ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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新宿トラッド・ジャズ・フェスティバル

2011-11-15 15:48:06 | フェス、イベント
11月12日、13日の2日間、「The 11th SHINJUKU TRAD JAZZ FESTIVAL」が開催されました。私は初日だけ観に行くつもりでしたが、あまりの楽しさに2日目もたっぷり堪能してしまったという、そんな次第なフェスティヴァルでありました。

新宿3丁目の裏通り、まあ、飲み屋街みたいな雰囲気の一角ですが、その雑多な飲食店を中心におよそ20箇所の会場で繰り広げられるトラッド・ジャズの祭典。今回で11回目を数えるそうですが私が行くのはこの日が初めて。しかも私が観たのは本部前の小さなステージと、お祭り広場と題された野外のメイン会場で行われた無料ライヴのみなんですけどね。ですがそれだけでも充分一日中楽しめるという充実度でした。

特に印象に残ったアーティストをいくつか。

まずは、初日の私のお目当てだったハチャトゥリアン。トロンボーンの菊池ハルカさん、バンジョーの丸山朝光さんによる、若きニューオーリンズ・ジャズのデュオです。今回はドラムスも加わった3人編成でしたが、このトロンボーンとバンジョーによるシンプルこの上ないニューオーリンズ・ジャズが良いんですよ! トロンボーンの円やか且つちょっぴりファンキーな音色と、丸山さんのカッティングが生み出すスウィング感が最高! しかもジャズだけでなくストリート感たっぷりに「Iko Iko」なんかも演ってくれましたし。丸山さんが歌う「On The Sunny Side Of The Street」や、古い賛美歌のメドレーも良かったですね~。

そして日本が世界に誇るバンジョー界の最高峰、青木研さん。噂に聞いていた名人芸を初めて拝見させていただきました。まあ、とんでもないスピード感と切れ味で、まるで駆け抜けるかのように多彩な技を繰り出していく。しかも涼しい顔で。「ZIP-A-DEE-DOO-DAH」から始まる南部メドレーとか、「Sweet Gerogira Brown」とか。バンジョーって凄いな!

初日のトリを務めた夢ブラス・バンド。正直、日本のブラス・バンド事情に疎い私は初めて聞く名前でしたが、これが大迫力で格好良かった!グランド・マーシャルの先導の元、会場周辺をパレードしながらステージに登場。もちろんファンキーなセカンド・ライン・スタイル。しかもいくつかのバンドが集まっていたようで、とにかく大所帯。観客のリクエストに応えての「世界は日の出を待っている」も良かったけれど、ラストの「Do Watcha Wanna」で最後に相応しい熱気爆発!天晴でした!

さらに2日目に観たジャズ・ブラス・ガンボというブラス・バンド。こちらも会場周辺をパレードしまして、しかも歩行者天国となっていた新宿通りのど真ん中を闊歩したのです! このブラス・バンドのメンバーは、まだ学生さんのような若い方々(洗足学園音大の方達らしい)で、清涼感溢れる爽やかな雰囲気。でも彼らをグランド・マーシャルさんが傘を振りかざしながら泥臭いダンスで先導すれば、そこはもうニューオーリンズの空気。もちろんやっている音楽もニューオーリンズど真ん中ですしね。途中、外人さんのトロンボーン奏者が飛び入りでセッション参加したりなんていうストリートならではのハプニングがあったり。でも一番盛り上がったのは「聖者の行進」でしたね!ちょうど明治通りとの交差点で立ち止まって演奏していたのですが、超有名曲ということもあり、信号待ちをしていた方なども巻き込んで、ブラス・バンドを取り巻くようにみんなで手拍子。新宿のど真ん中に鳴り響く突き抜けるよに晴れやかなメロディーと力強いニューオーリンズのリズム。それをみんなが手拍子で盛り上げる。なんか幸せな瞬間でしたね~。真向かいには伊勢丹があるあの交差点でですよ!しかもその「聖者の行進」のあと演奏したのはミーターズ~ダーティ・ダズンの「Cissy Strut」ですから!なかなかやりますよ、この若きブラスバンド!

しかもハイライトはまだこの先にあるんです。この後このブラス・バンドは再び新宿三丁目の裏通りに分け入っていくわけですが、その細い路地で別のブラス・バンドにぶつかるという、そして両者によるセッションが始まるという、なんともディープな展開を見せてくれたのです。曲は「Do Watcha Wanna」だったかな? いくらフェスとは言え、路上で2つのブラス・バンドが鉢合わすなんて瞬間に立ち会えるとは! なんかゾクゾクしましたね。間違いなく新宿の裏通りがニューオーリンズのストリートになった瞬間!

そして先のハチャトゥリアンと並んでもう一組の私のお目当てがKOTEZ&YANCYでした。ハープ&鍵盤のブルース・デュオです。両日とも出演。ハープ奏者のコテツさんはブルース・ザ・ブッチャーで何度も観ていますが、このデュオを観るのはこれが初めて。冒頭に愛嬌良く「トラッド・ジャズはいっさいやりません!」なんて宣言しつつ、ブルースやR&Bを決めていく。鍵盤とハープだけなのにキレの良いリズムがブルージーにうねりまくる。トラッド・ジャズを観にきたお客さんもやんやの拍手喝采。そして両日共ハイライトとなったのは「Too Many Cooks」でしょう! この曲での超長尺ハーモニカ・ブレイクには度肝を抜かれました!! コテツさんが高速の連続フレーズをファンキーに延々と吹き続けるのですが、彼のテンションが上がれば上がる程、その場の空気がブルース・ハープの魔力に飲み込まれていく感じ。新宿裏通りの雰囲気と相まって、この上なくディープな盛り上がりを見せてくれました。他には「Don't Go No Further」とか、「Talk To Me Baby」とか。あとトラッド・ジャズはやらなくても、ニューオーリンズを意識してか、初日に「Such A Night」、2日目には「聖者の行進」もやってました。

最後に最終日のラストを締めたバンジョー界の大御所チャーリー田川さん。オクラホマの4弦バンジョー博物館に殿堂入りされたという、まさにレジェンドな方。チャーリー田川&フレンズとして「jambalaya」とか、「The Tennessee Waltz」とか、誰でも知っている有名な曲を中心に演奏。この方、バンジョーを弾く時も歌を歌う時もいつも笑顔。しかももの凄く良い笑顔なんです。そして彼の弾くバンジョーの音色も歌声も、そんな笑みを感じさせてくれる暖かい響き。なんか聴いててほっこりしちゃいましたね。慈愛溢れるニューオーリンズ・ジャズの調べ。やっぱニューオーリンズって良いな~。


他にも、菊池ハルカさんが「Tiger Rag」を決めてくれたトロンボーン・サミットとか、素晴らしくソウルフルな歌声を聴かせてくれたブラザー・タイスケ・ゴスペル・クワイヤーとか、6人ものバンジョー奏者が揃ったバンジョー・ストンパーズとか、色々観させてもらいました。あの会場エリアに居れば、常に何所かしらでニューオーリンズな音楽が鳴っているという、何とも幸せな2日間。まだ行ったこともないニューオーリンズに郷愁を感じてしまう、そんなフェスティヴァルでした。来年も行くぞ~!


ちなみに、後で知った話ですが、2日間ともグランド・マーシャルを務めたあの方は、おそらく日本一のグランド・マーシャルであり、おそらく日本で唯一人のグランド・マーシャルであろうという、その筋では有名な方のようです。(グランド・マーシャルとは、ニューオーリンズのブラス・バンドを傘を振りながら先導する、現地のパレードでは欠かせない人です。)














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