ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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CHICAGO; Blues & Soul Showdown@よしもとプリンスシアター

2010-01-25 15:54:30 | フェス、イベント
JOHNNY RAWLS / ACE OF SPADES

1月24日(日)、品川のよしもとプリンスシアターへ、「CHICAGO; Blues & Soul Showdown」を観に行ってきました! フラミンゴス、ミッティー・コリア、バイザー・スミス、ジョニー・ロウルズ、色々な意味で濃いメンツでしたね。オープニングの木下航志くん、MCのフレディーも含め、ホント個性派揃い!! 濃密な約3時間でした。

まず、こんなコンサートが日本で実現したこと自体が奇跡に等しい。50年代から60年代にシカゴで活躍した伝説のアーティスト達がこぞって初来日し、しかもドゥ・ワップ、ゴスペル、ソウル、ブルースという多彩な音楽を披露してくれる。さらにその源流となる南部の香りもたっぷり感じさせてくれる。企画された日暮泰文さんと高地明さんに感謝ですね。

出演者それぞれ素晴らしかったですが、一番良かったのはジョニー・ロウルズだったかな? 南部らしいふくよかなリズムを提供した彼のバンドは素晴らしかった! 今回のイベントは5組も出演する割には開演が19時という、セットチェンジを入れたら1組あたりの演奏時間は凄く短いのでは?と心配していたのですが、バック・バンドは全てこのジョニー・ロウルズのバンドが務めたので、休憩はフラミンゴス前の1回だけで、後はほとんどぶっ続け。MCに促され次々にアーティストが登場するという、ブルース系のイベントとしてはなかなか画期的な仕組みでした。

すなわちジョニー・ロウルズは出ずっぱりな訳です。全編に渡って職人的且つ愛情溢れるバッキングを披露すると同時に、個性派揃いの長帳場を一つのショーに纏め、随所で盛り上げようとする姿勢が伝わってきて、常に笑顔でプレイしていた人柄と併せて、彼には殊勲賞を与えたいですね!

トップバッターは唯一の日本勢、木下航志。弱冠20歳の盲目のシンガー/ピアニスト。瑞々しく颯爽とした歌声と、小柄ながら堂々としたパフォーマンスで開場を沸かせました。ジョニー・ロウルズのバンドとの相性もバッチリ。目が見えない木下航志はバンドの方を見ずに手を振り上げるだけの合図を送り、それにカチッっとバンドが反応する。なんかゾクゾクしましたね。曲目は「Mess Around」と「People Get Ready」の2曲だけでしたが、日本人離れしたソウルフルな歌唱に、将来が楽しみになりました。

続いてMCに紹介され、ジョニー・ロウルズが中央に歩み出ます。ソウルありブルースありのステージでしたが、やっぱり白眉は OVライトの「Ace Of Spades」ですかね。良い声してるんですよ! サザン・フィーリングがじわりと染みてくるような。ジョニー・ロウルズは元々OVライトのバック・ギタリストを長く務めてきた人だそうで、客席もこういう選曲を期待していたんでしょうね。曲名と同時に歓声が上がりましたね。「Red Cadillac」では再び木下航志が登場し、ジョニー・ロウルズとヴォーカルの掛け合いを演じて沸かせました。

日本から木下航志、そしてミシシッピのジョニー・ロウルズと続き、ここからが本格的にシカゴの世界。まずはシカゴ・ブルースの長老バイザー・スミス。今年で78歳だそうです。正直、若干手元が覚束ない感じではありましたが、それでも濃厚過ぎる程のブルース臭をまき散らします。ギターはある程度ジョニー・ロウルズに任せても良いと思うのですが、リフからソロまで全部弾く。歌いながらも手を休めることはありません。もう顔面汗だくでした。倒れちゃうんじゃないかとちょっぴり心配にもなりましたが、そこにブルースマンとしての誇りを感じましたね。曲は「Rock Me Baby」とか「Messin' With The Kid」なんかを演ってました。時折崩れそうになるバイザー・スミスを暖かくサポートするジョニー・ロウルズも印象的でした。

ここで一応、MCのフレディーにも触れておきましょうか。日本語が堪能な黒人さんで、客席を英語で煽りながら自身で同時通訳するという珍しいスタイル。しかもこの人、演歌とR&Bをミックスした“エンソル”という新ジャンルで、最近P-VINEからアルバム・デビューまでして話題になっている人。この日もバイザー・スミスのギターを借りて「関西空港」という曲をフル・ヴァージョン歌ってくれました。喋りも堪能なので、このイベントが続くならば、ブルース・カーニバルにおける 後藤ゆうぞう のような名物MCになるかも?

そしていよいよこの日、私が最も楽しみにしていたミッティ・コリア。ですが、声がかすれている…。MCになるとさらに声が枯れて辛そう。通訳の人曰く、『風邪を引いてしまった』とか…。頼みますよ~。と言っても、何せ70年代にゴスペルの世界へ入られて以降、表舞台には出てこなかったミッティだけに、本調子の彼女を私は知らないんですけどね…。でも明らかに声を出すのが辛そうに見えました。ですが、マヘリア・ジャクソンの「Move Up A Little Higher」のようないかにもゴスペルなアップ・ナンバーでのパンチの効いた歌唱は圧巻! 風邪や喉の不調など蹴散らす勢いでパワフルに歌う。そしてミッティらしい低い声の響きの深いこと!スロー・ナンバーでは感情の高ぶりを見事なまでにその声に乗せてくる。その素晴らしさは思わず曲の途中で拍手を送りたくなる程。 さらにステージを含めて開場全体を真っ暗にして観客達に携帯電話を振らせるパフォーマンスもあったり。そして待ってましたの「I Had A Talk With God Last Night」。題名に“God"と付いていますが、つまりこれは彼女のチェス時代の代表曲「I Had A Talk With My Man」のゴスペル・ヴァージョン。感無量ですね。もちろん、本調子の声で聴きたかったという正直な気持ちもありますが、風邪を引いてもキャンセルせずに歌ってくれたミッティに感謝です!

ラストはフラミンゴス。これまでの南部フィーリングを感じさせる泥臭い雰囲気とはまた別世界。フラミンゴス全盛期の中心メンバーだったテリー・ジョンスンを中心にした4人が奏でる麗しのコーラス・ワーク。バックはカラオケにジョニー・ロウルズのバンドが色をつける感じで、とにかく上品。こういうドゥ・ワップのステージを見るのはこれが初めてでしたが、その万華鏡のような声と声の重なりに吸い込まれましたね。「Mio Amore」、「Your Other Love」、「I’ll Be Home」、「Lovers Never Say Goodbye」といった往年のフラミンゴス・ナンバーで聴かせる魅惑のコーラス。そしてこれぞドゥ・ワップなアップ・ナンバー「Jump Children」。時代を感じさせる4人の振り付けも楽しいですね。さらにボビー・ダーリンの「Mack The Knife」やジェリー・バトラーの「For Your Precious Love」などのカヴァーもフラミンゴス流に。そしてサプライズは美空ひばりの「川の流れのように」。これも素晴らしかったです! 単なる余興とは決して思えない、愛情たっぷりの本気のカヴァーですよ!女性メンバーの歌唱が何故か美空ひばりっぽくて。真似ているというより、その歌心を感じとっている雰囲気が感動的でした。でもなんだかんだでやっぱり「I Only Have Eyes For You」ですね!! これは名曲だな~。

最後は出演者総出による「Stand By Me」で盛り上がりました。ジョニー・ロウルズも木下航志もそれぞれ魅せてくれましたが、ミッティ・コリアが歌ったワン・フレーズが異様に盛り上がりましたね。ここぞという時の爆発力、痺れました。若干入りずらそうに見えたバイザー・スミスもちゃんと歌ってくれました。でもこういうセッションを見ると、昔のパークタワー・ブルース・フェスティヴァルを思い出しますね。なんか幸せな気分になりました。この1回だけで終わらず、ぜひ毎年恒例のイベントとして続けてもらいたいです!


*上の写真は終演後にサインを頂いたジョニー・ロウルズの09年最新作「ACE OF SPADES」。いなたすぎず、洗練されすぎず、絶妙な案配の南部ソウルを聴かせてくれます。ロックな感じもあります。



MITTY COLLIER / MITTY COLLIER SINGS TO GOD
こちらはミッティ・コリアにサインを頂いた彼女のゴスペル作品(CD-R)。やはりここで聴ける彼女の歌唱は、私がライヴで聴いたものより発声自体が断然なめらか。そして声も伸びやか。他の日を聴いてないので何ともいえませんが、やはりあの夜は不調だったんだなと感じさせられます。楽しみにしていただけにちょっぴり残念ですね。でも生で観れただけ幸せですね。しかも終演後にサイン会までやってくれたんですから!



BYTHER SMITH / ALL NIGHT LONG
こちらはバイザー・スミスに頂いたサイン。握手もしてくれました。


2 コメント

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Unknown (PAL)
2010-01-25 21:10:30
お久し振りです。
ボクも金曜日に行ってきました!日比谷のブルース・カーニヴァルとは趣も違って、なかなか素晴らしい企画でしたね。
サイン入りCDの写真を見てたらボクも買っておけば良かったなと後悔です…(泣笑)
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ありがとうございます! (moccho)
2010-01-26 16:32:07
PALさん、コメントありがとうございます!

お久しぶりです。
面子が日本でお馴染みのブルース・アーティスト達ではないところが逆に素晴らしい企画だと思いました。
来年以降も続けて欲しいですね!

最近こういう場でCDにサインをしてもらうのが楽しみになっています。
英語が喋れないのが難点なのですが…。
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