ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ドクター・ジョン

2010-11-10 19:43:28 | ソウル、ファンク
DR.JOHN AND THE LOWER 911 / TRIBAL

先月来日していたドクター・ジョン。東京と大阪のビルボードライヴに出演し、あのワン&オンリーなしゃがれ声と熟練の鍵盤さばきでドクター印のR&Bをたっぷり披露してくれたようですが、私は残念ながら観に行けませんでした。ですが幸いフジテレビNEXTが生中継してくれましたので、ブラウン管越しではありますがライヴの雰囲気を堪能することが出来ました。それ以来、この最新作「TRIBAL」が私的にヘヴィ・ローテーション中です。

前作に引き続き、“AND THE LOWER 911”名義によって今年リリースされた最新作「TRIBAL」。タイトルからしてニューオーリンズ土着の精神を鼓舞するかのような雰囲気が伝わってきますよね。おそらく作詞の面では政治的なメッセージを歌ってたりするのではないかと思われますが、ドクター独特のダミ声によるその歌い口には、彼ならではのユーモアが感じられます。楽曲もオリジナル曲を中心に、ソウル、ブルース、ファンク、ジャズ等を、ヴードゥーをスパイスに煮込んだようなドクター流ニューオーリンズR&Bがたっぷり。名手ハーマン・アーネストを中心にしたバック・バンド THE LOWER 911 のタイト且つ粘り気のあるグルーヴがまた良いですね。

1曲目「Feel Good Music」からニューオーリンズなもっちゃりとしたファンクネスにドクター・ジョンらしい怪しさが絡み付きます。続く「Lissen At Our Prayer」はドクターの枯れた歌声とストリングスが独特の陰影を生むアダルトなR&B。このストリングス・アレンジは“クレオールのベートーベン”と賞される御大ワーデル・ケゼルグですよ! そしてファンク系なら「When I'm Right, I'm Wrong」。なんか昔の名曲を思わせるタイトルですね~。跳ねるパーカッションと切れ味の良いギター・カッティングの絡みが最高! ホーン・リフもクール! さらに終盤のドクターによる“SIT DOWN, SHUT UP!”という、唸るようなシャウトに痺れます。今作中最もアグレッシヴと言うか、ザラザラとしたガレージ臭が香る「Manoovas」。この曲でのドクターの気合いの入った歌唱にもやられます。もうすぐ70歳とは思えない迫力ですね。その歌声にまとわりつくようなスライド・ギターはデレク・トラックス!

そして注目はアラン・トゥーサン作となる2曲。まずは「Big Gap」。ピアノ・フレーズもトゥーサンが考えたんじゃないの?と思える程エレガント且つ寂し気なイントロで始まり、続くいかにもニューオーリンズなコール&レスポンスが愛らしい佳曲。このタメの効いたゆったりとしたノリが良いですね~。ホーン・セクションも味わい深い。そしてもう1曲、「Them」。ドクターとハーマン・アーネストがデュエットしてるんですけど、なんとなくラップっぽい感じ。ですがマーク・ムリンズ(BONERAMA)のトロンボーンが入ってくる辺りから、古き良き時代の酩酊感を呈してくる。何処か演劇的な雰囲気も感じる技ありの1曲。この曲は初めて聴いた時にはどうかと思ったのですが、聴けば聴く程に味が出てきますね。マーク・ムリンズは殊勲賞もの!

そしてもう一つ特筆すべきは、ライナーに「Dedicated To Memory Of Bobby Charles」と記されていること。今年1月に亡くなられたボビー・チャールズ。ウッドストック派の名シンガーとして知られますが、実はルイジアナ生まれ。ソング・ライターとしても有名で、あのファッツ・ドミノの「Walking To New Orleans」もボビーの手による曲だったりします。で、今作にはドクターと共にボビーの名も作者にクレジットされている曲が収録されています。それは「Change of Heart」「Potnah」「Tribal」の3曲。まずはタイトル曲でもある「Tribal」。インディアンのチャントと、ドクターらしいグラグラとうねるニューオーリンズR&Bが交互に姿を現す構成が秀逸。アルバム全体を見ても、土着のチャントを取り入れたこの曲が色彩をビシッと締めてますよね。そし「Change of Heart」。実は今作中で私が一番好きな曲。この曲は良いですよ~。暖かいオルガンから始まり、サザン・フィーリング溢れるメロディー、それに寄り添うようなピアノの旋律、弾力のあるリズム、ソウルフルな歌声、ホント素晴らしいです!

他にもベーシストのデヴィッド・バラードが歌い、ドナルド・ハリソンがアルトを吹くジャズ・ソウルな「Music Came」、ラテンの香りな「Only In Amerika」、女性コーラスが良い感じなミドル・ファンク「Whut's Wit Dat」など、ヴァラエティ豊かな曲調が並びます。ですがやはり丁度真ん中に配された「Tribal」が全体をがっしりと纏めてますよね~。そして唯一無比のドクター・ジョンの個性がジワジワと滲みてきます。良いアルバムですよ!

ちなみにフジテレビNEXTで生中継されたドクターのライヴは、新作からの曲を中心に、名作「GUMBO」からの曲なんかも交えた選曲でした。名曲「Right Place,Wrong Time」ではピアノを弾きながら背後のオルガンに手を伸ばし両手弾きをしたり、「Let The Good Times Roll」ではギターを弾き、ソロもとってました。「Huey Smith Medley」も良かったですね。そしてドクター・ジョンらしい怪しいオーラがプンプンでした。じゃらじゃらと飾りの付いた杖、赤系のスーツに、帽子、サングラス。そして立派な髭。ピアノの上には“しゃれこうべ”などが飾り置かれている。やっぱりドクター・ジョンですね。まだまだ元気です。次、来てくれた時は必ず行かねば!


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