ルーツな日記

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グラム・パーソンズ 2

2006-09-23 20:11:36 | ルーツ・ロック
GRAM PARSONS / THE COMPLETE REPRISE SESSIONS

グラム・パーソンズのリプリーズ時代を未発表テイクと共にまとめたCD3枚組みセット「コンプリート・リプリーズ・セッション」のつづきです。


グラム・パーソンズの1stソロ作「GP」は素晴らしい内容に反し、セールス的には失敗に終わったそうです。失望したことでしょう。ですが自分の信じた道を澱み無く突き進む彼には、そんなことはなんの障害にもなりませんでした。少なくとも音楽製作には。

「GP」のリリースは73年ですが、その年の内にグラムは次のアルバムの製作にかかります。名盤「GRIEVOUS ANGEL」です。

基本的には「GP」のサウンドを踏襲したもので、グラムのセルフ・プロデュース。バックは前作から引き続きエミルー・ハリス、ジェームズ・バートン、グレン・D・ハーディン、ロニー・タット、アル・パーキンス、バイロン・バーラインが参加し、さらにイーグルスのバーニー・レドンが、ギター、ドブロ、マンドリンと大活躍です。ベースはエモリー・ゴーディ。

前作ではジョーン・バエスを思わせる、フォーク歌手的な歌が印象的だったエミルーですが、今作ではリラックスした、よりエモーショナルな歌を聴くことが出来ます。さらにグラムとエミルーのハーモニーが格段に美しく、甘く、ロマンチックになっています。これが本当に素晴らしい。

1曲目、グラム・パーソンズ作の「Return Of The Grievous Angel」はそんなハーモニーの妙がたっぷり堪能できる名曲です。メジャー感とマイナー感を行ったり来たりするようなメロディー・ラインも秀逸。この曲は今回オルタネイト・テイクを聴くことが出来ますが、まだ未完成なハーモニーに試行錯誤が伺え、興味深いです。

2曲目の「Hearts Of Fire」はグラムの優し気な声にピッタリ寄り添うようなエミルーの声。サビではソウルフルにグラムをサポートします。

そして極め付けは7曲目の「Love Hurts」。この曲での二人の息遣いは美しさの極地。サビでの盛り上がりと、まるで飛翔するかのようなエンディングがまた良いです。この曲も今回オルタネイト・テイクが聴けます。美しさでは劣るものの、より艶っぽく感じるエミルーの歌がなかなか良いです。

この曲は偉大なソング・ライター、ブードロー・ブライアントの作で、エヴァリー・ブラザーズが歌った曲のようですが、私は残念ながら聴いたことが無いので今度聞いて見たいと思います。

また余談ながら、近年行われたグラム・パーソンズのトリヴュート・ライブで、ノラ・ジョーンズとキース・リチャーズが一つのマイクに向かい肩を寄せ合って素晴らしいデュエットを聴かせてくれたのもこの曲でしたね。

そしてもう一曲オルタネイト・テイクで印象に残ったのが「In My Hour Of Darkness」。グラムとエミルーの共作曲ですが、正規ヴァージョンよりエフェクトが薄い分、その素朴さにかえって魅力を感じたりします。

さて、エミルー・ハリスとの瑞々しいデュエットが眩しいこの「GRIEVOUS ANGEL」。まさにグラムのカントリーへの想いと熱きソウルが結実したようなアルバムとなりました。が、と同時に、彼の遺作ともなってしまったのです。彼は1973年9月19日、ドラッック癖が祟り、ジョシュア・ツリー・イン(モーテル?)の一室で亡くなってしまいました。26才だったそうです。

グラムの死は、その棺が盗まれたことにより、さらに伝説的になりました。ジョシュア・ツリーの砂漠、岩、そして木の写真を見ると、グラムへの思いがいっそう募ります。

カントリー・ロックというより、カントリー・ソウルと呼びたいグラム・パーソンズです。


*この「THE COMPLETE REPRISE SESSIONS」は、「GP」のジャケ写の別ショットをあしらったボックスに、LPのジャケットを模した紙ジャケと素晴らしい写真が盛り込まれたライナーが入った、なかなか完成度の高いものです。ただ、オルタネイト・テイクについて、曲ごとの解説がほとんど無いのがちょっと残念です。





~関連過去ブログ~ お茶のお供にどうぞ。

 06. 9.16 グラム・パーソンズ 1 (「THE COMPLETE REPRISE SESSIONS」前編)
 05.10.15 グラム・パーソンズ、グラム・パーソンズを思う