ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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ALLEN TOUSSAINT / SONGBOOK

2013-10-23 19:14:22 | ニューオーリンズ
ALLEN TOUSSAINT / SONGBOOK

今年9月にリリースされたアラン・トゥーサンのライヴ盤(こちらはDVD付きのデラックス盤)。09年にニューヨークのJOE'S PUBで収録されたものですが、おそらく正式なライヴ・アルバムとしては初めての作品ではないでしょうか。しかもバンドではなくピアノ・ソロです。題名からもわかる通り、代表曲のセルフカヴァーを中心にした選曲ですが、ピアノソロという形により新たな命が吹き込まれたような、単なるライヴ盤とは違う、新作として魅力あふれる作品に仕上がっています。

まず、古き良きニューオーリンズR&B好きといたしましては、「Who's Gonna Help Brother Get Further」「Lipstick Traces」「Get Out Of My Life, Woman」、そして「Certain Girl」から始まるメドレーなど、お馴染みのトゥーサン作ニューオーリンズ・クラシックの数々にニンマリですよ。中には普段ライヴではあまりやらなそうな曲も含まれているのがまた魅力的。例えばオープニングを飾る「It's Raining」とか。ご存知アーマ・トーマスが歌った名曲ですが、トゥーサンがピアノで弾き語るこの曲も素晴らしい。あとアート・ネヴィルの「All These Things」。これもピアノでのアレンジが美しすぎてため息もん。もちろんトゥーサンの歌声にもうっとり。またリー・ドーシー提供曲は今ライヴでも数曲取り上げられていますが、作者自身が歌う「Holy Cow」なんて私は初めて聞いたかも? やはりトゥーサン作の名曲の多さですよね。何度かライヴを観に行ってはいても、まだまだ聴けてない曲が結構あったりする…。一方で定番の名曲「Yes We Can」なんかはピアノソロならではの素敵なアレンジで新たな輝きを放っていますしね。この曲は冒頭に「We Are America」という曲が歌われますが、このれもトゥーサン作の曲でしょうか?

「Brickyard Blues」、「With You In Mind」、「Soul Sister」など、70年代のソウルフルな曲も素晴らしい。特に人気曲でありながら、必ずしもライヴでやるとは限らない「Brickyard Blues」が収録されているのは嬉しいですね。トゥーサンと言えば、柔らかく深みのある歌声が魅力的ですが、この曲ではハリのある若々しい歌声を聴かせてくれて、それがまた良いんですよ。また最後に「フランキー・ミラー」と一言添えるところもグッときます。82年のソロ作「MOTION」収録の「The Optimism Blues」やアーマ・トーマスが88年作「THE WAY I FEEL」で歌った「Old Records」なんかは結構レアな選曲ですよね~。

さらに「Shrimp Po-Boy, Dressed」、「It's A New Orleans Thing」、「I Could Eat Crawfish Everyday」、「There's No Place Like New York」の4曲は新曲でしょうか? よく分らないのですが…。ニューオーリンズ・スタイルのピアノが印象的な「It's A New Orleans Thing」や、トゥーサン流のハネともっちゃり感が味わえる「I Could Eat Crawfish Everyday」なんか良いですね~。「Shrimp Po-Boy, Dressed」と「There's No Place Like New York」もトゥーサンらしいポップ・センスの中にブルージな感覚やセンチメンタルなメロディが息づいてて、どれもこれも流石に良い曲です。で、またピアノのアレンジが良いんですよ!

そしてラストを締める大名曲「Southern Nights」の素晴らしさたるや!!

このアルバムを聴いてあらためてアラン・トゥーサンのピアニストとしての魅力を再認識させられましたね。優しくエレガントな響きの中に脈打つニューオーリンズならではのファンクネス。大衆的なR&Bに南部の神秘性が溶け込むような、トゥーサンのタッチにはそんな不思議な魅力があります。もちろん歌声も素晴らしい。愛らしいフィーリングを感じさせる高音も魅力的ですが、深いコクのある低音がまた良いんですよね~。ここ近年、明らかに新たな全盛期を迎えていますよ!!


さて、そんなアラン・トゥーサンは現在来日中です。東京公演は今日10月23日までですが、大阪は明日24日です。場所はもちろんビルボードライヴ。今回は息子さんのクレアレンス・レジナルド・トゥーサン(Percussions)との親子デュオと言うことですが、雰囲気的には今アルバムのようなピアノソロに近い演奏になるのではないでしょうか? これまでのバンドを従えた来日公演とは一味違うステージを見せてくれることでしょう。

10月22日(火)ビルボードライヴ東京
10月23日(水)ビルボードライヴ東京
10月24日(木)ビルボードライヴ大阪


*デラックス盤のDVDにつきましては、カメラアングルがやや単調ですが、一音一音を愛でるように弾き、歌うトゥーサンの表情が凄く良いです。インタビューも収録されていますが、輸入盤なので日本語字幕はありません…。