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命がある限り希望を持つということ

「核の警鐘」という番組

2011-10-04 11:55:10 | 原発事故
もうご存知の方も多いのではないかと思うが
2009年7月6日にNHKのBSで「核の警鐘 ~問われる原発の安全性」と
いうドキュメンタリーが放送されていた。

その内容は次のようなものだ。

「2007年11月フランス、ノルマンディー地方のフラマンビル原発で
IRSN(フランス国立原子力安全保護研究所)の指導のもと、原子
炉へ給水する設備が故障し原子炉の冷却機能が喪失、放射性物質
が外部に放出される事態を想定した総合防災訓練が行われた。
取材班は、IRSNの許可を得て、原発の中央制御室からの想定事故の
第一報が国に伝わり専門家が現地入りするまでの流れを追う。
そして国の即応体制には一定の評価を与えるが、周辺住民への情報
公開や事故の際に住民が服用するヨウ素剤の備蓄体制に課題が残っ
ていると指摘する」

想定された事故の形態は福島原発の事故とよく似ている。この放送に
ついてかつて河野洋平氏の秘書をされていたことのある梁田貴之と
いう方がご自身のブログで次のようなコメントをされている。
すこし長いが引用する。

「フランスの場合はこうした事態があり得るものと考えられていて、
「電源が回復しない」とわかった段階で、水素爆発の危険があると
して「ベント」が行われる。そして、今回の福島の事故における
報道解説であったように、日本の原発と異なり「ベント」用のパイ
プにはフィルターがついているので、ベントの段階では放射能は外
には出ない。(日本では、ベントを行うような事態は起こらないと
言うかんがえからか、フィルターはついていない)。

 しかし、ベント後も電源は回復せず「1時間後にはフィルターを
通して放射能が漏れ出す」となり、原発職員たちも「あと3時間でメ
ルトダウンが始まる」と判断。周辺住民に避難指示が出される。

 この避難も、手順やルールがしっかり決まっていて、例えば子ど
もが学校にいる時間であれば、家にいる親は学校に行ってはならず、
生徒は学校から避難所へ、親は直接に避難しなくてはならない。訓
練でも、ほとんどの住人は1時間以内に自治体差し回しのバスで退
去を完了していた」

もちろん、問題がないわけではなく、住民は放射能の雲が出る30分
前には配布されているヨウ素剤を服用するルールになっているが
「15年前に配られたままで、どこにやったかわからない」と服用
できない人が多かったり、逃げ遅れた人の誘導が、すぐに車内に収
容するような形で行われなかったことなどが、あとで映像により厳
しく評価される」(引用ここまで)

この内容と実際に事故が起こった我が国での現実とのあまりの落差に
もはや言葉を失う。
日本の原発には、ベント用のパイプにフィルターがついていないことは
前にこのブログで書いた。シビアアクシデントを想定していない構造
だということは、専門家の人たちも指摘されている大きな問題だ。

次の問題は原発の周辺で生活している人たちへの事故に関する情報
の認知度の低さだ。「原子炉がこうなったらこうなる」ということを
私たちは今回事故が起こって初めて知った。それも冷却機能が失われて
約3時間後にはメルトダウンが始まるというようなことは、事故後
すぐに政府や保安院や東電が発表したわけでも何でもない。ネットや
本で必死に情報を集めて少しづつ状況を理解していった。ヨウ素剤の
問題は書くことが多いので次のブログで書こうと思う。

昨日「原発を再稼動しなければ冬も電力不足か?」というニュースが
流れていた。政府は「ストレステスト」を導入するというけれど
ストレステストは大きな災害を想定して、コンピューター上で行う
ただのシュミレーションなのではないか。非常用の電源を増設する
とか、ベントに対応できるフィルターをつけるとかいう、実効性は
あるけどコストのかかる対策の話が前面に出ないのはなぜ?
再稼動を目指している原発の周辺では住民に対して今度こそ
ちゃんとした原発事故の場合のリスクの説明や対応の仕方が、
フランスの場合のように周知徹底されるのか?

とてもそうは思えない。私の住んでいる場所はプルサーマル発電をする
原発から約50キロのところにある。もし原発で電源喪失、冷却不能
というような事故が起きれば、風向きによってはホットスポットにな
る可能性もあり、被爆をする圏内にあるということがやっと理解でき
るようになった。

どう考えてもこの国はこの先「国民ひとりひとりの生活を守る」
ような国に劇的に変わるとはとても思えない。
だから私たちは自力でなるべく正確で公平な情報を集め
その内容を検証し、お互いに共有していく努力を続けなければ
ならないのだと思う。