●宇宙探査●月と火星を第2の地球に!―SPE―         科学技術研究者   勝 未来

                 ~各国は月と火星の探査計画を着々と実行に移している~   

●宇宙探査●東京大学Kavli IPMU、重力レンズを生み出す銀河を発見

2014-04-29 13:29:42 | 宇宙

 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のロバート・クインビー特任研究員らの研究チームは、星が一生を終えるときに爆発して明るく輝く「超新星」が、通常の30倍の明るさで輝いた現象のしくみを解明した。

 今回、本研究チームの観測により超新星「PS1-10afx」と地球との間にある銀河を初めて発見し、この銀河の重力によって虫めがねのように超新 星の光を集める「重力レンズ現象」のために、超新星「PS1-10afx」が通常よりも非常に明るく輝いて見えていたことが分かった。

 超新星「PS1-10afx」は、ピーク時の明るさがよく揃っていて、宇宙の距離測定にも用いられるIa型(いちえいがた)超新星であった。2010 年に発見された当初から、その飛び抜けた明るさのために、新種の超高輝度超新星なのか、通常のIa型超新星が重力レンズで明るく見えたのか、論争があったが、今回の発見は、同研究チームが2013年に発表した後者の説を裏付けるもの。

 また、今回の発見は、強い重力レンズ効果を受けたIa型超新星の初めての発見となるもの。

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●宇宙探査<ブックレビュー>●「宇宙に外側はあるか」(松原隆彦著/光文社)

2014-04-28 20:13:15 | ●宇宙探査<ブックレビュー>●

書名:宇宙に外側はあるか

著者:松原隆彦

発行所:光文社(光文社新書)

目次:第1章 初期の宇宙はどこまで解明されているか
    第2章 宇宙の始まりに何が起きたのか
    第3章 宇宙の形はどうなっているのだろうか
    第4章 宇宙を満たす未知なるものと宇宙の未来
    第5章 宇宙に外側はあるか

 宇宙の始まりは何時か?ビックバンが起こった137億年前というのがこれまでの定説であった。これは2003年に米航空宇宙局(NASA)のWMAP探査機による宇宙背景放射の観測をもとにしたもの。しかし、2013年3月に欧州宇宙機関(ESA)は、宇宙の始まりは、これより1億年前の138億年という数字を明らかにした。ESAでは2009年に打ち上げた宇宙望遠鏡「プランク」により15カ月間にわたりマイクロ波を調べ、観測可能な最も初期の宇宙図を作製し、これにより導き出された数字であるという。数字が137から138に変わっただけなので、訂正して一件落着ということになるのであろうが、我々の日常生活の感覚からすると、1億年という時間は、とてつもない時間の差であり、思わず「そういとも簡単に変えられては困る」とつい言いたくもなる。しかしこれは、現代という時代の宇宙観が、日進月歩のスピードで変化している証拠の一つとも言えるのであろう。

 それでは、今から138億年前にビックバンが起こったことは認めることとしよう。問題は、ビックバンが起こる以前と、138億年より先の宇宙はどうなっているのかである。ホーキング博士なら「ビックバンは神が起こさなくても、数学的に解明できる」ということにもなろうが、我々凡人にはビックバンが起こる以前がどうなっているのかを理解することは容易ではない。同時に、138億年かけて宇宙船に乗って宇宙の淵に到達し、窓から外を覗いたら何が見えるのか、という素朴な疑問も湧き上がって来る。今の宇宙論の常識では、どうも宇宙の外側は見えないらしい。それは、昔、人類は、水平線を見て、その先は海の水が滝のように流れ落ちていると信じていた。しかし、実際には違っていた。海を渡って行ってみるとぐるりと地球を一周して、また元の場所へと戻ってしまう、ということを体験したのだ。これと同じように、いくら人類が宇宙の外を見てみようとしても、宇宙をくるっと回ってもとの場所に戻ってくるだけだから、考えるのはおよしなさい、と。

 この書「宇宙に外側はあるか」(松原隆彦著/光文社<光文社新書>)は、以上に説明では、どうしても納得のいかない、一般の人が読む宇宙の研究書として最適な本だ。つまり、宇宙の専門知識はあまり持ち合わせていたくても、読み通すことが出来るのが、同書の特徴の一つに挙げることができる。著者の松原隆彦氏は、名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構・准教授で、これまで東京大学大学院理学系研究科・助手、ジョンズホプキンス大学物理天文学科・研究員などを務めた第一線の研究者である。同書のプロローグで著者の松原隆彦氏は次のような疑問を投げかける。「宇宙はどうして始まったのか」「宇宙が始まる前は何だったのか、宇宙が始まる前の宇宙は宇宙でないのか」「宇宙に始まりがあるなら、宇宙に終わりはあるのか」「宇宙に終わりがあるとすると、宇宙の終わりの後には何があるのか。次の宇宙が始まるのか」「そもそも、始まったり終わったりするような宇宙はどこに存在するのか。この宇宙よりももっと大きな、何か、得体の知れないものの中にこの宇宙があるのか」。

 同書は、これらの疑問を一つ一つ解き明かす恰好な書籍ということができる。同時に、読み進むうちに、奇妙な感覚に捉われることも確かだ。例えば、最期の「第5章宇宙に外側はあるか」の終わりの方に、「マルチバースの世界」という項目が出て来る。「宇宙は英語で『ユニバース』です。ユニというのは『ひとつの』という意味なので、これを『多数の』という意味のマルチに変えた『マルチバース』という言葉が多宇宙を表します。マルチバースの中の一つの部分が私たちのユニバースです」。我々に宇宙のほかに、宇宙は沢山あって、我々の宇宙はその中の一つに過ぎないのではないかという、宇宙観である。もうこうなると、我々の宇宙の始まりが、137億年前から138億年前に訂正されたくらいの話はなんともなくなってくるから不思議だ。自分と同じ人間が別の宇宙に存在し、現在、生活をしているかもしれない、と考えると、何か、SFの世界に彷徨うようでもあり、奇妙な感覚に捉われる。地球はあと50億年もすると太陽に飲み込まれてしまうらしいが、それまでには宇宙の全容が解明されているいることを望むばかりである。(勝 未来)

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●宇宙探査●東大戸谷教授など、原始宇宙の中性水素ガスの兆候を発見  

2014-04-24 14:44:58 | 宇宙

 東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授と国立天文台や東京工業大学などの研究者からなる研究チームは、宇宙誕生後10億年の時代に発生した、ガンマ線バーストと呼ばれる大質量星の爆発現象をすばる望遠鏡で詳細に解析し、中性原子の割合が高い水素ガスによってガンマ線バーストの光が吸収されている兆候を初めて捉えた。

 今回見つかった兆候は、これまでで最も不定性が少なく、直接的な方法で得られたもの。

 同成果は、人類による遠方宇宙の観測が、再電離よりさらに昔の時代に踏み込みつつあることを示唆する。

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●宇宙探査●重力波探査衛星を打ち上げる「デサイゴ(DECIGO)」計画の準備進む

2014-04-22 16:07:14 | 宇宙

 現在、岐阜県飛騨市(旧神岡鉱山)において大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」の建設が進められているが、その次の日本の重力波探査計画として、重力波探査衛星「デサイゴ衛星」を打ち上げる、デサイゴ計画の準備が進められている。

 世界初の重力波直接観測を目指す大型低温重力波望遠鏡KAGRAのトンネル掘削は、2014年3月に完了し、2015年末には重力波試験観測、そして2017年度には重力波の観測の開始により、世界初の重力波直接観測がスタートすることになっている。

 一方、この地上での「KAGRA」計画の次の計画として、宇宙での重力波観測を計画しているのが「デサイゴ」計画。

 DECIGO(DECi-hertz Interferometer Gravitational wave Observatory)とは、0.1ヘルツ帯干渉計型重力波天文台であり、宇宙空間に浮かぶ0.1~10 Hzの周波数帯を狙う重力波検出器のこと。
 
 DECIGOの最大の目的は、重力波を通して宇宙誕生直後の世界(10-36~10-34秒後)を直接観測し、宇宙誕生の謎を解き明かすこと。これは、重力波でのみ可能なこと(電磁波では宇宙誕生後38万年以前の世界は観測できない)。

 これ以外にも宇宙の膨張加速度の計測によるダークエネルギーの性質の解明や、銀河の中心に存在する巨大ブラックホール形成の観測も期待されている。
 
 DECIGOは1,000 km離れた3台のドラッグフリー衛星から構成され、重力波によって引き起こされる衛星間の距離のごく微小な変化を、レーザー干渉計を用いて計測する。

 ドラッグフリー衛星とは、衛星の中に浮かぶ基準質量に対して、衛星全体の相対位置を制御することにより、太陽輻射圧などの影響を受けずに、重力のみで運動する人工衛星のこと。

 

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●宇宙探査●乾燥幼虫ネムリユスリカ、宇宙での微小重力下で蘇生

2014-04-20 16:45:12 | 宇宙ステーション

 2014年2月19日に国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟において、若田宇宙飛行士によってネムリユスリカ蘇生実験が実施された。

 同実験でネムリユスリカ乾燥幼虫が微小重力下においても再水和後に蘇生し、活動を開始する様子がISS からの映像で確認でき、さらに再水和後、2週間が経過した幼虫の観察も実施され、いくつかの幼虫が蛹や成虫に変態したことを確認した。

 これにより、ネムリユスリカの宇宙生物学実験の生物材料としての有用性が再認識できた。

 これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)とロシア連邦宇宙局との水棲生物共同研究合意に基づき、JAXA とロシア科学アカデミー生物医学問題研究所(IBMP)の共同研究(研究プロジェクト名:Space Midge)として計画されたもの。

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●宇宙探査●日本人すべてに感動と勇気を与えるNHK・BSコズミック・フロント「宇宙に届け こうのとり」

2014-04-18 11:35:57 | 宇宙ステーション

 地球重力圏外にある天体の固体表面に着陸してのサンプルリターンに、世界で初めて成功した科学衛星「はやぶさ」の成功は、日本人に誇りと大きな感動を与えた。この「はやぶさ」の陰に隠れて、今、ISS・国際宇宙ステーションへの物資輸送で大活躍している日本の宇宙船HTV「こうのとり」は、あまり話題にならないが、その開発から成功に至るまでの苦闘の歴史が、2014年4月17日のNHK・BSコズミック・フロント「宇宙に届け こうのとり」で放送され、その全貌が初めて明らかにされた。

 「こうのとり」の物語は約20年前に始まる。ISS参加国として何らかの貢献が求められる日本、資金援助に代わる方法として考えたのが宇宙船による物資輸送だった。当時の日本は人工衛星の打ち上げ技術はあったものの宇宙船開発は未経験。当初、アメリカは「日本に安全な宇宙船開発は無理」と相手にもしなかった。しかしその後、日本チームは独自のドッキング方式を考え、その安全性を次々と実証。やがてアメリカも日本の宇宙船開発を認めることになった。

 そして日米の合同訓練を経て、「こうのとり」は打ち上げられ、ISSとの初のドッキングに成功。日本チームが知恵と工夫で、数々の試練を乗り越え、世界の信頼を得て実現した「こうのとり」の成功の陰には、技術者たちの苦闘の歴史があったのだ。最初は、日本の技術力に懐疑的であった米NASAも、「こうのとり」の成功で日本の技術力を高く評価するに至った。

 その後、筑波にあるJAXAが東日本大震災により制御不能に陥ると、米NASAは即座にサポートして事なきを得た。このことは、日米の技術者同士の信頼関係が、「こうのとり」プロジェクトで如何に強固に築かれたかを裏付けるエピソードだ。

 これは、宇宙探査に関心ある人たち向けというより、全ての日本人に感動と勇気を与える番組だ。この番組の再放送は、4月21日(月)午後11時45分からに行われるほか、NHKオンデマンドでも見れる。

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●宇宙探査●東工大と名大、火星誕生後4億年で水の半分が失われたと発表 

2014-04-17 15:46:25 | 火星

 東京工業大学と名古屋大学は、火星誕生から約4億年の間に、火星表層の初期水量の50%以上が大気を通じて宇宙空間へ流出し、また残りの水の大部分は火星の気候変動により氷となって、現在でも火星の地下に存在する可能性があると発表した。

 水が水素・酸素原子に解離し大気を通じて宇宙空間へ流出することで失われたと仮定した場合、重水素(D)と比較して軽い水素(H)が選択的に流出するため、火星に残存する水の水素同位体比の変化としてその履歴が残る。

 測定された火星隕石中の水の水素同位体比から、火星の水の水素同位体比の時間変化が読み取られ、さらに水の宇宙空間への流出に伴う水素同位体比の変化の理論計算が行われ、火星表層の水量の時間変化が明らかにされた。

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●宇宙探査<新刊情報>●「宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト」(村上敏夫著/講談社)

2014-04-14 22:25:13 | ●宇宙探査<新刊情報>●


<新刊情報>

 

書名:宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト~どこから来るのか、なぜ起こるのか~

著者: 村上敏夫
 
発行:講談社(ブルーバックス)

 ガンマ線バーストは、電磁波の一種であるガンマ線が大量に放出される「宇宙最大の爆発」のこと。数千億の星を集めた銀河よりもずっと明るく輝く想像を超えた大規模な爆発。最近では恐竜の大絶滅の原因ではないかという説もある。宇宙最大のエネルギーを放出するガンマ線バーストから宇宙の一番星は見つかるのか。宇宙の起源を解き明かす鍵を握る謎の現象に迫る。

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●宇宙探査<新刊情報>●「ブラックホールに近づいたらどうなるか?(二間瀬敏史著/さくら舎)」

2014-04-11 11:10:50 | ●宇宙探査<新刊情報>●
 

<新刊情報>


書名:ブラックホールに近づいたらどうなるか?

著者:二間瀬敏史

発行:さくら舎  

 2014年春、ブラックホールがガス雲を飲み込み爆発的に輝く。私たちの天の川銀河の中心には巨大ブラックホールがある。いまそこに、巨大なガス雲が吸い込まれようとしている。光を放って周囲が明るく輝くこの現象は観測されたことがなく、観測が実現すれば謎だったブラックホールの仕組みが実際に解明される第一歩となる。同書ではブラックホールがなぜできるのか、ブラックホールの中には何があるのか、ブラックホールを利用したタイムマシンなどブラックホールの不思議な魅力をイラスト約40点を使ってわかりやすく解説。

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●宇宙探査●「はやぶさ2」のイオンエンジンの開発の模様がNHKテレビで初公開

2014-04-08 00:05:18 | ロケット

 小惑星探査機「はやぶさ」の後継機である「はやぶさ2」の打ち上げが今冬予定されているが、搭載エンジンである新しいマイクロ波型イオンエンジンの開発の模様が、4月7日(月)のNHKテレビ「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」で初めて公開された。

 「はやぶさ2」が目指すC型小惑星「1999 JU3」は、S型小惑星のイトカワと比べると、より始原的な天体で、同じ岩石質の小惑星でありながら有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられている。地球からの距離はイトカワよりさらに遠くなる。

 このため、より強力なマイクロ波型イオンエンジンが必要となる。同番組では、「はやぶさ」のマイクロ波型イオンエンジンを開発した国中均氏の取り組みを中心に、新エンジンの開発の模様が紹介された。

 「はやぶさ2」がC型小惑星に到着するのは2018年半ばで、1年半ほど小惑星に滞在して、2019年末頃に小惑星から出発、そして2020年末頃に地球に帰還する予定となっている。

 なお、同番組は、4月11日 (金) 午前1:40~午前2:30(50分)再放送される。
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