ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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ダン・ペンwithボビー・エモンズ@ビルボードライヴ東京

2010-08-28 15:45:26 | ソウル、ファンク
DAN PENN / JUNKYARD JUNKY

8月26日、ビルボードライヴ東京にダン・ペンwithボビー・エモンズを観に行ってまいりました! 私が観たのはこの日の1stショー。メンバーはダン・ペンとボビー・エモンズの二人だけ。

ダン・ペンは数々のサザン・ソウル系の名曲を残してきたソング・ライターとしてあまりにも有名ですが、もちろんシンガーとしても数枚のソロ作を残し、そのレイドバックした味わいはスワンプ好きからマニアックな人気を博しています。そしてボビー・エモンズはダンの最新作「JUNKYARD JUNKY」にも参加していた鍵盤奏者。

さて、普段のビルボードライヴ東京に比べれば恐ろしく地味なアーティストだと思われるなか、満席ではないものの予想以上にお客さんが入っていて驚きました。そしてほぼ開演予定時刻、ステージに二人が登場。ダン・ペンは「JUNKYARD JUNKY」のジャケ写で身に付けてるようなオーバーオール姿で、なんか南部の田舎からそのままやって来たような雰囲気に嬉しくなりましたね。

1曲目からいきなり「I'm Your Puppet」。66年にジェームス&ボビー・ピューリファイに提供されてヒットした曲。サム&デイヴやアーマ・トーマスからヨ・ラ・テンゴにまで取り上げられてる名曲ですね。ダンがアコギを弾きながら歌い、ボビーがしっとりとした鍵盤さばきでサポート。緩やかなメロディーに暖かく優しいダン・ペンの歌声。そこはかとなく滲みてくるサザン・フィーリング。良いですね~。2曲目は「Sweet Inspiration」。曲名通り68年にスウィート・インスピレイションズに提供された曲。この曲の開放感ある陽性なメロディには心躍りますよね。ブレイクの部分も格好良いですし。この曲はリタ・クーリッジなんかも歌っていますが、最近ではデレク・トラックスのカヴァーが秀逸ですね。

それにしてもダン・ペンの歌声が思いのほか若々しい! 実は最新作「JUNKYARD JUNKY」を聴いて、ダン・ペンの声に年齢相応の渋みというか、枯れた雰囲気を感じたりもしてたのですが、いやいやどうして、スプーナー・オールダムとの99年のライヴ盤「MOMENTS FROM THIS THEATRE」の頃と変わらない、ハリのあるふくよかな声を聴かせてくれます。3曲目の「Cry Like a Baby」もしかり。ちなみにここまで全てダンとスプーナー・オールダムとの共作曲。っていうかあの「MOMENTS FROM THIS THEATRE」と同じ曲順。ってことは次は「Do Right Woman, Do Right Man」ですか?と思っていると、予想通り「Do Right Woman, Do Right Man」が来ました!

67年、コロンビアからアトランティックに移籍したばかりのアレサ・フランクリンがマスル・ショールズのフェイム・スタジオに出向いて録音を試みた曲。ダン・ペンはその頃、このフェイム・スタジオやメンフィスのアメリカン・サウンド・スタジオなど、後にサザン・ソウルの聖地とも呼ばれるようなところでソング・ライターとして腕を振るっていたのです。フェイムにはスプーナー・オールダムもいました。で、「Do Right Woman, Do Right Man」ですが、録音当時、リズムトラックを録り終えた時点でフェイムのプロデューサーであるリック・ホールと、アレサの夫テッド・ホワイトが揉めに揉め、結局アレサ夫妻はこの時点でフェイムを引き上げてしまい、残りはニューヨークで録音することになったと言う曰く付きの曲。とは言え、ニューヨークで録音されたこの曲のアレサの歌は素晴らしいですけどね。

ちなみにこの曲はダン・ペンとチップス・モーマンの共作なんですけど。このチップス・モーマンはメンフィスのアメリカン・サウンド・スタジオの設立者でして、ボビー・エモンズはそのアメリカン・サウンド・スタジオでキーボードを弾いていたんですよね。で、そこを訪れたエルヴィス・プレスリーやウィルソン・ピケットなんかのバックも務めてたり。ってどんどん話がそれてしまうので、そろそろこの夜のステージに話を戻します。

ダン・ペンが歌う「Do Right Woman, Do Right Man」。これがまた良いんですよ。大人のカントリー・ソウルな感じ。サビでファルセットになるところが滲みるんですよね~。ボビーの鍵盤もソウルフルで素晴らしかったです。続いてリック・ホールとの共作曲「You Left the Water Running」。やっと例のライヴ盤と違う展開になりました。オーティス・レディングで有名な曲ですが、ビリー・ヤング、ウィルソン・ピケットなど色々な人が歌ってる名曲。南部的な弾力と陽気さが気持ち良かったですね。そしてジャニス・ジョンプリンの名唱で知られる「A Woman Left Lonely」。ダンとスプーナー・オールダムの共作。この曲は私が特に聴きたかった曲の一つなので感無量でしたね。ジャニスの激情な歌唱も良いですけど、ダンの男の哀愁を感じさせる歌声にジ~ンときちゃいました。

続く「I Met Her in Church」はボックス・トップに提供された曲。ボックス・トップはダンがアメリカン・サウンド・スタジオでプロデュースしたブルー・アイド・ソウル系のグループ。この曲もスプーナー・オールダムとの共作。ゴスペル・フレイヴァーを感じさせつつちょっと能天気な曲調なんですけど、南部らしい緩い空気を感じさせてくれて、なんかほっこりしましたね。

そしてみんなが待ち望んだ「The Dark End of the Street 」。ダンとチップス・モーマンの共作。これはもうサザン・ソウル史に残る名曲中の名曲ですね。そしてジェイムス・カーがゴールドワックスに吹き込んだ歌唱は永遠の名唱。それを作者であるダン・ペンの歌で聴くというのがまた泣ける。彼の朗々としながらも情感豊かな歌声に、会場全体が一身に耳を傾けてる感じで、あ~、ソウル・ミュージックって良いな~、としみじみ。続く「Nobody's Fool」はダン・ペンの1stソロ作「NOBODY'S FOOL」(73年リリース)のタイトル・トラックで、今夜の共演者ボビー・エモンズとの共作。ホーン隊やストリングスの入ってないこの曲も渋くて良い感じでした。

次の曲ではボビー・エモンズがリード・ヴォーカルをとったのですが、何の曲かよく分かりませんでした…。聴いたこと有るような無いようなメロディで、なにかテキサスについて歌っている曲のようでしたが…。で、帰宅後に調べたのですが、おそらく、ウィリー・ネルソンやウェイロン・ジェニングスで知られる「Luckenbach, Texas」でしょうね。この曲はボビー・エモンズとチップス・モーマンの共作なんですよね。実はボビー・エモンズってカントリー系のセッションにも多く参加している人なんですよね。ダン・ペンとは違う、繊細でちょっぴり頼り無さげな歌がまた良い味わいでした。そして最後のサビはダンにバトンタッチするという、この辺の呼吸もライブならではの楽しさでしたね。

続く「Memphis Women and Chicken」はスワンプ臭濃いアップ・ナンバーですが、昨年、ドニー・フリッツの来日公演でこの曲が本編ラストという美味しいところで演奏されたのを思い出しちゃいましたね。そしてソロモン・バークの「Don't Give Up On Me」。キング・ソロモンの復活作となった02年の「DON'T GIVE UP ON ME」にダンが提供し、その冒頭を飾ったタイトル曲。このアルバムにダン・ペンによる書き下ろしの楽曲が収録されていること自体が感激でしたが、まさかそれをダン・ペンが自らライヴでやってくれるとは! 何故か自身のソロ作収録曲以外は昔の曲ばかりを演るようなイメージがあったので、これは意外でした。しかもこの曲ではダン・ペンはギターを弾かず、バックはボビー・エモンズの鍵盤のみ。これは滲みましたよね~。いや~、名曲ですよ。

終盤にきてやっと最新ソロ作から「Junkyard Junky」と「Way Back」。「Way Back」はボビー・エモンズとの共作ですね。まあ、この二人で演奏するスタイルだから、ということもありますけど、こうやって昔の曲と並べてもまったく変わらない雰囲気。それがダン・ペンの良いところですよね。だからこそ「Don't Give Up On Me」のような名曲をいまだに書けるんですよね。そしてラストは「Zero Willpower」。79年にアーマ・トーマスに提供された曲ですね。ドニー・フリッツとスプーナー・オールダム、そしてダン・ペンという鉄板の3人による共作。アーマ・トーマスはダン・ペンを敬愛しているようで、2000年には「The Songs Of Dan Penn」というサブ・タイトルのついた、いわゆるダン・ペン曲集となるアルバム「MY HEART'S IN MEMPHIS」をリリースしています。そしてこの「Zero Willpower」はそのアルバムのラストを飾った曲でもあるんですよね~。これも大名曲ですよ!! ソウルフルなダンの歌声も合わせて、じっくりと堪能いたしました。感無量でした。

鳴り止まない拍手にアンコールを1曲。スローな曲でしたが、よく分かりませんでした…。アンコールで演るぐらいですから有名な曲だとは思うんですけどね…。すいません。でもとっても良かったです!!

いや~、ダン・ペンwithボビー・エモンズ、名曲と、名演と、南部の空気に、ホント酔いしれましたね。よくぞ呼んでくれました! よくぞ来てくれました!!


01. I'm Your Puppet
02. Sweet Inspiration
03. Cry Like a Baby
04. Do Right Woman, Do Right Man
05. You Left the Water Running
06. A Woman Left Lonely
07. I Met Her in Church
08. The Dark End of the Street
09. Nobody's Fool
10. Luckenbach, Texas
11. Memphis Women and Chicken
12. Don't Give Up On Me
13. Junkyard Junky
14. Way Back
15. Zero Willpower
------------------------------------
16. ????

*一応、メモをとりながら観ていたのですが、既に記憶が曖昧です。曲目等間違いがあったらごめんなさい。


2 コメント

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Unknown (megu)
2010-09-04 16:25:02
はじめまして。
あまり詳しく無いのですが
見逃してはいけないと思い、観に行きました。

セットリスト有難うございます。
詳しい解説付で助かります。
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ありがとうございます! (moccho)
2010-09-05 01:14:49
meguさん、はじめまして。コメントありがとうございます!

ダン・ペンは見逃せませんよね~。こういうアーティストはなかなか来日自体が貴重ですからね。

私のブログは、詳しい解説と言うより単なる自己満足ですが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!!

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