ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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グラミー特集:ルシンダ・ウィリアムス

2010-01-29 15:29:22 | カントリー
LUCINDA WILLIAM / LITTLE HONEY

今回も前回に引き続き『Best Americana Album』部門です。なにせ「ルーツな日記」的にあまりにも激熱な部門なんで。しつこいようですがノミネート作は以下の通り。

Bob Dylan / Together Through Life
Levon Helm / Electric Dirt
Willie Nelson & Asleep At The Wheel / Willie And The Wheel
Wilco / Wilco (The Album)
Lucinda Williams / Little Honey

もう5組全てが注目どころなのですが、今日はルシンダ・ウィリアムスです。実はルシンダのこのアルバム「LITTLE HONEY」は、当ブログの08年年間ベスト・アルバム第4位としておきながら、これまで内容にはいっさい触れてこなかった、って言うかその機会を逸していた作品なのです。よくぞノミネートしてくれました!

オルタナ・カントリーの女王、ルシンダ・ウィリアムス。って言うか最近はオルタナ・カントリーという言葉もあまり聞かなくなりましたけどね…。彼女の前作「WEST」は、落ち着いたトーンによって、アメリカ大陸の持つ荒涼としたロマンティシズムを描いたようなサウンドで、彼女の最高傑作とも呼びたい素晴らしい作品でしたが、今作はその世界観をさらに深めるものになるのでは?と予想していただけに、1曲目「Real Love」のロッキンなギター・リフを聴いて驚きました。しかも1度やり直すという生っぽさ。え?っと思っているうちにドライヴしまくるイントロから爽快なロック・チューンが始まります。

ジャンル的にはカントリーのシンガーとは言え、ルシンダのささくれ立った声はロックそのもの。タイトル曲「Honey Bee」なんてカントリー界のパティ・スミスと評したいほどパンキッシュ。って言うかもはやカントリーではないですけどね。さらに後半スペーシーな広がりを見せるドラマチックな大作「Little Rock Star」など、全13曲中12曲がルシンダ自身のオリジナル。唯一のカヴァーがAC/DCの「It's A Long Way To The Top」ですから! AC/DCですよ! 今作におけるルシンダのモードが伺い知れますね。

しかも今作のバックを務めるのは彼女のツアー・バンドというBUICK 6ですからね。このことからもこのアルバムがライヴ感を重視して作られたことが想像出来ますよね。瑞々しいリズムと2本のエレキ・ギターを核にしたタイト且つロッキンなサウンドが気持ちよいです。もちろんただロッキンなだけではありません。バック・メンバーそれぞれが多彩な楽器を操り、奥行きの深いサウンドを聴かせてくれます。

そして何より、やはりルシンダの歌が素晴らしい。上記曲での弾けぶりも最高ですが、スロー・ブルースとカントリー・バラードが混ざったような「Tears Of Joy」や、ミシシッピ・デルタな「Heaven Blues」などで聴ける彼女ならではのブルース感覚は特に印象的。元々ルシンダは79年のデビュー・アルバムで、アコギをバックにブルースを歌っていたんですからね。

そして「Jailhouse Tears」ではエルヴィス・コステロとデュエット。初めて聴いた時は唐突にコステロの声が響いて、ちょっと雰囲気崩れるな~、なんて思ったものですが、聴き込んでいくにつれ、彼の声がなかなか効いてるなと。さらに今作中で最もカントリーなナンバー「Well Well Well」ではチャーリー・ルーヴィンとジム・ローダーデイルがホンキー・トンクなコーラスで盛り上げます。この曲も良いですよね~。こういう曲でのルシンダの土っぽい感覚もたまりません。

なんとなくロックやブルースに耳を取られがちですが、前作の雰囲気を引き継いだフォーキーなナンバーももちろん収録されています。「If Wishes Were Horses」、「Knowing」、「Rarity」といったスロー・ナンバーでは、現在のルシンダならではの深淵な風景を感じとれます。やはりこういう曲でのルシンダの歌唱は特に神がかってますね。本当に素晴らしい!!「Circles And X's」のようなセンチメンタルな感じも味わい深いですし、極めつけはルシンダがアコギを弾き語る「Plan To Marry」。自然なエコーを伴ったルシンダの柔らかい声に惹き込まれますね。

で、最後はAC/DCでガツンと終わる。カッコイイです! 姉御~!!!って感じです。最後の声なんてボン・スコットに似てますし、って言うか真似したんじゃない? どちらにしろ痛快。

ロックな衝動と、オルタナ・フォークな抑制の利いた感情表現が同居した傑作です。『Best Americana Album』部門をサクッと受賞し、これからは名実共にアメリカーナの女王と呼ばれるようになるかも。


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