ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ニュー・クール・コレクティヴ@東京JAZZ

2013-09-16 14:28:02 | フェス、イベント
NEW COOL COLLECTIVE / SALUD

9月7日、8日の2日間、ニュー・クール・コレクティヴのライヴを観てまいりました。昨年はフジロックにも出演して話題になった、オランダが誇るジャズ・ファンク・バンドです。今回は東京JAZZ【the PLAZA】。こちらは日本を代表するジャズ・フェスティヴァルである東京JAZZの関連イベントとして、東京国際フォーラムの地上広場で行われたフリー・イベント。ジャズを中心に世界各国のアーティストが出演する中、ニュー・クール・コレクティヴはこの2日間のトリを務めました。

ちなみに、私が初めてニュー・クール・コレクティヴを観たのは、09年、やはり同じ東京JAZZのフリー・イベントでした。彼らについて何の前知識もなく観たそのライヴ、あまりの格好良さにぶったまげたのを覚えています。その後、フジロックを含めなんだかんだで観そびれてしまってるので、彼らを観るのは、あれから4年ぶりでした。

まずは9月7日。この日はフランスのシモン・ダルメ、ポーランドのマルチン・マセツキ – ポロネーゼ 、イスラエルのヨタム・シルバースタイン・トリオ などが出演。そして21時からいよいよニュー・クール・コレクティヴがスタート。編成はベンジャミン・ハーマン(sax)、 デヴィッド・ロックフェラー(tp,tb)、 レスリー・ ロペス(b)、 ローリー・ロンデ(g)、 ヨス・デ・ハース(per)、 フランク・ファン・ドック(per)、 ヨースト・クルーン(ds)、 ウィレム・フリーデ(key)という布陣。1曲目は「Como Camina」。有楽町の夜空に響く、ジャジーなファンク・グルーヴ!!

やはりこのリズムですよ!ドラムスとベース、キーボードの絡みはもちろん、2台のパーカッションが織りなすラテン・フレイバーがまた心地良い! そしてそのリズムの上を縦横無尽に飛び交うサックスとトランペットの音色。特にリーダーのベンジャミン・ハーマン! 彼のブロウはもちろん、パッション溢れる清々しいリーダーシップが何とも言えず気持ち良いですね。そして気になるのがギタリスト。私はアントン・ハウトスミットというギタリストがかなり好きだったのですが、彼は脱退してしまったのでしょうか?代わりに黒人ギタリストのローリー・ロンデがその座を務めています。ジャズばかりでなく、ブルースやロックも感じさせるミクスチャーなアントン・ハウトスミットに比べれば、ローリー・ロンデはよりオーセンティックなジャズ・ファンクに徹している印象ですが、彼が醸すリズムが堪らない! 白人中心のニュー・クール・コレクティヴに黒いグルーヴを注入するかのような、気がつけば彼のギター・カッティングこそ現ニュー・クール・コレクティヴの要のように聴こえてくるほど。曲が進むにつれ彼のグルーヴに身も心も浸食されてしまいました。

最新作「SALUD」から「Samba Kitsu」や「Pont Faidherbe」、前作「EIGHTEEN」からの「Ogun」、「Marche Funebre」など、アンコールも含めて7~8曲でしたかね。最後は椅子席のお客さんも総立ちで盛り上がりました。個人的なハイライトは2台のパーカッションが大活躍したアフロ・フィーリングな「Ogun」。この曲でのアフリカンなコーラスや、パーカッションによるリズムの響宴は夏の夜空にぴったりでしたね。いや~、本当に気持ちの良いライヴでした!


そして翌日9月8日。この日は午後から雨。楽しみにしていたのはセカンド・ステージ的な小ステージで行われたベンジャミン・ハーマンのソロ・ライヴ。ですがライヴと言うよりトーク・ショー的な雰囲気で、パソコンで音源をかけながらオランダのジャズ・アーティストを紹介していたのでしょうか?通訳無しだったので、英語が分からない私にはさっぱり分かりませんでした…。もちろん、ソロで無伴奏のサックス演奏も披露してくれまして、それはそれは極上だったのですが、いかんせん、トークが長過ぎましたね~。

この後、雨は豪雨に変わり、ニュー・クール・コレクティヴを含む3バンドを残し、ステージは続行不可能となりました。しかし、東京国際フォーラムの地上広場には雨の当たらないスペースもあるんです。ちょうどベンジャミン・ハーマンがソロ・ライヴをした小ステージの裏手側あたり。ここに特設ステージが用意される。いや、ステージはありません。ただ、地面にドラムセットやキーボード、アンプを並べただけです。ほとんどストリート・ライヴな雰囲気。雨のため、お客さんも随分と少なくなってしまったなか、ここでスイスのルスコーニ 、オランダのエリック・フルイマンスが素晴らしいライヴを繰り広げる。そしていよいよニュー・クール・コレクティヴ!!

ほとんどリハーサルらしいリハーサルも無しに始まったニュー・クール・コレクティヴ。サックスやトランペットにはマイクが立てられていましたが、おそらくドラムスやパーカッションは生音、ベースとギターはアンプからの出音そのものだったと思います。そんな状況でもバッチリなサウンドを出しますからね。さすがプロですよ!しかも生々しく臨場感たっぷりな音像がかえって興奮を誘うほど。観客達は、手を伸ばせば届きそうな位置でバンドを取り囲むように観ている。もちろんステージとの境界線なんてありませんよ。バンドもそんな親密な空気を楽しむようにテンションを上げていく。もちろん、バンドにとっては決して万全な状態ではなかったでしょうが、こんなシチュエーションでニュー・クール・コレクティヴを体験出来る我々観客にとっては、なんとも贅沢な話。

この日、印象的だったのはやはり「Ogun」。あの親密感の中、ストリート・ライヴな風情でこの曲を決められては堪りませんよね。ニュー・クール流のアフロ・グルーヴがまるで渦を巻くようでした。ちなみに私はローリー・ロンデのほぼ目の前に陣取っていたのですが、やはり彼のギターにやられました。単音フレーズを微妙に変化させながら延々と弾き続けているのですが、その陶酔グルーヴは半端無かったです。また「Chevere」でのギターソロも最高でした。ゆっくりと入って徐々にフリーキーに畳み掛けつつ、その奥には黒いグルーヴが内包されてる。格好良い~!!

エキゾティックな「Pont Faidherbe」ではレスリー・ ロペス(b)の弾く低音ラインがやたら腰にきて参りました。「Marche Funebre」のスカのリズムも気持ち良かったですね~。夏の空気を包み込むようなグルーヴ。熱いブロウと灼熱のパーカッション。幸福感溢れるヴァイヴ。雨を避けるように集まった東京国際フォーラムの一角が、まるで桃源郷のような空気に満たされた最高のライヴでした。

終了後はアンコールを望む拍手が鳴り止まない。それは終演を告げる司会者の声をも掻き消すような勢い。司会者も流石に苦笑いを浮かべていると、裏からベンジャミン・ハーマンがサックスを持って登場。しかしスタッフに止められ、状況を確認。結局アンコールは時間的に無理らしい。でもベンジャミンはマイクを持ち、観客達に誠意溢れる挨拶をされてました。なんかそういう姿に痺れちゃいましたね~。いや~、ホント良いライヴでした。豪雨にも負けず、待った甲斐がありました!


雨のため中止になりかけても、残った少ないお客さんのために、場所を変えて続行してくれた東京ジャズに感謝です。有料のイベントならまだしも、フリー・イベントですからね。そしてそんな状況でも熱演を繰り広げてくれたバンドの皆様も素晴らしい! 東京ジャズ、そしてバンドの皆様、お疲れさまでした!ありがとうございました!!



*写真はニュー・クール・コレクティヴの通算10枚目となる最新作「SALUD」。前半は従来通りのニュー・クール・コレクティヴが楽しめるジャズ・ファンク、後半は映画「Toegetakeld Door De Lieftde」のサントラとして短い曲が叙情的に連なるという、変則的な作品ながら、彼らの多彩な魅力がたっぷり味わえる好盤です。既にアントン・ハウトスミットの名前は見えず、数曲でローリー・ロンデがギターを弾いてます。9月7日のライヴ終了後、メンバー全員からサインを頂きました。

ちなみにギタリストのローリー・ロンデ、正式にニュー・クール・コレクティヴに加入したのか、ヘルプ要員なのか?そこがよく分らないんですけど、どうなんでしょうね? あとなんか聴いたことある名前だと思って帰宅後に調べてみましたら、ジョヴァンカの最新作「SATELLITE LOVE」でも印象的なギターを弾いてる方でしたね。今後注目です!!



↓参考映像。今年のNorth Sea Jazz Festivalにおける「Ogun」。
http://www.youtube.com/watch?v=7pzXWvdfwXk