ルーツな日記

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ダン・ペン&スプーナー・オールダム @ビルボードライヴ東京

2019-03-28 11:38:17 | ルーツ・ロック
3月17日、ビルボードライヴ東京にて、ダン・ペン&スプーナー・オールダムのライヴを観てまいりました!! 私が見たのは2ndステージ。今回の最終公演でした。

ダン・ペンの来日は2010年以来9年振り。その時はボビー・エモンズ(kbd)とのデュオでした。そして今回はスプーナー・オールダム(kbd)ですよ!やっぱりダン・ペンの相棒はスプーナー・オールダムでなくてはね!!

もちろんボビー・エモンズとのステージもとても良かったですよ。当時のダン・ペンの最新作「JUNKYARD JUNKY」にも参加していた鍵盤奏者ですし、古くからアメリカン・サウンド・スタジオなど、メンフィスで活躍してきた名手でしたから。

ですけどね、やっぱりダン・ペンと言えばスプーナー・オールダムなんですよ。2人による名ライヴ盤「MOMENTS FROM THIS THEATER」があるのももちろんなんですが、キャリア初期からフェイム・レコードを中心に、2人の共作で数々の名曲を作っていたというのは、もはや伝説的な話ですよね。

近年になって、フェイムにおけるダン・ペンのデモ録音集「THE FAME RECORDINGS」がリリースされましたが、その曲の良さはもちろん、若かりしダン・ペンのブルー・アイド・ソウルな歌声や、デモとは思えない完成度の高さなど、色々と驚かされました。そして全24曲中、17曲がダン・ペンとスプーナー・オールダム、2人のコンビによる共作曲だったことが、あの時代の空気を感じさせてくれもしたんです。1965年前後、2人がまだ20代前半から半ばにかけての時代です。

それから50年以上が経って、そのコンビによる生演奏で往年の名曲を聴くことが出来るんですから、こんな極上な時間はそうそうありませんよね。

ダン・ペン&スプーナー・オールダムの来日は2度目になりますが、私はダン・ペンを生で観たのは先のボビー・エモンズとのステージが初めてだったので、今回のスプーナー・オールダムとのデュオ公演はまさに念願のライヴでした。1999年以来、20年ぶりとなる2人の来日公演です。


司会者に紹介され、2人がステージに登場。サザン・ソウルの伝説を目の前にし拍手喝采を送る観客達。いきなり大名曲「I'm Your Puppet 」でスタート。66年にジェイムス&ボビー・ピューリファイが放ったヒット曲。もちろんダン・ペン&スプーナー・オールダムによる共作曲。さらにスウィート・インスピレーションズの「Sweet Inspiration」、ヴォックス・トップスの「Cry Like a Baby」と、2人の共作による名曲が続く。ダン・ペンがアコースティック・ギターを弾き語り、スプーナー・オールダムがエレピを弾きながらハーモニーを添える。年輪を重ねた渋みと、南部特有の緩さが合まった、独特のスワンプ・フィーリング。

「Cry Like a Baby」はヴォックス・トップスに提供されてヒットした曲ですが、この曲を演るまえに、ダン・ペンがMCの中で何やら軽く歌い出したんです。それは鼻歌のようなとりとめのない感じだったのですが、一旦すぐに止めたのに、興が乗ったのかまた歌い始めたその歌は、ヴォックス・トップスのデビュー曲「The Letter」でした。作曲こそしていないものの、ダン・ペンはこの曲をプロデュースしているんです。アカペラで歌いだすダン・ペンに、スプーナー・オールダムもハーモニーを付け、観客達も手拍子で応える。何だかんだでフルコーラス歌ってくれました。サプライズ的な演出に観客達もやんやの拍手を送る。

ちなみにこの曲の次は、アレサ・フランクリンに提供された「Do Right Woman, Do Right Man」、そしてオーティス・レディングが歌った「You Left the Water Running」と続いたんですけど、「The Letter」をサプライズとして除外すれば、冒頭の「I'm Your Puppet」から「You Left the Water Running」までの5曲は、9年前に見たボビー・エモンズとの時と同じ曲順。きっとダン・ペン的に序盤の型として決まってるんでしょうね。まあ、そこから先は流石に違ってきましたけど。

やっぱり客席中が待ち望んでいたのは、サザン・ソウル史上に燦然と輝く大名曲「The Dark End of the Street 」でしょうね。こちらはダン・ペンとチップス・モーマンによる共作で、ジェイムス・カーがゴールドワックスに吹き込みました。ダンが歌い始めるやいなや拍手が沸き上がり、そして2人の演奏にうっとりでしたね。いやはや、ホント名曲!! そしてオヴェイションズに提供された「I'm Living Good」も良かった。オリジナルの朗らかな曲調はいかにもサム・クック・マナーでしたが、ここではスピードを落とし、滋味深く歌われる。これが味わい深い!!


ダン・ペンの飾らない歌がまた良いんですよ。彼は若かりし頃、フェイムのデモ録音ではいかにも黒人を意識した焼けた声で歌っていましたが、現在はいたってストレートで、それはカントリー的でもある。そこに素朴な歌心が宿っている。さらにスプーナー・オールダムのエレピ(ウーリッツァー)が絡むことで、ソウルフルな味わいが醸される。スプーナー・オールダムのエレピは、その音色もフィーリングもほとんどオルガンの味わいで、決して派手なプレイはしないものの、ふわりと心に染みるフィーリングなのです。60年代からサザン・ソウルの屋台骨を支えた名鍵盤奏者の奏でる音色、魅せられました〜。


「I Do」、「You Really Know How To Hurt a Guy」、「Take A Good Look」といった、フェイムのデモ音源集「THE FAME RECORDINGS」やその続編「CLOSE TO ME: MORE FAME RECORDINGS」に収録されていた、ダン・ペンとスプーナー・オールダムの共作曲は感慨深かったですね。若い頃の溌剌としたダンの歌声も大好きですけど、人間の哀愁を感じさせるような現在のダン・ペンもまた格別。そしてスプーナー・オールダムと対話するようなコンビネーションにただただ浸るばかり。

さらにダン・ペンと、南部の盟友ドニー・フリッツによる共作「Rainbow Road」も良かった!これも名曲ですよね。ドニー・フリッツ絡みと言えば「Memphis Women and Chicken」も演りましたね。渋〜い2人のステージの中では、唯一と言っても良いノリの良い曲なんですけど、何と言いますか、ジワジワ来ましたね。

ジョー・サイモンの名唱で知られる「Nine Pound Steel」は、それとはまた違う、郷愁感をそそるダンの歌声が滲みましたが、その余韻を遮るように司会者が再び登場。2人のレジェンドを讃える。ああ…、終わってしまうのかと思いきや、「もう1曲聴きたいか?」的な展開からそのままアンコールへ。曲は「Long Ago」。これも「THE FAME RECORDINGS」に入っている古い曲で、オリジナルは多分ボビー・パターソンが歌ってる。これも良い曲。

2人は立ち上がる。観客も立ち上がる。スタンディングオベーションによる割れんばかりの拍手喝采。2人はステージ脇の階段の辺りまで行き握手攻めに。止まない歓迎ぶりに、再度ステージ中央に戻って、再びのアンコール。最後の曲はダンのソロ作「NOBODY'S FOOL」から「Raining In Memphis」。賑やかなアルバムヴァージョンとは違う、2人だけのしっとりとしたアレンジが滲みました。そしてまたスタンディングオヴェーションに包まれながら、およそ1時間半に渡ったショーは終了。

20年前の来日を見逃した私は、もう、見れないと思っていたダン・ペン&スプーナー・オールダム。2人の南部ソウルの伝説。感無量のライヴでした。





01. I'm Your Puppet
02. Sweet Inspiration
03. The Letter
04. Cry Like a Baby
05. Do Right Woman, Do Right Man
06. You Left the Water Running
07. The Dark End of the Street
08. Nobody's Fool
09. I'm Living Good
10. Ol' Folks
11. I Do
12. Rainbow Road
13. You Really Know How To Hurt a Guy
14. Take A Good Look
15. Memphis Women and Chicken
16. Is A Bluebird Blue?
17. Nine Pound Steel
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18. Long Ago
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19. Raining in Memphis




↑この日のセットリストはこんな感じだったと思います(間違ってましたらごめんなさいね)。ダン・ペンは曲間によく喋ってましたね。おそらく作曲や録音当時のこと、提供したシンガーのことなどを語っていたのだと思いますが、私は英語がまったくダメなので、さっぱり分かりませんでした。残念無念…。スプーナー・オールダムは、ダン・ペンの話に聞き入りつつ、時折相づちを入れる感じ。スプーナー・オールダムは、何と言いますか、場末のバーの端っこでお酒を飲んでいそうな、そんな風貌も愛嬌がありましたね。物販でオリジナルの靴下を売るというお茶目な面もあったり。ダン・ペンは彼のソロ作のジャケ写で見れるような、オーバーオールが似合いそうなそのままの雰囲気でした。

まだまだ元気なお二人。また来日してくれると良いですね。



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