全性を確認してからでないと
販売できない仕組みになっていますが
しかし最近流通しているドラッグの場合は
覚せい剤に似た作用などを起こすものであれば
工業用であろうが何だろうがおかまいなしで
たいして設備もない隠れた場所で、ほとんど何の知識もない人間が
適当に調合して作っているという、毒物以外の何物でもありません。

ですから、使った人間が一発アウトで死亡したり
生涯寝たきりの重い障害が残ったり
誰かを殺したり傷つけたりという、どんなことでもおこりうる
とんでもない状況になってきているのだと思います。

こうした危険な毒物が、急速に広がり始めたのは
やはり価格が安いということが大きな理由だと思います。
これまでのドラッグの代表的なもの
覚せい剤、コカイン、ヘロイン、大麻などは
販売される時にはかなり高価なので
継続的に使うとなると、それなりにお金持ちでなければ手を出せませんでした。

ところが危険ドラッグは、従来のドラッグに比べて
何分の一、数千円で手に入るから
極端に言えば中学生でも買うことができるような値段です。
しかも使い方も、かつての「注射器で」といった
おどろおどろしいのでなく、普通の錠剤やお香のような
アブナイ空気を感じさせないものになっています。
さらにこうしたドラックの一番怖いところは
他とは比べ物にならない依存性の強さで
一度やったらほぼ間違いなく薬物依存症になります。

なぜならドラッグの場合は、薬物の科学的な作用で直接かつ即時に

<A10神経付近にドパミンの過剰な充溢を起こし、当該部位の
ドパミン受容体に大量のドパミンが曝露することで覚醒作用
や快の気分を生じさせる>つまり快感物質ドーパミンが
ドバドバ出るという異常な状態を作り出して、それを体感してしまうと
まさに「一度やったらやめられない」ということになるからです。
つまりドラッグの場合は
一回でもやったら、引き返すことができなくなります。

そしてドラッグを買うお金がなくなると、最悪の場合は
売る側に回らされる可能性もあります。
すでに依存症になっていますから
ドラッグを手に入れるために、薬物欲しさに
他人にドラッグを売るようになります。
こういう図式ができてしまったら
汚染はネズミ算式に拡大していくと思います。

しかも「これは危険ドラッグですよ」などとはもちろん言いません。
「疲れが取れる「元気が出る」「痩せる」などと
あたかも健康食品のような勧め方をされれば
若者だけでなく、サラリーマンでも主婦でも誰でもがだまされてしまいます。
中でも、今の社会の怖さを知らず、好奇心が旺盛な
学生や若者は特に「軽い気持ちで」手を出す可能性が大きいです。

前にネットの問題で、専門家の方がネット教育は
ネットやスマホ(携帯)を使い始める前
できれば小学校低学年のうちからと提言されていましたが
同じようにドラッグの場合も
最低でも中学生になったら、リアルにドラッグの怖さを
理解させる教育が必要なのではないかと切実に感じます。

面白半分にドラッグを使った多くの人の認識が
「覚せい剤よりは安全だと思っていた」というのを見ても
未だ同じように考えている人が多いだろうし
ああいうものは、こわもてのお兄さんが繁華街の暗闇なんかで
こっそり売っているもので
子どもが手を出せるようなものではない
全然別の世界の話などと考えている人も
日本では多いような気がしますが
決してそんな安易な話ではありません。

いまや完全に得体の知れないものに変貌して
しかも規制の届かないネットなど水面下でも流通するようになったドラッグは
一度やっただけで

死ぬかもしれない
一生寝たきりになるかもしれない
精神を完全に破壊するかもしれない

トンデモナク危険な代物なのだということを
特に中、高、大学生などをお持ちの親御さんはしっかり理解していただいて
その危険性を子どもさんにちゃんと理解してもらう機会を
作ってもらえたらと切実に思います。

ギャンブル依存症の例でも分かるように
国が何かしてくれる、自治体や警察がどうにかしてくれるといった
他人まかせでは正直もう無理なのだと思います。
ドラッグの成分を分析して、危険薬物に指定したら
次の週には、もう新しい危険ドラッグが出てきているというような
もぐら叩きのような状態で対応できるレベルはもうとっくに超えています。

ギャンブル依存症にしても、ネット依存症にしても、薬物依存症にしても
自分でできる限りの情報を集めて
できそうな対策はやってみるという、自衛の時代、自衛の社会に
なってきているのではないかと思うのです。
極端な言い方をすれば、種類を問わず
「依存症」というものについての正しい知識、対処法を理解しなければ
「今そこにある危機」を回避できない
そういう世の中になっているのだと思います。
一人でも多くの人が、この問題について真剣に知ろうと
思うようになってくださることを願ってやみません。




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依存症の治療を知る機会に

2014-07-04 16:19:33 | 薬物依存症
先日覚せい剤の使用で逮捕されたミュージシャンが
昨日保釈されたということで
今日はそれについて色々報道されていました。

釈放されたミュージシャンの人は、治療施設に入るということで
私はそれが一番正しい選択だと思いました。
今日の「ミヤネ屋」では、その薬物依存の治療について
さいたま県立精神医療センターの先生が
かなり詳しくお話をされていました。

番組では「薬物」の問題と特定しているように聞こえましたが
これまでずっと書いてきたように、アルコールとギャンブルと薬物の
依存症は、治療の方法は基本的に同じです。

だからそれらの依存に悩んでいる方が
薬物依存の治療についてのこうした報道を聞く時は
「薬物」の部分を「ギャンブル」や「アルコール」に
置き換えて聞いていただければ
自分や家族が抱えている依存症から回復するためには
どういう治療をすればいいかというイメージが
少しでも理解できるのではないかと思います。

出演者の中には相変わらず「治る」というような表現をする人もいますが
医療関係の方や、薬物依存の回復施設ダルクの方は
「一生治るということはなく、回復を続ける」と説明されています。
さらに本人だけでなく、家族の心のケアも大事なのだとも話されていました。

治療施設の一日のスケジュールはきちんと決められていて
そのかなりの割合をミーティングが占めています。
これについて先生は「自分の気持ちを他人に正直に話すことが
できるようになることが回復につながる」という趣旨を説明されていました。
AAやGA,NAといった依存症者同士の自助グループは
これを12ステッププログラムというものに基いて行なっています。
そしてもともとAAから始まった12ステッププログラムも
その後たくさんの人たちの研究によって改良されて
より回復を実現しやすいものになってきているように思います。

私が初めてギャンブル依存症という病気を知った7年前は
「ギャンブル依存症は治らない」「依存者自身が行くところまでいって
最悪の状況で底つきを経験しないと回復しない」といった
依存者の家族にとってはほぼ絶望的とも言える結論が主流でした。

確かに行くところまでいって、本人が全てを失い
もう自助グループしか自分を受け入れてくれるところはないと
心から感じたほうが、回復につながりやすい、というか
回復の方法である12ステッププログラムや認知行動療法
といったものを受け入れやすいということはいえるかもしれません。
しかし、そのために家族が地獄を見なければならないようなことは
あまりにも理不尽です。

残念ながらうちの場合も未だこうした回復にはつながっていません。
これは人が「やらせる」ことには意味がなく、それでは
おそらく回復することもできないはずなので、たまに話はしますが
強制はしません。
私自身もダンナの依存症を自分がなんとかしようという気持ち
から開放されて自由になることはとても大事なことなのです。

けれど本人に「このままではまずい。大変なことになる」という気づきが
あれば、最悪の底つきを経験しなくても回復できる可能性があります。
まずは自分がお酒や、ギャンブルや薬物への渇望、衝動に対して
無力であること、自分でコントロールすることができなくなっている
ことを心の底から認めることができれば、治療も回復も可能です。

残念ながら、かのミュージシャンの場合は、ほぼ最悪の底つきの状態になっ
ての治療ということになってしまいました。もしも彼の周辺に、依存症の
治療に詳しく、彼をちゃんと説得して、もっと早い時期に彼を治療につな
げることができる立場の人がいたら、もしかしたらですが彼はここまで
全てを失わずに済んだかもしれません。
それは薬物だけでなく、ギャンブルでも、アルコールでもまったく同じ
なのです。

今回この事件によって思いがけず依存症やその治療がメディアで大きく
取り上げられています。
そういう意味では依存症の治療、回復について知ることができる
千載一遇のチャンスでもあると思います。
薬物だけでなく、ギャンブルやアルコールで依存症の問題を抱える方は
この機会に自分自身のことと受け止めて少しでも理解していただければと思います。
番組に出られた先生も「日本では支援体制が遅れている」と話されていました。

それでも少しづつ回復施設や自助グループは広がってきています。
少ないとは言え、相談できるところは増えています。
依存者本人がすぐにというのは難しくても
家族がちゃんとした機関に相談することで自分の人生を立て直すことも
依存者の回復と同様にとても重要なことなのです。

癌の治療でも、医療機関を選ぶことや治療を決めることの
難しさを痛感しました。
それでも癌にせよ、依存症にせよ探せば道はあるはずです。
私の癌は、治らないということが前提ですから
健康な細胞へのダメージが少なく、経済的な問題もクリアできる
ということで、ホルモン剤治療を選択しました

などとクールに書いてますが、告知された直後は
若干パニくって混乱してました。
そこから何とか立ち直って、情報を集め、整理し
ゆっくり考えて結論を出すという作業をやり直しました。
何にせよあきらめないこと、知識や情報を持つこと、
そして納得がいくまで自分で考えることが
とても大切なように思います




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薬物事件を依存症を知るきっかけにしてほしい

2014-05-25 10:29:13 | 薬物依存症
この一週間ほど、TVや新聞は、連日のように芸能人の薬物使用に
関するニュースを流していました。
こういうニュースではいつも「社会的な実績や立場のある人がなぜ?」という
問いかけがされますが、その答えは簡単です。依存症だからです。

もう何度も書きましたが、依存症は脳が依存対象へのコントロールを失う病気
です。依存する対象が、薬物であれ、ギャンブルであれ、アルコールであれ
病気が進行するとコントロールを失った脳は、依存するものへの強烈な欲求、
渇望以外の機能が働かなくなって、人格の変化、人間性の崩壊が起こります。
その結果何がやってはいけないことなのかという判断や、これをやったらどう
なるかというような思考も働かなくなります。というよりも、極端な言い方を
すれば、依存者というのは、もとのAならAという人物ではなく、別の何者か
に変貌したというべきではないかと自分の体験から言っても感じます。

アルコールの場合だけは、ある程度時間が経たなければ依存症にならないよう
ですが、薬物とギャンブルの場合はたった一回の経験でも依存状態になります。
その理由としては、A10神経系(脳内報酬系)という分野への強烈な刺激
によって脳内物質のドーパミンの放出のされ方が異常になるという生物学
的な変化が起こるためだと、依存症のメカニズムが近年解明されてきています。

依存症になる理由として、性格や意思が弱いというような言われ方をしますが
そういう問題ではなくて、薬物やギャンブルの作用で脳に科学的な変化が生じ
るもので、いつどうやって依存症になったのかは本人にもわかりません。
報道ではストレスが原因かという表現がされていますが、依存症の原因はあく
までも薬物やギャンブルといった脳を変化させる毒との接触です。
確かにストレスに弱いことは、あらゆる依存物質に依存しやすい要因のひとつ
かもしれませんが、どんなに性格が弱くてもそうした毒に接触しない限り、
依存症にはならないのです。作家で精神科医の箒木蓬生さんが「お釈迦さまで
も依存症になる」と極言されているように、自分の今持っているどんな能力
を総動員したとしても、薬物やギャンブルの場合は依存症になることを止める
ことはできなません。これらの依存症に関しては、意思や理性や経験は
まったく役に立たないわけで、依存症にならないためのたった一つの方法は、
薬物やギャンブルなどの毒に安易に接触しないということだけなのです。

しかも依存症は、通常の医療(投薬や注射など)による治療の方法がありません。
現在依存症の回復施設は、アルコールではAA,ギャンブルではGA、薬物ではNA
といった回復するための自助グループがほぼ全ての都道府県にあり、依存者
同士のミーティングが定期的に行われています。その他に、このブログでも
前に紹介したジャパンマックや、薬物依存であればダルクという薬物依存症の
民間の相談機関、リハビリ施設があって、AA,GA,NAとも提携しつつ、依存者が
依存症から回復するための活動を行なっています。

薬物報道の際に、ある弁護士さんが、アメリカでは依存症に対応するリハビリ
施設が充実しているが、日本はとても数が少ないと言われていて、これは
本当にその通りです。アメリカのドラマを見ていると、薬物やギャンブル
アルコールや虐待、ストーカー(加害者側)に至るまで、会話の中でセラ
ピー、カウンセリング、リハビリ施設といった言葉が頻繁に出てきます。
アメリカでは、そういう人間の脳や心の問題について、取り合えず対応
できる設備やシステムがある程度できているのだなということが分かります。

それに比べて日本では、もはや薬物の問題でさえごく身近な問題に
なりつつあるのに、対応するための機関は民間のNPO法人のがんばり
だけに委ねられているような、とても先進国などとはいえないお粗末さ
です。今回の報道を見ても、依存症の怖さという部分が特にクローズ
アップされているようにも思えません。薬物という部分が強調されて
いますが、広い意味で言えば依存症は対象が何であれその恐ろしさは同
じです。正常な判断力や思考力を失った依存者の行動(借金や違法行為)
は、本人だけでなく家族や周囲の人間たちにも大きな悲劇的な影響を
与えます。

自分たちとは無関係な芸能人の話と受け止めず、どうかこういう機会に
依存症は実は自分たちのごく身近にある大きな脅威だと認識して
軽い気持ちでおかしなものに近づかないことが大切です。「疲れが
取れる」「やせる」「健康にいい」など、つい気持ちが動いて
しまうような誘い文句を言われても、得体のしれないものは基本的に
危ないものなのだというくらいの警戒心が必要です。

またアルコールやネットのように依存症になるまでに一定の時間が
かかるものは、これらの依存症についての知識を持って、自覚的に
予防をすることが大切です。依存症は治らない病気です。
一度依存症にかかってしまったら、正常な人生を送るためには
毎日依存をしないという努力を死ぬまで続けていくことになります。
依存症の人にとって、これはものすごく困難なことなのです。
このように、依存症は誰にとっても人生そのものを失ってしまう
本当に恐ろしいものなのだということを知っていただきたいと思います。

私の意見は少し極端だと思われる方がおられるかもしれませんが
現実にアルコール依存症は、飲酒運転で死亡事故を起こして
いるケースがたくさんあります。ギャンブル依存症も、借金苦
から悲惨な事件を起こす例が数多くあります。薬物はそもそも
それ自体が違法であり犯罪行為です。その結果、無関係な人たち
が犠牲になっています。この三種類の依存症だけでも患者数は
すでに一千万人を超えていると思われますからけして大げさだ
とは思いません。事件や報道はすぐに風化しますが、インパクト
の大きい今だからこそ依存症の恐ろしさを一人でも多くの人に知
ってもらい、考えてもらいたいと願っています。

「癌はどうした」と突っ込まれそうですが、現在のところこれといって
変化はありません。クレーター化した患部から時折若干の出血がある
くらいです。お風呂上りに、病院からもらった塗り薬を塗っています。
自分が末期がんなのだという現実にも、さほど大きな動揺や衝撃を
感じずに日々が過ぎています。正直自分だけが病気という今の状態
よりも、ここまで生きてきた歳月のほうが何倍も大変でした。
人が幸不幸を感じる感覚というものはあくまでも相対的なものなのかも
しれないなと、ちょっと思ったりもします。




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