ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

フジロック 予習 ウィルコ 外伝 ジェフ・トゥイーディーの仕事

2016-07-01 00:06:22 | フジロック
フジロック予習特集、栄えある第一回はウィルコを取り上げましたが、今回はその番外編。特集二回目にして早くもフジの予習にならない程ルーツな趣味全開になりつつありますが、すいません、それが当ブログ「ルーツな日記」なのです。という訳で、ウィルコの中心人物、ジェフ・トゥイーディーのプロデュース・ワークです。どうぞ!




MAVIS STAPLES / YOU ARE NOT ALONE
やはりプロデューサーとしてのジェフ・トゥイーディーの出世作と言えばこの作品になるのでしょう。メイヴィス・ステイプルズの2011年のソロ・アルバム「YOU ARE NOT ALONE」。ジェフからのラヴ・コールで実現したコラボだそうですが、相手はかのメイヴィス・ステイプルズですし、彼女の前作はあのライ・クーダーがプロデュースしていただけに、ジェフのプレッシャーは相当なものだったでしょうね。私もメイヴィスの新作をウィルコのジェフ・トゥイーディーがプロデュースしたと聞いた時は驚いたものです。ですが開けてみたら、これが良い!! メイヴィスの滋味溢れるゴスペル・フィーリングを、彼女の全盛期のキャリアに敬意を表しながら、それを現代のアメリカーナへ落とし込んだ見事な作品。これはグラミー賞「Best Americana Album」を受賞しました。また、メイヴィスの次作「One True Vine」もジェフがプロデューサーを務めています。



LOW / THE INVISIBLE WAY
スロー・コア/サッド・コアの代表格として知られるロウをジェフ・トゥイーディーがプロデュース。2013年作。これも驚きましたが、ネルス・クラインの紹介と聞けばなんとなく頷けたり。とは言え、当時のロウはプロデューサーにデヴィッド・フリッドマンを招いたりと、その冒険心豊かな音楽探究はウィルコと通じるものがあったかも。そのロウが次に白羽の矢を立てたのがジェフ・トゥイーディーな訳です。そして両者のコラボは意外にもアコースティックなフォーキー作品。これがまた良いんですよ!!サッド感は薄めながら、それをアメリカーナに置き換えたような音空間はジェフの手腕と言えるでしょう。ピリっとした緊張感の中に漂う何処か牧歌的な雰囲気に、身も心も吸い込まれてしまいそうです。




SARAH LEE GUTHRIE & JOHNNY IRION / WASSAIC WAY
アーロ・ガスリーの娘、つまりウディ・ガスリーの孫であるサラ・リー・ガスリーと、作家トーマス・スタインベックを叔父に持つ、すなわちジョン・スタインベックを大叔父に持つジョニー・アイリオンによる夫婦デュオ。惹かれ合う二つの類い稀なる遺伝子がかなでるフォーク・サウンドは、穏やかな陰影を含むポップさが心地良い。ウディ・ガスリーを敬愛するジェフですから嬉々としてプロデュースを務めたことでしょう。右腕となるパトリック・サンソンも参加。ドラムには息子スペンサーも。ロフトにて録音。




WHITE DENIM / CORSICANA LEMONADE
米オースティン出身のガレージ・ロック・バンド。日本での知名度はまだ低そうですが、マニアの間では知られた存在でしょうか? サイケやブルースを基盤にジャズやプログレをも血肉としながらツェッペリンばりのリフ・ロックを展開する、いかにもテキサス産なガレージ・ロック。全10曲中、ジェフは後半5曲をプロデュース。多彩な曲調や様々なアイデアをカチッと纏める手腕は流石。文句無しに格好良い!! で、余談ですが、今年のフジロックに出演する期待の黒人シンガー、リオン・ブリッジズを御存知でしょうか? 突然話が飛びましたが、実は彼を見いだし、デビューまでサポートしていたのが、このホワイト・デニムのギタリスト、オースティン・ジェンキンス(現在は脱退)だったのです。もちろんリオン・ブリッジズのデビュー作「LEON BRIDGES / COMING HOME」にもオースティン・ジェンキンスは参加しています。




RICHARD THOMPSON / STILL
UKフォークの重鎮、リチャード・トンプソンによる2015年のソロ作。前々作をバディ・ミラーが手掛け、今作はジェフ・トゥイーディー。流石の人選ですね。一方、ジェフにとって英国の大物アーティストを手掛けるのはこれが最初でしょうか? アイリッシュの香り漂う、英国情緒濃厚なフォーク・ロック。いぶし銀ながら風通しの良いタイトなノリが気持ち良い。メイヴィス・ステイプルズ同様、ジェフのプロシュースはレジェンドの魅力を引き出しつつ、あくまでも自然体で聴かせる塩梅が実に見事。英フォークや米ルーツなど垣根を取り払うロフト・マジックここにあり!




POPS STAPLES / DON'T LOSE THIS
2000年12月19日に亡くなられたステイプル・シンガーズの生みの親ローバック"ポップス"ステイプルズ 。彼が生前に残した録音を、娘メイヴィス・ステイプルズから託されたのがジェフ・トゥイーディーでした。これはジェフが完成させ、2015年にリリースされた亡きローバックのラスト・アルバム。これは名盤ですよ!本当に素晴らしい! ローバックの滋味あふれる歌声とビヤビヤと鳴るギターが醸すブルージーなゴスペル・フィーリングは素晴らしいの一言! ドラムに息子スペンサーを参加せたりもしているものの、ジェフのプロデュースはここでも愛情溢れる素晴らしい仕上がり。メイヴィスのジェフへの信頼が伺われます。




TWEEDY / SUKIERAE
最後はジェフのセルフ・プロデュースによるソロ作に近い、息子スペンサーとのデュオ、トゥイーディーによる1st作。2014年の作品。良くも悪くもジェフらしいと言いますか、びっくりする程ウィルコと外れたことをやっている訳ではありませんが、息子との二人三脚はもちろん、タイトルの「SUKIERAE」は奥様スーザンのニックネームをもじったものだったり、ジャケ写は幼いジェフ本人の写真だったりと、よりパーソナルな雰囲気が濃厚で、ウィルコとはまた違った意味で滲みます。そう言えば、まだ公式発表前、今年のフジにウィルコの参加の噂がSNSを賑わせたのは、トゥイーディー来日時にジェフがフジ再来を口走ったことからでしたね〜。





以上、近年のジェフ・トゥイーディーによる美味しい仕事の抜粋ですが、この他にも、映画「CHELSEA WALLS」のサウンドトラックを手掛けていますし、スポット的な参加では、ロザンヌ・キャッシュ、ビル・フェイ 、チャーリー・ルーヴィン等への客演や、ディラン映画「I'm Not There」のサントラ参加など、ルーツ系も目立ちます。そしてベック関連作にも。フジロックではウィルコからのバトンタッチで土曜グリーンのトリを務めるベックですが、彼が楽譜集として出版した曲を多彩なアーティストが手掛けた企画盤「BECK SONG READER」にもジェフ・トゥイーディーは参加し、トゥイーディー名義で「The Wolf Is On The Hill」を演奏しています。そんな両者の音楽的繋がりを思いながら土曜の夜に酔いしれるのも良いかもしれません。